窮屈な二度目の人生過ごしてます   作:海野

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カエデちゃんに応援してもらったら五頁は書ける自信がある私。


第一話 赤鉛筆

 私の名前は、中島海里。生活にも、人間関係にも特に不自由は無いただの高校生だ。

 家族は、母と父と兄が一人と言った一般的な家庭で、近所には幼馴染の子も居る普通の女の子……()()()

 何故、過去形なのか。それは簡単な話だ。だって、さっき私は不幸な事故で死んだからだ。本当に不幸な事故だった。幼馴染といつも通り通学路を歩いていた。その日は大雨が降っていて、傘をさしていないとビチャビチャに濡れる最悪な天気だったのを覚えている。

 横断歩道を渡る時、走っていた車が大雨で濡れた地面で滑り、その車が私達めがけ来たのだ。一瞬の出来事だった。

 さて、その後、私はどうなったのか?それは想像もつかないだろう。だが、こんな言葉は聞いた事があるだろう。“輪廻転生”死んで、あの世に逝った魂が、この世に何度も生まれ変わる事だ。厨二くさいが、本当にあったのだ。それを私は体験した。だって、今、幼稚園で歌を歌っている最中だからだ。

 

「次は手のひらを太陽に、歌ってみようか!」

「はーい!」

 

 手のひらを太陽にか。この曲は有名だ。高校生の私でも知っている曲だ。おっと、今は幼稚園生だった。

 幼稚園生は無邪気で良い。この頃が一番楽だ。先生の言う事を聞いているだけでいいんだから。小学生、中学生になると、何もやっていないのに連帯責任とか言って怒られるのはめんどくさい。

 

「みんな、よくできました!」

 

 ピアノを弾いていた先生が拍手をする。それに釣られて子供達も拍手をする。子供と言うのは大人の真似をしたくなるのが普通だからな。

 歌の時間が終わったら帰る用意だ。正直言うと、私はこの時間がとても憂鬱だ。普通は家に帰れてラッキー!と思うが、私の家庭では例外だ。それ以前にあれは家庭と言えるのかさえも怪しい。

 

「学ちゃん、さようなら」

「先生、さようなら」

 

 学ちゃんと言うのは私の事で、今の名だ。そして、私の苗字は、浅野。

 うちの父は教育者で、昨年に学校を立ち上げた。そして、私は父が苦手だ。

 校門に行くと、お迎えの執事さんが待っていてくれている。いつものように、車に乗って家へ帰る。私の座っている席の隣には誰も居ない。

 家に帰ったらすぐに勉強だ。そうしないと怒られるというか、洗脳?というか何というか分からないが、正直勉強しなくても点は取れる。数年前まで現役高校生だったからな!なめんじゃねえぞ!と言う感じ。もちろん、用意された問題集はやる。それも、本を読みながらだ。

 

「やっぱり、この人の本は面白いなー」

 

 問題集は小学三年生のだからゲームをしながらでもできる。だが、この家にはゲーム機という物が存在しないのだ。あるのは本と勉強の問題集とかぐらい。どうなってんだこの家はと最初は思ったさ。だが、本だったら何冊でも買ってくれるからそれで本音は奥にしまってある。その所為で、私の部屋には本だらけだ。

 

「よーし、算数終わり!」

 

 というか、六歳の幼稚園児が小三の問題集をやる事態変わってるよ。

 勉強が終わったらする事は二つの選択肢に別れる。一つは本を読む。もう一つは絵を描く事。絵を描く道具は自分で買っている。お金は自己管理だからな。小六ぐらいになったら音楽プレーヤーを買ってもいいかと検討している。

 どちらにしようか悩んだが、今日は絵を描こう。

 

「今日は、誰を描こうかなー?」

 

 前は、磯貝君を描いた。彼はマジでイケメンだ。「イケメンだ!」と言う台詞は一度、みんなと言ってみたい台詞ランキング五位に入る。

 

「よし、カルマ君を描こう」

 

 カルマは、素行不良だけど頭は良い。よくあるキャラだけどそれが良い!私の好きなキャラランキング一、二位を行ったり来たりとしている。ぜひ会いたい!だが、それは叶わない事だ。だって、私は、浅野学だ。うちの家には双子もいなければ、弟や兄も居ない。つまり、私が“浅野学秀”の代わりだから。彼の代わりと言う事は、本校舎で頂点に立っていないといけないんだ。そうしないと彼らが成長しないから。私は、暗殺教室のファンとして、原作は守る。それは自分の役割を知った時に決めた事だ。

 

「おっと、もう七時だ。席に着いとかないと」

 

 私は、赤鉛筆をそっと置き、部屋を飛び出した。

 

 


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