えっ?笛で戦ってるのって僕だけ?   作:モグ・モグラ

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どうも、モグ・モグラと申します。

反省を踏まえての第五話です。

気づけば通算UAが2000人突破!?感謝…圧倒的感謝です…!!
これからも頑張ります!!
今回はアニメ版の第三話に当たる話。ソルはどうするのか?


どうぞ、ごゆっくりと。


第五話~ソロ笛ですが、なにか問題でも?~

2023年 4月8日

 

 

『デスゲーム』が始まってから5ヶ月の歳月が過ぎていた。『第1層・ボス攻略』の影響もあって、あれからものすごいペースで攻略が進められていった。今では25,6層まで進められていた。理由としては『ギルド』の影響もあるだろう。

『ギルド』とは『組織』みたいな感じでもあれば、『仲間・知り合い』の集まりでもある。人数に制限はないので、少規模なギルドもあれば大規模なギルドもある。その中で、攻略に力を入れているギルドをプレイヤー達は『攻略組』と呼んでいる。

『ギルド』のおかげで短期間で、次々とボス攻略が進められていったのは事実である。

しかし、それでもギルドに所属せずに、一人でボス攻略に参加する『ソロ』がいた。

 

「でやぁ!!」ヒュンッ!

 

ドガァッ!!

 

大きな笛がモンスターの頭に直撃する。モンスターは苦しそうにうめき声をあげる…

前に、

 

ドッゴォオン!!

 

もう一発の打撃が頭に再度振りかかる。モンスターは声も出せずにポリゴンとなって散っていってしまった。

 

「はぁ~、今回も大変だった」

 

経験値と入手した素材を確認しながら、その場で座り込む一人の少年。さっきのが最後のモンスターだったのか、周辺にはもう、モンスターらしき気配がしない。

 

(大変だけど、やっぱり『ソロ』のほうが気が楽だから…)

 

『狩猟笛』を扱う少年の名は『ソル』。彼はそんなことを思いながら、

 

「でも…『ギルド』ってどうなんだろう…?」

 

そう、つぶやく。別に興味がないわけでもない。仲間を作った方が、やはり敵を倒しやすくなるし、楽しいのだろう。しかし、彼は、ソルはコミュ不足なのだ。普段は相手との会話を避けるソル。大事な時は仕方ないので、会話をするのは『攻略会議』とかの時だけだった。

 

(このままじゃ、いけないし…。はぁ、どうしよう…?)

 

など、考えていても答えが見つからない。ため息がでる。

 

(素材も溜まったから、武器を強化してもらおう…)

 

一旦、思考を切り替えて立ち上がるソル。今使っている武器は青銅の笛、『ブロンズクレイ・ホルン』。なかなかの重みがあり、打撃の破壊力は上位武器に届くであろう笛。長さは190cm代はあり、ソルの使っている笛の中でも、一番でかく、そして破壊力がある。しかし、先ほども言った通り、なかなかの重さのため、高い筋力値が必要であり、同時に俊敏値が下がってしまう。鈍足系モンスター相手には強力だが、すばしっこいモンスターには苦戦を強いられる武器。なので、ソルは素材を集めて、小回りが利く笛を強化しようとしていたのだ。

小回りが利く笛と言えば、『第1層・ボス攻略会議』で使った、狼の素材でできた笛『狼笛(ファンギング・バイトホルン)』だ。160cmと比較的小さいので軽く、小回りに利くが、攻撃力はそこまで高くはない。なので、狼笛を強化するために色んな素材を集めていたのだ。

すると…、

 

(…ん?あれは……、キリト君だ)

 

少し遠い所で、キリトを発見したソル。キリトとは主に『攻略会議』で会う。その度にパーティーを組んで戦うのがいつものことである。周りからは変な目で見られるが…。

無理もない。なぜならキリトは『ビーター』のレッテルを張られているからだ。『第1層・ボス攻略戦』後に起こった出来事で、彼は『ビーター』と呼ばれてしまったからだ。今でもその影響は残っているのだろうか、誰もキリトとは組みたがらない。組むとするなら、斧使いであり、商業を仕事にしている『エギル』とソルだけだ。

 

(……?あの人たち(・・・・・)は…?)

 

キリトを取り囲んでいる5人のプレイヤー。見た感じだと、キリトといざこざを起こしているようではない。むしろ、拝めているような、感謝しているような……。

 

(あっ…。連れて行かれた…)

 

キリトは5人のプレイヤーに連れていかれてしまった。方角は街の方に向かっている。さっきの事と合せて考えるソル。そして、導き出した答えは…

 

(多分、あの人たちは中層の『ギルド』の人たちだと思う…。どこのギルドかは分からないが、危ないギルドではないと思う…。っとなると、『勧誘』かな…?)

 

そこまで考えると、別に問題はないだろう、万が一何かあってもキリトなら何とかなるだろう。っと思ったソルは、特に気にせず、笛専門の武器屋へ行った。

 

(きっと、僕にもギルドに入るチャンスはあるはず…!キリト君も勧誘されたからきっとある!!そうだ!僕にも来る!絶対に!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…そう、思っていた時期が僕にもありましたよ…先生…)ブンブンッ

 

同年 5月16日

 

一人むなしく、3体の大型カマキリのモンスター相手に囲まれるも、狩猟笛を振り回すソルがいた。察しの通り、この約1ヶ月間、まったくと言っていいほどギルド勧誘が無かったのだ。その結果を素直に受け止めていたソルは今もなお、無心(?)になって3体のモンスターをばったばったとなぎ倒していた。

 

(僕ってそんなに目立たないのかなぁ…?攻略でもちゃんと前線で戦っているのになぁ…)ブンブンッ

 

そう思っている間にも敵のHPバーがイエローになる。

 

(でも、ちゃんと自分の仕事はちゃんとしてる筈…タゲ、タンク、スタン、効果付与…色んなことをこなしてる筈なんだけどなぁ…)ブンブンッ

 

敵のHPバーがレッドに突入する。敵が凶暴になり、一段と素早さ、攻撃などが増すが…、

 

(…『恰好』かな?先生も良く『気合を入れるもしくは、目立ちたいときには、まず恰好から入る人もいる』って、言ってましたし…)ヒョイヒョイヒョイ

 

それをすべて躱しながら深く考え込むソル。ふと、自分の姿、恰好を見直した。

彼はフード付きのローブを装着していて、常にフードを被っている。ローブの下は、回避・動きやすさを重視した、胸当て・籠手・鎧などを付けていない、布っきれだけ(・・・・・・)の少しだぼだぼな七分袖の服とズボン。

 

 

 

(………………うん。目立ってないよね、絶対。他の皆よりも。)ブオッ

 

ドゴォッ!!

 

下からの打撃が一体のモンスターの顎を捉える。瞬間、そのモンスターは散った。

 

(皆、鎧や兜なんか付けてるし、僕もそうしようかな…)ゴォッ

 

ドグシャッ!

 

横から来た打撃がもう一体のモンスターの顔を潰す。またもう一体、散った。

 

(でも、動きづらいのとか、蒸し暑くなる服装は…苦手だな…)ブンッ

 

ドガァァン!!

 

そして、振り下ろされた打撃が最後のモンスターを押しつぶした。もはや言ううまでもない。

 

「(う~ん、どうすればいいのかな~?)…って、あれ?」

 

思わず声が出るソル。気が付けば、経験値と入手素材が表示されていた。また夜になっていることに気づくソル。

 

「(…今日はここまでにしよう…)はぁ~。なんか今日は一日が終わるのが早いような…」

 

そう言いながら、街に戻ろうとするソル。すると…、

 

「……ん?」

 

ソルは何かを発見し、足を止める。ソルの視線の先は…

 

「キリト君!」

 

そう、ソルの数少ない唯一の知り合いでありフレンドの、キリトだった。キリトもソルに気づいたようだった。

 

「久しぶりだね。キリト君」

 

「あ、ああ…ソルか…久しぶり…」

 

「?」

 

久しぶりの再会だったが、ソルは凄い違和感を感じ始めた。何かあったのだろうか。

 

「どうしたの?元気ないよ?」

 

「そ、そうか?…でも、心配しないでくれ。大丈夫だ」

 

明らかに大丈夫ではない。そう、感じたソル。すると、

 

「おお!キリトにソルじゃねぇーか!」

 

男の声がしたのでそちらに頭を向けると、

 

「…クライン…」

 

「クラインさん、お久しぶりです」

 

赤いバンダナに赤い髪、赤い鎧を身につけた20代の男性、クラインだった。ソルは彼の率いるギルド『風林火山』とは、最近の攻略会議で知り合ったのだ。初対面でも親切にしてもらったので、この人も数少ない、ソルが話せる相手の一人だ。

 

「おお、久しぶりだな。ここ最近見かけないと思ったら、二人でこんな夜中にレベル上げかよ?」

 

「いえいえ、キリト君とは今さっき、偶然に会いましてね。少し話みたいなのをしてました」

 

「そうか、キリトの方は…って、あれ?そのマークは…?」

 

クラインが何かに気づいた。

 

「キリト、おめぇそのマーク…、『ギルド』のか?」

 

(な、なにぃぃぃいい!!!???)

 

クラインの指摘でキリトのHPバーをよく見ると…、なんと、『ギルド』らしきマークがあるではないか。内心びっくりして、目を見開くソル。

 

「あ、ああ…、ちょっとな…」

 

キリトの反応が少しぎこちない。やはり、なんかあったのだろうか。ソルが考えはじめると…

 

「お~い、次、狩ってもいいぞ~」

 

ソルとキリトにたいしての声だろう。しかしソルはこれから街に引き上げるため遠慮した。一方、キリトの方は…、

 

「……じゃぁな」

 

ソルとクラインに言い残して、さっさと狩場へ行ってしまった。そのうしろ姿を見送る二人。

 

「……ったくよぉ。まーだ、気にしてんのかぁ(・・・・・・・・)?」

 

「?」

 

「あー、いや、これは俺とキリトの『問題』だから。お前は知らなくていいし、気にしなくていいんだよ。別に仲が悪いわけじゃないから」

 

「そ、そうですか…」

 

たしかに、さっきの含みある言い方は、過去に、何か二人の間で起こったのだろう。しかし、それを詮索するのは失礼だと判断したソルはこれ以上の言及も考えることもしないことにする。

 

「それにしてもよぉ、ソル」

 

クラインが話を振ってきた。

 

「お前は『ギルド』に入んねぇのか?なんなら、俺のところに入っても良いんだぜ?」

 

クラインからのギルドの勧誘が来たのだ。しかし、

 

「1ヶ月前の僕なら、その誘いに飛びついてたでしょう。しかし…」

 

間をあけて、ソルは続ける。

 

「遠慮させていただきます。…いろいろ考えたのですが、僕には『1人(ソロ)』の方が良いって思いましたから…、ごめんなさい」

 

「そうか…」

 

ソルの言葉に、クラインは少しショックを受けたようだったが、それでも納得してくれた。

 

「それに」

 

「?それに?」

 

 

 

 

 

「今の僕、『ギルドに入ったら負けかなぁ』って思ってまして」

 

「さっきのムード返せ」

 

クラインにそう言われて、小突かれてしまった。

 

「ソロ笛ですが、なにか問題でも!?」

 

ソルの声が夜のフィールドを駆け巡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同年 6月12日

 

今日、ソルは27層の街に来ていた。

 

(ここ最近、情報屋『でも』知らない隠し部屋が、所々の層の迷宮区にあるらしい…。レアなアイテムならまだしも、トラップとかなら大変だ…)

 

情報屋の一人、『アルゴ』の依頼で所々の、今までの層の隠し部屋を調査するように言われたのだ。隠し部屋には普通、レアアイテムが隠されているのが当たり前の筈だが、どうやら、中には、トラップ部屋だったりすることもあったりするらしい。その案件が数件もあったらしい。それも情報屋でさえ(・・・・・・)知らない隠し部屋に限ってだった。

そこで、情報屋のアルゴは偶々近くにいたソルに声を掛け、依頼したのだ。レアアイテムなどにあまり欲の無いソルはこれを承諾、そして今まで隠し部屋の調査をしてきたのだった。

 

(今回はこの層だね。とりあえず、準備をして、早速探さなけらば…)

 

隠し部屋の調査は以外にも難しく、そして命懸けである。もし、誤ってトラップを作動してしまった場合、何らかのペナルティがある。例えば毒、麻痺だったり、ダメージをくらってしまうトラップなど、色んな事態が発生するのだ。そのため、街で色んなアイテムを購入し、万全に備える。ちなみにある程度の出費はアルゴが負担してくれるそうだ。

 

「(こんだけあれば、十分だ。よし、いくぞ)……って、ん?」

 

ソルの目の前に一件のメッセージが届いた。差出人は…

 

「……キリト君だ。えっとなになに…」

 

ソルがキリトのメッセージを開くと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――今 27層 迷宮 隠し部屋 敵たくさん 来てくれ!—――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソルは何も言わずに、迷宮区へと走ったのだった。




さて、いかがでしたか?


今回は少々、少なめの文章量で作りました。
さて、次回はいよいよ、キリトにとってトラウマになったあの出来事です。間に合うかソル!?今日はとりあえず、ここまでとさせていただきます。

では次回のお話でお会いしましょう。


次回「月夜の黒猫と黒き少年」

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