窮屈な二度目の人生過ごしてます   作:海野

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第十五話 集会

 中学三年生にようやくなった。ここまで長かったような短かったような……。

 忘れてはいけない。ここがスタート地点だということを。完璧とはいかないが、演じきってみせよう。浅野学(浅野学秀)に。

 

「皆さん、進級おめでとうございます。進級し、気を抜かないように。そんな事をすれば皆さん、E組のようになってしまいますよ」

 

 新学期早々にE組いびりだ。校長の話に乗っかって生徒達は馬鹿にするようにして笑う。

 A組はE組と反対側にいる為、E組の様子は見れない。だが、見なくとも分かる。彼らは下を俯いている。だから、このE組の制度は今年で終わりにする。

 

 

「五英傑は全員A組だね」

 

 蓮が前髪をいじりながら言った。

 五英傑は、A組の中でも、特に成績の良い五人の生徒達の事を指す。五英傑の中でもそれぞれ得意科目があり、蓮は国語、瀬尾は英語、小山夏彦は理科、荒木鉄平は社会、そして私は数学だ。五英傑ができたのは昨年のことだ。一学期の期末で総合点が凄かったからだと。

 さてと、私は彼になりきらなければならない。最初の掛け声行きますか。

 

「みんな!A組は本校舎で頂点に立つ選ばれた者達が集まる場所だ。私達がこの学校を引っ張っていくんだ!だから、私に付いて来てくれないか?」

「もちろんだぜ!」

「浅野さんがそう言うなら!」

 

 一人が言いだすとそれに釣られてもう一人、もう一人と声をあげていく。つかみは完璧だ。

 父に教えてもらった“支配”という言葉。私は自分の都合の良いようにみんなをまとめ上げているだけだ。さっきの言葉も綺麗事にすぎない。この一年、悪役になろうじゃないか。

 

 

 

 あっという間に一カ月は過ぎ、月に一度の全校集会がやって来た。

 相変わらず、校長先生のE組いびりには呆れる。生徒達は口を大きく開けて笑っているが、私は人間関係から学んだ方が良いと思う。幼稚園児でも悪い事をしたら謝る。だが、こいつらときたら人を見下して笑っているだけだ。頭が良いからってそんなに偉いのか?これは今の私の言葉では無い。過去の私の言葉だ。

 過去の私は今ほど頭が良いとは言えなかったし、運動も得意ではなかった。

 頭の良い奴に限って馬鹿ばっかりやる。本校舎の奴らは全員そうだ。もちろん、教師も含めてだ。

 

「続いて生徒会からの発表です。生徒会は準備を始めて下さい」

 

 私の出番か。

 舞台裏に上がり、ホワイトボードを舞台に出したりと準備をした。私は生徒にプリントを配り終わるとまた舞台裏に戻った。

 司会進行役は荒木の役だ。だが、こいつも同様だ。

 

「すいません、E組の分まだなんですが」

 

 E組の学級委員長磯貝悠馬君が挙手をして言うが、荒木はそれを笑いに返して言う。それに乗った生徒達が笑いだす。

 E組のみんなが下を向いたその時、一瞬にして何かが通り過ぎたかのように生徒達にプリントが行き渡った。さっきまでいなかった大きな先生が現れ、その先生にちょっかいを出す女性の先生がE組の担任の先生に連れて行かれる。その様子を見たE組の生徒達には笑顔が浮かんだ。

 これが月を破壊した超生物……いや、“殺せんせー”か。

 

 

 集会が終わり、私は後片づけをしていた。

 

「E組の奴ら、調子乗ってねぇか?」

「確かにー」

 

 あちらこちらでE組の噂が聞こえる。

 お前達が言えた事か。次に後悔するのはお前達なんだから。

 

 


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