古龍のフレンズ   作:まろにい

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アプリ復活おめでとうございます!早くやってみたいなあー
いよいよ原作フレンズとご対面です。


Chapter Ⅰ:さばんなちほー
section Ⅰ: フレンズ


 辺りを警戒しつつ慎重に歩みを進める。あの忌々しい人間からみれば今の私はさぞ滑稽に見えるだろう。考えただけで虫唾が走る。

 

(腹がすいてきたな……)

 

 あの死闘の最中は何も口にしていなかったことを思い出す。大型の草食獣でもいればいいのだがここは私の知らない世界。その存在は絶望的だろう。しかもそれは元の姿の時に口にしていたもの、今の私は人間のような姿になっているのだ。口にするものも違うと考えるべきであろう。

 

 しばらく歩くとふと遠方に物陰を目にする。目は優れているのでよく遠くまで見渡せる。注意深く陰を観察する、……頭には耳がある。体は全体的に縞々で髪は長く毛皮のようなものを纏っている。そして物陰は二足歩行をしている……人間だ。この世界にも人間はいるのか。なんとも忌々しい。引き裂いてばらばらにしてやろうか。

 私の中の殺意が高まる。人間は一度も口にしたことはないがうまい不味いと贅沢を言っている場合ではない。とにかく今の私は空腹なのだ。なんとしてもあの獲物を仕留めねば。

 私は獲物へと近づくため歩幅を広げる。一歩、二歩、三歩。徐々に獲物との距離が縮まる。獲物はまだこちらに気づいていない。暢気なものだ、これから私の餌となることも知らずに。

 

「♪~♪~」

 

 何やら不思議な呪文のようなものを口にしている。呪術か、煩わしい。今からその顔を恐怖で支配してやろう。距離はついに跳びかかれる距離までになる。そして……!

 

「!? っきゃああああああ!?」

 

 後ろから飛び掛り動きを封じる。獲物は悲鳴を上げて押し倒される。いつみてもいい眺めだ、上から見下ろすこの感覚は。獲物は拘束から離れようともがいている。しかし私の力にはおよばないようだ。しばらく拘束していると敵わないことを悟ったのかどうやら抵抗することをあきらめて動かなくなった。

 

「に、煮るなり焼くなり好きにしなさいよっ!」

 

 獲物はぎろりと睨んで叫ぶ。煮る? 焼く? よくわからないがこれは食べてもいいということなのだろうか。

 

「……貴様、食べられてもいいというのか」

 

 つい私は思ったことを口にしてしまう。いったい何をしているのだ私は。さっさと食べてしまってもいいではないか。

 

「そ、そうよ! 早くひと思いにがぶっとやっちゃいなさいよ!」

 

 ぎゅっと目を瞑り早く食べろとまくし立ててくる。なんと諦めがいい人間だ。腹をすかせた私にとっては好都合だ、だがそう急かされるとなんともやりにくくなってしまう。思わず力を緩めそうになるが踏みとどまる。

 

(人間というものはあのような殺伐とした輩だらけでは無いというのか?)

 

 ふとそういう考えが頭をよぎる。人間になる前では考えたこともなかったな。

 

「貴様は人間だな。先ほどまで何をしていた?」

 

 私は問いかけた、私でも思いもよらぬことを。獲物はしばらく沈黙したあと答えた。

 

「……え!? う、歌を歌ってましたけどっ……!?」

 

 うた? うたとは何だ? またもわからぬものがでてきた。もしかすると何かここのことについて知っているのか? 私は尋ねてみる。

 

「貴様、何かここについて知っているな?」

「知っているも何もここは私が住んでいる地ですし……!」

 

 やはり知っていたか。私の勘もなかなか当てになるものだな。もしや私がこの体になってしまった原因も知っているのでは……。

 

「それより……」

 

 む?

 

「食べる気が無いのなら離してほしいのですけど……! 痛いです……!」

 

 思わず拘束を解いてしまった。ああ、せっかくの餌が……本当に何をしているのだ私は。

 

「あれ、解いちゃうんですか……不思議な方ですねー。でも食べないでくれてありがとうございます。……よく見るとあなた見たこともないフレンズですね。どうやらここのルールは知らなさそうですね」

 

 まじまじと私を見て彼女は言った。ふれんず? 私を見てフレンズと言ったのか? ということは私はそのフレンズとやらになってしまったということか。

 

「るーる? ……貴様もそのフレンズとやらなのか?」

 

 私の問いに彼女は答える。

 

「はい、そうですけど。私はサバンナシマウマといいます」

「しまうま……? まあいい。してここは何処なのだ?」

「ここはジャパリパークのさばんなちほーといいます」

 

 ここはやはり雪山ではない。じゃぱりぱーく? さばんなちほー? とにかくここについての理解を深めなければ。

 その後も私の質問攻めに彼女は淡々と答え続けた。が、肝心の私のこの姿については何も得ることはできなかった。

 

「本当は貴様を頂くつもりだったのだが貴様のおかげでこれだけ情報が増えたのだ、食べることはしないでやろう」

「さっき教えたここのルールちゃんと覚えてますよねー? フレンズがフレンズを食べるのはご法度ですよー」

 

 シマウマから貰い受けたジャパリまんとやらをしげしげと眺めつつ私は言った。このジャパリまん、なかなかに美味そうな見た目をしている。肉の類ではなさそうだ。一口かじる。

 

「!!」

 

 二口! 三口! おもわずがっつく! なんだこれは!!

 

「おおー、気持ちいいほどの食べっぷりですねー、初めての味にがっつきたくなるのは分かりますけど落ち着いて食べてくださいねー?」

「もが!? ……んくっ。ああ、すまない、少し取り乱したようだ。このような物は初めて食べるものでな」

 

 思わずがっついてしまった。ジャパリまんの魔力、恐るべしである。こんな美味な物を食しているとはなんと贅沢な者達なのだ。是非今後は自給自足できるようにしておかなくては!

 

「ところでまだそちらの名前を伺ってませんでしたね」

「名前……ふむ」

 

 名前とやらを尋ねられた。確か人間どもは私のことを「風翔龍」と呼称していたか。ならばそれが私の名前なのであろう。私はある程度なら聞いた人間語は理解できるからな。

 

「風翔龍とでも呼ぶがいい」

「ふーしょーりゅー……変わった名前ですね」

「フン……それより此処がどこかわかるのだろう? 私に案内をしてくれ」

「……まあ悪い方ではなさそうですし、わかりました。案内しましょう」

 

 こうして私は案内役を一人つけ、当てもないちほー巡りを再開したのだった。




ということでサバンナシマウマちゃんを出してみました。ナメクジ扱いうけてる彼女にスポットライトを当ててみましたがいかがでしたか?性格がちょと難しかったので丁寧語にしてみました。

次回もまた新たにフレンズがでてきます!

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