ヤミを祓うは七つ球   作:ナマクラ

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第十一話 繋げ!希望の元気玉!

 メディカルポッドとかいう装置の治療が終わったのと同時に飛び出して悟飯達の元へ向かえば、何でかさっきよりも気が強くなってたベジータの渾身の気功波をヤツ――――フリーザがただの蹴りで上空へと蹴り飛ばした所だった。

 

 そこからオラもフリーザとの戦いに参戦したんだけど、戦況としちゃ良いとは言えなかった。

 

 オラが十倍界王拳を使ってる状態でベジータのサポートとピッコロたちの援護があってようやく互角……しかもヤツはまだ半分くれぇの力しか出してねえらしい。

 

 それがハッタリなら無茶やりゃ(20倍で)何とかなるけど……

 

「徒党を組んでいるとはいえ、サイヤ人如きがここまでやるとは驚きましたね」

 

「こりゃ……まじぃな……」

 

 オラたち全員を相手にしてる様子を見てる限り…………どうもハッタリじゃなさそうだ。

 

 ……本当はこれだけは使いたくなかった。下手すりゃこの星ごと消し去りかねねぇ……けど、フリーザを倒すにはもうこれしか思いつかねえ。

 

 でも他にも問題がある。こいつは使うのに時間が掛かる。フリーザと戦いながらじゃ使う為の準備もできねぇ。そのための時間を何とか作らねぇと試す事もできねぇ。

 

「なあベジータ……30秒でいい、時間稼げねぇか?」

 

「貴様……俺に死ねと言っているのか!?」

 

「無茶だってのはわかってる! けどフリーザを倒すにはもうこれしか思いつかねぇんだ……!」

 

「……その時間があればフリーザを倒せる算段が貴様にはあるというのか……?」

 

「試してみる価値はある。どっちにしろこのままじゃ、おめえもオラたちも殺されちまう……だったらこれに掛けるしかねぇ……!」

 

「クソッたれ……! 俺一人でヤツの足止めなど出来るはずもない事を、貴様も察しているだろうに……!!」

 

「おめえしかいねぇんだ。頼む……!」

 

 ベジータの言う事もわかってる。オラとベジータが二人がかりでフリーザと対峙してたからこそここまでは何とか食いついていけたってのに、そこでオラが抜けたらその均衡は間違いなく崩れる。

 

 でもこのままじりじりと削られて反撃の兆しすらなくすくらいなら、こっちから仕掛けるべきだ。それはベジータにもわかってるはずだ。

 

 もし断られたら、さっきの50%って言葉がハッタリなのを期待して20倍界王拳で一気に蹴りをつけるしかねぇけど……

 

「――――ふざけるなよ!」

 

 そのでけぇ声といっしょにベジータの拳がオラの頬を殴ってきた。

 

 まさか殴られるとは思ってなかったから、いきなりの事にオラもわけがわからなくなる。

 

 そんなこっちの心情など知った事ではないと言うかのようにベジータは大声で罵倒してくる。

 

「貴様、それでも誇り高きサイヤ人か! もういい! 貴様のような腰抜けはここから消えろ!!」

 

「べ、ベジータ……?」

 

「……万が一でも仕留め損なってみろ。ただじゃ済まさんからな……!」

 

 何のことを言ってんのかさっぱりだったけど、最後に小声でそう呟いたベジータが背を向けて単身フリーザの元へと飛んでいく段階でベジータの思惑に気が付いた。

 

 

 

「おや、仲間割れか? 命乞いかそれとも逃げる算段でも立てているのかと思ったが……」

 

「逃げるだと? 腰抜けの下級戦士ならともかく誇り高きサイヤ人の王子たるベジータ様が逃げるなどするものか! 貴様を倒すのに腰抜けの下級戦士など必要ない! このサイヤ人の王子ベジータこそが、最強でなければならないんだ!!」

 

「なるほど、二人掛かりで死ぬよりもつまらない意地で一人死ぬことを選んだわけだ。あなたらしいですね。まあどちらにしても死ぬことには変わりないですが……」

 

 

 

 ベジータはフリーザの意識からオラを外すために一芝居打って、オラがビビッて逃げようとした腰抜けだとフリーザに思い込ませようとしたんだ。

 

 それがどこまで上手くいくかはわかんねぇけど、それでもいきなりオラが後ろに下がる事で何かを企んでるといきなり思われるよりはずっといい。

 

「すまねぇ、ベジータ……!」

 

 空に両手を掲げて、技を使う為に元気を集める。

 

 

 

 元気玉――――それもこの星だけじゃねぇ。近くにある他の星や太陽も含めた、この宇宙一帯から元気を分けてもらう元気玉だ!

 

 

 

(★)

 

 

 

「――――何やってんだベジータのヤツ!? いきなり悟空を殴って!? 気でも狂ったか!?」

 

 いきなりお父さんを殴ったベジータに、まさかここで裏切るのか、あるいは正気を保てなくなったのかと驚きを隠せない僕とクリリンさんだったけど、ピッコロさんがそれを否定する。

 

「いや、おそらくだがベジータは悟空の案に乗って時間稼ぎのために演技をしたんだろう。どんなものかはわからんが時間がかかるらしい」

 

「え? ピッコロ、あの二人の会話が聞こえたのか? この場所から?」

 

「貴様らとは耳の出来が違うんだ。だがあのベジータが時間稼ぎを請け負うとは……」

 

 僕もピッコロさんの耳の良さに驚いたけど、ピッコロさんが言うようにベジータがお父さんの提案に乗って時間稼ぎのためにフリーザに向かっていったことに驚いていた。

 

 逆に言えばあのベジータがお父さんの案に乗らないといけないと思うほどに状況がまずいんだ。

 

「悟空の切り札が何なのかはわからんが、ベジータだけに任せてられん。俺達も行くぞ!」

 

「あ、ああ!」

 

 ピッコロさんとクリリンさんが飛び立ったのと一緒に僕も飛び立つ。

 

 ピッコロさんは死んでしまっていたから見てないんだろうけど、僕にはお父さんが何をしようとしてるのか理解できた。

 

 

 

 きっとお父さんは地球でベジータを瀕死に追い込んだ元気玉を作ろうとしているんだ。

 

 

 

 でも地球と違って元気を分けてくれる生き物が圧倒的に少ないナメック星でフリーザを倒せるほどの元気玉が作れるんだろうか?

 

 そんな不安を抱きながらも、きっとお父さんの事だから何か考えがあるんだと、ベジータの援護に入ると、少しして上空から凄まじい気を感じて思わず上を見上げるとそこには信じられないものが存在していた。

 

「お、大きい……!?」

 

 そこにあったのは、地球で見た物の何十倍もの大きさで空を覆い隠す程の元気玉だった。

 

 思わず見上げてしまって、しまったと思いフリーザの方を見ると、幸い僕の視線には気付いていなかったのか、じわじわとベジータを甚振っていた。

 

 ……ベジータも、僕らやギニュー特戦隊と戦った時と比べて圧倒的に強くなってる。おそらくだけど僕らの中でお父さんに次ぐ強さを持っているだろう。それなのにフリーザとはあそこまで力の差があるんだ。

 

 でも、あの元気玉だったらフリーザだってきっと倒せる……!

 

 

 

 

 

 

 

「――――どういう状況だ、これは? なんだアレは?」

 

 

 

 

 

 

 

 ――――声をかけられたのは、そんな風に思っていた時だった。

 

 

 

「え? あ……! チア!」

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫だった!?」

 

「聞こえてなかったのか? あれはなんだと聴いている」

 

「え……あ、あれは元気玉だよ」

 

「元気玉?」

 

 僕はチアに元気玉についての説明をした。時間がないからそこまで詳しくは説明できなかったけど、チアは僕の拙い説明だけで十分に理解したみたいだ。

 

「自然……つまり己以外の他者から気を……」

 

 だからチアも協力してフリーザの気を引くために……と続けようとしたんだけど、その前にチアが僕を突き放すようにこう言ったんだ。

 

「……貴様らは貴様らで勝手にしろ。私は私で勝手にする」

 

「え……ま、待ってよ。それってどういう――――」

 

 僕はその言葉を最後まで言い切ることができなかった。

 

 今まで意図的に隠していたのか、一切感じ取れなかったチアの気が、爆発的に解放されたからだ。

 

「な、何だぁ!?」

 

「何だこの気は!?」

 

 その気の奔流に思わず僕だけじゃなくて少し離れた別の場所からフリーザを牽制してたクリリンさんやピッコロさん、さらにはお父さんも反応していた。

 

 解放されたチアの気は圧倒的だった。今フリーザを足止めしてるベジータどころか、さっきまでのお父さんと比べても遜色ない程の強烈な気の奔流に思わず僕らは動きを止めてしまっていた。

 

 そんな僕らの反応なんか知った事じゃないとばかりに、チアが両手を胸の前で合わせるように構えると、その手の間に強烈な光を放つ宝石のような緑の核を持つ黒い気弾が生み出される。

 

 その気弾は両掌から音を立てて放出されている黒い電気のような気を食らい纏っていくようにさらに巨大になり、チアの身体を超える大きさになっていく。

 

「す、すげぇ……チアのヤツ、どこにこんな力を隠してたんだ……?」

 

「手を休めている場合か! このままではベジータが持たんぞ!!」

 

「あっ!?」

 

 そう、僕らが手を止めてしまえばその分の負担はベジータに集まってしまう。

 

 その結果か、お父さんの代わりに身を挺してフリーザを足止めしてたベジータがついに地面に倒れ込んでしまった。

 

「げはっ……ぐが……ぁ…………」

 

「あなたで遊ぶのも飽きてきました。そろそろトドメを刺してあげましょう…………?」

 

 ま、まずい……このままじゃベジータが殺されてしまう……!

 

 でもフリーザの視線は倒れたベジータではなく、そこから少しずれた海を見ているように見えた。海は波打っていたけど、その海面には不自然に光り輝く何かが写っていて……あっ!?

 

「何だ……?」

 

 それを見ただろうフリーザは不思議に思ったのか反射しているものの正体を探るべく空を見上げた。見上げてしまった。

 

「な!? な、なんだアレは……!?」

 

 そう、海面に反射していた遥か上空にあった物はお父さんが作っている元気玉だ。空を覆いつくす程の大きさのそれを、空を見上げて見逃すはずがない。

 

「い、いつの間にあんなものを……一体誰が!? ……ヤツか!」

 

 そして次にフリーザが気にするのは当然誰があれを作り出したかという事で、思い当たる人などそう多くない現状、その視線はすぐさま空に向かって両手を掲げているお父さんへと向けられた。

 

「ば、バレた……!」

 

「ま、マズい……!」

 

「そうか、さっきのは芝居で、あれが貴方達の切り札というわけか……ならその切り札を使う前に殺してさしあげましょう……!」

 

 こちらの目論見を見破ったフリーザがお父さんを殺すために動こうとして、それに僕らの焦りが高まる。

 

「くっ……! まだか悟空!?」

 

「まだだ! もうちょっと……もうちょっとだ……!!」

 

 お父さんの様子を見る限り、きっとまだあの元気玉は完成していないんだ。だからそれまでの時間を何とか僕たちで稼がないといけない。

 

 ピッコロさんもそのためにお父さんの前でフリーザに立ちはだかるために気を高めている。

 

 けど、それでどれだけ時間を稼げるだろうか……いや、何としてでも食い止めないといけないんだ……!

 

「ふん……」

 

 そんな僕たちの焦りを気にもせずに、抱える程に巨大になっていた気弾を押し潰していくかのように凝縮、両手に収まる程の大きさまで圧縮しながら、チアはこう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

「――――対策済みだ」

 

 

 

 

 

 

 

 それと同時に、元気玉を作るお父さんを何とかしようと飛び上がったフリーザを、どこからか飛来した歪な形の気弾が腕と胴を一括りに縛り上げて拘束した。

 

「――――何っ!?」

 

「え……い、一体誰が……!? チアか!?」

 

 すぐさまお父さんの前まで到達すると思われたフリーザの身動きをこうも簡単に止めるなんて、さすがチアだ。さっきは勝手にしろだなんて言ってたけど、やっぱり協力するつもりはあったんだ。

 

 これならお父さんが元気玉を完成させるまで時間が稼げるかもしれない……! 

 

 ……そう思った僕の考えをまるで甘いとでもいうかのようにフリーザが不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「ふん……こんなものでこの私を拘束できるとお思いですか……!」

 

 フリーザが力を込めるとぐぐぐ……っと拘束しているエネルギー体が無理やり力任せに引き延ばされていく。このままじゃすぐにでも千切られちゃう……!

 

 その前に元気玉ができればいいけど、お父さんの様子を見る限り、まだかかりそうだ。

 

 ならフリーザが完全に拘束を解ききる前にこっちから攻撃を仕掛けて少しでも時間を稼ぐしかない……! そう考えた僕は気を高めてフリーザに向けて飛んでいこうとして――――――――チアの言葉で動きが止まった。

 

「――――これで、確実に当てられる……!!」

 

「え――――」

 

 何を言って――――と続けようとした言葉はチアの姿を見て消えてしまった。

 

 その両手の間に収まっている圧倒的なまでに気を込められた気弾にさらに気を込めていき、チアはそれを鬼気迫る表情を浮かべてフリーザに向けて突きだした。

 

 

 

 

 

「――――塵も残さず、消えてしまえ……!!」

 

 

 

 

 

 その言葉と共に黒い極光がフリーザへと放たれた――――

 

 

 

(★)

 

 

 

 強烈な光と共に途轍もない気を感じたかと思えば、黒い気功波がフリーザを呑み込まんと押し寄せた。

 

 それを避ける暇は拘束を解いたばかりのフリーザに存在せず、まともに食らうのもまずいと判断したのか、選択した行動はその手で受け止めるという物だった。

 

「ギィ……!?」

 

「死ね……死ね! 死ねぇ!! 宇宙の塵屑がッ!! 疾くと死ねぇ!!」

 

 その罵詈雑言とともにさらに気が高まり、目に見えて黒の極光が力を増し、それを受け止めているフリーザをどんどんと押し込んでいき、そしてついに、フリーザを呑み込んだ。

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

 

「や、やったのか……!?」

 

 

 

 黒い光が通り過ぎ、その場にいる全員が注目するその場所には―――――――腕を突き出して力の奔流に耐えきったフリーザの姿が存在した。

 

 

 

「う、嘘だろ……あ、あの砲撃も受け止めるのかよ……!?」

 

「そ、そんな……!?」

 

 信じられない。あの一撃は先程までの悟空を超える程の力だった。それを完全に受け切るなど……! 化物め……!

 

「ぜぇ……ぜぇ…………糞が……塵が、屑がぁ!! 何故死なんッ!! さっさと、死ねよっ!!」

 

 砲撃を放った張本人も、罵声を吐くが、明らかに疲労している。おそらく先の一撃に全てを賭けたのだろう。無理に無理を重ねた故のあの威力だったのだ。今すぐその場に倒れてもおかしくはない。

 

 ただ流石のフリーザもあのレベルの砲撃を撃ち出してくるガキを見逃すことはできなかったのか、さっきまで悟空を仕留める事に向けていた意識をあのガキに向けていた。

 

「痛かったぞ……! 今のは、痛かったぞっ!!」

 

 フリーザの激昂とともにエネルギー波が放たれ、あのガキはそれをかわす事もできずに爆発に煽られて吹き飛ばされて、そのまま海中へと消えていった。

 

「ち、チアーーーーーー!?」

 

「お、落ち着け悟飯!!」

 

 悟飯が助けに行こうと吹き飛ばされた方へと向かおうとするが、クリリンに止められている。今の状況で少しの戦力を減らすべきじゃない。

 

 それにフリーザの攻撃を受けた直前にバリアーを張っていたのは確認できたからあのガキも何とか原型は留めているだろう。だが、あれではもはや戦闘継続はできないだろう。戦力としては期待できない。

 

 ……正直、あのガキに好印象を抱く事ができない。あの気の質といい、あの言動といい、ヤツは第二のベジータやフリーザになりかねない。同化したナメック星人の言っていた言葉の意味が理解できた気がする。

 

 

 

 ――――だが今回は感謝せざるをえない。なにせヤツのおかげで時間は稼げたのだから。

 

 

 

「――――! 出来た!」

 

「――――ッ! やれぇッ!!」

 

 

 

 その言葉とともに、空に掲げられていた悟空の両手が振り下ろされ、天に座す巨大な元気玉がフリーザ目掛けて降下した。

 

「な!? しまった……!?」

 

 向かってくる元気玉を受け止めるが、さすがのフリーザも止め切る事は出来なかったようで、元気玉はナメック星を削りながらもヤツの身体を呑み込んだ。

 

 

 

(★)

 

 

 

 フリーザが放った攻撃の衝撃に身を任せて海面に叩き付けられながらも海中に逃れた私はそのまま身を潜めてその場から離れていく。

 

 潜水直後に凄まじい衝撃が周囲を襲い海が荒れ果てた――――おそらくは元気玉とやらが命中したのだろうが、それも何とか乗り越えた。

 

 あれで宇宙の塵がくたばったかは知らんが、もういい。ヤツが死んでいようが死んでいまいが関係ない。これ以上あんな奴の相手でこの私の貴重な時間を無駄に消費するなどしてられるか。一足先に私は帰らせてもらう。

 

 

 

 だがメディカルポッドは私がいただく。

 

 

 

 あれがあれば、延命行為にすぎないが時間が多く作れるようになる。己の病みを克服するための時間が作れるのだ。

 

 今回ドラゴンボールが手に入らなかったのは痛いが、せめてメディカルポッドだけは持ち帰る。

 

 空のホイポイカプセルは幾つも持っている。メディカルポッド単体か、大型宇宙船を丸ごとでもいい。それを回収してその辺りに転がっていた小型宇宙船で脱出する。

 

 最高どころか最善とも言えないレベルの戦果だが、ないよりはマシだ。

 

 塵共に関わるのも避けたいので見つからないように気配を隠して海中を移動する。

 

 その途中、幾度かの星が震えるかのような振動、崩壊していくかのような地殻変動、その合間での何度かの息継ぎの末に、大型宇宙船が見えるだろう位置で海上へと浮上する。あとは陸地に上がって宇宙船を回収すればそれで――――と、そこで周囲の様子が明らかに変わっている事に気付いた。

 

「……? 何故、空が暗い?」

 

 先程までは太陽の光に満ち満ちていた空が今ではその面影もなく黒く闇色に染まっていた。

 

 この星に夜は存在しないはず。たとえ星が崩壊する直前だとしても複数の太陽に囲まれているこの星で空が急激に暗くなる事など考えられない。この星に来てからの一週間ほどで夜のように空が暗くなったのはたったの一度、ドラゴンボールを使用した時だけ――――

 

 

 

「――――まさか!?」

 

 

 

 唯一の例外へと思い至り、すぐさまその場所がある方向へと振り返ると、そこには巨大な光の柱――――ポルンガが存在した。

 

 そしてそこへ凄まじいスピードで向かう二つの気配が……すでに私が今から全力で向かっても間に合わない場所まで近づいている……!

 

 何故、一度消えてしまったポルンガが復活しているのか、全く理解できなかった。ただ、不意に舞い降りたチャンスが既に手から零れ落ちている事だけは理解できた。

 

「……ふざけるな、ふざけるなよ……! 願いを叶えるのは、貴様ら塵ではない……この私だぁっ!!」

 

 それでも、諦めてただ座して待つなど出来るわけがない。すぐさま飛び立とうとして――――――

 

 

 

 

 

 ――――――視界が、変わった

 

 

 

 

 

 先程までの暗さから一転して光に溢れ、先程までの殺風景な自然しかなかった風景から人工物溢れる風景に変わり、誰もいなかったはずの周囲には多くのナメック星人たちを含めた塵屑どもに溢れていた。

 

 

 

 何が起こったのか、理解できなかった。ただ、零れ落ちて掬おうとしたそのチャンスが、もはやどうしようもない程に消滅した事だけ、理解した。

 

 


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