え、お前の轟雷起動しねぇの?   作:ししゃも丸

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「いるんだろ大佐。大佐、出てこい!」
「(スッ)」
「――! 静かに素早くか。変わらんな」
「それで? 一体どうしたんです?」
「迅雷、マテリア・クロ、シロの劇中デザインシールが現れた」
「なんですって?!」
「対象商品を一個買うたびに一枚貰える。私は買った。次はキミの番だ」




2機目 近所のFA:Gが狩られていてないんですけどぉ

今日は日曜日である。社会人にとって、休日がしっかりとある人間にとってはとても貴重なものである。

それは明人とて例外ではなく、日曜日はゆったりするのが日課である。土曜日に平日にはできない掃除などをしなくてはならないのが悩みの種であるが、一人暮らしをしている彼の使命とも言えた。

これが本当の意味で一人暮らしだったら「明日、明日やろう」と引き延ばすが、人間ではない同居人……ではなく、家族のような存在――FA;Gが、明人を堕落させないでいられる理由でもあった。

日曜日の午前中、明人は特に当てもなくテレビを見ていた。友人はちゃんといるし、会社の同僚と飲みにいくことだってあるが、今日は平凡な日を過ごす予定であった。というよりも、平凡な日の方が多いのだから当然である。

明人は立ち上がると押入れを開けた。そこには箱がずらりと小さな商品棚のように同じ箱同士が綺麗に重なっていた。バンダイのプラモデル、HGやMG、プレバン限定のプラモデルからコトブキヤのゾイドやアーマード・コアがある。その内の一つを手に取ると、しばらく眺めては戻して襖を閉めた。

そんな彼の様子を見ていた撫子と通常版のバーゼラルドことバゼ子、そして新入りの轟雷(現在改修中)。撫子はバゼ子に呆れながら声をかけた。

 

「まったく、いつもああなんですから。ね、バゼ子」

「仕方ないよ、撫子。減るより増えていくんだから」

「そう、なんですか? お姉さま方」

「そうなんですよ、轟雷」

「その内轟雷も色々明人の駄目なところに気づくよ」

 

轟雷は明人が所有しているFA;Gたちを「お姉さま」と呼んでいた。同型機を複数所有している明人のFA;Gの呼び方は決まっているが、轟雷がそう呼んでいるのもマスターである明人の影響が大きいのだろう。

これは明人に限らず、所有している一人一人色んな呼び方をさせているのが普通だ。FA;Gの学習機能の賜物かなのか、それともマスターによる調整と言う名の“調教”の成果なのかは人それぞれである。

 

「お前らマスターであるオレに酷い言い草だよな。傷つくわ-」

『はいはい』と二人のバーゼラルドが言うと轟雷が「あはは」と困った顔をしていた。

 

そんな時、呼び鈴がなった。

 

「はーい、今行きまーす! オレ、尼で何か買ったっけ?」

 

首を傾げながら明人は扉を開けた。そこにはよく知った顔の女性がいた。

 

「やあ、明人!」

「明人さんだ! で、どうした。またゴキブリでも出たのか?」

「違うよぉ!」

 

隣の住人で、現役女子高生の源内あお。それが彼女の名前だ。ポニーテールが似合う可愛い子だ。

二人の関係は簡単に表すならお隣さんであるのだが、これがなんとも奇妙なもので。あおは明人を兄のように思っているのかはわからないが、意外と二人の関係は良好であった。明人としては、自分の立場を考えれば女子高生と頻繁に接触しているのは、些か社会的に不味いのではと危機感を抱いていた。

 

「じゃあなんのようだ? 今日はカレー作ってないぞ」

「だから違うって!」

 

カレーは作ってみれば意外と簡単である。2.3日はご飯を作らなくていいので月に1、2回は作っているのだが、匂いを察知してあおはカレーをたかりに来る。

カレーが目当てではないとなると何の用なのだろうか。

 

「明人ってよく玩具を作ってるよね?」

「プラモデルな。まあ、ジャンルとしては一緒だが。それで?」

「工具貸して」

「急にどうした。お前そんな趣味なかっただろ」

「作るのに必要だって言うんだもん」

 

言う……? 

どこか引っかかるような言い方するあおに疑問を感じたが、気になっても仕方がないと思って考えるのをやめた。

待ってろと伝えて居間に戻る。いつも使っているニッパーを持っていく。デザインナイフも渡してやろうかと思ったが、素人には危ないと判断してやめた。

 

「ほれ、ニッパ―」

「ありがと―!」

「はいはい。使い終わったら返せよな―」

「うん! じゃあ借りてくね―!」

 

あおが自分の部屋に入るのを確認して明人も扉を閉めた。彼が戻ると、轟雷が首を傾げながら聞いてきた。

 

「明人、彼女は誰なんですか?」

「隣に住んでるあおって子」

「遠目からですが、明人は好かれているように見えました

「轟雷もそう感じるのね」

「やっぱそうなるよねぇ」

「お姉さま方も私と同じことを?」

「ええ」

「といっても、私達も直接会ったことないんだ」

「どうしてです?」

「だって、あの子をここに入れられるわけないですし」

「その逆も然り」

「ああ、成程」

 

ぽんと轟雷は手を叩いて二人の言うことに納得した。

 

「それにしても……あおの奴がプラモをねぇ。珍しいこともあるもんだ」

「何を作っているのでしょうか?」

「ん―、意外と私達と同じFAガールだったりして!」

「まあ、素体は完成品で装甲と武装だけ作るだけでいいから、素人には優しいと言えばいい優しいな」

「そうですね。では、明人。サボっていた私の装甲と武装を作ってください」

 

そう言うと轟雷はジッと明人を見つめた。轟雷本来の装甲と武装は完成したのだが、明人は積んでいたFAの装甲と武装をつけようと考えていた。いたのだが、一部を作成しただけであとは疲れて放置したままであった。

 

「まあ……暇だしやるか。って、あおの奴にニッパーを貸したばっかじゃねぇか」

「あ、そうでした。私としたことがうっかりしてました」

「撫子、前に使ってたニッパーなかったけ?」

「そうでしたよね。ありましたよね、ヘビーニッパー」

「コトブキニッパーにしてからどっかにしまったきり見てねぇぞ」

 

コトブキニッパー。それはすごいニッパーなのだ。詳しくはアニメを見て欲しい。

たぶん、いつか買うので使ってる人は感想を教えてほしいぐらいだ。

 

「とにかく探してみましょうか」と撫子は武装を展開し「たぶん押入れの中にある箱のどこかに……」

「あ、私もいくよ。轟雷は待っててね―!」

「はい、お願いします。お姉様方」

「お前、飛べないからね。しょうがないね」

 

M.S.Gシリーズを使えば飛べなくもないのだろう。が、轟雷は陸戦が似合うと思うので、轟雷が飛ぶのはちょっと違和感がある。

やはり轟雷ならば陸戦仕様もとい、重装備なゴテゴテした感じが似合う。

そのためのコレなのだが……。

視線の先にはランナーが入った箱がある。ところどころ空いているのは組み立て途中だからだ。

しかしそれはFA;Gではなく、兄貴的な存在FA。パッケージには榴雷・改とあった。

 

 

その日の夜。

 

呼び鈴がなり玄関を開けると、案の定そこにはあおが立っていた。

 

「や、明人! こんばんは―、ニッパー返しに来たよぉ」

「おう。で、何を作ったんだ?」

 

実の所明人もあおが何を作ったのか気になっていた。プラモデルを玩具と言うほどの彼女だ。彼女のことを考えると、難易度的にはやはりガンプラのHG辺りが妥当だろうか。いや、旧キットという線も考えられるが。

 

「えへへ! 見よ、これが私の作った――」

 

ひょんとあおの肩に現れたのは見慣れたモノであった。

 

「どうも始めまして。私、轟雷と言います」

「轟雷なのだ! えっへん!」

 

年齢に見合った豊なモノを強調するように胸を張るあお。しかし明人の視線は彼女の肩にいる轟雷に釘つけだった。

なぜなら轟雷は、起動していないはずなのだ。

家の“元”轟雷を除けばだが。

明人も轟雷が来てから気になってスレを除いたりまとめをみたりしたのだが、世界中に轟雷の試作品を送ったはいいがほぼ全員が起動できない報告が上がっていた。

ここで不可解なのがうちのは起動したはずなのに、向こうから連絡の一つもない。ファクトリー側では起動したFA;Gは特殊なシステムによってすべて把握しているはずなのだ。なのに連絡の一つもないとなると……。

(やはり、撫子のアレが……)

頭が痛くなる。

明人は試に轟雷に尋ねた。

 

「なあ、もしかして今問題になっている試作品の轟雷の一体だったりしない?」

「そうなのですか? よく御存じですね。あおとは大違いです」

「まあ、よく作ってるからな」

「アレ? わたし、さりげなくディスられた?」

 

あおとを蚊帳の外に一人と一機は会話を続けた。

 

「作っているということは、明人の所にはFAガールが?」

「そうさ。ちなみに、キミと同型機もいるぞ。おーい、榴雷――!」

「榴雷?」

 

明人が呼ぶと部屋の奥からテクテクと歩いてやってきた小さな小人がやってきた。明人の轟雷改め、榴雷である。彼はしゃがんで手を差し伸べると榴雷は手に乗って肩に上った。

あおの轟雷と違い髪はセミロング、髪の色は緑、服装の装甲は赤で、装甲部分は茶色に近い色だ。見た目は似ているように見えるが、ところどころ違うのがわかる。

 

「初めまして、私。元は貴方と同じ轟雷ですが、今は榴雷と名乗っています」

「こちらこそ。よろしくお願いします、榴雷」

 

なんで榴雷かって? 同じ轟雷だと紛らわしいからだ!

その内本当の榴雷や漸雷やウェアウルフだって出るって信じてるよ!

 

「アレ、明人も持ってたの!?」

「まあな。オレはお前が持っている事に驚きだぞ。轟雷は会員限定に試作品である轟雷をテストするために送られたんだが、お前は会員じゃないだろうし……。なんでなんだ?」

「え、たぶんパパが入学祝にくれたんだと思うよ?」

「娘の入学祝にプラモって……」

 

頭を抱えたくもなる。だが待てよ……? ということは、あおの親父さんはそういうことになるのか?

明人が頭の中で色々と思い悩んでいると、轟雷が嬉しそうに告げた。

 

「しかし、明人がいるなら私も安心です」

「どうしてだ?」

「あおでは色々と心配でしたから。それに、コトブキニッパーを持っている明人の腕前……信用に値すると思ったからです」

「あおじゃな……。どうせ、パーツをどっかになくしたり、番号を間違えたりしたんだろ?」

「なんでわかるの?!」

「その通りです」

「ねえ、他にも明人持ってるんでしょ?! 見せて見せて!」

「断る」

「はや!」

「それは何故ですか?」

 

轟雷も他のFAガールが気になるのだろうが、明人としてはその願いは受け入れられるわけがなかった。

 

「一人暮らしの男の部屋に、現役女子高生を入れるわけないだろうが」

「いいじゃん、私と明人の仲なんだからぁ!」

「ただのお隣さんだろうが。それじゃ、お休み―」

「あ、明人ぉ!」

 

扉を閉めて施錠をしっかりとする。居間に戻ろうとするとドンドンと、何やら叫び声が聞こえるが無視をする。

だがしかし、あおの進撃は止まることはなく……。

翌日、まさかあんな事体になるとは思いもよらなかったのである。

 

 

 

 




先週の土曜日にはあったはずのアーキテクトとバーゼが、多分五話放送後消えていたんだよ!
なぜかサークルにビーストマスターソードにリボルビンバスターもな!

なんだろ、嬉しいのに嬉しくない。

上でも書きましたけど、漸雷とか榴雷早くFA;Gにならないかな~。





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