古龍のフレンズ   作:まろにい

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舞台はしんりんちほーへと移ります。その道中で……?

何とこんな駄作を評価してくださったフレンズの方々が!!
ありがとうございます!!

文章を大幅に変更しました!


Chapter Ⅲ:しんりんちほー Ⅰ
section Ⅰ: 湖の依頼人と木こり名人


 

 私達は現在しんりんちほーへと向かっている。途中二つちほーを跨ぐと言っていたな。まあ飛んで移動しているしまるで関係はなさそうだが。

 サーバルも最初はおっかなびっくりな様子だったが、現在の状態はいたってご機嫌だ――適応の早いやつだな本当に。

 

「うおおー! すごーい! 博士たちにも連れてってもらったことあるけどこっちの方がなんかいいなー!」

「暢気なものだなサーバル! こっちはそろそろ手が限界に近いぞ――!」

「なら、どこかで休憩しましょうか――!」

 

 お、あそこはなかなかよさそうな場所だな、大きな水場か。のども乾いてきたところだったし、丁度いい。あそこにするとしよう。

 私達は徐々に高さを下げていく。やがて地面にふわりと降り立った。く――なかなか体にこたえる。野生解放のし過ぎは禁物だな。翌日が私の体がどうなるかが怖い。

 

「ここは湖畔かしら? なかなかきれいな場所ね、一曲歌いたくなってしまいそう」

「まあ練習には向いていそうな所ではあるな、その影響としてここに住んでるフレンズたちは地獄絵図になりそうだが」

「う……それは困るわね。歌ってる間は退避でもしてもらおうかしら」

 

 トキよ、強いなお前は。それだけ歌に執着しているのだな。私も貴様の歌声は何とかしてやりたい。でなければ今のままだと闊歩しながら地獄を作る兵器のような存在になってしまう。確か歌い方を変えればあの轟音はでなくなるのだったか。いったいどんな器官を持っているのだトキは。

 

「練習してみるか、トキよ。貴様さえよければ私も力になろう」

「いいの? ここが地獄絵図になるかもしれないのに」

「もちろんここのフレンズたちには言って聞かせるつもりだが?」

 

 といっても周りを見ても何もいない。ここはフレンズも寄り付かない場所なのだろうか。そうだとすればなんともったいないことか。私がここを縄張りとしてしまいたいくらいだ。

 

「誰かいないかー!!」

 

 私は大声で叫んだ。隣で同じようにサーバルも叫んでいる。

 

「おーい! いたら返事してー!!」

 

 返事は帰ってこない。だが水の中からは気配がする。何かがこの水中に住んでいるようだ。声に気付いたのか、近づいてくる。

 

「誰っスかー? これから気持ちよくお昼寝しようとしてたんスけど」

 

 ざばりと水からフレンズが上がってきた。体には茶色い毛皮、両腕には黒い毛皮をまとっている。こやつも独特な毛皮だな。

 

「それは悪いことしちゃったね……ごめんね?」

「私からも謝ろう、すまなかった」

「ああーいいっスいいッス、寝てたところを起こされたわけでもないッスから。それにここは退屈ッスからねえ……」

 

 そのフレンズははっとしたような顔をして名前を名乗った。

 

「あ、ごめんなさいッス、名前言って無かったッスね……、おれっちはアメリカビーバーっス」

 

 こちらも同じようにに名をそれぞれ名乗る。

 

「へえ風翔龍さんっスか、変わった名前っスねえ」

「ふうちゃんはすごいんだよー! さっきも橋を作っちゃったの! セルリアンも倒せるくらい強いんだよー!」

「おおおー! 橋を作れるってホントっスか!? ちょっと興味湧いたっス! それで、その橋はどこで作ったっスか?」

 

 私は食い気味のビーバーに答える。

 

「じゃ、じゃんぐるちほーだが」

「じゃんぐるちほーっスか! あそこは木が豊富にあるッスからねえ」

「ビーバーも木を使って何か作れるのか?」

「橋ほど大きなものじゃ無いっスけどね。自分の家とか作れるっスよ」

 

 なんと――自分の住処を作ることができるのか、何とも羨ましい特技だな。橋造りと比べれば断然自分の住処を作れる方が素晴らしい。私の作った橋など足元にも及ばぬだろうな。

 

「そんな目で見ないでほしいっス……。そんな立派なのはさすがにつくれないッスよ……」

「いや、作れるだけでも十分私は素晴らしいと思うのだがな。ぜひ教えてもらいたいものだ」

「いやいや!? とんでもないっスよ!? おれっちのほうが風翔龍さんから教わりたいくらいッスよ」

「私はただ渡れるようなものを作ったに過ぎない。橋と呼べるのかどうかも微妙なものだぞ?」

「それは見てみないとわからないッス! ぜひ見に行きたいっス!」

「はいはいそこまでねー、終わりが見えそうになかったから」

 

 トキが割って入ってくる。二人してきょとんとしてしまう。――なんだ、無駄に話がそれてしまっていたようだな。話を戻すとしよう。

 私はビーバーにトキの練習の件を伝える。するとビーバーは

 

「お邪魔にならないならいいっスよ、トキさんの歌声って聴いたこともないッスからね。ここにはおれっち一人で暮らしてるようなモノっスから」

「まあ、覚悟だけはした方がいいと思うよ……」

「え、歌に覚悟が必要なんスか?」

 

 そして地獄のリサイタルが幕を開けた。トキは上機嫌で歌っているがこっちはそれどころではない、私を除いてだが。

 ビーバーに至っては最初は我慢して聞いていたようだが耐えられなくなって水中へ潜ってしまった。まあ初めて聞いたのならそうなってしまうだろうな。本能が危険と判断してしまうくらいだからな。

 

 だがそれも徐々に薄れてきたようだ。破壊力も以前よりはだいぶなくなってきた。意外と教えるのってうまかったのだな私って。だがせっかくの轟音兵器がなくなってしまったな……、いやいいことなのだが。

 

「おおー! 耳をふさがなくても聞ける程度になったよ! まだびりびりするけど」

「おれっちもっス! いやー、トキさんの歌声って練習すれば変わるもんなんスねえ」

「むふふ、ありがとう。この調子でどんどんファンを増やしてこうかしら♪」

 

 ずいぶん歌が上達してご満悦な様子だ。私よりうまくなるのではないか? もっと練習すれば。

 

「あのー、おれっちからも頼みがあるんスけどいいっスか?」

「む? 頼み事か? まあ歌の練習に付き合ってくれたからな、聞かないわけにはいくまい」

「いいよー!」

「空を飛べる皆さんにしかお願いできないことッス。辺りににいい木がないか見てきてほしいっス。最近近くでセルリアンがよく目撃されてるらしくてうかつに周りを探索できなくなってしまったっスから……」

 

 木がほしいのか。まあ近くにしんりんちほーがあればそこから持ってくればいい話か。それにセルリアンもいるのか。ついでだ、こ奴のために倒しておくとしようか。

 

「いいぞ、それくらいなら安い悩みだ。サーバルはどうする?」

「もちろん一緒に行くよー! フレンズは多い方が心強いでしょ?」

「まあお前らしいな。よし、さっそく見に行ってみるとしよう、行くぞトキよ!」

「ええ、歌のお礼にたくさん探してきてあげるわね♪」

「セルリアンには十分気を付けるっスよ! ホントはおれっちだけで探すべきなんスけどセルリアンはやっぱり怖いっスから……」

 

 私達はしんりんちほーを目指してふわりと宙へ舞い上がった。ビーバーか――奴の作った住処、是非見てみたいものだ。おそらくその木を使って造り上げるつもりなのだろう。目的が変わってしまったがしんりんちほーへ行くことに変わりはない。というか周りに木はたくさん生えているのだがこれでもいいのでないか?

 

「確かビーバーはなるべくまっすぐ伸びた木がいいと言っていたか」

「上からだとわかりづらいわね。時々降りつつあたりを探してみましょうか」

 

 私達はまっすぐな木を求めて辺りを飛び回る。うーむ、湖の近くにはなさそうだ。もう少し遠ざかってみるか。

 

「あ! 遠くに何か形が違う木が見えるよ! あれかもしれないね!」

「いってみるか、まっすぐであればそれで間違いないだろう」

「早くも見つかりそうね、しかしどうやって木を運ぼうかしら」

 

 そして私に集まる目線。ああ知ってたさ。絶対私だよりになるってことくらいは。

 サーバルの言った方向へ飛び、しばらくして形の変わった木が乱立しているところへたどり着いた。

 ふわりと地面へ降り立つ。私達は辺りの木を見まわす。おお、じゃんぐるとはまた違った光景だな――何とも幻想的だ。ジャパリパークにはこんな光景も見ることができるのだな。

 

「うわあー……! すごいねー!」

「ふむ、この木で違いなさそうだな。どれもまっすぐに生えている」

 

 これをビーバーに報告すればいいのか。しかし私でもこれをなぎ倒すのは時間がかかりそうだ。ジャングルの木は太くて質感は柔らかかったが、この木は硬くてなかなか頑丈だ。切り倒せれば問題はなさそうなのだが、私にそんな力はない。一発二発ではなぎ倒すことは不可能だろう。

 そんなことを考えていると、遠くで声がしているのを耳にする。

 

「……!!!…………!!!」

 

 うめき声みたいだな。セルリアンではなさそうだ。この辺に住んでいるフレンズか――なんにせよ困っているようだな。

 

「ふうちゃん、助けに行こうよ!」

「サーバルも聞こえたか、こっちからだったな、よし行くぞ!」

 

 助けを求めている?フレンズの元へと私達は急いで向かっていった。しかしうめき声とはいったい何をすればうめき声があげれるのだろうか――。 

 しばらく行くと辺りが穴だらけの場所へとたどり着いた。私達は察した、これはおそらく誰かが埋まっているのだと。

 

「とりあえずうめき声の主を探すとしようか」

「ええ、そうね。まあすぐに見つかるでしょうけど」

「あっちから聞こえるね、行こう!」

 

 足早に声のする方へと私たちは走り出す。――いた。じたばたともがいている。上半身が土に埋もれたまま。

 とりあえず引っ張り出すか。私達は埋もれたフレンズの両足を使って引っ張った。スポンという音が似合いそうな勢いでフレンズが土から飛び出した。

 

「げえっほ! ぶぇっほ! 何をするでありま――どちら様でありますか?」

 

 肌色の毛皮をまとったフレンズが私を見てきょとんとしている。引っこ抜かれた憤りも霧散してしまったようだ。手早く私達は自己紹介を済ませる。

 

「風翔龍殿でありますか! なんだかかっこいい名前でありますねえ!」

「ふうちゃんはすっごく強いんだよー! セルリアンなんか簡単に倒せちゃうんだから!」

「私一人ではなかったがな、倒せたのは」

 

 私はなぜ埋もれていたのかを尋ねる。まあどんなフレンズでも気になるだろうな。

 

「ここは素晴らしいところだったので住処を作ろうとしたでありますが、いかんせんうまくできなくて穴掘りに夢中になって気づいたら埋もれていたであります……」

「まあここが素晴らしい場所であることは同意ね」

「わたしもこういうところに住んでみたいなあー、さばんなちほーよりも暑くないし」

 

 まあつまりは住処を作ろうとして夢中になって生き埋めになったというところか。

 

「ところで三人はいったい何をしにここへ来たでありますか?」

「私達は木を探してきてほしいといわれてここへ来たんだよー!」

「どうやらその木を使って住処を作るらしい。今からその木をなぎ倒すところだったのだ」

「ほうほう! ここの木を使うのでありますか! なんだか面白そうであります! あ、申し遅れました、私はプレーリードッグであります!よろしくでありますよ!」

 

 ずかずかとプレーリーが近づいてくる。そして――

 

              むちゅー!!!

 

 唇をくっつけてきた。いきなりのことだったのでぽかーんとしてしまった。

 

「これは私流のご挨拶であります!」

 

 そう言うと残る二人も唇をくっつけられる。世の中には変わった挨拶もあるのだな。

 

「なかなか刺激的な挨拶ね……でも会うたびに口づけは勘弁してほしいわ……」

「……」

 

 二人とも顔を真っ赤にしている。あれは口づけというのか。そんなに恥ずかしいものなのだろうか、私にはよくわからない。

 

「さて、木を切ればいいのでありますね! 張り切っていくでありますよー!」

 

 私達を放っぽりだしてプレーリーは一直線に木へと走り出す。そして、

 

「ガリガリガリガリ……!!」

 

 木の根元を齧り出した。みるみる根元が齧られて無くなっていく。いったいどんな歯を持っているのだプレーリー。

 早くも一本目の木が切り倒されてしまった。気が乗ってきたのかペースを上げてどんどん木をかじっていくプレーリー。二本目、三本目と次々と木が――

 

「ちょ、ちょっとまってえええ!」

「む、ちょうど気が乗ってきたのに何でありますか!」

 

 サーバルが齧るのを止めさせる。いい判断だぞ――。そして私が一つ提案をした。

 

「まずはビーバーをここへ連れてこよう……彼女にどの木がいいかを見てもらってからそれから木を切っていこう」

「むう、仕方ないでありますな。ではそのビーバー殿がここへ来たら切って行って大丈夫なのでありますね!?」

「え、ええ。その時はまたお願いするわ……」

 

 少し引き気味になってしまった私たちを尻目に目をらんらんと輝かせて待つプレーリー。そんなに木を齧りたかったのか貴様は――。

 

「プレーリーはここで待っていてくれ。すぐにビーバーをここへ連れてくる」

「早くお願いするでありますよー! でないと今すぐにでもかじりついてしまいそうであります! じゅるり……!」

「ちゃんとおとなしく待ってて頂戴ね?」

 

 トキに念を押されたプレーリーはしゃきんと姿勢を正して飛び去る私達を見送っていた。戻ってくると丸裸なんてことになってないだろうな……。そんな心配事を抱えて私達もビーバーの元へと急ぐ。

 




次回はビーバーの住処編です!
どんな住処が出来上がるのか――

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