窮屈な二度目の人生過ごしてます   作:海野

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 夏祭りに行ってきたので、今回はこっちでも夏祭り会です。


第二十話 ビー玉

 夏休みは約三十日ほどあるが、一日ゲームばかりしていると時間が過ぎるのが早い。あっという間に最後の一日になってしまった。

 そういえば、今日に神社の方で祭りがあるんだっけ。せっかくだし、変装して行こうかな。

 

 

 夕方。

 髪型ばっちり、マスクもばっちり、服装も地味目の選んだから大丈夫なはず……。

 父さんは今日は企業のお偉いさんと高いレストランで食事するらしいから私がお祭りに行ったなんてバレない!

 お祭り会場に行くと多くの人で賑わっていた。

 

「ラムネを一つ」

「あいよ!」

 

 ラムネを飲めるのはお祭りくらいだ。

 おじちゃんにフタを開けてもらったラムネを受け取り、百円玉を渡した。

 炭酸が効いていて美味しい!そして、 ラムネを飲み終わった後にラムネのフタを開けて、ビー玉を取り出す。よく集めていたなぁー

 

「諸星さんじゃん。来てたんだね」

「うん。赤羽君も?」

「まぁね。誘われてさ」

 

 彼から話しかけられるとは思わなかった。

 赤羽君だけじゃなくて他のクラスメイト達も来ているそうだ。こんな話あったんだなぁ。まぁ、忘れるのも仕方がないか。もう十五年、記憶が薄れていてもおかしくはない。

 

「赤羽君、ゲーム機当てたんだ。でも、あそこの糸くじ、あたりなんて入っていないでしょ?」

「知ってたんだ」

「あの屋台は私が小学生の頃からあってさ、私も赤羽君と同じ事をしたんだ」

 

 あのおじちゃん、学習しないなぁーちなみに、その時の景品は今も家にある。一度壊れちゃったけど、直したんだよね。懐かしいなぁーパソコンとにらめっこして修理してたっけ。

 

「諸星さん、頭良かったんだ。もしかしてA組?」

「まぁね。でも、A組なんて関係ないよ。同じ人間である事に変わりないし。少しスタートダッシュが速かっただけだよ」

 

 もし、私に前世の記憶がなかったら、E組を悪くいっていたのかな……。

 もし、私に前世の記憶がなかったら、彼のようになっていたのかな……。

 

「諸星さん?どうしたの、ぼーっとして」

「ごめん、考え事してた」

 

 空を見上げると、ドーンと大きな音が鳴って、夜空に綺麗な花が咲いた。

 

「俺さ、前に諸星さんみたいな綺麗な髪をした女の子を見かけてさ」

「それってお世辞?」

「いいや、本当に綺麗だよ。同じ中学の制服着てて、ぶつかった時泣いてたんだよね」

 

 間違い無い。あの時にぶつかった人だ。

 雪村先生と最後の会話になった後、私、泣いてて……で誰かにぶつかったんだ。涙で前がぼやけてて誰か分からなかったけど、まさか赤羽君だったとは。

 

「諸星さんじゃないかなって思ってさ」

 

 うん、そうだね……。

 

「私は違うよ」

「そっか」

 

 私は諸星学じゃなくて、浅野学だから。

 いつか本当の事を話さなくてはいけない日が来るんだろうか。

 私はビー玉を通して夜空を覗いた。

 


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