可能性がある限り、彼らの攻略は終わらない   作:ぺんたこー

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俺らの出会いはただの偶然

俺は今、電子の牢獄に閉じ込められている。全てが始まったあの日から、俺は怖くて宿屋から出られなかった。数日が経ったこの日、HP(ヒットポイント)が減ることを恐れ回復ポーションを買いに外へ出た時に俺の既成概念は瞬く間に上書きされた。

 

「おい!お前暇か?」

「……え?」

 唐突に投げかけられた言葉に体が止まってしまう。

「お前今なにしてたんだ?」

 え?この人はなにを言ってるんだ?この人とは多分初対面だろう。そんな奴に向かってなにをしてたかなんて…

 答えない理由がないので一応答えてみる

「あ…宿屋にいました……ずっと…」

「やっぱりな…それで、なぜ外へ出ようと思ったんだ?」

「HPが減るのが怖くて回復ポーションを買いに…」

 これは新手のPK(プレイヤーキル)なのではとも思ったが、相手は武器を装備していないし、第1ここは圏内だ。防具は着ているがセンスは俺が見ても良いとは言えない。肩から足下まで伸びている紫色のマントは所々破れているが最初からこういうものなのだろう。マントの内側に装備しているのは青いプレートが特徴的なメイル。頭には二本の角の生えた兜を被っている。靴に関してはサンダルのようなものを履いている。例えるならば、まぬけな魔王だ。

「圏外に出なけりゃHPなんて減らないし、回復ポーションが必要な時はもうHPが減っている。今、買うのは金の無駄だと思うぞ」

 確かにそうだ。圏内は安全地帯、攻撃されてもアンチクリミナルコードが働いて1ドットもHPがへることはない。しかし、回復ポーションの一つや二つ持っていてもいいのでは?

「いいじゃないですか!どうせこのまま死ぬんだから!」

「圏内では死ねないぞ〜」

「この世界じゃなくて向こうの世界…現実で、病院のベッドの上で栄養不足で死ぬんですよ!」

 俺の反論に返す言葉がないのかファッションセンスはゼロの男は顎に手を当てて何か考えたのち俺に向かって言い放った。

「それもそうだな!じゃぁ、こんな薄汚い宿屋でこもってずにアイテムでも買いに行ったらどうだ?」

「いや…あの……だから今、回復ポーションを買いに行こうとしてたところなんですけど?」

 この男は一体なんなんだ?いきなり出てきて金が無駄だの、ここでは死ねないだの、挙げ句の果てにアイテム買いに行けだのなにが言いたいのかさっぱりわからない。

「……そっか、じゃぁ今暇か?」

 何度言ったらわかるんだ?俺は今回復ポーションを買うためにアイテム屋へ行こうと言っているんだ。全く会話が成立しない。

「だからポーションを……」

「そうじゃなくて!」

 ため息まじりに出した言葉は男の声に遮られてしまった。

「お前は回復ポーションを買う以外にすることはないのか?」

「………ありません」

「じゃぁ俺とコンビ組まないか?」

「…え?」

 本当にこの男はなにを言っているんだ。初対面のプレイヤーに向かってコンビを組もうなどと…

「い、嫌です」

「え!?」

 え!?じゃねーよ!こっちが、え?だよ!

「そもそもあなた誰なんですか?」

「え!?名前言ってなかったっけ?」

 男は左手で頭の後ろを掻きながら右手でメニューウィンドを開き可視化モードにして俺に向ける。名前は『zerdoa』……ゼルドアかな?

「ゼルドアさん?であってますか?」

「あぁ、さんなんてつけるなよ。ゼルドアでいいぞ」

「それで、ゼルドアはなんで初対面の俺なんかとコンビを組もうと思ったんですか?」

「え!?初対面?俺のこと覚えてないの?」

 何だこの人は…新手の詐欺か?

「いやいやまさか俺が誰だかわかってないの?たこ?」

 たこ…たこ!?こいつ今、たこって言ったのか?

「まさか……奈々?」

「いぇす、あいあーむ」

 そう言ってかなりダサい男いや、重装備の女、奈々はにぃっと口角をあげて笑った。




こんにちはぺんたこーです。
この二人は今後、誰もがこりゃ無理だろwと思うことに真剣に取り組みます。
そんな二人をどうか暖かい目で見守ってください。
それではまた、次のあとがきで!

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