窮屈な二度目の人生過ごしてます   作:海野

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第六話 オタクの法則

 一学期も終盤だ。そんな時期にやってくる学校のイベントと言えば、期末テストだ。もちろん、学年一位は取る。そうしないと父に何か言われるからだ。

 いや、そんな事を言っている場合では無い!今日は、私が今ハマりにハマっているアニメのCDが出る日なのだ。これだけはどうしても譲れない。仕方が無い……変装して行くか!

 

 

 

「だ、大丈夫だって。髪型はツインにして、マスクもしたし、地味めの服も選んだからさ!」

 

 いつもは三つ編みにして、片方の肩に寄せているし、誰もツインをしている浅野学なんて分からないだろう!

 行きつけのCDショップに入る。あのアニメのOPはとても良い。まず、テンションが上がる。あれで教科の専門用語をあてはめて、替え歌を作れば一位なんてちょちょいのちょいだぜ。どちらかと言えば、こっちの方が効率も良いし、何よりも勉強のモチベーションが上がる。

 アニメのコーナーに早歩きで向かい、ライトノベルを読むような勢いでCDを探す。よし、見つけた!新作はだいたいすぐに目に入る場所に置いてあるからな。あとはお会計さえすれば私の勝ちだ。

 すぐにお会計を済ませ、店を出ようとした時、肩をトントンと叩かれた。もしかして、ばれたか、ばれたのか!と思いながら後ろを振り返ると、眼鏡をかけた男子が手に持っていた手帳を私の方に向けていた。

 

「落としましたよ。ん?“浅野学”って……」

 

 学生手帳落としていた!まさか、学生手帳を何故……はっ!そう言えば、出かける前にハンカチの下に置いてあったはずだから、一緒に鞄の中に入って、サイフを鞄の中に戻そうとした時、落ちたんだ!

 

 

 店から離れたカフェで。

 

「まさか、あの浅野さんがアニメ好きだとは思わなかったな」

「うん。父があんなんだからさ。アニメとか隠れて見ていたからね……」

 

 ばれた相手はまさかのまさかの竹林孝太郎君だった。彼はE組でも頭は良いが、実はオタクという隠れ個性を持っている。彼のキャラは嫌いでは無い。むしろ話が合うのではないかと思っていた。だが、こんな出会いはあるか?いや、最悪だ。

 

「君も、そのアニメ好きなのかい?」

「えっ、ま、まあね。DVDにダビングしてあるから一週間に三、四回のペースで見なおしてるよ」

「僕もだ。そのアニメはとても良い。まず、イラストの繊細さだ」

「そ、それ!私も分かるよ!キャラの表情はとても細かい所まで描かれていてさ、キャラもそうだけど、魔法アニメだからさ、魔法の詠唱シーンあれはとても綺麗だよね!」

「同感だ。その詠唱シーンを表現豊かに声にして表す声優の力量もだ」

 

 彼の言う意見にとても共感し、そしてそのアニメも含め、他のアニメについても二時間ぐらい語り合った。時計を見ればもう六時過ぎだ。好きな物には熱中してしまう。これがオタクの法則ではないかと思う。

 

「あのさ、電話番号交換しようよ!またアニメの事について語ろうよ」

「そうだね。こういう人、周りにはいなくて少し心苦しかった」

 

 竹林君の言う通りだ。うちの学校は勉強ばっかり。趣味の事について話す人なんていない。それも、アニメとなれば二次元の話につながるから現実、つまり勉強から離れていると言われ、冷たい目で見られるだろう。彼もその事を理解し、言いだせなかった。私もA組という立場からそんな事を知られればまずいと思っていた。

 

「それに、浅野さんは噂で聞くような人ではなかった。むしろ、こっちの君の方が合っているんじゃないか?」

「うん。でもさ、私は否定したい。父の教育法を……だから壊すんだ。その為にはさ、時間が必要なんだ。そして、それは私だけじゃできない。E組の生徒が必要なんだ」

「E組の?」

 

 E組の生徒は差別の対象となり、絶望になっている。そんな生徒が成績トップを独占したら父の教育法が崩れる。本校舎の生徒も簡単に言いだせなくなる。それが起るのは二年後。そして、月が三日月になる事、一人の女性がある怪物を助けるために命を落とす事、ある少女が姉の仇を討つためにボロ校舎に潜入する事、そして、私がE組の壁になる事が条件だ。

 

「E組の人には申し訳ないと思っている。でも、私は差別を無くしたい。そして、私は弱者になりたいから」

「……」

 

 竹林君は私の話を黙って相槌を打ちながら聞いてくれた。

 丁度夕日が綺麗だ。

 

「長々と話しちゃったね。じゃあ、バイバイ」

 

 それだけ言うと、私は沈んでいく夕陽の方へと歩いて行った。




 学ちゃんだったら竹林君と絶対気が合うだろうなと思い書きました。
 E組に意外な人が彼女と仲良し?まぁ、友達だったら面白いなと思いました。

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