えっ?笛で戦ってるのって僕だけ?   作:モグ・モグラ

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どうも、モグ・モグラと申します。

(アニメ路線に戻る意味での)久々な第十七話です。

通算UAが18000人突破!!ぐはぁっ!!(嬉しみのあまり吐血)


それではどうぞ、ごゆっくりと


第十七話~雪と竜と笛使いの共通点は空を舞うこと?~

2024年 6月24日 第48層 リンダース

 

ここは小さな川がところどころ流れている小さな町。一つ一つの家には水車が取り付けられており、その水車の力を利用して色んなことをするのだ。

例えば…

 

 

ギィィィィィィイイ、ギィィィイ――

 

 

そう、鍛冶場として武器を作ったりと。

 

ギィィイイ、ギィギィイイ

 

妙に癖になるこの金属の擦れる音。ここはとある鍛冶場、いわば武具店だ。

普通現実だと、鍛冶場とかの人はたいそう体がゴツイ漢や歳を取った職人さんが一般的なイメージだが…

 

「ふむ…、これで良し!」

 

ここは仮想世界。女性が鍛冶場で仕事するのも何ら違和感はない。

桜色の髪をした女性プレイヤー。その女性はちょうど仕事をしていたのだ。

SAOでは武器にも(一部を除いて)耐久値が設定されている。何もしないで、モンスターを倒し続ければ、どんな強力な剣だって当然壊れてしまう。なので鍛冶場に行って、武器をメンテナンスして耐久値を復活させる。これはSAOの中では常識の中の常識である。

まさしく、その女性の仕事はそれだった。でっかい研磨石を回しながら剣を磨いて、耐久値を復活させていたのだ。そして、ちょうど今終わったところだ。

 

「よっと~!ありがとう、リズ」

 

近くには白い服装の女性が腰かけていた石段から飛び降りた。どうやらその剣を依頼したのは彼女だ。

 

「まいど~…?」

 

白い服装の女性から金を貰った鍛冶場の女性、リズは何気ない質問を聞いた。

 

「今日はギルドの攻略に参加しないの?」

 

白い服装の女性は少し考えてから、

 

「今日はオフにしてもらったの。ちょっと人と会う約束があって…」

 

そう言って少し照れながら微笑む。

 

「ふ~ん、っム?」

 

リズはたまたま女性の耳に付いているイヤリングを見た。確かこのイヤリングは効果はなく、ファッション重視の装飾アイテムだ。

なるほど~っと、まさしくどや顔をしたリズは女性に詰め寄る。

 

「んっふふ~、そういうことね~」コノコノォ~

 

「な、なによ…」

 

慌てて誤魔化そうとする女性に運が味方するように、

 

ゴォ~ンゴォ~ン

 

正午の12時を知らせる鐘の音が響いた。

 

「っあ!そろそろ行かないと!?」

 

約束の時間に迫ったのだろう、女性は慌てて店を出ようとする。

すると、

 

「…アスナは大切なものが見つかったんだね…」ボソッ

 

「?何か言った?」

 

リズの小声がちょうど鐘の音と被ったのだろう、白い服装の女性、アスナはリズが何を言ったのか分からなかった。

 

「ううん、何でもない!上手くやんなさいよ!」

 

リズがアスナを少しからかう。アスナはまたしても慌てて言う。

 

「も~う!そんなんじゃないわよ!それじゃぁまたね!」

 

そう言ってアスナは慌てて店を飛び出した。

少しだけ静かになる鍛冶場。少しだけしんみりとするリズはとあるボードに貼ってある写真を見る。多分お世話になったであろう幾人かの職人さんと真ん中に映るリズ。そんな懐かしい写真を見て、ポツリと呟く。

 

 

 

「……私にも見つかるかな(・・・・・・)?……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、リズは一人黒い剣士と会うのだった。

 

~数日後~

 

場面は変わり、ここは55層の西の山。氷雪地方の山には吹雪が絶賛に吹いている。そんな山を歩いているのはとある一人の少年。白黒の混ざり合った渾沌のローブを靡かせながら歩いていたのだ。

 

「はぁ~」

 

深く息を吐く。はっきりと息が白く見えるぐらいの寒さだ。少年はそんな寒さにも何の反応も示さないような無表情でトボトボと歩いていた。

 

「……はぁ~、昔のシベリアを思い出す。あそこで確か、先生と一緒に完封摩擦したんだっけ……あの時は本当に凍死するかと思った……」ブルルッ

 

この物語の主人公であり、唯一、SAO内で笛を使うプレイヤーのソルは昔のトラウマ(思い出)にちょうど感傷(?)に浸っていた。

 

「でも、あそこより比べたらまだ涼しい方だね」

 

天候なども相まって-10~-20℃はあるこの地域を『涼しい』と言ってしまう辺り、彼はもう昔に体感温度を捨ててしまったのだろうか?

まぁ、そんなことは置いといて、なぜ彼がこんな寒いところにいるのかと言うと、一通のメッセージが原因である。

その内容はと言うと…

 

 

――第55層の西の山で謎の深い穴に落ちて遭難してしまった。一応無事だ。助けてくrいや、ください。キリトより――

 

 

(正直、気が抜けてガクッと転びそうになりましたが、一応、救助要請ですのでロープとかピッケルとかは持ってきたものの……)

 

ソルは当然の疑問を思い浮かべる。

 

(僕が行くような程なのかな?キリト君一人だったら自力で解決しそうな……っあ)

 

そこでソルは何かを察する。今思えばおかしいなことだらけではないか。

もし、キリト一人だけならば遭難なんてあまりしないだろう、逆に遭難したとしてもすぐに抜け出すだろう。しかし、それができないということは………

 

(キリト君の他にも誰かいるんじゃないかな……?)

 

そうだったとソルは思い出す。今に始まった事じゃないが、キリトの女運はハッキリと言ってヤバいものである。アスナといいシリカといい、キリトは女性に好意を寄せられているのであーる。もしかしたらこれからも、いや今回の件でも女性に好意を持たれてるかもしれないのであ~る。もしかしたら、キリトは他の女性と一緒に――

 

(まぁ、他の人が同行している可能性があるかもしれないから、今回キリト君はSOSを出したのかもしれないしね)

 

まぁ、小さいころから恋愛などを考える余地がなかったソルにはあくまで第三者がいる可能性だけしか考えられず、ソルはそう考えてひとまずその場所に行くことにした。

 

 

 

 

 

西の山の山頂、そこはたくさんのクリスタルの塊が輝く。

 

「ここが…キリト君が落ちた穴かな?」

 

そう言って、ソルがのぞき込む穴は直径でも6~7mはある底が見えない穴。キリトが言ってた穴とは多分これだろう。

 

「お~い!!キリトく~ん!!」

 

く~ん、く~ん、く~ん………

 

声が木霊する。しかし、下からは何の反応もない。

 

「あれ?おかしいな。返事が無い……まさか、脱出したのかな?」

 

もし脱出したのならしたで越したことは無いけど、せめてメッセージなどを早めに送ってほしいものだ。

 

「まぁ、でも念のために確認しておく必要もあるよね……」

 

流石に無いとは思うが睡眠をとっていて気づかないっていうこともあるかもしれない。すれ違いはあまり起こしたくはない。それに手っ取り早く終わらせよう。

なぜならこのエリアには……

 

「グゥォォォオオ……………!」

 

「!」ッサ

 

遠くから聞こえる何かの鳴き声にソルは近くのクリスタルの塊に隠れる。今もなお声が近づいてくる。

そして、やっと声の主をバッチリと視認できた。

 

「グゥォォォォオオオオオオオオ!!!!!」バサッ!!バサッ!!

 

巨大な体、白く輝く鱗、背中にはクリスタルでできた棘、そして何よりも特徴的なのは大きな翼。そう、このエリアに生息しているモンスターは――

――ドラゴンだ。クリスタルドラゴン。

 

(まさか…ドラゴンがこんな真昼間からいるなんて、夜行性の筈じゃ…?)

 

SAOでのドラゴンの生態は夜行性、つまり夜にしか基本、活動しない生物なのだ。

 

(それに、ところどころ負傷をしている?…キリト君がやったのかな?)

 

そしてドラゴンにところどころ見られる傷、片腕もなくなっている。これから察するにキリトから負った負傷に違いない。

 

(となると、やはりこの穴に………うん?この穴って――

――――――何の穴だろう?)

 

ふと、ソルは疑問に思う。この異様にでかくて、無駄に深い穴は何のために作られているのか。

 

(ドラゴンは昼間には活動しない。ということは自分の寝処()で眠る……ま、まさか!!)

 

何か非常にまずい予感を感じたソル。すると、

 

「グゥゥゥゥゥゥ……」バサッバサッ

 

(!間違いない!この穴は……ドラゴンの巣だ!!)

 

ドラゴンがゆっくりと穴へと降下しようとしているのを見てソルは確信した。

この穴はドラゴンの巣だ。下にはキリト(ともしかしたら他の人)がいるかもしれない。

 

(このままじゃキリト君(たち)と鉢合わせする!…こうなったら!!)ッザ

 

ファァァ――!

 

「グルゥ!!」

 

ソルは笛にオーラを纏わせ、そして奏でる。笛からは女性の甲高い美声(ソプラノ)の響きが出る。

 

【白白黒:対象挑発(対象相手の自分へのヘイト率を強制的に上げる)】

 

この効果により、ドラゴンは音の方へ顔を向ける。そして、

 

「…………」

 

「…………」

 

 

♪目と目が合う~瞬間♪

 

 

「グルァァァアアアアアア!!!!!!」

 

 

♪殺す気だと(最初から)気づいた~♪

 

 

「………ですよね(棒)」ッダ

 

「グァァァァァアアアアア!!!!」

 

ソルが逃げ出すのと同時にこちらに向かってくるクリスタルドラゴン。挑発の効果で今のドラゴンはソルにしか眼中がない。

 

ゴォォォォォオオオオオッ!!!

 

物凄い速度で飛行するドラゴン。中層プレイヤーならものの数秒で追いつかれるだろう。しかし、彼は違う(・・・・)

 

ビュンッ!!

 

ソルも物凄い速さで走り抜ける。しかも周りのクリスタルの塊をうまく利用してドラゴンの妨害をさせる。当然、あっという間に差ができる。

 

「グルゥ……!!」スゥゥゥゥゥゥッ!

 

「!」

 

ドラゴンが大きく息を吸い込み始めた。それにつられてか、大気が少し震えているのを感じる。

 

「……それなら!」スゥ・・・!

 

ソルもドラゴンに負けないぐらい、大きく息を吸い込み始めた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

大気が先ほどよりも強く震えだす。所々のクリスタルにヒビが入る。

そして――

 

「ガアァァァァァァァ!!!!!!!」ドォォォォォォォォォ!!!!!

 

「―――――――――!!!!!!!」ヴォォォォォォォォォ!!!!!

 

 

ドゴゴゴゴゴォッッッオオオオオンッ!!!!!!

 

 

ブレスと衝撃波。二つの力がぶつかり、相殺され、大爆発を起こす。その衝撃で各地の雪山は雪崩を起こす、幸い、ソルのいた地点(ここ)は地面の雪が舞い上がるだけだった。そのため、ドラゴンの視界は雪いっぱいになり、一時的に視界認識不能(ホワイトアウト)を起こす。

 

「グルルゥ…」

 

ドラゴンは視界が晴れるまでそこに待機をした。高いところなら攻撃されずにこちら(ドラゴン)から仕掛けることができるだろうと判断したのだろう。実際、空をプレイヤーが飛ぶにはSS(ソードスキル)によるターゲットの自動追尾と跳躍力に必要な筋力値が必要だ。それさえなければ空が安全地帯だと――

 

 

 

バシュッ!!

 

 

 

――そう思っていた(・・・・・)

 

ドガンッ!!バキバキッ!

 

「グラァッ!?!?」

 

背中に鈍い音が鳴ると固いものが砕ける音がした。ドラゴンも何が起きたのか混乱し、後ろにいる何か(・・)を振り下ろそうとした。

 

「わわっ!?あまり暴れないでください!じゃないと――」

 

竜の背中には――

 

「――正確に打ち込むことができませんから」グッ!

 

ドゴッ!!ベキベキッ!!!

 

――拳で思いっきり打ち込む少年(ソル)がいた。殴るたびに背中のクリスタルが砕け散る。さっきの音はこの音だったのだ。

 

「グガァァ!!??」

 

竜は必死に暴れて振り落とそうとする。が、

 

「……っう!」ガシッ!!

 

ソルも振り落とされまいとクリスタルを掴み、しがみつく。

 

ブゥン!!

 

ドラゴンが急降下をする。負担が一気にソルに襲い掛かるが、それでもソルはしがみついて耐える。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」ガシィィィ!

 

「グゥガアァァァァァァァ!!!」ギュイン!!

 

「!?」

 

急降下の次は急上昇。とてつもないGがソルの体に負担として襲い掛かってくる。

 

「うぐぎぎぎぎぎぎぎいぃぃぃぃぃ――」

 

ソルは必死に耐えようとするが、限界が来たのかついに…

 

「あ」

 

手を放してしまった。

 

ひゅうぅぅぅぅぅぅぅぅうううう……

 

「くっ!!」

 

一瞬の浮遊感からの自由落下。徐々に加速をしながら落下していく。

しかも、

 

「ガアァァァァァァァ!!!!!」

 

ドラゴンが勢いよく急降下し、ソルに突っ込もうとしていた。

このままではソルが食われるのも時間の問題だ。例え、避けれたとしても地面に激突する。絶体絶命だ――

 

 

 

――他の人から見ればのことだが。

 

「―――」ブンブンブンッ!

 

ソルは手から笛を出現させ、振り回し始め、オーラを纏わせる。配列は白・灰・黒。

 

「ガァァアァァアアア―――――」

 

ドラゴンは口を開く。ソルは笛の吹き口に口をあてる。

 

そして、

 

バクンッ!!!

 

ドラゴンがソルを飲み込んだ――

――かと思いきや、

 

ドォン!!

 

「ガァッ!!」

 

とてつもない衝撃がドラゴンの顔に直撃する。それによって怯み、一旦上昇するドラゴン。

一体何が起こった?それは簡単だ。

 

「―――」

 

ドォンドォンドォン―――!!

 

全部、(ソル)の仕業だ。なんと、彼は空を飛んでいる(・・・・・・・)ではないか。いや、正確には『吹っ飛んで』いる。

 

ドォンドォンドォン!

 

リズムよく小刻みに笛から出る凄まじい衝撃波は彼の身体ごと宙に吹き飛ばす。

彼のしていることは至極簡単。笛の効果、【白灰黒:高音衝撃波】を連続(・・)で吹いていたのだ。しかしここで一つのおかしな点がある。

なぜなら、笛は『3回まで』しか同じ効果もしくは段階演奏しかできないのだ。

なら何故、何回も連続で同じ効果を吹けるのか?それは彼のスキル…いや、『ユニークスキル』の『笛吹き王』のスキル効果だ。

『笛吹き王』は狩猟笛のためだけのスキル。狩猟笛を使う人に強力なスキルを付与するのだ。故に、効果は複数ある。

一つ、狩猟笛に纏わせるオーラの制限を無くす。

一つ、↑のスキルによってより強力な旋律効果を奏でることができる。(その中には『召喚』がある)

一つ、新しくオーラを纏わせない限り、同じ旋律効果を何回でも、連続で吹くことができる。

というスキルなのだ。しかし、これはもともと彼が初めから持っていたスキルではない。とある少女から、武器から受け継いだスキル。

そのスキルを駆使してソルは今に至るまで前線で戦い続け、生き残ってきたのだ。

そして、一瞬にして、ソルはドラゴンよりも高く飛び抜いた。

 

「グゥルルッ!?」

 

それ(ソル)を目で追うように頭をあげたドラゴンの目と鼻の先には――

 

 

「はああぁぁぁぁあ!!!」ブォォォ!!!

 

 

――巨大な笛を振り下ろすソルの姿が――

 

 

ドゴォォ!!!!

 

 

――見えた。そしてそれがクリスタルドラゴンの見た最期の光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第48層 リンダースのとある小さな武具店にて――

 

「脱出したのなら、メッセージを送ってください」ググググッ

 

「わ、わうひゃっあ、わうひゃっあ!(わ、悪かった、悪かった!)」

 

そこには、55層の雪山から無事下山したソルと今回の原因である『黒の剣士』ことキリトがいた。しかも、キリトはソルに両方の頬をこれでもかと言わんばかりに引っ張られている。

 

「今回どれだけ心配と迷惑を掛けたかちゃんとわかっているんですか?」グググッ

 

「わはっへまふ、わはっへまふ!(わかってます、わかってます!)」

 

そう、今回ばかりはキリトに落ち度があるのだ。

簡単に、端的に言えば、キリトはとある人物の紹介でこのリンダースの武具店『リズベット武具店』に来ていたのだ。なんでもオーダーメイドかつ最高・最強の剣を探していたらしい。

そしてここから事件が起こったのだ。

なんとキリトは自分の所持している剣でその店の力作である剣を(耐久値テストと言う名の項目で)へし折ってしまったのだ。何がいけないのかと言うと…

 

「君の剣、『エリシュデーター』は実質、重さ重視の耐久値の概念が存在しない(・・・・・・・・・・・・)『魔剣』クラスなんですよ。いくらオーダーメイドで力作の剣でも、俊敏性の(いわば軽さ重視で作られている)剣で耐久値テストなんかすれば、店の剣の方が折れるに決まってますよね?」ググッ

 

「い、いあ!ほんほひは、ふ、ふい――(い、いや!そん時は、つ、つい――)」

 

「言い訳は駄目ですよ」グググッ!

 

「いへへへへへ!(いててててて!)」

 

…ということだ。その後、キリトは剣を作ってもらう代わりに(店員さん同行という条件で)素材を探しに第55層に行ったのだ。そして、ドラゴンと交戦、途中運悪く、店員さんが『竜の巣』に落ちてしまい、キリトも一緒に落ちて遭難したのだ。一応いろんな方法をやってみたものの、どれも失敗、代わりにソルにメッセージを飛ばすことにしたのだ。そして二人で一晩明かすことになった。

朝になり、キリトは素材を手に入れたのと同時にドラゴンが巣に戻ってきたのだ。キリトはそのドラゴンを利用して、なんとか二人で脱出したのだった。ちょうどその時にソルとすれ違ったのだ

ソルに連絡し忘れたまま、でだ。

余談だが、この後、キリトのお目当ての剣を作ることができたらしい。

 

「はぁ…、まったく…次からは気を付けてくださいね」ッス・・・

 

そう言って、キリトの両方の頬を放す。

 

「ふぅ~、わかったよ。それにすまなかったな、ソル」

 

「もういいですよ。怒ってませんしね」

 

なんとか言って、最終的には優しく許すソル。実に甘々である。

 

「もういいかしら?」

 

「ええ、もういいです。それに、本当にすみませんでした。キリト君が迷惑を掛けてしまいまして……」

 

「ああ、それなら私もいいわ。なんせ最高傑作の剣が作れたんだもの!」

 

そう言って許してくれたこのピンクの髪に赤の服を着た女性こそ、今回キリトと一緒に素材を探索したこの武具店の店員、リズベットだ。親しい人からはリズと呼ばれている。

 

「それにしても…」

 

「?」

 

リズはソルをジロジロと見る。ソルは何事かと思いながらもただただ立っている。しばらくするとリズの口が開く。

 

「アンタが攻略組の『渾沌の演奏者』、ソルね」

 

「えっと…そうですが…?」

 

「ふ~ん、どんな人かと思ってたけど少し意外ね」

 

「?意外とは?」

 

「いや、『黒の剣士』のキリトといい、『閃光』のアスナといい攻略組はなんかゴツい男達の集まりか何かと思ってたけど、意外と子供達が最前線に立ってるのよね。なんかおかしな話だわ」

 

「そうですか…。でもリズベットさんの中の偏見を払拭できたのならこちらとしても嬉しい限りです」

 

「あはははは!良いって良いって!むしろウチのほうが悪いなと思ったしね。あっ、あと私のことはリズで良いわ。なんか堅苦しいのは苦手なのよね」

 

「は、はぁ…」

 

リズのグイグイっとした感じに少しだけ苦笑いするソル。実はと言うとこういった性格の人と会話するのは、少し苦手なのだ。もちろん、嫌いではないが。

 

「ああ、そうだ!ここは私の武具店だし、ソルも何か武器の点検とかあったら是非、ここに来てね!他にも武器とかも取り扱ってるよ、そりゃぁもう一級品でね!」

 

「はい、分かりました。ありがとうございますね」

 

リズとの挨拶代わりの会話も終わったところで、ソルはキリトの方を見る。キリとはというと…

 

「もう、キリト君ったら、ソルの言う通り心配も迷惑も程々にしてよね」

 

「アスナ、お前もか…」

 

「当たり前じゃない!こっちがどれだけ心配したのか…」

 

「うっ…。本当に悪かったって」

 

「もう!………物」ゴニョコニョ・・・

 

「えっ?」

 

「後で買い物に付き合ってよね!」ビシッ!

 

「ええっ!?」

 

っと言うような、『閃光』のアスナとアツアツな展開になっていた。アスナがなぜここにいるかと言うと、リズとは親友の仲で、今回の件で一時ロストしていたリズが心配でアスナはアスナで捜していたらしい。

ソルはそんな光景を見て、少しばかり微笑む。

 

「でも良かったですよ。誰一人死ななくて、本当に良かったです」

 

「……ええ、そうね……」

 

一方のリズはと言うと、どこか、寂しげな表情をしていた。しかしそれも一瞬のこと。すぐにいつも通りの元気な顔になり、

 

「キリト!!」

 

「ん?なんだ?」

 

 

 

「これからもリズベット武具店をよろしくお願いしますね!!!」

 

 

 

 

その顔は、何か、大切なものを見つけた(・・・・・・・・・・)ような、スッキリした顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そういえば、キリト君はなんで今になって剣を欲しがってたのだろう?)

ソルはふと、疑問に思ったがすぐにどうでもよくなった。




さて、いかがでしたか?

今回はちゃっかりとソルの戦闘回でした。なにせ、あまりソルの戦闘が少なかったのと、あまり目立っていなかったですし(汗)
仕方ないんです……サポートは目立ちませんし(目をそらす)
まさかの吹っ飛びで擬似エリアル(笑)「こんなの私の知っている狩猟笛・エリアルスタイルじゃない!!」って思う方、本当に申し訳ございませんでしたー!(スライディング土下座)

さて、気を取り直して次回予告です!

ついに74層まで到達したプレイヤー達!だけど、そんなプレイヤー達を待ち受けいるのは強力なモンスターとトラップの数々!?ソルは一体どうやって突破するのか!?そして、ついにあのスキルがフルコンプになる!?

次回「二羽追う者は一羽も得ず、なんて誰が決めた!?」

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