窮屈な二度目の人生過ごしてます   作:海野

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第十一話 兄

 気付けばもう一月だった。

 渚君と竹林君はE組行きの通知を受けてしまったらしい。三月になればE組の校舎行きだと言う。

 そうえば、前期生徒会長の笹本幸助が、赤羽に殴られて骨折になったらしい。これが赤羽がE組に行く事になった理由だ。

 どこかで見た事があると思えば、笹本先輩、こんな重要な役割があるモブだったとは……驚いたなぁ。

 中学生になってから日記をつけるようになった。今日の分が書き終わり、ベットに入り、目を閉じた。

 

 

 あれ?いつも鳴るはずの目覚まし時計が鳴らない。どういう事だろうと思い、起き上がろうとするが、起き上がれなかった。

 目をゆっくり開けると、家の天井とは違い、白色の天井だった。

 ピーと音が聞こえる。

 口元辺りに何かの感触がある。

 体が重い。頭すら動かせなかった。

 ガラッとドアが開く音がする。私の部屋はスライドでは無いはずだが……。

 

「う、嘘!な、ナースコール!」

 

 ナースコール?と言う事は病院か?でも何故病院に……。

 

 

 しばらくすると、白衣を着た男性と一人の女性がやって来た。

 

「まさか……意識が回復したようです」

「先生、本当ですか!?」

「はい。あの状態で意識が回復するなど奇跡に等しいですが……」

「ありがとうございます……」

 

 状態?回復?いったい何が……。

 それに、「ありがとうございます」と言った声はどこかで聞いた事がある。懐かしい……とても。

 またガラッとドアが開く音がした。

 

「海里が目を覚ましたのか!?」

「あなた!えぇ」

 

 か、いり?海里って、私の……私の前世の名前じゃないか。

 何で……じゃあここは元の世界なの?

 眠たくなってきた。睡魔には逆らえず、私は目を閉じた。

 

 

 視界がぼやけている。また病院の天井なのかと思えば、そこは私の部屋の天井だった。

 今は何時だと思い、飛び起きる。

 近くの時計を取り、見ると、時計の針は三時三十五分を指していた。窓を見るとまだ暗かった。日付も確認するが、日記をつけた次の日だ。四時間ぐらい経っていたみたいだ。

 よく分からなかったが、考えると夜が明けてしまいそうでベットに潜り込んで目を閉じた。

 

 

 今度は、どこかの草原に立っていた。

 辺りを見渡すと、小さい女の子の姿が見えた。間違い無い。この子は中島海里()だ。

 私は、ある男の子に抱きついた。この男の子は私の兄、中島海人。私は、海にぃと呼んでいた。

 

「海里は本当にお兄ちゃん大好きねぇ」

「そうだな!」

 

 ああ、思い出した。ここは家族でピクニックに行った場所だ。

 海にぃと裸足で走り廻ったんだ。楽しかったなぁ。

 

「海にぃ、大好き!」

「俺も、海里の事、大好きだよ!」

 

 少し年の離れた兄妹だったけど、私が泣いたらすぐに隣に来てくれた。

 そんな優しい兄は、学校でいじめられていた。

 正義感が強い兄は、将来、警察官になる!とずっと言っていた。その正義感からクラスでいじめられて一人になっている子に話しかけ、一緒に居るようになってからだ。いじめのターゲットを兄に変えたんだ。傷だらけで返って来た兄は、「ドジを踏んだ」と言って笑って誤魔化していた。何で気付かなかったんだろうって。

 仲の良い友人は別のクラスで、迷惑をかけたくないと言い、何も話さず、家族にも、私にも相談せず、ずっと溜めこんでいた兄は、私が中学生の時に飛び降りて死んだ。

 兄は、私と違い、勉強も運動もでき、部活では頼れる先輩と聞いていた。なのに、兄は、兄は!

 葬式が終わった後も、笑う兄の写真が入れられた遺影を抱えて泣いている母の顔が忘れられない。

 今、雪村先生の妹……あかりちゃんもお姉さんが亡くなったらこうなるんだろうか……。だとしたら尚更止めなけらばならない。

 私は新たな決意をして目が覚めた。

 窓から差し込む光は、あまり明るくなかった。これから起る事を指しているかのように……。

 




一週間ぐらい久しぶりなので何を書いているのか分からなくなってしまいました。

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