えっ?笛で戦ってるのって僕だけ?   作:モグ・モグラ

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どうも、モグ・モグラと申します。

記念すべき第十話です。

通算UA7000人突破!いつものことながら、本当にありがとうございます!


~(記念すべき)前回のあらすじ~

チーズケーキ「じゃぁの」パリーン

ソル「ゆ”る”さ”ん”!!!」ダダダダッ!!!

(盗聴)男性プレイヤー「犬〇家!」V!!!

キリト「ワケが分からないよ!!」ウワァァァアアアア!!!

シリカ「ZZZ…」

~以上~

今回は記念ということで長めに作りました。

それではどうぞ、ごゆっくりと。


第十話~ソロ笛男はつらいよ その3~

2024年 2月24日

 

 

第47層『フローリア』

 

この層は、とにかく、フィールド一面が花で囲まれた、綺麗な層である。

ここに、2人の人物が転移してきた。1人は赤い服と胸当てを装備した女の子、もう1人は黒いコートを纏った少年である。

女の子、シリカは一面中、花に広がった景色を見て、感嘆の声をもらす。

 

「うわぁ~、夢の国みたい…!!」

 

「…この層は、『フラワーガーデン』とも呼ばれていて、フロア全体が花だらけなんだ」

 

少年、キリトはこの層の簡単な説明をするが、シリカは花に夢中になって、近くの花畑にかけよった。

 

ほのかに香る、花のいい匂い。

日差しもちょうど良く、気分が高揚とする。

風は微かに吹いていて、決して花を散らせないが良い気持ちにさせる。

 

まさにシリカの言った通り『夢の国』みたいだ。

シリカはふと、辺りを見渡す。すると、そこには…

 

(ここって…もしかして!)

 

数十組のカップルがいるのだ。しかも良い雰囲気なことで。

シリカは気が付いてしまった。ここは、

 

 

 

『デート』用の人気スポットでもあることに…

 

 

 

そして、キリトと二人っきり……。ってことは……

シリカは思わず赤面し、固まってしまう。

 

「……シリカ?」

 

キリトはシリカに声をかける。シリカは慌てて、

 

「は、はい!お待たせしました!!」

 

「…どうした?」

 

「ああ、いいえ、別に……。それよりキリトさんの方こそ大丈夫ですか?」

 

「」ギクッ

 

「なんだか、顔色が悪いような……」

 

「だ、大丈夫だよ。…コホン。ほら、行くよ」

 

キリトはそう言って、足早に行ってしまう。シリカは頭に?を浮かべながら、キリトについて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…言えない…言えるわけがない!朝から|あんなもの(・・・・・)見せられたら、誰だって発狂しかねない!!)

 

ぶるっと体を微かに震わせるキリトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトたちが去ってから数分後。

 

また、誰かが転移をしてきた。一人の槍使い女性プレイヤー(・・・・・・・)が来たのだ。

 

「まさか、ホントに『思い出の丘』にくるなんてねぇ~。あの子、ホントに素直なんだから~」

 

女性プレイヤーは色っぽい声でそう呟く。そして、

 

「っま、死んだら死んだでそれは笑いものだろうし、もしあの子が『花』を手に入れたら、どんな手段を使ってでも手に入れるだけだし…フフフ」

 

そう言って、舌なめずりをする女性は『隠れ身(ハインディング)』スキルを使用して、2人の跡を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そういえば、連絡役のアイツ(・・・)は今どこをほっつき歩いているんだか…。まぁ、いいわ。分配の数に入れなければいいだけのことだし)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、牢屋では、

 

「チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ、チーズケーキコワイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

と、何回も呟いている男性プレイヤーが1人、今日の朝、収容されたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性が去ってから数分後、

またまた誰かが転移をしてきたようだ。今度は笛を担いだ少年、ソルだった。

 

(ふぅ~、チーズケーキもたくさん食べることができたし、キリト君が指定してくれた位置までに移動しましょうかね……)

 

そう思いながら、マップを表示させるソル。そうしていると…

 

「……?」

 

ふと、誰かの視線を感じたソル。それも1人ではない、数十人の視線を感じるのだ。

そう思って、顔をサッと、視線の方向に向けると、

 

「「」」サッ

 

「「」」サッ

 

「「」」サッ

 

「「」」サッ

 

「「」」サッ

 

「「」」サッ

 

「「」」サッ

 

数十組ものカップルがソルの方を見ていたのだ。サッと目を逸らすカップル達。その目は気のせいか、憐れみを受けるような、同情される目だった。

 

(…あれ?なんでそんな目で見るんですか…?なんか僕、悲しくなってきてしまいますよ…)

 

この場の雰囲気がマズイと感じたソルは急いで、キリトに言われた位置へと行ったのだった。

 

 

 

今だに感じる視線は気のせいだろうと考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シリカはキリトと共に、順調にレベル上げなどをしながらキリトに尋ねた。

 

『どうして、私のためにここまでしてくれるのですか?』

 

キリトは答える。

 

『君が俺の妹に似ていたから』

 

それから、キリトは自分の現実での話をしてくれた。

キリトには妹がいる。しかし、その妹とは本当は血がつながっていない。母の妹の子、つまり『従兄妹』だ。だけど昔から、物心がついた時から一緒に暮らしていたため、『兄妹』のように錯覚されていた。このことは妹は知らず、キリトだけしか知らない。だからこそ、キリトから距離を作ってしまったのだ。

また、キリトには祖父がいて、どうも厳格な性格だったようだ。キリトが8歳の時に、祖父は2人に近所の剣道に通わせたが、キリトは2年で辞めてしまった。祖父はそれはそれはカンカンだったこと、キリトは祖父に殴られたのだ。そしたら妹が…

 

――私が2人分(・・・)頑張るからお兄ちゃんを叩かないで!—―

 

と、キリトを庇ったのだ。それからは妹は全国大会に進出するぐらいの実力にまで上り詰めた。しかし、

 

「俺はずっと、(あいつ)に引け目を感じていたんだ…」

 

キリトは、きっと妹は他にもやりたいことがあって、自分を恨んでいるんじゃないのか、っと。

 

「君を助けたくなったのは、妹への『罪滅ぼし』をしている気にもなっているのかもしれないな……。……ごめんな」

 

そう言って、シリカに謝罪するキリト。確かに、シリカを助けたところで、実際に、妹への『罪滅ぼし』にはならない。キリトの自己満足だ。

 

しかし、シリカは…

 

「妹さん、キリトさんを恨んでいなかったと思います。好きでもないのに、頑張れることなんかありませんよ。きっと、本当に剣道が好きなんですよ!」

 

そう、シリカは答え、キリトを励ます。キリトも少しだけ明るくなって、

 

「君にはいつも慰められてばっかりだな…。そうかな…?…そうだと良いな…」

 

前向きな顔になり、空を見つめるキリト。シリカはそんなキリトの顔を見つめていた。心なしか、少し顔が赤くなっているような…。

 

「…っ!よ、よ~し!私も頑張りますよ~!!」

 

そう言って、歩き出すシリカ。

 

ピカァア!!

 

「っへ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きゃああああああああああああああああああああああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあと、事案が発生しそうになったのは2人だけの秘密だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、2人はやっと『思い出の丘』についた。

着いて、見えてきたのは4本の柱に囲まれた、台であった。シリカは駆け足で台に近寄ると、台は光はじめ、そこから…

 

 

 

 

 

一輪の美しい花が咲いた。

 

 

 

 

 

シリカはその花を丁寧にむしると、

 

 

『プネウマの花』

 

 

そう、入手表示が出た。

 

「これで、ピナが生き返るんですね…!」

 

「ああ」

 

「っ!良かったぁ……!!」

 

「でも、この辺は強いモンスターが出るから、街に戻ってから生き返らせよう。ピナだって、きっとその方が良いだろう」

 

「はい!」

 

シリカはこうして、キリトの協力もあって、無事に『蘇生アイテム』を手に入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、街に戻る途中…、ちょうど橋を渡るときのことであった。

 

キリトはシリカの肩を掴んで歩くのを止めさせる。

 

「キリトさん?」

 

当然、シリカはキリトに尋ねた。しかし、キリトは…

 

「そこに待ち伏せている奴、出て来いよ」

 

キリトは誰もいない(・・・・・)所に声をかけた。

……すると、

 

「私の『隠れ身スキル(ハイディング)』を見破るなんて、なかなか高い『索敵スキル』ねぇ、剣士さん」

 

槍使いの、赤髪の女性プレイヤーが出てきた。

 

「ロ、ロザリアさん!?」

 

シリカは叫ぶ。そう、シリカは何度もこの女性に会っているのだ。

もちろん、昨日のパーティーで、シリカと揉め事になった原因の人でもあった。

 

「その様子だと、上手く『プネウマの花』をゲットできたみたいねぇ」

 

そう言いながら、シリカを見つめるロザリア。そして、

 

「おめでとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃっ、早速、『花』を渡してちょうだい」

 

声のトーンを下げて、とんでもない要求を言ってきたのだ。

 

「な、何を言っているのですか!?」

 

当然、猛反発するシリカ。そんなシリカをキリトは手で制しながら言う。

 

「そうはいかないなぁ…ロザリアさん……、いや、オレンジギルド(・・・・・・・)、『タイタンズ・ハンド』のリーダー、っと言った方が良いかな?」

 

キリトがそう言った瞬間、わずかに眉をひそめるロザリア。

 

「……へぇ」

 

キリトの予想外の言葉はシリカにも衝撃を与えた。

オレンジギルド…、このゲームの世界ではもちろんプレイヤーを『キルする(殺す)』ことができる。しかし、その代償として、プレイヤーの頭の上にあるカーソルは、いつもはグリーンだが、オレンジになってしまう。そんなプレイヤーを皆は、『レッドプレイヤー』と呼ばれる。もちろん、そうなってしまうと、色々なデメリットが生じる。従来のゲームだったら何ともないことだが、『デスゲーム』となったSAOでは、その行為は本当に『人殺し』、『殺人者』になってしまうのだ。

 

「でも、ロザリアさんは(カーソルが)グリーン…」

 

シリカの指摘通り、ロザリアさんの今の状態はグリーンである。しかし、キリトは説明する。

 

「簡単な手口だ。グリーンのメンバーが『プレイヤー(獲物)』を見繕い、オレンジが待ち伏せているポイントまで誘い出すのさ…」

 

さらにキリトは追及する。

 

「昨夜、俺たちの話を盗み聞きしてたのも、アンタの仲間だろ?(次の朝に、ムゴい姿になっっていたが…)」

 

「じゃぁ、昨日、パーティーに入ったのは…!」

 

シリカは気が付いてしまった。そしてロザリアは不敵な笑みを浮かべさせ、

 

「そぉ~よぉ~。戦力を確認して、冒険でどれくらい貯まっていたのかを、調べてたの」

 

そう言って、舌なめずりをするロザリア。

 

「一番楽しみな『獲物』だったアンタが抜けて残念だったけど、レアアイテムを取りに行くって言うじゃなぁ~い?でも、」

 

ロザリアは途中からキリトに向けて言った。

 

「そこまで分かってて、その子に付き合うなんて…、バァカァ?それともホントにたらし込まれちゃったのぉ?」

 

その言葉にシリカは怒りを覚える。キリトはというと、

 

「いいや、どっちでもないねぇ。俺達(・・)もアンタを探してたんだよ。ロザリアさん」

 

キリトは冷静に返す。ロザリアはキリトの言ったことに疑問を持った。

 

「……どういう事かしらぁ?」

 

「アンタ…10日前に『シルバー・フラグス』っていうギルドを襲ったな?リーダー以外の4人が『殺された』……」

 

キリトがそう言うと、ロザリアは髪をクルクル巻きながら、

 

「あ~、あの貧乏な連中ね」

 

何も思っても、感じてもない反応だった。それでもキリトは続ける。

 

「リーダーだった男はなぁ、朝から晩まで、最前線の転移門広場で泣きながら、仇討ちをしてくれるやつを探していた。彼はアンタらを『殺す』んじゃなく、『牢獄に入れてくれ』と頼んだんだ。……アンタに奴の気持ちが分かるか?」

 

キリトはロザリアを睨みながら言った。しかし、

 

「分かんないわよぉ。マ~ジになっちゃって、馬っ鹿みたい。『ここ』で人を殺したところで、ホントにそいつが死ぬ『証拠』なんてないし、それより、自分たちの心配をした方が良いんじゃなぁい?」

 

パチンッ

 

そう言ってロザリアは指を鳴らす。すると、木の陰から数人の……

カーソルがオレンジ(・・・・)になっているプレイヤーたちが出てきた。

 

「っ!キリトさん!人数が多すぎます!!脱出しないと――」

 

シリカがそう言おうとした瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッパ~ン!! ガシッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!??」」」

 

その場にいた全員がびっくりして、音のした方を見た。すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」ポタッ・・・ポタッ・・・

 

 

橋のふちに2つの手があった。そして、手と手の間から、頭らしき何かががひょいっと出てきた。

 

 

 

 

「き、きゃあああああああああああ!!!????」

 

 

 

当然の如く、シリカが絶叫する。ロザリアも他のプレイヤーも小く悲鳴を漏らす。キリトに関しては、シリカを守るようにして、剣をそいつに向ける。

 

モゾッ……モゾッ…

 

謎の生物は必死に橋に上がろうとする。そして…

 

ドテッ

 

何とか、橋にあがったのだった。そして尻もちをつく。

 

「いててててて……」

 

「!」

 

その声を聞いて、キリトは何かに気づく。謎の生物は立ち上がり、キリトを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、キリト君。ちょうどいい所にいましたね」

 

その謎の生物は、キリトの知り合いであり、仲間でもあり、友達でもある、

 

 

ソルだった。

 

 

「何やってんのおぉぉぉぉおおお!!??!!??!!??」

 

キリトはずぶ濡れのソルに詰めよる。

 

「えっ!?なんで!!??どうしたの!!??なんで川からこんにちわしてるの!!??怖いよ!!??『朝の件』並みに怖いよ!!??」

 

ツッコミどころがありすぎて、何を言っているのか分からないキリト。そんなキリトに苦笑いした雰囲気で、

 

「アハハハ…すみません。途中で川に落っこちちゃって……」

 

「川に落ちた!!??なんで!?一体どういうところを歩けば川に落ちるの!!??」

 

「い、いや~、アハハハハ~……」

 

「笑ってごまかすなよ!?モンスターかと思ったわ!!」

 

「本当に申し訳ない」

 

「ホントにそう思ってんのかぁ!!!!????」

 

周りのプレイヤー達はポカ~ンと口を開けながらただ、たたずんでいた。誰も今の状況を理解できていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、

 

 

「シリカ、俺が逃げろって言うまでは、結晶(クリスタル)を用意してそこで見てて。ソルもいるから」

 

「アッ、ハイ」

 

完全に片言になっているシリカ、幸いだったのは、昨日、朝に会った人だったということ。

 

「気を付けてくださいね」

 

そんなシリカとは対照的で、キリトに言葉を送るソル。張本人がこんなシリアスな雰囲気で言ってしまっては、もはや、シリアスのかけらもない。

 

キリトはそのまま、前に出る。

 

「っ!キリトさん!?」

 

ようやく正気に戻ったシリカは、キリトの名を叫ぶ。

 

「…『キリト』?」

 

一人のレッドプレイヤーが呟く。

 

「黒ずくめの服…、盾なしの片手剣…、まさか、『黒の剣士』?」

 

「ということは、あっちのフード付きローブは…『死の笛吹き師』!?」

 

一人がポツリと、ソルを見て言う。

 

「なんだって!?パーティーやギルドに入れたら最期。どんなギルドやパーティーでも絶対に全滅するし、敵対したら髪の毛一本この世に残さないと言われている、ある意味最凶・死神プレイヤーのことか!!??」

 

「ロザリアさん!!コイツら、ソロで前線に挑んでいる『ビーター』と『ホイッスラー』の『攻略組』だ!!」

 

「攻略…組…!?」

 

シリカはびっくりして呟く。一方ソルは、

 

(まって!今あの人たち、僕に対して『死の笛吹き師』って言ったの!?それに『入ったら全滅』!!??『髪の毛一本残さない』!!??僕一体どんな噂されてるの!!!???)

 

心の中で絶賛悶絶中だった。

 

「『攻略組』がこんなところにいるわけないじゃない!!ほら!とっとと始末して、身ぐるみ剥いじまいなぁ!!」

 

ロザリアの合図で、SSを発動させながら、『黒の剣士』ことキリトに襲い掛かる。レッドプレイヤーたちがキリトを切り裂く。何回も何十回も。

シリカは短剣に手を伸ばそうとした。

 

「助けなきゃ…キリトさんを…」

 

手が、声が震える。今すぐ助けないとキリトが死んでしまう。そう思ったシリカだったが、

 

「大丈夫ですよ」

 

横にいるソルが、シリカを落ち着かせるように言う。

 

「で、でも……」

 

「あれを、キリト君のHPバーをよーく、見てください」

 

「?」

 

シリカは疑問に思いながらも、キリトのHPバーを見る。そして気づく。

 

「!」

 

「気づきましたか?キリト君のHPバーが回復してる(・・・・・)のを」

 

そう、キリトのHPバーが回復しているのだ。少し削れたと思ったら、満タンにまで戻っているのだ。

 

「どういうこと…?」

 

やがて、レッドプレイヤーたちの息が上がる。ロザリアは苛々しながら怒鳴る。

 

「アンタら何やってんだ!!さっさと殺しな!!!」

 

しかし、そうは言われても、キリトを殺せない(・・・・)。そんな中、キリトは呟く。

 

「10秒あたり400ってところか…。それがアンタら7人が与えるダメージの総量だ」

 

キリトは続ける。

 

「俺のレベルは78。HPは14500。『バトルヒーリング』スキルによる回復量が10秒で600だ。何時間攻撃しても、俺は倒せない(・・・・)よ」

 

驚愕の事実に、レッドプレイヤー達は驚く。

 

「そんなのアリかよ!?」

 

「アリなんだよ」

 

キリトは即答する。

 

「たかが数字が増えるだけで、無茶な差がつく…。それが『レベル制MMOの理不尽さ』なんだ!」

 

「…っち」

 

キリトの発言に思わず舌打ちをするロザリア。キリトは懐からあるものを取り出す。

 

「これは、俺の依頼人が全財産をはたいて買った、『回廊結晶』だ。『監獄エリア』が出口として設定してある。全員、これで牢屋に跳んでもらう!!」

 

そう言って、周りを見た後ロザリアを見るキリト。

 

「…っ!『グリーン』のアタシを傷つければ、アンタがオレンジに――」

 

 

ヒュオンッ!!カラカラカラ…!

 

 

まるで、電光石火の如く、俊足で一気にロザリアに詰め寄るキリト。

ロザリアの首には剣が当てられていた。

キリトは告げる。

 

「言っとくが俺は『ソロ』だ。一日二日『オレンジ』になるくらい、どうってことはないぞ……!」

 

キリトの言葉に続くように、ソルも言う。

 

「確か…『殺しても死んだって言う証拠がない』って言ってましたよね?なら、自分で試してみたらいかがです?もし、死ぬのが嘘だったら、貴女は暖かい布団の上で目が覚めます。

逆に、本当だったら(・・・・・・)……………、言わなくても分かりますよね?」

 

ロザリアは顔を青ざめながら、槍を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

そのあと、ロザリア率いる『タイタンズ・ハンド』全員は牢屋送りにされましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同日 夕方

 

 

笛を担いだ少年、ソルは宿の玄関付近で待っていた。誰かを待つようにして。

すると、

 

「悪い、待たせたな」

 

「ううん、別に気にしてないよ」

 

宿から黒いコートを纏った少年、キリトが出てきた。

 

「シリカからの伝言で、『いつか、絶対にお詫びします!!』だってさ」

 

「そうですか。別に良いのに…、くすっ…、シリカちゃんは本当にいい子だね」

 

「ああ、そうだな。俺も何度か慰められてもらったよ」

 

「へぇ…、そうですか。それは良かったですね」

 

会話をしながら歩き始める2人。

 

「それにしても、五日も前線から離れてしまったからな…。ホントに悪い。巻き込むような形になって」

 

「だからいいですよ、別に。ちょうど休暇も取れた、って感覚ですし、『楽しみ』も増えました」

 

「『楽しみ』?」

 

「はい」

 

瞬間、キリトはあの出来事を思い出す。顔が真っ青になり、冷や汗もでる。

 

「?どうしましたか?」

 

ソルが心配して顔を覗き込む。

 

「……一つだけ、聞いていいか?」

 

「?はい、どうぞ…?」

 

キリトが質問の許可を求めたので、ソルは許可をだす。

 

「……ソル、お前…昨日の夜、……『何があった』?」

 

瞬間、ソルの周りに黒いオーラみたいなのがでた。

 

「!?」ブルッ

 

思わず、体が震えるキリト。ソルは笑ったような声で、

 

「いや~、何もありませんでしたよ(・・・・・・・・・・・)?」

 

「っえ?でもメールで――」

 

「何もありませんでしたよ?」

 

「え、えっ?じゃぁ、朝のアレ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『何もありませんでした』、よ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!!」ブルルッ

 

 

思わず、体が動かなくなるキリト。ソルはそんなことも知らずにトボトボと歩く。不意に、キリトはこんな声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――『これ以上、詮索するな』と―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?あれ?キリト君?」

 

ソルはようやく、キリトを置いて行ってるのに気づく。キリトは固まったままだった。

 

「お~い、キリト君?」ペシペシ

 

「っは!?」

 

ソルの軽いビンタで正気を取り戻すキリト。

 

「もう、どうしたんですか?キリト君らしくない」

 

「い、いや何でもない!何でもないからな!?」

 

「そうですか?……まぁ、分かりました。それじゃぁ、遅れた分を取り返しましょうか!」

 

「あ、ああ!そ、そうだな!」

 

 

どこかぎこちないキリトと一緒にソルは、最前線に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

夕日が2人の少年を暖かく見守るのだった。




さて、いかがでしたか?


前回、少なかったので、その反動で内容を盛り込んじゃいました。第十話記念ということで。
さて次回はですが、ソルをあの『事件』の回にいれるか、もしくは『オリジナルエピソード』で書こうか悩んでいます。どちらの話にしても少し、息抜きをしようかなと思っています。

では、次回のお話でお会いしましょう。

次回予告 「魂の渾沌 謎の白き少女」

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