えっ?笛で戦ってるのって僕だけ?   作:モグ・モグラ

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どうも、モグ・モグラと申します。

ガッツガッツな第十二話です。

な、な、なんと!!通算UAが10000人突破!!!本当にありがとうございます!!感謝感激です!!!
これからも、どうぞ、よろしくお願いします!!
今回はだいぶ長めです!!


それではどうぞ、ごゆっくりと。


第十二話~魂の渾沌 謎の黒き少女~

(…あれ?ここって…)

 

陽太が目を覚ます。随分と長い夢を見ていたと錯覚されるも、陽太は起き上がる。すると、見覚えのある部屋だと気づく

 

「ここは…僕の部屋…?」

 

そう、この見覚えのある部屋。まさしく、自分の部屋だと確信する陽太。

 

「なんでだろう?僕は今、(SAO)の世界にいるんじゃぁ…?」

 

あまりの出来事に陽太は思わず、思ったことを呟く。そうだ、確かに陽太はソルとなってSAOの世界を、『デスゲーム』となった世界をクリアするために今まで奮闘をしてきたのだから。

 

(誰かがクリアしたのかな?そうだといいけれど……)

 

陽太がそう思っていると、

 

バタンッ

 

「!」

 

部屋の扉が開く音がして、

 

「陽ちゃん!!」

 

その声は、

 

「お、お母さん!!?」

 

陽太のお母さんだった。お母さんは陽太に抱き着く。

 

「よかった…。無事で本当によかった…!」

 

「お母さん……」

 

お母さんは涙を流す。無理もない。約1年半年以上も意識も戻らない寝たきりの状態だったのだ。その間、お母さんが、先生が、家族が、親戚がどれほど心配していたのか、少し考えれば簡単なことだ。

 

「すみません…、心配かけてしまって。本当にすみません」

 

「ううん、陽ちゃんが謝ることなんて何一つないよ」

 

そう言って一層強く抱きしめるお母さん。そのの腕の中で安心する陽太。そして、

 

「色んなことがあったけれど、これからもずっと頑張って生きていこうね――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   ――――――『ソル(・・)』ちゃん」

 

「…………………っえ?」

 

お母さんの最後の言葉に思わず戸惑う陽太。すると、

 

 

パリィーン…

 

 

お母さんはポリゴンとなって散った。

 

「え?……え?」

 

この光景に唖然とする陽太。

不意に、部屋に置いてある鏡に映った自分の姿が目に入った。

 

 

そこには『ローブを羽織って、フードを被った』自分(ソル)がいた。

 

 

「な、何が…どうなって………」

 

もはや、適当な言葉が見つからずにたたずむ陽太(ソル)

 

ピシッ…ピシピシッ……!

 

部屋は静かな音を立てはじめながら亀裂ができていく。

 

バキッ!バキバキッ!!

 

やがて、その音は大きくなるとともに亀裂も大きくなり…

 

 

バリィィイイン!!

 

 

部屋は粉々に砕け、ソルは真っ白な空間に放り投げだされてしまう。

ソルはさっきのショックで何もできずに、この空間で落ちているのか浮いているかもわからない状態になる。

 

---どう?『絶望』の感覚は?---

 

「!」

 

突然、少女の声が聞こえる。しかも、この声に聞き覚えがある。ソルはその声の方に視線を向けると、そこには…、

 

「き、君は!クロちゃん(・・・・・)!?」

 

そう、ソルが出会った少女、クロである。

 

ように見えたが、違う。この少女は全体的に黒かった(・・・・)のだ。髪が黒く、ワンピースも黒い。そして何よりも目が『白い』のだ。何もかも、クロとは対照的だった(・・・・・・)

やがて、少女はソルを見ながら呟く

 

---このまま何も出来ずに、終わってしまえ(・・・・・・・)---

 

無慈悲な言葉がソルの脳内にガンガンと響き渡るように聞こえる。

 

「う、うぐ…うぐあぁぁあああ!!?あ、頭がっ!?!!!?」

 

思わずに頭を抑えるソル。この響きのせいで考える事すらままならない。少女はだんだんとソルを睨むようになり、

 

---私にはお前を殺すことができる力を持っている。さぁこのまま、終わってしまえ!!---

 

ギイイィィィィィイイイイン!!!!

 

「あがあああああぁぁぁぁああぁあああ!!??!!??」

 

より一層強く脳内に響く音。このままでは頭が弾けるような気がする、いや、絶対に弾ける。なんとか抵抗しようにも、ソルは少女の言葉通り何もできなかった。

 

もはや、ここまでかと悟ったソルは、意識が遠のいていくような錯覚に襲われた。多分、このまま手放せばもう――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時であった。

 

 

---………き………るお……ん…!!---

 

薄れゆく意識の中、誰かの声が聞こえる。

 

(この……こ…え……は……)

 

---お……て……そる…い…ん…!!!---

 

この声にまたしても聞き覚えがある。すると…

 

---っち!『アイツ』か!?なぜ、私の邪魔をするんだ!!!---

 

少女はどこかの方に向かって吠えるように怒鳴る。ソルは何が起きているのか分からなかった。

すると突然、脳内に鳴り響く音が止んだのだ。それと同時に頭がスッと軽くなる。

 

---クソ!運が良い奴め!!『アイツ』のおかげで命拾いしたな!!だが、次こそ必ず!お前を終わりにさせてやる!!!---

 

ソルに向かって暴言を吐き、黒い少女はそのまま消えた。

それと同時に周囲の空間が黒くなる。

 

---おき…!!そる…にい…ん!!!

 

代わりに、別の声がだんだんと大きくなる。しかし、その声は激しい頭痛になるどころか、だんだんと気持ちが落ち着く。まるで、さっきほどまでの気持ち悪さが嘘みたいに。

 

そして、その声がはっきり聞こえた。

 

 

 

 

 

 

---起きて!!そるおにいちゃん!!!---

 

 

 

 

 

 

「はっ!!??」

 

その声と同時にソルの意識が覚醒する。すると目の前には、

 

「あっ!起きた!!」

 

白い少女(・・・・)、クロの顔が見えた。しかもそれも目と鼻の先ぐらいの至近距離でだ。

 

「う、うわぁぁああ!?」

 

ソルはびっくりして、後ろにのけぞる。椅子もそれにつられて後ろにのけぞる。

 

「きゃ、きゃああぁぁああ!!??」

 

クロは急にソルが驚いたことと、全体が(クロからして)前に傾いたことによって悲鳴をあげながら、バランスを崩し、

 

 

頭からソルの腹部目掛けて突っ込んだのだ。

 

 

「うぶぅぅうっ!?!?!?」

 

クロの突然の頭突きに目が飛び出そうになるソル。そして、

 

ガッタ!!!

 

椅子が耐え切れずに、後ろに倒れる。そしてそのまま、

 

ゴッチ~ン!

 

「ごはっ!!??」

 

床に頭を打ち付ける形になったソルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぐっ!えぐっ!ご、こ”め”ん”な”さ”い”ぃ”!!!!」

 

目の前には泣きじゃくりながら謝るクロがいる。ソルは困りながらも、

 

「だ、大丈夫だよ。幸い、この世界では痛みはないし、圏内だからHPも減らないし、くるのは衝撃だけだから。だから――」

 

「う”え”え”え”え”え”ん”!!!こ”め”ん”な”さ”い”ぃ”!!!!!」

 

より一層声をあげながら、号泣するクロ。

幸い、この宿の部屋は防音式だ。隣の部屋にはこの声は響かないだろう……………………………………………………多分。

ソルは目が点になりながら、手で耳をふさぎながらクロを泣き止ませよとする。

 

「お、お願い!少し落ち着いて!クロちゃん!!(じゃないと、僕の耳がどうにかなってしまいそうだよ!?)」

 

このままでは耳がどうにかなってしまう!!ソルは何かクロを泣き止ませる方法がないかと模索する。

すると…

 

(そ、そうだ!!アレ(・・)をやろう!!そうすれば…!!)スッ

 

ソルは何かを思いつき、メニューを開き、アイテムストレージからあるもの(・・・・)を取り出す。そして、

 

ピュ~~~ヒョロヒョロ~~♪ヒュヒョロヒョロ~~♪

 

「えぐっ…!ひぐっ…………へ?」

 

なんとも奇怪な音色に思わず泣き止んでしまうクロ。ソルはというと、小さい、黒い角笛を吹いて演奏をしていた。

 

ヒュ~~~ヒョロリラ~♪ヒョロリラ~♪

 

「………っぷふ」

 

すると、クロは小さく噴き出し、

 

「………あは、あははは!あははは!な、なに!その音色!あははははは!!!」

 

やがて笑い出す。それでもソルは吹き続ける。

今ソルが吹いている笛は『笑い笛』。戦闘向きではないが、効果はこの通り。聞いただけでたちまち、相手が笑い転げてしまうほどの笛。実に変わった笛なのだ。

 

ピュ~~ヒョロ♪ピュ~ヒョロヒョロ~♪

 

「あははははは!!お、おかしい!!あはははは!!!お、お腹がよじれそうですぅ!!あはははは!!!」

 

ついには腹を抱えて笑い転げだすクロ。先ほどまでの状態とは180度逆転していた。

そして、ソルはなんとかクロを泣き止ませることに成功した。

 

 

 

 

 

「さて、もう大丈夫かい?」

 

「はいぃぃ…ごめんなさい…。あんなみっともない所を見せてしまって……」

 

今はというと、少し元気がないけどそれでも号泣していたよりかはマシな状態になった。

 

「…気にしないでとか、忘れろとかは言わないけど、僕も怒ってないから。…それにある意味(・・・・)感謝はしているから」

 

「……ほへ?」

 

ソルの最後辺りの言葉にクロは思わず首を傾げる。それを見たソルは考えた。

 

(…やっぱり、偶々だったのかな…?でも黒い少女(あの少女)はたしかに――)

 

---っち!『アイツ』か!?なぜ、私の邪魔をするんだ!!!---

 

(――この子(クロちゃん)のことを言っていたよね?)

 

ソルはクロを見ながら考えていた。

あの子は誰だ?なぜいきなり僕を殺しに来たんだ?面識もない筈なのに…。

などなど、色んな疑問がソルを深く考えさせる。すると、

 

「あ、あのぉ……」

 

クロの困惑したような声が聞こえる。

 

「…ん?どうした――」

 

ソルが聞き返そうとした瞬間、

 

 

ぎゅるるるるるぅ~~

 

 

間抜けな音が部屋に鳴り響く。ソルは目が点となり、クロはというと…

 

「……///」

 

顔がリンゴのように赤くなり、顔を伏せてしまう。もしや…、ソルは気づく。

 

「……あ、朝ごはんの支度、す、するね」

 

「は、はいぃぃぃ………」

 

現在、9時をまわろうとしていた時の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、ソルとクロがいる層は50層の街『アルゲード』

少し昔の街並みの雰囲気が漂うこの街で、ソルとクロはとある店(・・・・)にいたのだ。ちなみに、ソルはフードを被っている。どうやら、彼も人目を気にするタイプだ。

そして、今はというと…

 

「……ソル、お前…まさか……」

 

体つきの良い男性がソルに組み付いていた。ソルの首に男性の太い腕で絞めているような状態だ。

 

「その…そういう『趣味』があったなんて…」

 

男性の言葉に組み付かれたソルは慌てて言う。

 

「ち、違いますよ…!この子には変なことはしていませんよ!そ、それより!そろそろ、組み付きを、解いてください…!!い、息が…!!」

 

「あ、ああ!悪い…」

 

そう言って、男性は、ソルの首に巻き付いた腕を解いて、ソルを開放する。この男性はエギル。攻略会議では度々顔を見せて、たまにソルとパーティーを組む、ソルの数少ない知人の一人だ。今は商業を営んでいる。

そんなエギルがなぜ、ソルの首を絞めていたかというと…

 

 

ソルがクロと一緒に、エギルの店を訪れる。

エギルはソルだと分かり、歓迎して、店の中に招き入れる。

当然、クロもソルにくっついてついて行く。

エギルはクロの存在に気づき、しばらく石のように硬直する。

突然、ソルに組み付きをして、ソルの首を絞めるような形になる。

先ほどの通り。

 

 

っと言う経緯だった。そのあと、2階のエギルの部屋に招待された。

エギルはオホンっと咳払いをして、ソルの方を向く。

 

「まぁ…なんだ…いろいろ聞きたいこともあるがその、何だ…」

 

「なんか、歯切りが悪いですね」

 

ソルはジト目でエギルを見る。

 

「うぐ…し、仕方ないだろ、まさかお前があんな可憐な少女を連れてくるなんて…天地がひっくり返っても起きはしないと俺は思っていたのに…」ボソッ

 

「待ってください。今のはどういう意味ですか?」

 

ソルがジリッとエギルに詰め寄る。エギルは慌てて、誤魔化そうとする。

 

「な、なんでもねぇって!そ、それより!その子は一体何者なんだ!?」

 

エギルは話題をクロに変えた。クロ本人は自分を指摘されたことにビクッと体を震わせ、慌ててソルの方にくっついた。ソルには懐いているが、やはり人見知りな性格だ。

 

「…はぁ…、まぁ、いいでしょう。実はこの子なんですが…」

 

そう言って、エギルに分かりやすくクロの紹介と説明した。昨日の出会いから、今日に至るまでに。一通り説明し終え、エギルは納得したが、いまだに複雑な顔をしている。

 

「それにしても、自分の家(部屋)がねえなんて、そんなことありえるのか?」

 

「ええ、それは自分も疑問に思いました。最低でも、第1層の『はじまりの街』に行けば、自分の部屋は使える筈です。なのにそれがない(・・)……。まず、ありえないです」

 

第1層には全プレイヤーの部屋(家)が存在しており、ある程度の最低限な生活はできるのだ。

 

「あともう一つ、この子にはすごく高い『隠れ身(ハイディング)』スキルを持っています。僕もやっと気づけた程度です。これに関しては…」

 

「常日頃からの、相当な積み重ねがなきゃいけないってことだな」

 

エギルの言うとおりだ。スキルの向上のさせ方はさまざまである。例えば『料理』スキルなら、料理をひたすらすればいい。そうすれば、『料理』スキルは向上する。しかし、『隠れ身』スキルは色んな方法がある。その方法の中で一番効率良く向上させる方法、それは…

 

「『スキルを発動させた状態で圏外(フィールド)に出て、常にモンスター達にバレずにいること』…ですよね」

 

「そうなるな。そうじゃないとソルの『索敵』スキルに余裕で引っかかる」

 

そう、ソルの今言った方法が一番の方法だ。しかし…

 

「クロちゃんに限ってそれは……」

 

「「ない」」

 

クロの性格は今いる中ではソルが一番知っている。クロは人見知りで相手ともまともに会話ができない(初めてソルと会った時もそうだったように)。そんな子供が一人で圏外に出る事なんて、絶対に無い。そんなのがあったら発狂ものだ。

 

「あ、あのぉ…」

 

「「!」」

 

クロのことで話し合いに夢中になっていた2人だったが、話題の種であるクロが声をかけてきた。2人はハッとする。

 

「なんだいお嬢ちゃん?」

 

エギルが声をかける。っが、その声にビクッと震わせ、またしてもソルの後ろに隠れるクロ。

 

「……だいぶ、お前だけに懐いているんだな…」

 

エギルがちょっとショックを受けた様子で言った。

 

「大丈夫だよクロちゃん。エギルさんは僕の友達だから」

 

ソルはクロを優しく諭す。するとクロは、

 

「本当?」

 

涙目で聞いてきた。

 

「うん。本当だよ」

 

そう答えるソル。するとクロはたどたどしく言う。

 

「その…え、えぎるおじさん…」

 

「お、おう。な、なんだい?」

 

エギルもつられてたどたどしい口調になる。クロはあるもの(・・・・)を見ながら質問する。

 

「あ、あれって……な、なんですか?」

 

「あれ?…!ああ、もしかして…これのことか?」

 

エギルは部屋の隅に置かれたとある武器を手に取る。クロもそれを見て首を縦に振る。

 

「そうだった。実はな、昨晩にキリトとあの(・・)アスナが俺の店に来たんだ」

 

「キリト君とアスナさんがエギルさんのところに…?」

 

その言葉にソルは少し驚いた口調になる。無理もない、キリト君とアスナさんはいつも攻略会議で言い争いを起こすのだ(その中には時たま、ソルもいるが)。昨日のキリトからのメッセージもだがその時も少し驚いた。

 

「ああ、それでな、たぶんお前も知っているだろ?昨日起こった…」

 

「…新しい『圏内PK』方法での事件……」

 

「そうだ」

 

エギルが重々しい声で続ける。

『圏内PK』…本来、街などの『圏内』ではダメージが一切発生しない。例え、ダメージを与えようとしても、紫の障壁が発生して、攻撃を防ぐのだ。しかし、そのシステムにも、ある一つの抜け道がある。

決闘(デュエル)』だ。『決闘』には3つのモードがある。

 

・初撃決着モード

・半減決着モード

・完全決着モード

 

この中で、ほぼ使われるのが上の『初撃決着モード』だ。この『決闘』の特徴の一つが

『街の中でもHPバーを減らすことができる』ことなのだ。それを利用した『圏内PK』が存在するのだ。それは…

 

『睡眠PK』

 

手順としては、まず圏内の中で寝ている人に『決闘(完全決着モード)』の申請書を送り付け、その寝ている人の指を勝手に使って、申請書の『〇』を押す。すると『決闘』が成立し、開始され、後はその人のHPバーが0になるまで攻撃し続けるだけ。これは実際に起きてしまった事件なのだ。『決闘』のため、PKをしても『オレンジプレイヤー』にはならないメリットも付いてくるので、非常に厄介な手口なのだ。

 

話を戻そう。

 

「そして、その時に使われたのが…」

 

「この武器ですか」

 

「そうだ。武器の固有名はは『ギルティ―・ソーン』、罪の(いばら)ってとこだ。プレイヤーメイドで、製作者は『グリムロック』…この名前に聞いたことあるか?」

 

「いや、ないです。そもそも、僕は第1層の狩猟笛専門の店にしか行きませんし…」

 

「そうだよな…」

 

エギルはそう言ってため息をする。するとソルは、

 

「その武器、触ってみてもいいですか?」

 

「おう。いいぜ」

 

そう言って、例の武器を手に取るソル。確かに名前の通り、刺々しい武器だった。クロも少し怖がっている様子だった。

しばらく見つめて、ソルは何かを決心したように、よしっと呟く。

するといきなり、

 

 

 

「あ!!クロちゃん!!外でお魚をくわえたドラ猫が、裸足で変な髪型の女性に追われてる!!!」

 

 

 

「「!?」」

 

クロちゃんとエギルはソルの言葉にびっくりする。エギルは、ソルが嘘をついていると瞬時に見抜く。

 

(な、何を言っているんだ、ソル!?さすがにそれはクロちゃんも引っ掛からな――)

 

 

「え!?どこ!?どこ!?」

 

 

「」

 

クロは慌てて、窓から外を除く。流石のエギルもこの綺麗な流れに絶句する。

 

そして、

 

「ふんっ!」ヒュンッ!

 

ソルは左で例の武器を持ち、そのまま右の手に突き刺そうとする。

 

が、

 

 

 

ガキィィン…

 

 

 

紫の障壁に阻まれ、右手に剣先が突き刺さることがなかった。

 

「そ、そるおにいちゃん~。外にそんな人とネコさんいなかったよ~?」

 

やがて、クロは頭に?を浮かべさせながらトコトコと戻ってきた。

 

「え?ホント?おかしいね~、さっきまで見えたんだけどな~?」

 

ソルも頭に?を思い浮かべる。エギルは今も絶句中である。すると、

 

「ごめんね、クロちゃん。ちょっとだけ、エギルさんと大事な話があるから、ここで待っててくれるかな?」

 

「えっ!?で、でも……」

 

ソルの急なお願いにクロが悲しそうに俯く。すると、ソルはクロの頭を撫でながら言った。

 

「大丈夫。ちょっとだけだし、すぐに戻るからね」

 

「う、うん……」

 

少しだけ、顔を赤らめながら頷くクロ。ソルは立ち上がると、エギルを連れて部屋を出る。

 

 

 

「試しましたが、この武器には何にも効果が無かったですね。圏内PKができるような特殊な力を持った武器ではありません。他のと変わらない、ただの武器ですね」

 

「お、おい。まさか、さっきのはクロちゃんにアレを見せないために言った発言なのか!?」

 

「当り前じゃないですか。なんであんな行為(・・・・・)をクロちゃんに見せないといけないんですか?クロちゃんが泣いてしまいますよ」

 

「そ、そりゃぁ…そうだけどな…キリトと同じで(・・・・・・・)もっと自分を大切にしろよな…。…はぁ」

 

「ええ、分かっていますよ………………………ん?なんで、そこでキリト君が出てくるんですか?」

 

「昨日、お前と同じことをしようとしたんだよ……。まぁ、アスナに止められたんだけどな」

 

「ああ、なるほど。そういう事でしたか。なら、僕のしたことが無駄にならなくて良かったです」

 

キリトが一足先にやっていたと聞いたときは無駄な行為になってしまうと焦ったが、エギルの話を聞いて内心ほっとする。

 

「それはそうと…もう一つ。エギルさんに聞きたいことがあるのですが…」

 

「ん?なんだ?急に改まって」

 

エギルは急に改まったソルに聞き返してきた。ソルは一呼吸、間を置いてからあることを言った。

 

夢の中(・・・)でもプレイヤーを殺すことってできるのでしょうか?」

 

「……すまん。もう一度言ってくれ」

 

「ですから、『この世界(SAO)で眠っているとき、その人の夢の中に侵入して、その人を殺す』こと、ってできますか?簡単に言えば『猿夢』と同じ原理で」

 

ソルの質問にエギルが深く考え、悩んだ。そして、エギルが答える。

 

「う~ん…。『睡眠PK』ならまだしも、流石に『猿夢』みたいなことは出来ねぇんじゃねぇか?まず、このSAOで夢を見れるかどうか…また、他人の夢に潜り込めるかどうか…。俺たちは元々、『寝ている』みたいな状態だからな……。なぜ今それを?」

 

「う~ん、もしかしたらそういう線もあるとは思ったのですが、エギルさんの答えを聞いて分かりました。変なことを聞いて申し訳ございませんでした」

 

エギルに聞き返されたが、ソルは誤魔化した。今朝、殺されかけたなんて信じてもらえないだろうからだ。それも、クロに似た少女に、なんて。

 

「いや、気にするなよ。それに俺に聞くより、キリトに聞いてもらえよ。アイツなら多分面白い答えが返ってくるぞ」

 

「分かりました。それも一つの手段ですね。…さて、そろそろ戻りましょうか。クロちゃんを待たせては悪いので」

 

「それもそうだな」

 

そう言って、2人は部屋に戻る。クロは多分大人しく待っているであろう。

 

「クロちゃん。ちゃんと待っていた――」ガチャッ

 

しかし、そこに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロの姿がなかった。

 

 

「!?く、クロちゃん!!??」

 

「ど、どうした!?」

 

ソルの突然の大きな声に、エギルもびっくりする。

 

「クロちゃんがいないんです!!」

 

「何!!??」

 

エギルも慌てて部屋に入る。ソルはクローゼットとかを開けるが、いない。

 

「く、クロちゃん!どこにいるんだ!?」

 

「まさか、窓から!?」

 

「いや!それはない!子供からしてみれば2階は結構な高さだ!!それに、飛び移れる屋根もない!!」

 

「…まさか!『隠れ身』スキルか!?」

 

クロの『隠れ身』スキルを一度、体験したソルはそう導き出した。確かに、第1層とは違い、この層は人気があり、しかもソルはエギルと話をしていた。気づかれずに出ていくことはできる。

しかし、

 

「クロちゃんが黙ってどこかに行く筈がない…!!」

 

昨日、ソルがクロと『1人でどこにも行かない』約束をしていた。クロの性格上、約束を破るなんてまず、ありえない。

 

「とにかく、僕は『追跡』と『探索』スキルで探してみます!エギルさんはここで待っててください!!もしかしたら戻ってくるかもしれないので!!」

 

「わ、わかった!ソルも無茶はするなよ!」

 

ソルはそのまま店を飛び出す。それと同時に『追跡』・『探索』スキルを発動させる。

 

(まだ、そんなに遠くには行ってないはず!!クロちゃん!!なんで黙って、出て行ったんだ!!??)

 

ソルはいろんな場所を見渡す。しかし、

 

(くっ…!足跡が多すぎる!!)

 

ここはある程度人気もある。それだけに道は、びっしりと色んな足跡が残っている。

 

(だけど…クロちゃんは子供。それなら…!)

 

ソルはよーく注意しながら足跡を見る。すると、他のと比べて、明らかに小さい足跡を発見する。

 

(…あった!しかも、まだ新しい!これを追ってみれば…!!)

 

そう言って、ソルは小さい足跡を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追っていくと、人気の少ない裏路地に着くソル。

 

「クロちゃーん!!どこにいるのー!!」

 

大声で叫ぶソル。スキルで足跡はここに続いている。ならここの近くにいるはずだ。

 

「クロちゃーん!!お願いだから、返事をしてー!!」

 

そう言いいながら、角を曲がると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに一人の少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「!クロちゃ…っ!?」

 

クロの名前を言いかけるソルだったが、その少女は…

 

 

 

 

 

クロにほぼ似ているが、黒く長い髪の毛に黒いワンピース、そして、白い瞳を持っていた。

そう、今朝の夢(・・・)で、ソルを苦しめた少女が立っていたのだ。

 

「……き、君は………!?」

 

思わず、後ずさりをするソル。対して、黒き少女は不敵な笑みを見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ…、見つけたぞ」

 

 

クロにそっくりな声が、裏路地に響いたのだった。




さて、いかがでしたか?

少しだけ、間ができてしまい申し訳ございませんでした!このエピソードをどういう風に進めようかと色んな考えをだしていました。

さて、次回ですが、夢でソルを苦しめた黒い少女が再度登場!!一気に追い詰められるソル!!はたしてどうなるのか!?クロは一体どこへ行ってしまったのか!?
今日はとりあえず、ここまでとさせていただきます。

では、次のお話でお会いしましょう。

次回 「魂の渾沌 モノクローム」

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