ダンジョンにアーサー王がいるのは間違っているだろうか   作:ひゃっほー

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5話 歓迎会

 

ロキ・ファミリアのホーム『黄昏の館』では、新人歓迎会が盛大に行われていた。募集時期をとうの昔に過ぎていた行事だが、異例で1人、このロキ・ファミリアに加入したのだ。その期待の新人、アーサー・ペンドラゴンは現在、ロキ・ファミリアの幹部に囲まれて質問攻めとリヴェリアの説教を受けていた。リヴェリアの説教は早いとこ終わったのだが、そこからが問題だった。

 

「ねえ!! アーサーってフィンとアイズにかったんでしょ??」

 

「何の武器使うの?!」

 

「魔法は?」

 

「綺麗な髪だね!!」

 

 

 

興奮さながらに尋ねるのは双子のアマゾネスの妹であるティオナ・ヒリュテだ。若干顔が赤いのはお酒の力もあるのだろうが、アマゾネスという種族特有の強い個体に惹かれるというものだ。そもそもLevel5の冒険者で大切断【アマゾン】の異名を持つティオナより強い冒険者などそうゴロゴロいるわけではない。

 

 

「まあ、そういう事になるのかな? 模擬戦だけどね」

 

アーサーは若干苦笑いしつつ目の前のお酒を上品に煽る。苦笑いの理由はティオナの向かいに座るもう一人のアマゾネスからの殺気だった。

 

「ティオナ……そいつが団長より強いわけないでしょ?」

 

ドンっ!!っとジョッキをテーブルに叩きつけてアーサーを睨む。こちらはティオナの双子の姉、ティオネ・ヒリュテだ。こちらもLevel5の冒険者で怒蛇【ヨルムガンド】の二つ名を持つ。さらに団長のフィンにゾッコンなのでフィン関連の話でよくキレらしい。

 

 

「いや、彼は僕より強いよ」

 

フィンが怒るティオネに指摘する。アーサーの実力を直に感じたからこそフィンはティオネに本当の事を教える。

 

「……団長が言うなら信じますけど」

 

シュンとなるティオネをよそにアーサーは現在の座っている位置を確認する。まず、テーブルは長方形の形をしていてそれが幾つも繋がっている晩餐会でよく見る形態だ。アーサーの横にはリヴェリアとティオナが陣取りその正面にティオネとフィン、アイズがいる。ロキはアイズの隣に座りアイズに変なことをしようとしては撃退されている。

 

「アーサーと言ったかの、ワシはガレス・ランドロック。これからよろしゅうな」

 

ガッハハハっと笑ながら赤い顔でドワーフがアーサーに話しかけた。

 

 

「ガレスさん……それはもう3回聞きましたよ。飲み過ぎは程々にしてくださいね」

 

「おぉ〜〜それはすまんかったの」

 

ガレスはそのまま騒いでいる方の席にフラフラと歩いて行った。

 

 

ガレス・ランドロックはロキ・ファミリアでも古参のメンバーでドワーフという種族のLevel6の冒険者だ。二つなは重傑【エルガルム】。圧倒的なステータスを駆使して前衛の要を勤めている。

 

 

「ところでリヴェリア、先ほどからこちらを睨みつけている彼は誰なのかな?」

 

 

「ん? ああ……」

 

 

アーサーとリヴェリアの視線の先には狼人の青年が鋭い眼光でアーサーを睨みつけている姿があった。リヴェリアは軽くため息を吐くと、代わりに狼人の事を紹介する。

 

 

「彼はベート・ローガ。Level5でウチの幹部なのだが、どうも自分より劣る物を馬鹿にする癖があってな。Level1のアーサーが気に入らないのだろう。しかし悪い奴ではないのだ。許してあげて欲しい」

 

 

「なるほど、そういう事だったのか。それなら問題ないね。僕の事もこれから知っていってもらえればいい訳だ。えーっとベートくん? よろしく頼むよ」

 

 

いきなりにこやかなアーサーに挨拶をくらって若干驚いた様子のベートだったが、吐き捨てるようにケッ!!っと言って違うテーブルの方に行ってしまった。アーサーとリヴェリアは顔を合わせて困ったように笑うと食事に戻る事にした。

 

 

「アイズ、どこか元気がないようだけど、体調が優れないのかい?」

 

ふとアーサーはさっきから静かにしているアイズに話かけた。普段から静かなアイズだが、どこか落ち込んだように俯いている。アーサーに呼ばれたアイズは顔を上げた。

 

 

プクっ

 

 

顔をあげたアイズはほんの少し頬を膨らませて不機嫌な様子だった。そんなアイズの表情からアーサーは何かしてしまったのかと焦ったがどうも身に覚えがない。どうしようかと迷走してからとりあえず謝ろうと口を開きかけたアーサーだったがアマゾネスの少女に遮られる。

 

 

「アーサーはさ、英雄のお話とか好き??」

 

 

その褐色の肌をアーサーにすり合わせるように腕に抱きつくティオナ。先ほどからアーサーに対する身体的接触がティオナは多いのだが、アーサーは気にした様子もなく接している。するとアイズの頬がまた若干膨らんだ。アーサーからすれば年も大分離れているし妹のような感覚でティオナに接している。

 

 

「ん〜〜そうだね、読書はするけど英雄譚とかはあまり読んだ事がないかな」

 

 

「そっか……なら今度私の本貸してあげるよ!!」

 

 

「本当かい? 楽しみにしているよ」

 

 

仲睦まじくアーサーはティオナと会話しているとリヴェリアの顔が青くなる。リヴェリアの視線にはジョッキをグッと煽るアイズの姿が映し出されていた。アーサーは何が問題なのか分からずその場に座っているとロキ・ファミリアの全員が一瞬で席を立ち上がった。

 

 

「まずい……!! アイズが酒を飲んだ。とりあえず幹部以外は全員避難しろ」

 

 

「どうしてや!? アイズたんにお酒は禁止やのに!!」

 

 

 

リヴェリアの的確な指示のもとファミリアの緊急避難が終わる。食堂にはフィン、リヴェリア、ガレス、ティオネ、ティオナ、ベート、アーサー、ロキがジョッキを煽るアイズを取り囲むように布陣している。

 

 

「ロキ、それに皆んなもそんなに慌ててどうしたんだい?」

 

 

状況に全くついてく事が出来ないアーサーは何が何だかわからずロキや周りの者に尋ねる。

 

 

「アーサー、よく覚えとき。アイズたんには絶対に酒を飲ましたらあかん……アイズたんはな……酒乱なんや!!」

 

 

フィンは前回のアイズが酒を飲んだ時の事をアーサーに話す。

 

 

「前の遠征が終わった打ち上げでアイズが酒を飲んだんだけど、酔っ払ってロキとベートが殺されかけたんだ。そのせいで店が一軒潰れているしね。そこからアイズにはお酒を飲ませちゃいけない事になっていたんだけど……」

 

 

「どうやら今日は飲んでしまったらしい」

 

 

「そんなに酷かったのかい?」

 

 

「ロキに跨ってひたすら顔を何度も何度も殴りつけ、ベートには魔法を使って一方的にボコボコにしていた。さらに言えば私にも……」

 

 

 

 

 

リヴェリアが焦ったように呟いた。アーサーはリヴェリアの反応を見て何かされたんだなと予想をつけた。あの冷静沈着なリヴェリアがここまで動揺するはずがない。すると、当の本人である【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインがゆらりと立ち上がった。

 

 

「……アーサーは私の、アーサーは私の、アーサーは……

 

 

何かをブツブツ言いながら腰から愛剣デスペレートを引き抜くアイズ。

 

 

 

こうして長い長いアーサー歓迎会の第二幕が上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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