古龍のフレンズ   作:まろにい

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いよいよ橋造りが始まります!果たしてどんなものが出来上がるのやら。


section Ⅹ: 橋造りの始動

 皆で穴の中で動かなくなった水竜もどきからいしを探す。果たして毒は本当に効いているのか疑問だがさっさと見つけてしまうに越したことはない。

 しかしこいつにも見当たらないな。やはり体内か。この巨体の体内からいしを見つけるのはなかなかに骨が折れそうだな――。

 

「このセルリアンも見つからないなあ……あのサバンナのセルリアンと同じだね」

「まああいつよりこいつはでかいからな。見つかりにくいのも仕方ないだろう」

 

 などどいってる間に割とあっさり見つかったようだ。フォッサが皆へこちらへ来るように促す。

 

「おーい! たぶんこれじゃないかな!」

 

 よく見ると腹の奥に何かキラキラしている丸いものがある。弱点の部位にあるという憶測は間違っていなかったようだ。ということはあの逃げた奴も同様にその箇所にある可能性があるな。

 

「これがいしか……こいつを見つけて破壊してしまえばこの水竜もどきは消え去るのだな」

「よーっし、早いとこやっちゃおう!」

「そうだね! また暴れ始めちゃったらみんな困るもんね!」

 

 よし、ムードメーカーコンビの言う通りさっさと壊してしまうか。私はいしに武器を突き刺す。するといしにひびが入りばかーんと音を立てて水竜もどきもろとも砕け散った。なんとも不思議な光景だ。いくつものブロック状の物体になって砕けてしまう様は。

 

「これで安心して橋造りができるね!」

「これからが本番だな、腕が鳴る」

「よくわからないから指示をお願いするよ、風翔龍」

 

 コブラとジャガーはもう取り掛かる気満々のようだな。だが今日は皆体力を消耗しているだろう。皆の疲労を察して私は皆に休むよう促した。

 

「いや、それは明日からにしよう。皆今日の戦闘で疲れ切っているだろうしな」

「風翔龍ちゃんは鬼じゃなくて天使だった?」

「そうだね、私ももうくたくただー。こんなでっかい穴掘ったの初めてだもん」

「私もですわ。でもなんだかんだで楽しかったですわね。ふふっ」

 

 皆私の言ったことに賛成のようだ。……約二名を除いて。

 

「いまからでもだいじょぶだよー!」

「わたしもわたしもー!」

 

 サーバル、カワウソ。気持ちはわかるが休ませてはもらえぬだろうか。野生開放とやらのせいで体中が悲鳴を上げているのだ。

 

「こらこらおまえら、風翔龍は野生開放してかなり体力を消耗してるはずだぞ。それなのに今からとは少し酷ではないか?」

 

 コブラが二人に言って聞かせる。すると二人は私を見て、

 

「あ、そっか……ふうちゃん一番頑張ってたもんね、ごめんね」

「わたしもわすれてたかも……ごめんねふーちゃん」

 

 申し訳なさそうに言った。よかった、二人とも休む気になったようだ。

 

「すまぬな、ほんとは一刻も早く橋造りを始めたいのだが、さすがに体はついてはいけぬようだ」

 

 私は二人に謝る。だが二人は気にしないでと気を使ってくれているようだ。

 

「でもまずはおなかを満たしたいかな……」

「私も同感だね、おなかぺこぺこだ」

 

 フォッサとジャガーが空腹を訴えた。そうだな、まずは腹を満たしたい――私もすいているなあ、だいぶ。

 

「それじゃ、お祝いもかねてご飯を頂きましょうか!」

「「さんせーい!」」

 

 インドゾウの一声にムードメーカー二人が返事をする。ほんと二人は元気がいいなあ。どこからそんな元気が湧いているのだろうか。

 

「――やくそく、忘れてないわよね?」

 

 と、唐突に耳元でぼそりとトキが囁いてきた。そうだった、トキに事情を説明しなければならないのだった。

 

「明日でも構わぬか? 今日はもう寝てしまいたい気分なのだ」

「ええ、問題ないわ」

「そうか、ならば明日の早朝に話すとしよう」

 

 トキの了承を得て私達もご飯にありつく。あーやはりこの至福の瞬間はたまらない。どうしても頬が落ちてしまう。しやわせー。

 

「すごいとろけてますね、顔が。ふふっ、こちらもにやけてしまいますわね」

「そんなにジャパリまん好きになっちゃったのかい? まあ物によって味が違うから飽きないのはわかるけどね。しかしあのりりしい顔とのギャップがまた……くくっ」

 

 インドゾウがこちらを見てにこにこしている。横でジャガーが笑いをこらえきれず噴き出した。しかし私はこの至福の時間に夢中で気づくことはなかった。のちに二人にからかわれて赤くなったのは別の話だ。また汚点を作ってしまうとは我ながら情けない……。

 

 ご飯が済むとやはり疲れがたまっていたのか皆眠り始めた。――私もそろそろ寝るとしよう。朝早く起きれなければ時に迷惑をかけてしまうからな。ゴロンと横になり目を閉じた。徐々に意識が落ちていき、深い夢の中へと私は旅立っていった。

 

 早朝、問題もなく起きた私はトキを探す。――いた、川の近くにいる。事情を話すべく私は近寄った。

 

「おはようトキ。早いのだな朝は」

「ええ、私朝が好きだから。それより、話してくれるんでしょ?」

「ああ、包み隠さず話そう」

 

 私はトキに事情を説明する。

 

「――とまあこういうわけだ。歌声を利用するような真似をしてすまなかった」

「いえ、事情を聴けたからいいわ。歌声に関しては私も察しているもの」

「歌はうまくなりたいとは思わないのか?」

 

 唐突にそんな質問をしてしまった。何を考えているのだろう私は。まあ気になってしまったから仕方がないか。

 

「え? あなた、私に教えてくれるの?」

「まあ、わかる範囲でなら構わんが」

「何かコツとかってあるのかしら、例えば口の開け方とか声の出し方とか」

「む? よくわからんが私は何も意識せずに歌ったぞ。あえて言うのならおなかに力が入っていた気がするな。おなかから声を出す感じで歌えば良いのではないか?」

「なるほど……」

 

 歌についてのやり取りをしているうちにほかの皆が起きてきたようだ。

 

「おはよー! ふたりとも! 今日もいい天気だね!」

 

 サーバルが元気よく挨拶をする。いきなりだったから二人して少しびくっとしてしまった。

 

「お、おはようサーバル。いきなり近くで大声はびっくりするからやめてもらえるかしら……」

「同感だ……」

「あ、ごめん……」

 

 まあ元気がいいのはいいことだが、さすがに近くではちょっと勘弁してもらいたいものだな――。

 

 それから皆が集まり、いよいよ橋造りへと取り掛かる。皆気合は十分のようだな――うむ、私も安心した。

 

「まずはさっき言った通り渡るところを支える物からだな」

「ふむふむ、まずはそれから作っていくんだね」

「わたしじゃあんな大きいのはもてそうにないかなあ」

「丸々一本使うわけではないだろう、さすがに」

 

 コブラの言う通りまずはこれを切る作業からだな。木に思いっきり上から殴りつければ折れるだろうか。

 私は力のありそうなジャガーとインドゾウにお願いをしてみる。 

 

「これを折るんだね? 結構力いりそうだなこれを折るとなれば」

「ええ、一人でなら大変そうですわね――でも二人でならなんとかなりそうですわ」

「そうだね、それじゃ、やってみるかね……!!」

 

 跳躍し勢いをつけた二人の一撃が上から炸裂する。めきめきと音を立てて地面に木がめり込んだ。だがしっかり折れているようだ。どうやら任せても問題はなさそうだな。

 

「それで折った木をどうするの?」

「まあ見ていろ。翼を手に入れた私ならばこういう芸当ができる」

 

 作業を始める前、私は皆から再び野生開放は可能かどうかを訊かれた。よくわからないがそれを意識すると再びサンドスターが体から放出し始め、翼が現れた。どうやら一度野生開放をしてしまうと何度でも体力の持つ限りそれが可能になるらしい。

 

 木を持ち上げて高く飛翔し、私は川の上へと移動する。よし、このあたりで――

 

「ふっ!!」

 

 上空から勢いをつけて下降し思い切り真下へと木を投げつける。大きな音を立てて木が川底へ突き刺さった。

 

「「おおおー!! すっごーい!!」」

「さすがに私じゃあんなことはできないわね。彼女に任せるしかなさそうね」

「相変わらず規格外だなあ風翔龍の力は」

「どれだけ深く刺さったのだろうか、あの木、びくともしていないぞ……」

「ここにいるフレンズじゃまずこんなことは出来そうにない?」

 

 それぞれが感想を述べる。さすがに私以外がやるのは不可能か。ならば私が頑張るしかないな。

 二人が木を折り、私が突き刺す。何度くらいやっただろうか、気づけば相当な数の木がいくつも列をなして川底へ突き刺さっている。いかんちょっとやりすぎたかな。

 

「体力は大丈夫か? あれだけ作業したんだ、へとへとだろう」

 

 コブラが心配そうに私達に言う。正直言うときつい。少し張り切りすぎてしまった。二人も息が上がっている。私のせいで無理をさせてしまったようだ。

 

「すまぬ、少し……はぁ……はぁ……休みたいな……二人も……すまなかった」

「風翔龍……ちょっとは……ペースを……考えて……」

「はぁ……はぁ……すこし私も……きつい……ですわね」

「指示だけ聞ければあとは私たちが進めていくよ、次は何をしたらいい?」

 

 フォッサが次の作業を尋ねてくる。息を切らしながら私は支持を出す。

 

「そう……だな、つぎ……はわたる……ところを……つくろう」

「よーし、私たちの出番だね!」

「やるぞー! おーっ!」

 

 指示通り、まずは集めた細めの木を横に並べ始める。私の持った木よりは細いが、それでも太さはある。大体皆の平均的な胴周りくらいはありそうだ。

 

「これを束ねて縛って――」

 

 次に集めた蔓を太く束ねて木の両端に巻き付けていく。もちろん動かないようにしっかり締めて固定する。

 

「できたー!!」

「おお、これをあの上に乗っけるのか! 以前の橋とはなんか見た目は悪いけどこれは頑丈そうだな!」

「いよいよですわね――あと一息、頑張りましょう!」

「「「「「「「おおーっ!!」」」」」」」

 

 休憩中の私達を除いて皆が掛け声を上げる。もう完成は目前だ。座って皆を見守っていた私も気合が入る。皆には負けられないな、体力がある程度回復したら私達も戻ろう。私達はそう思いながら皆の作業を眺めていた。




橋作りを始めた一行、完成は近い!
次回はいよいよジャングルちほー編もおわりをむかえます!
そしてとあるちほーでは……?

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