落ち着いたころの第九話です。
色んな感想ありがとうございます!様々な感想、意見、質問などもあって、それを参考にしながら見させてもらっています。
それではどうぞ、ごゆっくりと。
2024年 2月23日 夜
第35層の『迷いの森』
森の中で、
「はぁ…はぁ…」
女の子は肩で息をしているのに対し、モンスターたちはどこか、余裕の表情だったのだ。
「きゅるるぅ!」
一匹の水色のモンスターが、『使い魔』が心配そうに女の子の周りを飛んでいる。
一言で言ってしまえば
決して、女の子は元々は一人ではなかった。パーティーを組んでいたのだが…、
そのパーティーで揉め事を起こしてしまったのだ。
原因はアイテムの配分の問題。一人の女性プレイヤーが女の子に対して、明らかにひどい配分の提案をしたのだ。当然、女の子はその提案に抗議したのだが、女性は無視、自分勝手な理由であしらったのだ。女の子は怒って、1人でパーティーを抜けたのだ。
女の子は『自分一人でもこの森を抜け切れる』、そう過信してしまったのだ。
そしてこの結果だ。
「きゅるるぅ~」プハァ~
使い魔である『ピナ』は女の子、『シリカ』にたいして回復のブレスを吹きかけた。少しだけ回復するが、やっとHPバーが半分になったところ。シリカはこのままじゃ危険だと判断して、アイテムポーチから回復アイテムを出そうとするが、
(っ!回復アイテムが!?)
ないのだ。
ブゥンッ!!
「っ!?」
ドゴォッ!
戸惑いによって発生した一瞬の隙をモンスターに突かれ、棍棒がシリカの体に直撃する。
「かはっ!!??」
勢いよく吹き飛ばされ、木にぶつかるシリカ。彼女のHPバーは一気にレッドに達した。その際に、自分の武器の短剣は手元から離れてしまう。
「はっ!?…あっ……ああ……」
後ろは木、前にはモンスターが3体。丸腰のシリカには何もできる筈もなく、一気に詰め寄られてしまい、
ガアァァァアアァァアア!!
1体のモンスターが勢いよく棍棒を振り上げる。
この攻撃が当たれば自分は『死ぬ』だろう。
もはや絶望の状況だったシリカは目を瞑った。
「ぴいいぃぃぃいいい!!!」
ドグシャァ…!
鈍い音が微かに響き渡る。シリカは自分は死んでしまったのだろうと思った。しかし、
「……?」
生きている。シリカは何があったのかと目を開け、辺りを見渡す。
すると、そこには…、
「……………っ!?ピナ!?!?」
ピナが倒れていた。シリカは察した。さっきの攻撃で当たったのは自分ではなく…
ピナに当たったのだということを。
「ピナ!ピナ!!」
シリカはピナに駆け寄る。しかし、
シリカの呼びかけも虚しく、ピナのHPバーはみるみるうちに、減っていき……、
0になった。
瞬間、ピナは光出す。
「ピナ…ピナ…!ピナァ!!」
ピナを抱きしめるシリカ。
パリーン………
「!」
ピナはシリカの腕の中で…、
散ったのだった。
羽根がシリカの膝元に落ちる。シリカは動けなかった。大切なパートナーを失ったショックで。
グオオォォォオオオオ!!!
無慈悲に振り上げられる棍棒。シリカは、それでも動かなかった。
(ピナ……ごめんね……わたしも…『そっち』にいく—―)
バウアウアウアァァァアア!!!バウアウアウアァァァアア!!!
「……っえ……?」
シリカは思わずに声を漏らした。どこからとなく、鋭い犬のような
一人取り残されたシリカ。今の状況をのむことができずに、一人座り込んでいた。
すると、
「どうしたの?」
シリカは声の方に顔を向ける。
そこには
そのあと、少年の悲鳴が聞こえたような気がしたが、シリカと少年は特に気にしなかった。
「…はぁ。…………もう……、はちみつ採取は懲り懲り……です」
そう呟きながら笛を担ぐ少年、ソルはあの後、モンスターを自棄と気合と根性でねじ伏せながら、何とかはちみつを手に入れたのだった。
一体どのくらい経ったのだろうか?一体モンスターを何体倒したのか?それすらも考えられないくらい疲労困憊したソルは、やっとのことで街に無事、帰還したのだった。
(もう、限界だ…今回こそは…チーズケーキを……)
静まり返った街の中をよろよろとするソル。そして、例の宿に入る。
「…すみませーん……」
元気のない声だったが、厨房からNPCがでてきた。
「いかがなさいましたか?」
「これ…。依頼されていた…はちみつです……」
もはや今にも消えそうなろうそくの火の如く、消え入りそうな声と共に、瓶に入ったはちみつを差し出すソル。
「っ!ありがとうございます!!これで、美味しいチーズケーキが出せます!!ちょっと待っててくださいね。今チーズケーキをご用意します」
今のソルとは対照的に、ニッコリと笑うNPC。
この言葉だ、この言葉が聞きたかったんだ!!少し活気づくソル。近くにあった席に座り、今か今かと待つ。
そして、
「お待たせしました。チーズケーキになります」
「!」
そう言って、NPCはチーズケーキを持ってきてくれた。そのチーズケーキは気のせいだろうか、朝見たときよりも、随分と美味しそうに見えるではないか。この表面はきつね色で、中は卵のような黄色。そして、その上からかかった、はちみつのソースは今のソルの食欲を引き出した。
「…ゴクリ…(お、美味しそう…)」
自然とよだれが出そうになるが、それを堪えるソル。
ダレダ!! ダッ!!・・・・・・・ダダダダ
すべてはこの
………ドタドタッ
もう、誰にも邪魔はさせない。
…ドタドタドタッ!
これ以上は我慢できない。
ドタドタドタドタッ!!
少年はフォークを持ち…
「いただきま――」
ダダダダダダッ!!!
ドガッ!
「す」
ヒュ~~ン……ペシャリッ……
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぇ?」
パリーン……
散った。
「」
ソルは固まった。と思ったら、
「…ふ、フハハハハ…A-HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHHAHAHAHAHHAHAHHHAHAHHAHAHAHHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAH!!!!!!!!!!!!!!!」
壊れた。と思ったら、
「オノレ、ゆ”る”さ”ん”!!」
ダダダダダダダッ!!!
物凄い速さで店を出た。
「何…ですか…?」
女の子は少年に聞く。少年は階段を睨みながら答える。
「『聞かれていた』…な」
聞かれいた…、それはもちろん、少年と女の子の話を聞かれていたのだ。話の内容は、第47層にある『思い出の丘』へ、
「で、でも…、ノックなしだと、ドア越しの声は…」
少年はドアを閉めながら、女の子に言う
「『聞き耳』スキルが高い場合は別だ…。そんな奴、なかなかいないけど…(
「なんで、立ち聞きなんか…?」
少年は答えなかった。その代りにドアを向こうを睨むだけだった。
このあと、下から、無機質で不気味な笑い声が響いたが、部屋が防音加工だったため、少年と女の子は聞くことは無かった。
街『ミーシェ』のとある人気のない裏路地
「っち……あと少しだったのによ」
そう、舌打ちをする男性は、さっきまで宿の女の子の部屋で盗み聞きをしていた男性だ。逃げきれたことを確認した男性は、メニューを開く。
「しっかし、大体のことは聞き取れたぜ。47層の『思い出の丘』にある使い魔専用の『蘇生アイテム』か…。ウヒヒッ。これは高く売れるぜ」
そう呟きながら、メッセージを誰かに飛ばす。
すると、
「ねぇ、そこのおじさん」
後ろから声がしたので肩をビクッっとさせる男性。
「ああ?」
男性は多少うろたえながらも、強気の口調で返しながら振り向く。すると、
フードを被ったローブのプレイヤーが立っていた。
「おい。なんか用か?ああん!?」
まさに不良の口調で近づいてくる男性。すると、
ガシッ…
「!?」
いきなりフードのプレイヤーに肩を掴まれたのだ。
「ねぇ………、
いきなり訳の分からないことを言ってきたのだ。男性は思わず、
「は、ハァ!?何訳の分からないことを言ってるんだよ!こっちは忙しいんだよ!!さっさとこの手を――」
男性はフードのプレイヤーの手を、強く降り解こうとする……
…………が、
「!?」
降り解けない。
「ねぇ」
フードの少年が再度声をかける。その声にビクッとする男性。フードのプレイヤーは続ける。
「
男性の脚は無意識に震えだす。降り解けない手。無機質な声で繰り返される言葉。そして、暗いせいか、フードで顔が見えないこと。
それらは男性を怯えさせるには十分な条件であった。
「な、なんだよ…!こ、ここ、こっちは忙しいってい、い、言っただろ…!!」
男性の必死な抵抗の声。しかし、それは届かず…
「ねぇ、
「ひ、ヒィイイ!!??」
もはや、男性の表情は怯えきっていた。まるで、生まれたての小鹿のように脚を酷く震えさせながら。
そして
「ねぇ」
フードのプレイヤーは再度問う。
「
フードから男性の顔を見る瞳は…
物凄い、透き通るような、光の無い目だった。
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!
一通のメールが来た。
―――キリトだ。多分『あいつ等』が
返信をする
―――ソルです。分かりました。それと、キリト君に
翌日
黒いコートを纏った少年、キリトは朝早く起きて、噴水広場へと向かっていた。
(一体何なんだ…?朝早く、『回収してほしいモノ』ってのは…?)
そう考えながらも、噴水広場に出るキリト。朝早いので、当然人気はない。昨夜に出会った女の子、シリカも今はまだ寝ている。
(ここに、何かあるって言ってたけど、何んだろ――)
辺りを見渡すキリト。
次の瞬間、キリトは絶句した。
「」
そこには…
両脚をVの字にして、噴水に体が逆さにブッ刺さってるプレイヤーがいた。
まさに、犬〇家の例のシーンのように。
「う、うわあああああああああああああああああああああああ!!!!????」
キリトの絶叫が街に響き渡る。幸いだったのは、まだ皆が寝ていることだけだった。
「ん~~~♪うまい♪チーズケーキ、美味しい~♪」
宿では、チーズケーキを『3つ』も食べているフードの少年の姿があった。その姿はまさに、『幸福』だったという。
さて、いかがでしたか?
ちょっと今回は文章少なめでした。
え?ギャグパートって言うより、ホラーパートだった?アハハー、ナンノコトデスカー?(白目)
さて次回ですが(強引)、いよいよアニメの第4話のラストスパートです。果たして、シリカは無事に花を手に入れらるのでしょうか!?
では、次回のお話でお会いしましょう。
次回 「ソロ笛男はつらいよ その3」