古龍のフレンズ   作:まろにい

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さてシマウマは一体どうなったか!続きです!そしてあの子がついに登場!



section Ⅳ: 遭遇 其ノ二

 轟音。シマウマに飛び掛った轟竜はその場から動かない。捕食中か……もはや助かる見込みは――。

 

「……今を悔やんでも仕方がない。奴にすべてをぶつけてやるとしようか……!!」

 

 不思議な気持ちだ。私とシマウマには何のつながりも無いはずだが、ものすごく憤りを感じている。何故だ……。

 再度私は武器を構え……!! 何だ、あの影は!?

 

「まさかっ……!!」

 

 轟竜へと跳躍し一気に距離を詰める。私の予感が当たっていれば……!!

 距離がどんどん縮まっていく。やがてすとんと正面へ着地した。――ほほう、やはり予感は当たっていたか!

 

「何者かは知らぬが……シマウマを助けた事、とても助かったぞ!! 名も無きフレンズよ!!」

 

 私は影に向かって助けたお礼を叫んだ。地へと降り立った影は答える。

 

「フレンズがピンチになってたら助けてあげるのは当たり前だよっ!」

 

 大きな耳、そして水玉模様の毛皮?を身にまとったフレンズは誇らしそうに胸を張っている。

 

「うえぇぇん……めちゃくちゃ怖かったですよおおお……」

 

 シマウマは水玉のフレンズにしがみついてべそをかいている。まああんな巨体にぎろりと睨まれ飛び掛られたらそれは怖いだろうな。私ですら初めて遭遇した時は少し恐怖を覚えたくらいだ。

 

「まったく、そのフレンズに助けられていなければ貴様は今頃奴の腹の中だったぞ」

「まあまあ、助かったからいいじゃない! あっ、わたしは……」

「自己紹介は後だ。来るぞ、奴が……!!」

 

 私達をぎろりと睨み付けてくる。私はシマウマにいしの事を聞く。

 

「それが、どこにもないんです。いしが」

「何? いしがないだと?」

 

 ふーむ、ならばまずは奴を身動きできなくしてからじっくり探すとしようか。恐らくは――

 

「ふえぇ……おっきいセルリアンだなあ……」

「あんなのどうやって倒すんですかあ……ひっぐ」

「聞け、二人とも。まともにやり合っても負かされるのが落ちだ、まずは奴の体力を奪う」

 

 近づいて無茶な戦闘を行うよりは効果的だろう。私もできれば奴とはまともな近接戦は避けたい所だ。奴の執念深さを利用してやるとするか。

 

「奴は目に付いたものは何処までも追いかけてくる。それを逆に利用する」

「なるほど! へとへとになるまでいっぱい追いかけっこするんだね!」

「おいかけっこ?? ……ま、まあそんなところだ。その追いかけっこをして体力が尽きたところを三人で一気にたたく!!」

「誰がその追いかけっこをするんですか? 私はそんなに足は速くないですよ」

 

 まともに一緒に走ってやる事は無いと思うがな。ただ奴の攻撃をかわしつつひたすら暴れさせればいいだけの話だからな。

 

「ふふん、足には自信あるよー!」

「確かにシマウマ助けたその瞬発力は見事なものだったな、では私と共に奴を翻弄するか?」

「一緒に追いかけっこだね! まかせてよ!」

 

 奴を目にして自ら囮役を買って出るとはなかなかの度胸だな。ただそれが強がりでなければいいのだが。まあその時は私がうまくカバーしてやればいいだけの話か。

 

「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「くるぞ! 散れっ!」

「私は物陰に隠れてまーす!」

 

 大きく咆哮し轟竜がこちらに突進してくる! シマウマ以外は二手に分かれる。だが奴の狙いは決まっていたようだな。

 

「ガアアアァアアアア!」

 

 猛スピードで私を目掛けて突っ込んでくる。だが愚直だな。上空へ飛びかわす。

 

「おおおおー! たっかーい! あなたもジャンプ力がすごいフレンズなんだね!」

 

 奴の苦手な空中では手も足も出せまい。そのまま反対側に着地する。そして水玉に注意を促す。

 

「油断するな、またくるぞ!」

 

 それから何回も攻撃をかわし続け思う存分奴を暴れさせてやったが、まるで奴が疲労を見せ始める兆候がない。

 

「何かおかしい……奴は疲れを知らない生き物なのか……?」

「はあ……ぜえ……いつまでやればいいのこれぇ……わたしちょっと疲れてきちゃったよぉ……」

「物陰に隠れて休んでろ。そのまま戦闘に参加すれば足をすくわれかねん」

「はーい……」

 

 水玉フレンズが隠れるのをみて再び私は奴を見据える。何故だ……何故奴は疲労を見せようとしない。何かあるはずだ、何かが。

 

「……疲労を知らんのならば仕方あるまい――近づくのはごめんなのだがそうも言ってられんようだな」

 

 私は武器を構え思考する。いしが外に無いとすれば体の中か。奴の弱い所をついてみるか。……確かその箇所は――

 

(頭部か、もしくは尾か。やってみるしかあるまい……!)

 

「さあ来るがいい、轟竜!!」

 

 跳躍し武器を頭部目掛けて振り下ろす。先ほどは浅く入ったが今回はそうは行かぬ。

 

「これで仕舞いにしてやる!」

 

 ずぶりと確かな手ごたえを感じる。これで少しは動きも緩慢になるはず。

 

「ギャアアアアアオオ!?」

 

 武器を引き抜き離れる。奴の顔を頭頂部から串刺しにしてやったがいしはどうやら其処にはなかったようだ。

 

「いしはないか――ならば尾か!」

 

 再び武器を構える。と、轟竜はじりじりと後ずさり、こちらを睨み付ける。そしてその場から逃げるように飛び去っていってしまった。

 

「逃げたか。……さすがに私も体力の消耗が激しいな」

「逃げちゃいましたね……」

 

 物陰に隠れていた二人がぴょこんと顔を出す。二人とも安堵の表情を浮かべている。

 

「しかし頭部を貫かれてもまだ飛べるほどの力があるとはな。セルリアン、一体何者なのだろうか」

「ふうー、いっぱい追いかけっこしたらおなかすいてきちゃった」

「わたしもおなかすいてきちゃいました……」

「あれだけ動き回ったのだ、腹もすくだろう」

 

 かく言う私も空腹である。ああ、ジャパリまんが恋しくなってきた。何処にあるのかジャパリまん。

 

「あ、何か物欲しそうな顔してるね?」

「む!? そ、そんな事はないぞ? 腹などすいて――」

 

 ぐううううううううう……。 盛大に私のおなかが鳴った。何とタイミングを読めない私のおなかよ……。

 

「あはは! やっぱり! あなたのおなかもそう言ってるみたいだね!」

「……忘れろ、忘れろぉー!」

「わああ!? そんな事で武器を振りまわさないでください!?」

 

 シマウマが必死に暴れる私から武器を取り上げようとする。それを見て楽しそうに笑う水玉のフレンズ。こっちとしては重大なのだ……!!

 あれから暫く格闘して何とか我を取り戻すことができた。一生ものの黒歴史になりそうだ私の。あんな盛大な音を聞かれてしまったらどうすればいいのだこれから。

 

「あ、自己紹介がまだだったね! わたしはサーバルキャットのサーバル! よろしくねふたりとも!」

「わたしはまあよろしくしてますけどねー」

「……よろしく」

「ほらほら! そんなにへこんでないであなたもお名前教えてよー!」

 

 どんよりした気持ちで軽く自己紹介を済ます。

 

「風翔龍ちゃんかー。だったら『ふうちゃん』だねー!」

「……ふうちゃん?」

「うん、お名前長いからふうちゃん!」

「……んぷっ! …………ふうちゃん……!」

 

 ふうちゃん……まあ好きに呼ばせてやるか。ただ隣で吹き出してるシマウマは許してやらんが。無言で拳骨を落としてやる。

 

「いたいっ!?」

「ところで、サーバル、貴様は何故私達に手助けを? 貴様と私は知らぬ身のはずだが」

「あの時も言ったけど、困ってる子はやっぱり放っては置けないからね。物陰に隠れて様子を見てたの。でもちょっと出て行くタイミングが遅かったかも……もっと早く出てきていればよかったのかなあ。ごめんね、ふうちゃん」

「いや、見事なタイミングだったと思うぞ私は。素晴らしい働きだった」

「私からも感謝しますね。ありがとうございます、サーバルさん。サーバルさんがあの場で飛び出てこなかったらと思うとわたし――」

「いいよ! 気にしないで! 当たり前のことをしただけだもん!」

 

 何と利口な子だろうか。まるでさながら女神のような子だ。しかしシマウマの言ったありがとうとはどんなものだ? 言われたサーバルは嬉しそうな顔をしているな。人を喜ばせるために使うものなのか? 後で聞いてみるとしようか。

 

「おなか減ってるんだったら私のところに行こう! ジャパリまん分けてあげるね!」

「有難い! 何から何まで本当に世話になってすまないな」

「いいって! さ、いこいこー!」

「わ! そんなに押さなくても大丈夫ですからぁ!」

 

 こうして私達二人はサーバルの住処へと行く事となった。

 




はい!満を持してのサーバルちゃん登場回でした!今後の活躍に期待ですね!ちょと気合を入れて書いたので長くなってしまった……。
次回はサーバルちゃんの住処での話になります!


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