さて、場面はサーバルちゃんの棲み処へと移ります。
私達は現在サーバルの棲み処へと向けて移動中である。あの戦闘からかなりの時間が経っていたらしく辺りは一面橙色に染まっている。うむ、日が沈む光景はやはりこの世界でも美しいことは変わりない。もうできれば昼間に移動したくは無いものだな。
「それにしてもすっごいねー! あんな大きなセルリアンを一人で追っぱらっちゃうなんて。わたしじゃ絶対無理だなあ」
「ふ、あれよりももっと大きい奴と一戦交えたことがあるぞ?」
「ええ!? どうやって戦うんですかあんな大きいのよりさらに大きいのなんて」
「私にかかれば大きさなど関係ない。空から翻弄してやるまでよ」
「ええー!? ふうちゃん、空飛べるの!?」
「まあな」
まあフレンズに成る前の話だがな。早く生えてこないかなー私の翼。生えてくるかどうかもわからんが。
「飛んで見てよー! 見たいなーふうちゃんが飛ぶところ!」
「私も興味ありますねー。その姿でどうやって飛ぶのかわくてかです」
「まさかと思うが……今ここでか?」
「「うん!」」
二人から熱い期待の眼差しを向けられる。ぐ、やめろそんな目で私を見つめるな。私だって今ここで期待に応えて思い切り飛び立ちたい気持ちなのだ。それが今できない分罪悪感が……!
(まいった……今は飛ぶことができないことを知られたらほら吹き呼ばわりされかねん……)
とにかく話題をそらさねば……!
「と、とりあえずさっさと住処へ案内してくれ」
「あー、ふうちゃん実はただの見栄っ張りさんだったり?」
「見え……? よくわからんが違う、私は見栄っ張りなどではない。フレンズに成ってからはどういうわけか飛べぬのだ。生前は間違いなく飛べたのだ!」
「必死になるところがますます怪しいですねえー」
「ぐぬぬ……!」
今度は疑いの目を向けられる。貴様ら今に見ていろ、絶対に前世同様に飛んで見せるからな……そのときが来たら最高の飛行パフォーマンスを貴様らのその体にたっぷり体感させてやる。くくく……。
そんな話をしているうちにどうやら目的の場所へたどり着いたようだ。目の前に一本の木が生えている。それを囲むように背の高い雑草が生い茂っている。
「ここがわたしの棲み処だよ!」
「まあわたしは知ってますけどねー」
「邪魔する」
それぞれが地面へ座り込む。おお、割と座り心地がいい。草を下に敷いているのか。なかなか利口な子だ。
「ちょっとまってねー、……えーと確かこの辺に」
もそもそとサーバルが草むらを掻き分けて何かを探している。むむっ!? それは!!
「あはは……そんな目を輝かせなくてもちゃんと分けてあげるよぉー」
「ジャパリまんが絡むと途端にかわいくなるんですねー」
「……はっ!? いや違うぞ、わたしは決してそのジャパリまんを求めていたわけでは」
「よだれでてるよー?」
「じゅるり!?」
「くく……恍惚としてますねー顔が……! ドはまりですね……!」
こちらを見てにやにやしている。くそっ! ジャパリまんめ、この私を翻弄するとは。あーでもだめだおなかがすくとほんのうにはあらがえない……。
サーバルから一つ分けてもらう。至福のときが来た。ああ、天よありがとう私にこんな素敵なものを授けてくれて。では頂こうか、思い切りかぶりつく。
「む!? 前にシマウマよりもらった物の味と違う?」
「ジャパリまんっていろんな味があるんだよー! わたしのはえーとなんだっけ、ヨモギあんとか何とか言う味だったかな?」
「ほう! よくみると色も違うのだな。ジャパリまんは奥が深いな! むぐむぐ……これもなかなか美味だな」
暫く咀嚼し至福を楽しむ。ちなみにシマウマからもらったものはあんこというものが入っていた。これらが自然に自生しているであれば、是非場所を教えてもらいたい! そうすれば私は木に実るのであれば木ごと貰っていくぞ!
「しかし不思議なものだな。こんなものが地に生えていたり木に実っていたりするのか」
「ううん、ちがうよー」
「違う? どういうことだ。自生しているのではないのか?」
「ボスが運んでくるんですよー」
ぼす? なんだそれは。どんな生き物なのか想像もつかん。何故かは分からないが蛇を思い浮かべてしまった。さすがに蛇がこんなものを持ってくるはずも無いな。
私はボスについて尋ねる。どんな手がかりでもいい、ジャパリまんが手に入るのなら……!
「ボスですか? んー神出鬼没なのであまり出会うことは無いですねー」
「いつもジャパリまんを配りに来てくれるんだよ! そのおかげでここにいるフレンズはみーんなジャパリまんを食べれるの!」
「ほほう! 配りに来るのだな、そのボスとやらが」
くくく、ならばあのゲートの近くで待ち伏せして大量に頂くとするか。いずれはあそこを通るだろうしな。それでしばらく食糧には困らなくなるだろう。
「あ! ふうちゃん良からぬこと考えてるでしょ? だめだよ独り占めしちゃ!」
「ダイジョウブダ、ヒトリジメナドシナイゾー」
「棒読みですごく分かりやすいですよー、その上動揺を隠しきれてませんし」
「ぐ……!」
「それにボスがいるのはここだけじゃないからねー? ジャパリパーク中にいるよー」
ということはちほー中を巡ればいずれは遭遇する可能性もあるということか。
「でもボスはほとんどわたし達の前に姿を見せてくれないんだよねー」
「あまり姿を見せないのか。となると探すのが少し面倒になるな」
「待ち伏せしてもたぶん時間の無駄だと思いますよー?」
「……お前は読心術でも持ってるのか?」
だらだらと話をしていると、サーバルがセルリアンに話題を切り替える。
「そういえばふうちゃん、あのセルリアンについていっぱいしってるんだよね?」
「まあ奴とは互角の縄張り争いをしたことがあるしな」
「あれと互角にやり合えるって……元の姿って一体どんなのだったんですか……」
シマウマが引き気味に言う。やめろそういう態度は地味に傷つく。私だって好きであんな姿になったのではない。天の気まぐれだ。
「きっとこの木よりもおっきいんだよ! うわぁーみてみたいなあー」
「私は見世物ではない。それで飛び去った轟竜についてだ」
一通り轟竜の特性について話す。まともに近づいて一対一の接近戦は危険なこと。咆哮は耳をふさぐこと。近くにいたら速やかに離れること。その予備動作を見逃さないこと。まあこれくらい分かれば各自行動に移すことができるだろう。
「まあ奴と戦闘する注意点はこれくらいか」
「吼える前には両前足を地に着けて大きく息を吸い込む……よし覚えた!」
「そういえばまともに咆哮を受けてましたけどけろっとしてましたよね?」
「む? ああ私は咆哮に対する耐性があるのでな。奴の咆哮など耳障りな虫の羽音と同じようなものだ」
「私もふうちゃんの合図がなかったらまともに受けたかも……」
そうかサーバルは隠れて様子を見ていたといってたな。私の合図で何気にサーバルも助けていたとは。結構声を張っていたからなあの時は。
次に私は奴の行方について推測する。やはり雪山か……しかしこのパークに雪山が存在するのかどうかはまだ分からない。とすれば砂漠か。こんな乾燥したエリアがあるのだ、恐らくは砂漠のエリアもあるとみていいだろう。深手を与えているし暫くは回復に時間を要する筈だ。
「このちほーの外は知っているか?」
「んーしんりんちほーまでは行ったことあるけどそれ以外は分からないや」
「私もサーバルさんと同じですねー」
まあほかのちほーに行ってすることなどなさそうだからな。私でも棲み処からはあまり出たくは無い。
「奴が好むのは乾燥した砂漠と寒冷な雪山だ。それに今は深手を負っている。暫く行動は控えるだろう」
「だったら速やかに出発しちゃおうー!」
まあ予想はしていたが、やはりサーバルはついて来る気満々のようだ。まあ道のりが分からない以上一緒に連れまわすのもいいか。カバの言っていたそのエリアごとのフレンズに出会う可能性ですら百ではないのだ。もしそれで出会えず道に迷おうものなら飢え死にしかねない。
「わたしはここに残りますねー」
「え! シマウマ一緒に来ないの?」
「一緒にちほーを旅するよりもここでのほほんと過ごしたほうが性に合ってるみたいなのでー」
なんともシマウマらしい返答だ、私としてもついて来られるより残ってもらったほうが助かる。いざ奴がこのちほーに現れたとしても対処法を知っているしほかのフレンズ共をうまく逃げさせられることもできるだろうからな。
「わかった、もし奴が此処へ現れたら戦わず逃げることだ」
「了解ですよー、そちらも気をつけてくださいねー」
それから私達は真夜中になるまで私達はお互いを話し、眠りについた。ついに明日はこのちほーを発ち、じゃんぐるちほーへと足を踏み入れる。そこで何が待っているのか、わたし達は知る由も無い。
サーバルちゃんレギュラー化決定!やっぱり女神にはいてほしいですねーw
シマウマちゃんは此処でお別れになってしまいます。しかしまだ後の方で出番は考えてはいるのでそのときの活躍をお楽しみに!いつになるかはまだわからん!