古龍のフレンズ   作:まろにい

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タイトルで察しているフレンズの方が多いでしょうがあのフレンズ登場です!
出会った彼女らはどうなるのかw


section Ⅶ: 歌好きのフレンズ

 一晩を過ごし私達はコブラに案内されつつ密林を歩く。大声を出せるフレンズか……歌でそんなに大きな声がでるものだろうか。いずれにせよ会ってみない事には其の歌声を聞くことは叶わないな。どれほどの声の持ち主か楽しみだ。

 暫く歩くと水の音が聞こえてくる。今まで聞いてきた音とは違う少し激しい水音だ。近くに滝があるようだな。

 

「おお、壮観だな。水はあまり好きではないがこの光景はなかなか素晴らしい」

「あの高台でよく歌っているな。今は居ないみたいだが」

 

 コブラが指差す先を見る。しかしなかなかの高さがある。あんなところで歌っているのか。……確かに今はどうやら高台にはフレンズが居る気配は無い。

 

「居ないのか、残念だ。しかし何故こんな場所で歌を歌っているのだろうか」

「この辺くらいしか高い場所って無いからな。歌がよく響くんじゃないか?」

「あそこで歌うと確かに気持ちよさそうだねー」

 

 フォッサの言うとおりあそこに上れば確かに気持ちがよさそうだ。しかしあの絶壁にどうやってたどり着くのだろうか。あの高台は反り返っていて下から上るのはとても困難に見える。空でも飛べない限りは容易にたどり着くのは不可能だ。私だって何か用でもない限りは今の状態であそこまで上りたくはない。

 ほほう、ということはあそこで歌っているのは鳥のフレンズの可能性があるということか。これは迎え入れたら強力なフレンズになりそうだな、ククク……。

 

 

「いい助っ人にめぐり合える可能性があるぞ、コブラよ」

「は? よく分からないがありがとう……」

「ほー、なんか悪い顔してるねー。ついにセルリアンを倒す方法でも考え付いたの?」

 

 わたしはコブラの肩をぽんぽん叩きながら言った。今そんな悪い顔をしているのか、まあ特に気にすることでもなさそうだが。

 

「これで奴にやられた分の仕返しができる……貴様ら、存分に暴れられるぞ。ぼこぼこにしてやろうではないか、私達にちょっかいを出したことを後悔させてやるぞ……ククククク」

「う、うん……顔怖いよ、すごく。まあでもあいつに仕返しができるようになるなら私もそんな顔になっちゃいそうだね」

 

(また眼が光ってる……気づいてなさそうだなやっぱり)

 

 フォッサが少し私を見て変な顔をしたのは違和感を覚えたが、まあ今はどうでもいいだろう。

 

 今は朝方か。そのフレンズが現れる時間も知りたいところだな、時間は大切だとサバンナで二人に教わったからな。今まではそんな時間など考えたこともなかった。人間というものは本当に時間に敏感な生き物だな。だが他の皆もフレンズ化する前はやはり私と同じ気持ちだったのだろう。まあただの憶測でしかないのだが。

 

「ん? あの子が現れる時間が知りたいって?」

「ああ、それを知っておけば動きやすいと思ったからな。教えてくれコブラ」

「んー……私が見たのはたまたまだったからなあ、そもそも決まった時間にここに来るかどうかは分からないな」

 

 むう……分からないのか。ならば待つしかないか、現れる時が来るまで。

 

 そういえばサーバルたちはうまく逃げ切れただろうか。まあ逃げ足は速い奴らだからな。安全なところまで逃げ切れただろう。そろそろ彼女らを探すこともしなければな。さすがにあの場所へと戻っている可能性はないだろう。彼女らもそこまで頭は悪くはない、なんだかんだでしっかりした子達だ。

 

「そろそろ彼女達を探すこともしなければな……向こうも探しているだろうし」

「……そうだった! サーバルたちとまだ合流してなかったんだった!」

「それ何気に存在を忘れてたってことだよな?」

「まあまあ、思い出せただけよしとしましょう」

 

 ジト眼でフォッサを見るコブラをインドゾウがなだめる。彼女らが聞いたら涙目になりそうだなそれ。……もちろん私はしっかり覚えていたぞ?

 

「探すにしてもどこをどう探すかだよねえ」

「恐らくだが、サーバルの耳を頼りに私達を探している可能性があるな。音にはすごく敏感だからな」

「んー、私はあの場所にいったん戻りに行くと思ってるんだよね。だって彼女達は私があのセルリアンをまだ知らないって思ってるだろうし、遭遇してパニックになってるって考えててもおかしくないから」

「……そうだった、彼女らも貴様を危惧して戻る可能性があるのか。だがいったん遭遇したことのある彼女らが戻る決断をするだろうか」

 

 いや、彼女らならば戻るな、間違いなく。あの時はすごくビビッていたがそれは初めてやつの攻撃を知った時だ。それに仲間意識の強いサーバルがいる、もし他の子が行くことをためらっても彼女は戻る可能性がある。

 

「二手に分かれよう。ここで待つものと探しに行くもの」

「まあ、無難ですわね。賛成ですわ」

「……まて。もしかするとその必要もなくなるかもしれない」

「なに? まさか彼女らが近くに!?」

 

 私はコブラの言葉に思わず叫んだ。近くに彼女らがいるのならそれは好都合だ。早く合流を果たさねば。

 

「慌てるな、まだそうと決まったわけじゃない。ただ近くで足音がしただけだ」

「他のフレンズの可能性もあるってことだね。まあそのときはその子も橋造りに引き入れちゃってもいいかもね」

「……迂闊に動けないのがじれったいな」

「足音がだんだん大きくなってきてる。こちらに向かってきているみたいだな、待つのが最善だろう。迎えにいってやりたい気持ちは私も同じだ」

 

 まあ一斉に動けば高台の彼女を見落としてしまう可能性があるか。いつ現れるか分からないその機会を逃すわけにはいかない。うずうずするがコブラの言うとおりにしよう。

 確かに足音が聞こえる、私でも分かる距離だ。もう姿が見えてくるくらいにいる。声も聞こえてきた。

 

「この声は……無事だったようだな、一安心だ」

「え? ……まさか、そこにいるのって!?」

 

 声の主がこちらに駆け寄ってくる。大きな耳、水玉の毛皮……どうやら合流は果たせたようだな。

 

「ふうちゃん!!」

 

 サーバル、何事も無くてよかった。彼女が私に思い切り飛び掛ってくる。

 

「っと! 無事で何よりだ、サーバル。皆心配していたぞ?」

「それはこっちのセリフだよぉ! ……うう……ひっぐ……あの後死んじゃったかと思ってたんだからね……!」

「泣くなサーバル、まずは無事に合流できたことを喜ぼうではないか」

 

 べそをかくサーバルをなだめる。私のことをそんなに心配していたのか、すまないことをしてしまったようだな。

 

「すまなかったなサーバル、寂しい思いをさせてしまったようだ」

「そうじゃないよ! 一人であのセルリアンと戦うなんてむちゃくちゃだよ……! もっとわたし達のこと頼っていいんだよ!?」

「む? だが貴様達を危険な目にはあわせたくは……」

「もう十分危険な目に合ってるよわたし達も! わたし達ってふうちゃんから見るとそんなに頼りないの……?」

 

 涙目で此方を見てくる。う、私の戦い方に何か不満があるのか……ちょっと考えてみる必要があるか。

 

「はいはーい、感動の再会はその辺でねー?」

「!?」

 

 フォッサが割って入ってくる。む、私も少ししんみりしていたところだったのだが、まあ多めに見てやるか。

 

「とりあえず風翔龍の言うとおり再会を喜ぼう!」

「わーい! みんな無事でよかったー!」

 

 ジャガーとカワウソがぱちんとお互いの両手をたたいて不思議な踊りをする。仲がいいのだな貴様ら。そしてサーバルはまだべそをかいている。いい加減泣き止んでくれると助かるのだが。私に抱きついていると落ち着くのだろうか。まあ何にせよ彼女が落ち着くまでこうしていようか……。

 

 サーバルが落ち着いたところでみんなでジャパリまんを分け合って食べる。皆が合流を果たせた記念らしい。……よくわからん。まあ皆に笑顔が戻ったのであれば問題はないか。

 と、見張りを任せていたインドゾウが此方へ戻ってきた。何か伝えたそうだ。

 

「む? ほうひふぁひんほほう、ほんはひはふぁへははふぉふぉひへ」

「食べながらしゃべるのは行儀が悪いですわ風翔龍さん……。おほん! ついに現れましたわ、例のフレンズが」

「「「「「「!?」」」」」」

 

 皆が一斉にインドゾウを見る。私を含めてジャパリまんをほおばりながら。

 

「……ごくっ! こうしてはいられない。今すぐ高台へ行ってみるぞ!」

「なるべく静かにな? 彼女も落ち着いた気持ちで歌いたいだろうし」

 

 コブラの忠告を受けて、皆が高台の近くへと向かう。いよいよご対面か、さてどんなフレンズかしっかりこの目で見てやろう。と意気込んだそのときだった。

 

「♪゛~♪゛~」

 

 何とも言えぬ轟音が辺りに響き始めた。な、なんだ!? 近くに轟竜でも現れたか!?

 

「に゛ゃああああ!? な゛にごのおとー!?」

「耳を塞いでいた方がよさそうだなサーバルは……高台のほうから聞こえてきている、この音は」

「これが、歌? ただの絶叫の間違いじゃ?」

「これはまた……破壊力のありそうな歌だねぇ……!」

 

 オセロットとジャガーが耳をふさぎつつ言う。うむ、私もこれは歌には聞こえんな。近くで聞けば何を歌っているのか分かるかもしれないが。私は声のするほうへと近づいていった。

 

「に゛ゃ!? 危ないよふーちゃん! 殺されちゃうよぉー!」

「フン、轟竜の咆哮を至近距離で受けるよりはまだましだな。それにこれくらいで死んだりはせん。ただ私にとっては耳障りな程度なだけだ」

 

 高台までだいぶ近づいたな。声の主は……いた。何とも気持ちよさそうに歌っている。周りは地獄絵図になっているが。あーあー……カワウソなんか気絶してしまっているではないか、後で介抱してやらねば……。インドゾウやフォッサ達は遠くへ避難したようだな。どうやらコブラの指示を受けたらしいな。賢明な判断だったようだ。いい仕事だぞコブラよ。

 

「歌っている最中にすまない!! 名も無きフレンズよ!!」

 

 私は歌っているフレンズに向かって叫んだ。……む、歌がやんだ。声は届いたようだな。

 そのフレンズは高台からふわっと飛び立ち、此方へ飛んでくる。サーバルたちも何とかこちらへ来れたようだ。

 

「こんにちは、はじめまして。私はトキ、私に何か御用かしら?」

「私は風翔龍という。いやなんと言うか独特な歌だなと思ってな。声を掛けさせてもらった」

「私の歌に興味があるの? めずらしいわね、めったに他の子が寄り付くことは無かったのに」

 

 まあこんな轟音を出しているならそれは近寄りたくは無いと誰もが思うのだろうがな。自覚がないのだろうか。いやさすがにこれは気づいているだろう当人も。

 

「もしかして、あなた私のファンになりにきたの?」

「ぬ? ふぁんになる?」

 

(ふぁんか……恐らく仲間になりたい、もしくはしてあげるということだろう。それならば当然答えは)

 

「ああ、そのとおりだ。そのふぁんに成りに来た」

「本当に? なんか照れちゃうわね……そうきっぱり言われると。じゃあこれからよろしくお願いするわね?」

 

 どうやら仲間に引き入れることに成功したようだ。これでいい助っ人が手に入った。後はあの水竜を完膚なきまでに叩きのめすだけだな……。私はトキに見られぬようににやりと邪悪な笑みを浮かべるのだった。

 




無事に合流を果たしたサーバルと主人公たち。そして勘違いしたままトキを仲間に引き入れた風翔龍は次回リベンジを果たしに……!?

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