そろそろ、
あと少し…あと少し…!
ソル「そうです、あと『5話(予定)』分です。頑張ってください」
ワーイ、ガンバルゾー(白目)
ソル「それとちょっとした連絡があるので、詳しくはあとがきを見てください」
それでは、どうぞごゆっくりと。
第50層 アルゲート
「はぁ~…」
開幕早々、気怠い溜め息が部屋に響く。
「まぁ、これはドンマイだな!わはははは!」
次には、さっきの鬱憤が吹っ飛ぶかのような野太い笑い声が響く。
「くそぉ…他人事みたいに~」
「まぁまぁ、実際に
「それは分かっているけど…」
フードの少年が慰めるも黒の剣士は依然浮かない顔をする。
そして言葉を続ける。
「なんでばれたんだ……」
「さ、さすが、情報の出回りがいつも早いです…ね」
黒の剣士、キリトの呟きに、フードの少年もとい混沌の演奏者、ソルが改めて新聞を見る。
新聞の吹き出しにはこう書かれている。
『黒の剣士、二刀流でボスモンスターを一人で50連撃で撃破!!』
「一体これ、誰がリークしたんですかねぇ…?」
しかも、実際よりも盛りすぎているのである。
「く、くそぉ……尾ひれが付くにも程がある……」
「あ、あははは…」
キリトは力なくうなだれる。しかし、新聞に書かれている内容は殆どが本当である。
『二刀流』。本来このスキルは誰も持っていない。しかし、キリトだけがこのスキルを習得していたのだ。
習得条件はキリト本人にもわからない。気が付けば習得していたらしい。
「まぁ、心労は察するぜ。こんなにでかでかと新聞に載っちまったらな~」
「そのせいで、朝っぱらから俺の家の前は情報屋やプレイヤーたちがわんさかと押し寄せて大変だったんだからな……」
因みに、ここはエギルの店の二階の部屋。キリトはなんとかこの部屋に避難してたのである。
「そりゃぁ、アンタの自業自得なんじゃないの?『私たちだけの秘密だー』っていう奴をバラしちゃったんだから~」
「リズ……」
にひひ、とイタズラっぽく笑う桜色の髪の色の女性は鍛冶屋のリズ。今日はエギルの手伝いで来ていた。
ちなみに、リズはキリトの『二刀流』スキルをどうやら前から知っていたらしい。ちょうど、キリトがリズに、もう一本の片手剣を作ってほしいという依頼をした時にだ。
「ま、まぁ、バレてしまったものは仕方ありませんし、時間で解決するのを――ん?」…ドタドタ
なにやら廊下がドタドタと鳴り響く。
そして、
バタンッ!!
ドアが吹っ飛ぶんじゃないかぐらいのものすごい音で開く。
「はぁ―…はぁ―…」
よほど慌てていたのだろう、肩を上下に、呼吸をしている白き女性騎士、アスナが立っていた。
「アスナさん?どうしたんですか?」
「どうしよう…!大変なことのなっちゃった……!」
第55層 グランザム 『血盟騎士団本部』
「君とボス攻略の時以外で話すのは初めてだったかな?キリト君」
とある一人の男性の声が会議室に響き渡る。大きな声ではないが、そのはっきりとした声はどのプレイヤー達にもない、優雅さがあり、どこか惹かれるカリスマ性があり、そして
「いえ、前の67層の対策会議で少しだけ、お話ししました、『ヒースクリフ』団長」
その問いに返答するキリト。そして今、キリトとアスナの目の前にいる男性こそが、
「
ヒースクリフは67層の出来事を思い出しながら感傷にひたる。
そして、しっかりとした目でキリトたちをじっと見つめる。そして言葉を続ける。
「なのに、君は我がギルドの貴重な主力プレイヤーを引き抜こうとしているわけだ」
「「……」」
ヒースクリフの含みのある言い方に二人の顔が険しくなる。
アスナが何か発言をしようとしたら、キリトに手で制される。代わりにキリトが口を開く。
「貴重なら、
キリトがここで言ったのは『クラディール』のことだ。
実は、キリトはソルと別れた直後にアスナと会う。(そこでトラブルがあったが今は端折る)
問題はこの後で、なんとクラディールがアスナの家にまでうろちょろとしていたことなのだ。
護衛とは言っても、一歩間違えればれっきとした犯罪だ。
そこで、キリトとクラディールが一悶着を起こし、決闘にまで発展。結果はキリトの余裕勝ちだったが、クラディールがそれでも不満を口にしたので、
その件はヒースクリフの耳にも入っていたのだろう。困惑した表情ながら、しかし、しっかりとした態度で言う。
「クラディールの件では迷惑をかけてしまったことは謝罪をしよう。だが、我々としても副団長を引き抜かれて『はい、そうですか』というわけにはいかない」
別にヒースクリフは変なことを言っているわけではない。最強でありながらもギリギリの戦力なのだ。それを副団長がギルドをやめるとなると、どれくらいの損失がでるのか分からない。
だからと言って、アスナが折れるわけではない。キリトも彼女の性格を分かっている。
だから、ヒースクリフはこう提案してきた。
「キリト君、私と勝負しなさい」
「え!」
「……」
アスナは驚き、キリトは依然、ヒースクリフの瞳をじっと見つめる。
ヒースクリフは続ける。
「欲しければ剣で、二刀流で奪いなさい。私と戦い、勝てばアスナ君を持っていくがいい。だが負ければ――」
ヒースクリフはフッと笑い、
「――君が血盟騎士団に入るのだ」
数秒だけ、時間が止まったかのように静かになる。アスナはキリトを見つめる。
やがて、キリトが覚悟を持ったように言う。
「いいでしょう。剣で語れといううのなら望むところです。決闘で決着をつけましょう…!」
――翌日――
第75層 コリニア・決闘場
「さぁ!いい席も残りわずかだぁ!!急いだ、急いだぁ!!」
血盟騎士団のメンバーの一人が商店街で見る店の人並みに声を張る。しかし、それ以上に会場の客たちがワイワイガヤガヤとしていた。
そして、場所は変わり決闘場内の控室でも、
「もぉ!ばかばかばかぁ!!なんであんなことを言うのよ!!!」
観客たちの声に負けないぐらいアスナの大きな声が狭い部屋に木霊していた。
「悪かった、悪かったよ。つ、つい売り言葉に買い言葉で……」
「って言うよりも、単に場の空気に流されただけじゃないんですか?」
「……うっ」
キリトの言い訳をバッサリと切り落とすソル。図星だったらしく、「はい、その通りです」と言わんばかりの顔だった。
やれやれと言いたくなるソルは首を左右にゆっくり振る。
「…たしかに」
アスナが口を開く。
「たしかに、キリト君の二刀流を初めて見たときは別次元の強さだと思った……。でも、団長の
途中、アスナは暗い表情でうつむく。そこから先はソルが続けて言う。
「たしか、ヒースクリフさんのユニークスキルは『神聖剣』、だったよね?」
「ああ、そうだ。『神聖剣』。剣と楯の合わさった攻防自在の剣技。攻撃力もすごいが、何より防御力が圧倒的に凄まじい。」
そう、ヒースクリフもキリト、ソルと同じく『ユニークスキル』の持ち主なのだ。
ソルの『笛吹王』
キリトの『二刀流』
そして、ヒースクリフの『神聖剣』
現在確認されているユニークスキルはその3つだけ。
「それに団長のHPバーがイエローゾーンに達しているのを陥った所を誰一人、見たがことないわ……」
そして、最強と言われる所以がヒースクリフのHPバーの色。アスナの言う通り、誰もイエローゾーン以下に陥った所を見たことがないのだ。
「もう、ゲームバランスが崩壊してますね。ヒースクリフさんの強さは」
「……」
ソルの言葉にアスナが再びうつむく。
「ああ、でも負けるつもりはないさ」
「……!」
「ふふっ、その意気ですよ。キリト君」
そう言ってソルは立ち上がる。
「そろそろ時間になので席に戻ってますね。キリト君、頑張ってくださいね」グッ
「ああ、待ってろ。
男二人は互いに軽く拳をあわせて、ソルは会場の席に戻るため二人と別れる。
「……キリト君」
「大丈夫だアスナ。必ず勝ってくる」
そう言ってキリトも立ち上がり、試合のため会場に向かう。
そんなキリトの背中をアスナはただ何も言えずに見ていた。
「お~いソル!こっちだこっち~!」
「ふぅ~、なんとか間に合いました。すごい混雑ですね」
「ホントよね、こんなにたくさんの人が集まるなんてね~」
「こりゃぁ、何か商売しとけば良かったな。そうすりゃぁ一儲けできたのによぉ」
「こ、こんな時までエギルさん、すごいこと考えますね…」
「キュイィ~……」
「シリカちゃん、あんないやらしいことを考える大人になっちゃ駄目だゾ。ついでにあのバンダナ髭にも気をつけろヨ」
ソルは何とか席に戻ることができた。他にもクライン、リズ、エギル、シリカとピナ、そしてアルゴも来ているのである。
「おいおい!なんで俺が注意対象になっているんだよ!俺がそんなに危ない奴に見えるのかよ!」
「おい、アルゴ!別にいやらしい事じゃないだろ。立派な商人魂と言ってもらいたいね。あと
「なっ!?エギルてめぇ!」
「ハイハイ、分かったから!ただでさえ会場が暑苦しいのに、これ以上暑苦しくなったら溜まったもんじゃないわよ」
「あ、あははは……」
クラインとエギルで喧嘩になりそうなところにリズが止めに入り、シリカはその勢いに思わず苦笑いが出る。
それに比べてソルはさきほどから静かにステージを見つめてる。
「ソルっち、どうしタ?」
「あ、いえ、少しだけ考え事を――」
「あっ!!キリトさんがでてきましたよ!!」
キリトとヒースクリフ。二人が出てきただけでドッと、歓声が湧き上がる。
「…すごい人の数だな」
キリトの言葉にヒースクリフは溜め息をこぼす。
「こんなこと団員たちに許可した覚えはないんだけどね…」
「じゃぁ
「それは無理だ。なぜなら君は私のギルドに入るからだ」
「へぇ、もう勝った気でいるのかよ」
「ああ、君には悪いが勝たせてもらうよ」
そう言ってヒースクリフは決闘の申請を行う。
すぐにキリトの目の前にヒースクリフからの決闘申請状が届く。
キリトは〇を押して、形式を選ぶ。決闘形式は『初撃決着』。これはどちらかが大ダメージ(まさしく一撃)を入れるか、先にHPバーが半分(イエローゾーン)にさせた方が勝者となる。
カウントが始まる。
観客も先ほどの歓声が嘘みたいに静かになる。
ソルたちも静かにキリトを見守る。
――5、
それぞれ、鞘から剣を抜き、
――4、
お互いに手に力を込め、
――3、
腰を、体勢を低くして、
――2、
眼は今目の前にいる相手だけを捉え、
――1、
足に力を込めて、そして――
――0
ブザーの音と共に決闘が始まった。
瞬間、キリトが一気に距離を詰め、剣と一体化するように突進する。
「…っふ!」
ヒースクリフはそれを楯で受け止める。
「っは!っふ!っやぁ!!」
キリトの怒涛の攻撃にヒースクリフは楯で防ぎながら静かにキリトの姿を捉える。
何発かあと、ヒースクリフが楯と一体化した瞬間に――、
「っ!」
ヒースクリフの切り上げを後ろに跳びのいて回避しようとする。
もちろん、ヒースクリフはこの瞬間を見逃さない。今度はヒースクリフが一気に詰め寄り、キリトの着地と同時に、
ッガ!!
「ぐふッ!?(楯をそんな風に使うのか!?)」
楯がキリトの腹に命中する。しかし、これは決め手の一撃にはカウントされなかった。そして、そのまま吹っ飛ばされる。
キリトもうまく体勢を整えるが、その間にもヒースクリフはまた一気に詰め寄り、切り掛かる。
2,3発受け止めた後にキリトは後方に飛び退き、そのまま――、
ガキンッ!!
SSで剣と一体化して突進、ヒースクリフは楯でそれを受け流す。
「素晴らしい反応速度だな、キリト君」
「そっちも硬すぎるぜ…!」
うぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!
一連の攻防のやり取りに観客は興奮し会場が歓声が木霊する。
「す、すごすぎるぜ…」
「あ、あぁ…!」
「二人の動きが見えないわよ……本当に人間?」
「さすがのキー坊も最強相手に手間取るカ…」
「キリトさん……」
「……」
ソルたちもキリトを見守る中、またしても二人の怒涛の攻防が始まる。
お互いに切り攻めては受け流し、距離を詰めては一旦距離を置く。
(まだだ…!)
キリトの振り下ろす剣の速度が上がっていく。
(まだ、上がる…!!)
それと比例して、ヒースクリフの守りが多くなる。
そしてついに、
「でやぁ!!」
「…っ!」
キリトの剣がヒースクリフの頬をかすめる…!
それと同時にキリトは
「はぁああああ!!!!」
次々と楯に降りかかる星をも切り裂く16連撃の斬撃。
二刀流SS「スターバーストストリーム」
(行って!!そのまま一気に楯を剥がしてください!キリト君!!多分これが最大にして最後の”チャンス”です!!)
ソルが心の中で強く願う。
キリトとヒースクリフの決闘で一番の鍵になるのが『どれだけ早く一撃を決めれるか』である。
キリトのユニークスキルは攻撃に攻撃を、速さに速さを追及する破壊重視。
一方、ヒースクリフのユニークスキルは攻めては守っての徹底して安定したオールラウンド。
相性の良し悪しは特には無いが、やはり剣の耐久値の消耗が激しいキリトには長引けば長引くほど分が悪くなる。
ならば即効でケリをつけれた方が良いに決まっている。ソルは今回の決闘の
なかなかに剥がれない楯に斬撃を重ねていくキリト。ヒースクリフも一発一発が重い連撃を受け止める。
しかし、チャンスが来た。
ガンッ!!
「…っ!!」
(
(そこです!!行けえええ、キリト君!!)
ヒースクリフの楯が大きく腕ごと身体から離れて、胴が見えるぐらい仰け反る。
隙ができた。
キリトは大きく、素早く、剣を振り下ろす。さすがの最強と謳われるヒースクリフも体勢が崩れてては回避不能。
ソルもこれが決定打になり、キリト君が勝つと確信した――
――が、
スカッ――
「なっ――」
「え――」
ヒースクリフが余裕でそれを避けたのだ。まるで
渾身の一撃を避けられたキリトは当然虚を突かれたかのような顔をする。
ソルもこれには流石に驚きを通り越してぽかんとする。
ザシュッ…!
キリトはSSの発動硬直を突かれてヒースクリフの決定的な斬撃を受けた。
ブザー音が鳴る。決闘はヒースクリフの勝利に終わった。
会場の観客たちは何が起こったのかもわからずに、結果だけを見て歓声を上げる。
「……」
キリトは何が起きたのか分からないまま、自分の敗北をボーっと眺めていた後にヒースクリフを見た。
彼もキリトをジィッと見た後に、方向を変えてステージを後にした。
一方、クラインたちはキリトがあと少しのところで負けてしまって、それぞれ悔しい表情をする。
しかし、ソルだけは妙な顔をしてずっとヒースクリフを見続ける。
(あの時のキリト君の一撃、あれは確かに回避不能だったはず……、なのにヒースクリフさんはあれを悠々と…)
ソルはヒースクリフの最後の回避を見て、何か心に靄が出ていた。
あの速さは、盾持ち剣士のできる速さじゃなかった。
あの速さを
あの速さは――
ギロリッ
「っ!」ゾクリッ・・・!
ソルは背中に氷を入れられたかのような程、背筋に冷たく嫌な電気が走る。
ヒースクリフが
ソルは一瞬、目を逸らした。あのまま目を合わせていたら心臓が鷲掴みを通り越し、握りつぶされてるかと思わせるほど。
冷や汗が止まらなかった。自分の中にある
「ん?どうしタ?」
「っ!?」
聞き覚えのある知人の声にびっくりするソルだったが、持ち前のポーカフェイスでいつもの丁寧な口調を出すように心掛けた。
「…何でもありません。この後、キリト君の慰め会でも開こうかなと思ったんですが……」
「おお、良いじゃン、良いじゃン♪おれっちも入れてくれよ~」
「ええ、良いですよ。…それじゃぁ先に帰ってますね」
そう言って、クラインたちにも先に失礼しますと一言入れたソル。席を立ち、一足先に会場を出る。
でもこの時の心臓はバクバクだった。
ヒースクリフの、あの目は、敵を見る目だった。
(あの目は…危険だ…。ヒースクリフさんとは攻略以外では会ってはいなかったけど、僕は…あの目に
ソルの言う通り、ソルはヒースクリフとの面識はあまりない。ボス攻略でも互いの顔を見る程度、話すことも少なかった。
キリトとの決闘の時のあの速さと言い、睨まれたことと言い、ソルはヒースクリフに疑念を抱く。
(……このままじゃ駄目だ)
ぶんぶんと頭を振って息を整える。流石に時間も経っていたので心が落ち着いてきた。
(今は、キリト君の慰め会のことを考えよう)
そう言って、ヒースクリフのことを一旦頭の片隅に置いておくソルだった。
さて、いかがでしたか?
今回は少々短めになってしまいました。
それにまた謎が増えましたね…。
次回予告を書く前に少しだけ、活動報告にアンケートを掲載しておきます。
小説の書き方に関する質問です。他にも何かあればアンケートに載せておきます。
強制はしませんが、参加してくれる人が多いと自分も嬉しいです。
もちろん、感想でも「ここをもっとこうした方がいいよ!」とか「ここの表現がわかりにくい」などありましたらバンバン書き込んでください!未熟な自分にはたいへん参考になりますので!
最後に、評価のことなのですが…、言いにくいのですが、低評価を押してくれた人はどこが悪かったのかを書き込んでくれるとうれしい限りです。別に感想を書く制限は設けていませんが、何も書かずに低評価を押されても自分も何が・どこが悪かったのかが見直せずにいてしまうので、評価をつける人は何か、一言二言でもいいです、何か書き残してくれると嬉しいです。(もちろん、高評価を押してくれた人も一言二言書き残して構いません!)
ソル「大丈夫です。犠牲になるのは作者の豆腐メンタルだけですのでどんどん書き込んでください!」
…胃腸薬、買っておいた方がいいですねこれ。
ここまで、見てくれて本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします!!
では、また次回でお会いしましょう。
次回 「結婚の決め手が吊り橋効果って、どう反応すればいいのでしょうか?」