えっ?笛で戦ってるのって僕だけ?   作:モグ・モグラ

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どうも、モグ・モグラと申します。

大変お待たせしました…!最新話です!!
この4か月間、空いてしまったこと本当に申し訳ございませんでした!
それでも見てくれると幸いです…!

今回はSAOの中でも一番の名場面ですね!皆さんもご存じのアレです!!

それではどうぞ、ごゆっくりと…!


第二十一話~煌めきは星の如く、交わりは渾沌の如く~

10月18日 第74層 カームデッド

 

ここは攻略組の最前線である層『カームデッド』の転移門前。少し古ぼけた民家の家が軽く囲いとなっている。そして、背景にはどでかい搭、迷宮区がそびえている。

そこに、

 

「ふあぁ〜〜」

 

一人間抜けな欠伸をしている黒いコートを羽織り、黒い剣を携えている少年が眠そうに門の階段付近で座っている。

 

(来ないなぁ…)

 

黒の剣士、キリトはなかなか来ない今日のパートナー(・・・・・)に対して心の中で愚痴っていた。

約束の時間になっても来る気配がないのである。キリトも時間にはあまりとやかく言うことはしないものの、約束をしてきたのはそのパートナーなので、約束には守ってほしいものである……。

っと、キリトがそう思っていたとき、

 

シュィィィン…!

 

「!」

 

転移門が光出す。これは誰かがこの層に転移してきた合図でもある。

やっと来たか、と思い、いまだに眠くて、だるい腰を上げて、立ち上がる。

転移門の光の中から人影が見え、そして出てきたのは……

 

「ん?ソルか?」

 

「あ、キリト君」

 

白黒のローブにフードが作った影で目元までが見えないいつもの少年、ソルだった。ソルとキリトは何回もパーティーを組んだことがあるので、お互いに顔見知りではある。

しかし、残念だがソルはキリトの今日のパートナーではない。

 

「おはようございます、キリト君」

 

「あぁ、おはようソル。今日もボス部屋探しか?」

 

「まぁ、ボス戦に備えての強化素材や回復素材とかの探索ですかね。ボス部屋探しはそのついでです。キリト君はボス部屋探しですか」

 

「あぁ、それもあるが今日はちょっと……他の人と……約束がね…」

 

「他の人と……、あぁ、アスナさんとですか?」

 

ソルは昨日のアスナの会話を思い出す。たしかアスナはキリトと今日は用事があると確かに言っていた。

 

「ああ、そうなんだよ。はぁ……」

 

「……大丈夫ですか?なんだか浮かない…っと言うよりかは面倒くさいって顔してますよ?」

 

「あ、ああ、大丈夫だ。っていうか本当にいつも的を得ていること言うな、ソルは」

 

「…っということは本当に面倒くさがってるんですね」

 

「お前も来てくれるか?」

 

「アスナさんに何かされそうで怖いのでやめときます(今日に限っては特にやめとこう)」

 

「デスヨネー」

 

という、いつもの何のひねりもない会話で始まるキリトとソル。でも今日のキリトはアスナとの約束(?)があるのでパーティーは組めないのだ。

 

「それじゃぁ、行ってきますね」

 

なのでソルが先に74層の迷宮区に行くのは当たり前である。

 

「ああ。気をつけろよ」

 

「ええ、分かってますよ」

 

仲間のいつもの言葉にいつもの返答をするソルは転移門の中に消えてゆくのであった。

 

「……さて、待ちますか…、って言ってもアスナ遅いな〜、時間に遅れるなって言ったのはアスナだろ……」

 

そう言って転移門付近の石段に腰を下ろすキリトは軽くあくびをする………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………のが、ラッキースケベの10秒前だったりする。

 

シュィィィン…!

 

「ん?」

 

「キャァァアアア!!?どいてぇぇぇ!??」

 

 

 

74層 迷宮区

 

 

辺り一面がなんとも言えない不気味な景色に囲まれた通路。

 

カァン!キィィィン…!

 

そこで金属がぶつかり合う音が木霊する。

戦うは蜥蜴の兵(リザードマン)とーーー

 

「っやぁぁ!!」ブゥンッ!

 

ガキィィン!!!

 

ーーーー『渾沌の演奏者(ソル)』だ。

 

お互いに一気に距離を詰めより、武器でつばぜり合いをする。お互いの瞳は依然としてお互いを睨み合う。

すると、

 

ッバ

シュン!!!

 

ソルが急に蜥蜴兵の刃を受け流しながら横に避けた。すると、後ろからソルがさっきまでいた位置に刃が降り下ろされる。

 

(やっぱり背後からの不意討ちか!)

 

そう、ソルの予想通り、背後からもう一体、蜥蜴兵が隠れていたのだ。隙をついてソルを襲おうとしたのだ。

しかし、その不意討ちは失敗に終わる。

不意討ちを仕掛けた蜥蜴の兵は大きく空振りした反動で体勢が崩れる。

 

「っ!」バッ!

 

ソルはその隙を見逃さなかった。すぐさま体勢を崩した蜥蜴の兵の後ろに回り込み、

 

「でいやぁぁあ!!」ブゥンッ‼

 

体を回転させ、そこからの勢いに乗せた渾身の一撃は蜥蜴の兵の背中をとらえた。

 

バギィ!

 

鈍く、聞き慣れてしまった音がして、蜥蜴の兵はその衝撃でもう一体の蜥蜴の兵(前方)の方へ吹っ飛ぶ。

 

「シャッ―!?」ゴツン!

 

もう一体の蜥蜴の兵は吹っ飛んできた仲間を避けることもできずに激突する。

さらに―

 

シュィィィン…!タタタ―!

 

脚を白色に輝かせながら(・・・・・・・・・・・)ソルが二体の蜥蜴の兵目掛けて飛び込んでくる。

そしてそのまま―

 

「っはぁ!」

体術SS「ブロウキック」

ドガッ!!!

 

白く輝く飛び蹴りは一つの的になった蜥蜴たちに見事に入り、更にSSの効果で5,6メートルより先まで吹っ飛ぶ。

 

パリーン…!

 

吹っ飛ばされている中、(不意討ちをしようとした)蜥蜴の兵の耐久値が0になり、ポリゴンと化し、散る。

これで残りはあと一体。

 

(一気に畳み掛ける!)

 

ソルは自分よりもデカイ笛を振り回し始める。そう、いつものお決まりの行動だ。

そして、オーラの纏った笛の吹き口に口を付けて…、

 

アアァァァ―!

 

低い男性の声の、アルトの音が響き、ソル自身のステータスを強化する。

 

旋律効果「攻撃強化(特大)」

 

そして、「笛吹王」の効果で『同じ旋律』なら何度でも(・・・・)効果を付与できる。

 

1回の演奏の効果が発動するまでに掛かる時間はおおよそ4,5秒。ちょうど3回目を旋律を吹いたところで、吹っ飛ばされた蜥蜴の兵がソルに向かって走ってきていた。その手には黄色く光り輝く片手剣を振りかざしながら突撃する。

しかしソルはそれでも吹き続ける。その間にも距離はどんどん縮まる。

 

――6メートル

 

――5メートル

 

――4メートル

 

――3メートル

 

――2メートル

 

――1メー――

 

メギィ!――

 

――それは一瞬のことであった。

蜥蜴の兵が輝く剣を振り下ろすのと同時にソルはその剣を屈んでかわし、さらに同時に、笛を低姿勢のまま大きな弧を描くように蜥蜴の兵の顔に思いっきり殴打する。その音は決して聞くことはないだろう不気味で嫌な音。

 

ギギギィ……ブヂッ――

 

何かが、不器用に、ちぎれる音がした。蜥蜴の兵の()は体勢を崩しながらそのままソルの横をすり抜けた。そして――

()が体とは反対の方向へと飛んでいく。きれいな弧を描いてさっきよりも遠くへと飛んでいく。

 

パリーン……パリーン

 

蜥蜴の兵の体がポリゴン化して、そのあと遠くのほうで微かにポリゴン化する音がした。そのあとに。

テーン

経験値とお金、いくつかのドロップアイテムがソルの目の前で表示される。一通りの戦闘が終わった合図だ。

 

「ふぅ~、終わりましたか」

 

ソルはホッと一息をする。しかし気を抜いてはいけない。またさっきみたいに奇襲をやられたっらたまったもんじゃないのだ。

 

「『安全地帯』に移動しようかな」

 

『安全地帯』 迷宮区でもモンスターが絶対に出現しない場所があり、そこを『安全地帯』と皆から言われているのだ。ただし、普通にプレイヤー同士のダメージは『決闘』申請なしで通るので、油断をすればオレンジやレッドプレイヤーに襲われかねない。(でもないと困るのもまた事実だ)

有言実行。言ったからには即行動すること。そう(先生)から教わったソルはすぐさま安全地帯へと向かう。

右を曲がって左を曲がって、また右を曲がってと、スイスイと来た道を逆走するソル。

すると、

 

(うん?あれは…?)

 

ふと前方を見ると、ぞろぞろと十数人が集団になってぞろぞろと向こうから歩いてきている。

 

(あの鎧……『軍』の皆さん…?)

 

どこか見覚えのある装備だと思ったら、『アインクラッド解放軍』(皆からは『軍』と呼ばれているギルド)の人たちだった。25層で多大な被害を受けた後、内部を強化をしようとするも、今日まで攻略の前線の復帰の目途が立っていないのだ。

なぜ、ここに?その疑問がソルの頭を駆け巡る中、軍もソルに気が付いた。

そして、代表の人なのか、一人だけ妙に興奮しているというか気合がこもっているというか、そんな感じの人が一歩前に出た。

 

「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」

 

「…僕はソル、基本はソロをしています」

 

ソルは簡易的に自己紹介をした。少しだけ棒読みになっていたが。

 

「君はどこまで攻略したのだ?」

 

なんともぶっきらぼうに発言したコーバッツ。普通そういうことを聞くときは自分たちの攻略状況をいうのが当たり前だと思うのだが、ソルはその態度を気にせずに返答する。

 

「攻略というよりかは素材集めと経験値稼ぎですかね…」

 

「ふん、やはりそんなものか」

 

明らかに小馬鹿にした発言。ソルは少しだけムッとしたが、表情がフードに隠れて見えはしなかった。

 

「それではな。せいぜい頑張って素材集めを頑張るといい。我々は時間を無駄にできないからな(・・・・・・・・・・・・・・・・)。さぁいくぞぉ!!」

 

相手には進行状況を聞いて、自分たちの進行状況を明かさないのはさすがに失礼なのでは?そう、思ったソルは軍が自分とは進んでた道とは別の道へと進んでいくのをただただ見送ったのだった。

 

(なんか嫌な感じだったなぁ。あんな人みたいにはなりたくないなぁ)

 

そう思いながら、安全地帯へ向かうソル。

 

(――でも――)

 

そんな中でソルは思う。

 

(あのまま行かせて良かったのかな……?)

 

さっきの軍の、コーバッツ…中佐?中尉?はいいとして、他の人たちはなんというか疲れていたような雰囲気だった。あんなのではたしてこの迷宮区の探索は持つのだろうか?止めておけば良かったのでは?そんなモヤモヤしたものがソルの心を曇らせる。

ソルは不安を胸に抱いたまま、休息をするため安全地帯を目指した。

 

 

 

 

――その不安が後悔に変わるのはすぐ近くだった。

 

 

 

 

 

数分後、ソルはまた向こうから何人か来るのに気が付く。

 

「……キリト君?それにアスナさん?」

 

今度は知り合いだった。2人のほかにも見覚えのある顔の人たちが5,6人。

 

「それに『風林火山』の皆さん?」

 

その人たちは今までも攻略に貢献してきたり、ソルがお世話になったりしたギルド『風林火山』。

 

「っ!ソルか!?」

 

一番に声を上げたのは親友のキリトだ。

 

「き、キリト君、どうしたの?」

 

ただ、キリト君たちの様子が少しおかしい。何か急いでいるような…

 

「おお!ソル!さっき軍の連中に合わなかったか!?」

 

次は風林火山のリーダー、バンダナと武将髭がお似合いのクラインが何か焦った様子でソルに聞いてきた。

 

「軍ですか?はい、先ほど会いましたよ?」

 

「なんですって…!」

 

今度はアスナが驚く。ソルは皆が何をそんなに慌てているのかが理解できなかったが――

 

 

 

うわあああああああああああああああああ!!!???

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

突然の悲鳴にその場にいた皆は驚く。

 

「――っ!?悲鳴が!?」

 

中でもソルはひどく動揺する。いや、ソルだけ(・・・・)が狼狽えていたのだった。キリトたちはやはり…!と言いたげに顔を見合わせる。

そして――、

 

「「っ!」」

 

「お、おい!」

 

「ふ、二人とも!?どうしたんですか!?」

 

キリトとアスナが突然にも走り出した。その反応に遅れる、ソルと風林火山のメンバーたち。

慌てて二人の後を追おうとした時――

 

シュイイイイイン・・・!

 

「「!?」」

 

まさしくタイミング悪く、モンスターたちがソルたちを囲むようにリポップする。

 

ガキィン!

 

「くぅ…!」

 

モンスターの斬撃を受け止めるソル。モンスターたちもそこそこいて6,7人で倒すにしても少々タイムロスになる。

 

「うぉお!」

 

ザシュッ!!

 

クラインがモンスターの背中に斬撃を喰らわせる。そして――

 

「ソル!!」

 

「っ!」

 

クラインの怒号のような叫び声にすぐに反応するソル。

 

「お前は二人を追ってくれ!こんなモンスター俺たち風林火山だけでも難なく倒せる!!お前は先に行ってくれ!!あいつらだけじゃ無茶しそうだからよぉ!!」

 

「っ!……わかりました!!!」

 

一瞬、自分も残ります、と言おうとしたが、クラインの喝によりそのセリフを飲み込んだソルはクラインたちを信じ、そのままモンスターの包囲網から脱出する。そしてそのまま全力で地面を蹴るように走った。

クラインたちの引き付けがあったおかげで、ソルはすぐに追うことができたため、なんとか二人に追いつくことができた。

 

 

 

 

走り続けてから1,2分、ようやく前方にとても大きな大理石の門が見えてきた。しかもその扉が開いているのだ(・・・・・・・)

 

「…馬鹿……!」

 

アスナが唇を噛みしめる。キリトも焦りが顔に出ている。そんな中でソルも嫌な予感がひしひしと伝わり、冷や汗がにじみ出る。

 

「「「!!」」」

 

出入り口付近で止まった三人は目の前の光景に絶句する。

ソルはその眼でしかと目に焼き付ける。

上半身は青い毛並、下半身は黒い毛並に覆われた蹄の脚、尻尾は蛇で頭部には禍々しく渦を巻く対称的な角。

そして、神々しく青く光る眼が今目の前にいる獲物たち(プレイヤー達)をギロリと捉え、刃渡り2,3メートルはあるであろう大剣を片手で余裕に振るうその姿は悪魔か魔王だろう。

 

第74層・フロアボス『The Gleameyes(青眼の悪魔)

 

青眼の悪魔は奥にいるプレイヤー達にきりきりと迫る。ほとんどのプレイヤー達は地べたに膝をつけている、中には気絶しているのか弱っているのかわからないが仲間の肩に身を預けている人もいた。

 

「あの人たちは、さきほどの……!」

 

そう、ソルには見覚えのある鎧を装備したプレイヤー達、つい十数分前に出会った『軍』の人たちだ。

 

「まさか、あの人数でボスに挑もうとしたのですか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!?」

 

ソルは声を荒げる。それは当たり前だった。ボスに挑むときは必ず、最大の48人で挑むのが鉄則、というよりも誰一人死なないための必要最低限なルールだ。

それを4分の1ぐらいの人数で挑むなんて、自殺願望もいいところ、最悪全滅するかもしれないのだ。

でもそんなことよりも――

 

「何をしているんだ!!??はやく『転移結晶』を使うんだ!!!」

 

キリトが怒鳴る。今までのボスでも転移結晶の有無はかなりの生存を左右する、これもデスゲームを攻略するうえで必要なアイテム(命綱)なのだ。

今までもボスの部屋では転移結晶を使うことができた。なら、今回も使うことが――

 

駄目なんだ(・・・・・)!!転移結晶が使えないんだ(・・・・・・)!!!」

 

「なに!?」

 

「えっ!?」

 

「そんな!?」

 

三人は雷に撃たれたような衝撃が体に駆け巡った。転移結晶が使えない。それは絶望の知らせだった。

 

「そ、そんな…今までのボスの部屋では、そんなトラップは、無かったのに……!」

 

アスナは思わず呟いた。しかし、ソルとキリトは前にもこのような経験をしていた。

あの忘れることのない絶望を(・・・・・・・・・・・・)

 

「『結晶無効化エリア』…!」

 

「まさか……ボス部屋にも…!」

 

「おい!キリト、ソルっ!!」

 

後ろからクラインたちの声がだんだん近づいてくる。どうやら無事に追いついたらしい。

 

「な、なんだありゃぁ…!」

 

クラインたちも青眼の悪魔を見て思わず、脚が一瞬だけ震える。

 

「転移結晶が使えないらしい!俺たちが切り込めば、何とか退路ができるが…!」

 

「な、なんとかできないのかよぉ…!」

 

キリトの言う通り、キリトたちが攻撃を仕掛けてタゲを逸らすことができるが、それかえって自分たちに危険が伴うということ、最悪、仲間の誰かが死ぬということもあり得るのだ。

提案をしたキリトはまだ子供、そんな判断を勝手に一人で決めることはできない。クラインも風林火山のリーダー上、他人と仲間どっちをとると言ったらそれはやはり仲間だ。仲間を犠牲にはできない。

悩んでいる中、一人の男性の雄叫びが轟く。そう、この部隊を率いるコーバッツだった。

 

「我々解放軍に『撤退』の二文字はありえない!!戦え!戦うんだぁ!!!」

 

「はぁ!?」

 

「なっ!?」

 

「あの馬鹿野郎…!」

 

コーバッツの無謀にも等しい威勢に皆が驚く。

 

「――ふざけないでください!これ以上はより多大な犠牲が出るだけです!早く撤退してください!!」

 

ソルが怒鳴りにも近い勢いで全力で叫ぶ。しかし、

 

「うるさい!!さっきも言ったように我々解放軍に『撤退』の二文字はない!!」

 

「仲間の命をなんだと思っているんだ!!それでも隊長なのか!!」

 

コーバッツの返答に堪忍袋の緒が切れたソル。しかしそれでもコーバッツは折れなかった。

 

「うるさい!!うるさい!!総員!掛かれぇー!」

 

「おい、やめろぉ!!」

 

コーバッツの半ば強引な指揮によって全員で突っ込む軍にキリトは止めに入ろうとしたが、

 

「グゥォオオオオオオオ!!!」

 

紫色の悪魔の吐息(ブレス)に軍は突撃も許されずに狼狽えてしまう。そのまま悪魔は大剣を振り下ろす。

その威力はほとんどのプレイヤー達を吹っ飛ばすほどの風圧を生む。

そして、

 

バシュッ――!

 

巨体には似つかわしくない速さで一人のプレイヤー(・・・・・・・・)を切り飛ばした。

 

そのプレイヤーはソルたちの方に吹っ飛ぶ。

ソルたちは驚く。切られたプレイヤーは――

 

――コーバッツだった。

 

「お、おい!しっかりしろ!?」

 

キリトとソルがコーバッツに駆け寄る……が、

 

「……もう、駄目だ」ギリ・・・!

 

ソルが唇を噛みしめる。

もう、コーバッツのHPは0だったのだ。

 

パリーンッ

 

ヘルメットの耐久地が0になり、ポリゴンとなって散る。そして、素顔が露わになる。

 

「「「「!」」」」

 

その顔は、悔しさが滲み出ていた――

――そして、呟く。

 

「あ、ありえない――

 

シュイイイン、パリーン・・・

 

 

コーバッツもポリゴンとなって虚しく散った。

 

 

「…っ!そ、そんなぁ…」

 

アスナは口を押えながら、嘆いた。

――しかし、間もなくして、

 

「う、うわああああああああああ!!!!」

 

「「「「!!」」」」

 

またプレイヤーの悲鳴が部屋に響く。そう、ボス部屋にいる限り、ボスはプレイヤーを仕留めるまで攻撃する。

 

「グルルルルゥ…」

 

悪魔は手を休めることなく、次のプレイヤーの命を狩るのだ。振り上げる大剣は妖しく照らされる。

 

「――ダメ…ダメよ……もう――」

 

「グオォォォオ――」

 

「うわああああああ!?!?!」

 

極限の一瞬、動いたのは――

 

 

「駄目えええええええええええええ!!!???!?!??」

 

 

――アスナだった。

 

「アスナ!」ッダ!

 

「アスナさん!」ッダ!

 

その次にキリトとソルが走り出す。

 

「ああ、もう!どうっともなりやがれ!!いくぞぉ!なんとしても助け出すんだぁ!!」

 

そしてクライン率いる風林火山が動く。

 

「はぁぁぁぁああ――!!」

 

アスナは素早く、かつ悪魔の背中めがけて、SSを打ち込む。

 

「グゥ!!」

 

そのことにより大剣はプレイヤーの命を仕留め損ねる。――が、

 

ギロリッ

 

「!!」

 

タゲはアスナに移り変わる。青眼がアスナを捉える。

 

シュッ--ガキンッ!!!

 

横に払った大剣をなんとかいなすアスナだったが、悪魔のパンチをもろに喰らう。

 

バキッ!

 

そのまま吹っ飛ばされるアスナにとどめの一撃を振りかざす青眼の悪魔。

しかし、

 

「「はぁぁ!!」」

 

ギギギギギギィ――!!!

 

ソルの笛とキリトの剣が間一髪にいなし、軌道を変え、大剣はアスナのすぐ隣に切り込みを入れる。

 

「さがれっ!!」

 

キリトの叫び声にアスナは一旦後方に下がる。

 

「大丈夫か?しっかりしろ!」

 

「す、すまん…」

 

その間にもクラインたちが軍のプレイヤーを救助する。

 

「グゥォオオ――!」

 

青眼の悪魔はクラインたちに向かってブレスを吐こうとしたが――

 

ザシュッ!!

 

背中にキリトのSSを叩き込まれる。しかし、大したダメージにつながらない。

 

「ぐぅるるる――!」

 

攻撃の邪魔をされたのか、次はキリトにタゲが移り、青眼の悪魔は大剣を振り下ろそうとした――

――が、

 

ハァァァァァアーー!!

 

「!」

 

部屋に響き渡る高い音(ソプラノ)。青眼の悪魔はその音に釣られ、そっちを向く。

そこにはソルが笛を加えて立っていた。そして先ほどの奏でた旋律は

 

旋律効果「挑発」

 

強制的にソルにタゲが移る。

 

「グオオオオオオォォォ!!!」

 

「さぁ、来い!!!」

 

その合図とともに青眼の悪魔は一気にソルに詰め寄り、大剣を振り落す。

 

ガキンッ!バキンッ!!ガンッ!

 

ソルはそれをいなして、ダメージの軽減をする。

 

「くぅぉぉっ!!(こんな攻撃!あの時(・・・)のに比べたら――!)」

 

ソルは思い出す。今戦っているボスの2倍の背丈はあった、あの白き骨の悪魔(・・・・・・)のことを。あの時の攻撃は受けても即死、防いでも即死ぐらいの理不尽な攻撃だったが、今の攻撃は防いでも少ししかダメージを喰らわない。

 

 

なら大丈夫だ(・・・・・・)

 

 

とも言ってられない。

 

「グァァァアア!!」

 

「うおおぉぉお…!」

 

「「「ソル!!」」」

 

三人同時にソルの名を叫ぶ。ソルも力の限り斬撃を受け止めてるが、徐々にHPを減らしていく。

 

(さすがにこのままじゃもたない……!)

 

 

 

 

 

 

 

(くそ!このままじゃソルが…!)

 

キリトは焦っていた。このままではソルのHPはいずれ尽きる。

 

(こうなったらアレ(・・)を使うしか!……でも…!)

 

そう言って、キリトはアスナとクラインを見る。二人も何とかしなきゃとは思っているものの打開策が見つからない。

キリトも何かほかの打開策はないか考えるが――

 

「ぐああああ…!!」

 

「「「ソル!」」」

 

ソルが青眼の悪魔の斬撃を喰らい吹っ飛ばされる。運良く、打ち所が良かったものの次を喰らえば……

 

(…!)

 

キリトはとあることを思い出す。あの時、守ると約束したのに守れなかった約束。

モンスターの一撃で死んでいったあの槍使いの少女(サチ)のことを。

 

(もう、迷っている場合じゃない…!!)

 

そこからのキリトの判断は素早かった。

 

「アスナ!クライン!頼む!ソルの援護と十秒だけ稼いでくれ!!」

 

「っ!わ、わかった!」

 

アスナはうなずき、クラインは応え、ソルの援護に入る。

その間にキリトはとある操作(・・・・・)をする。

 

バシュッ!ザシュッ!!

 

アスナとクラインはすぐさま青眼の悪魔に攻撃を仕掛ける。

青眼の悪魔は怯み、ソルはその間に体勢を立て直すため、なんとか距離を置くことができた。

 

「よし!いいぞ!!」

 

キリトの合図で、アスナはSSで大剣を弾く、そして――

 

「スイッチ!!」

 

アスナと入れ代わる。そのまま大剣を剣でいなし――

 

――もう一本の顕現した剣(・・・・・・・・・・)で青眼の悪魔を攻撃する。

 

「「「――!」」」

 

三人は驚く。無理もない、今まで見たことのない戦闘スタイルなのだから。

 

キリトの両手にそれぞれの剣が――!

 

振り下ろした大剣も二本の剣で弾く。

そして、キリトは宣言する――

 

 

 

 

「スターバーストストリーム…!」

 

 

 

 

 

まさにここからは表現できないほどの華麗な美しさだった。

 

――その速さは星の速度であり――

 

――その流れは流星の如く――

 

――その威力は超新星の如く――

 

その美しく輝く2本の剣でまさに星を体現したかのように、

それは決して、敵相手に緩めることのない鬼神の如く、

最高の破壊力と速度を誇る最強のSSが一つ!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 

最後の一撃は、悪魔さえの一撃をも――

 

ザシュ――――

 

 

 

 

 

―――パリーン……

 

――超えたのだ。

 

そう、最恐の悪魔は散ったのだ。

 

「はぁ―――はぁ―――はぁ―――」

 

部屋に響く、一人の吐息の音。

その一人こそが、今回の悪魔を打ち取った『英雄』。

英雄は自分が生きていることを確認した後、

 

気絶したのだった。




さて、いかがでしたか?
前書きでも書いた通り、本当に間ができてしまってすみませんでした。
4か月間のブランクやパソコンの故障、受験勉強もあり、なかなか書けませんでした。
また初心に帰り、これからも精進していきます!

それでは!次回のお話でまたお会いしましょう!

次回 「黒VS紅(仮)」

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