鉄の艦娘達   作:かじもこ

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軍は兵隊の骨までしゃぶる鬼畜と化しつつあり、即刻余の身をもって矯正せんとす


佐藤幸徳





4話 演習だよー!

 三日月は深雪に演習場へ案内されながら、教練艦隊に居た頃の話をしていた。

 

「そういや三日月の担当教練艦って誰だったんだ?」

 

「北川さんです」

 

「あー教練の北川かー、あいつもすげーなー」

 

「深雪さんは北上さんをご存知なんですか?」

 

「ああ、なんせ北川は教練艦隊時代にこの深雪様の同期で同じ艦隊だったんだぜ!」

 

「そうなんでs・・・。えーーーーーーー!」

 

「あいつ雷撃のセンスに関しては、ズバ抜けてたからなー。」

 

「いや、あの、深雪さん?」

 

「んー、三日月どしたのー?」

 

「いえ、やっぱりなんでもないです」

 

 三日月は昔の北川のことについて聞こうと思ったが、もう演習場が目の前であったの、で後で聞くことにした。

 

 演習場は、イージス艦が停泊している港から少し離れた浜辺付近の海である。普段訓練にも使っているのか航行訓練用の旗や、射撃訓練用の的があった。

 

 浜辺を進んで行くと、そこには提督と不知火、明石が居た。三日月と深雪を見つけた提督はこちらに声をかけて来た。

 

「三日月ー!演習だよー、演習ー」

 

 提督の横には、受け取りに行き忘れていた三日月の艤装があった。

 

 三日月は、提督に演習場はこの浜辺の沖であることを伝えられ、艤装を装備した。しかしまだ肝心なことを聞いていなかった。『対戦相手』である。

 

 ここに艦娘は3人しかいない。まして明石は戦闘艦ではないので論外。ということは深雪か不知火ということになるが、深雪の艤装は浮くために必要な最低限度の装備しかなく、連装砲や魚雷はここにはない。従って対戦相手はもう聞かなくても分かっていた。

 

「んじゃあ、これから不知火と三日月に演習をしてもらいます。ルールは簡単。魚雷の模擬弾3発か、ペイント弾を10発先に相手に当てた方が勝ちで、機銃は使用してもいいけど被弾には含まないわよ。あと、三日月の盾の使用は禁止ね。何か質問や意見はある」

 

「問題ないです」

 

「大丈夫です」

 

 深雪は審判を任され、流れ弾が危険なため提督と明石は浜辺で待機となった。

 

 深雪に引き連れられ、2人は沖へと向かった。

 

 2人は開始位置に移動する。開始位置は審判を中心として30m離れたところである。

 

 2人の間に緊張が走る。三日月は不知火の余裕そうな表情に戸惑っていた。演習自体は卒業試験で北上と対戦し、ボロ負けしたばかりであったので、少なからずトラウマが残っていた。

 

 そんなことを考えながらも、演習開始時刻は刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 そして。

 

「これより不知火と三日月の演習を開始する。位置ついて」

 

 2人とも連装砲を構えると同時に首筋に汗が流れる。

 

「演習開始!」

 

 そう言って深雪がピストルを鳴らす。

 

 先に動いたのは三日月であった。教練艦隊での教え『先手必勝』からの行動であった。開始の合図がなると同時に、不知火のいる正面に対し左足に装備している模擬魚雷を3発発射し、ペイント弾で砲撃を行いながら突撃をした。

 

 その様子を見て不知火はニヤリと笑い、呟いた。

 

「甘いですね」

 

 それからの不知火の行動に三日月は衝撃を受けた。普通は、魚雷を放たれ棚を確認したら回避行動が基本であるが、不知火は魚雷が迫っているにもかかわらず三日月に対し、突撃して来た。

 

 回避行動を取ると予想していた三日月の砲撃の弾道は不知火から大幅に逸れ、明後日の方向へと飛んでいった。しかも三日月に接近しながら魚雷の直撃を寸前の所、最少限度の動きをしながら三日月へ2発砲撃を直撃させた。

 

「今のが当たるの⁉︎」

 

 思わず口に出してしまった。普通、近距離の白兵戦は、自分も相手も動きながらの砲撃なので、狙いが定まらないため命中率は低いはずである。しかし、不知火は当てて来た。異常な命中率である。

 

 このままではまずいとか考えた三日月はゼロ距離での勝負に出た。すれ違いざまに取り付き、魚雷3発を確実なに当てるという作戦であった。

 

 三日月は砲撃を続ける不知火に対し機銃と砲撃で牽制し、回避行動を取りながらながら接近した。それに合わせてか、不知火も牽制の砲撃をしながら接近してくる。

 

 ついに三日月と不知火がすれ違い、さらに6発直撃を食らったが取り付くことには成功した。その反動で2人とも倒れ、三日月が不知火に残りの右側の魚雷3発全てを撃つ。

 

「これでトドメ!」

 

 しかし、ここで三日月の予想外のことが起こる。なんと不知火が普通の艦娘には到底不可能な反応速度と動きをし、三日月の放った魚雷を回避したのである。なんとか1発当てることができたが、勝利までは程遠い。とりあえず後退し、態勢を立て直すことにした。

 

 しかし、ここで三日月はあることを思い出す。先程からの不知火の動きに見覚えがあるからだ。他の艦娘には到底不可能か回避、そして反応速度。そう、教練艦隊の北上である。

 

 三日月は北上の教えを思い出し、後退しながら左右の魚雷発射管へ再装填を済ませる。

 

 そもそも砲撃戦では、三日月の砲は12cm単装砲であるのに対し、不知火は12.7cm連装砲である。明らかに連射速度も射程も不知火の方が有利である。やはり考え直しても互角な雷撃戦でケリを付けるしかないと考えた。

 

 しかし、うかつに接近すればまた集中砲火を受けてしまう。もう既に8発も直撃を受けている。あと2発も受ければ三日月の負けとなる。しかし逆に三日月は不知火に対し魚雷を1発命中させている。なんとかあと魚雷を2発当てればこちらの勝ちである。ただ、あの動きを見る限りでは遠距離から魚雷を当てるのは不可能であろう。三日月は不知火が接近するまでの時間、距離を取りながら策を練った。

 

 その頃三日月を追尾する不知火は三日月の次の動きに警戒していた。元は三日月に1発も喰らわず完全勝利の予定であったが、まさか自分の得意なゼロ距離で魚雷の直撃は予想外であった。そんな三日月に対して不知火は驚きを隠せずにいた。

 

 この状況に不知火はリスクはあるものの、本気を出さざるをえない状況つまり艤装のリミッターを解除しなければならない状況になるかもしれないと考えていた。しかし、リミッター解除は不知火自体に負担がかかるだけでなく、三日月を演習の中で三日月を沈めてしまう可能性がある。

 

 そんなことを考えていた最中、前方から迫る魚雷を発見する。そしてその後ろに突撃をする三日月の姿があった。

 

「同じ戦法ですか」

 

 しかし、不知火は違和感を感じた。何かが違うと。

 

 その違和感を探るため周囲を見回すと、不知火の周り360度のどこに逃げても当たる角度で魚雷が5発迫っていた。

 

 三日月に砲撃を加えるが、先ほどの戦闘で不知火の砲撃パターンを学んだのか回避が上手くなっている。

 

「このままでは・・・」

 

 負ける。

 

 しかし、負けそうだと追い込まれると同時にある感情を思い出す。それは3年前のあの時と同じ感情。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アバレタイ、コロシタイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めは抑えられたこの気持ちであったが、三日月が接近するにつれその気持ちが抑えられなくなった。

 

 

 三日月は戸惑っていた。先程からの不知火の当たりが弱くなっていた。もしや、秘密兵器でも待っているのではないかと。

 

 しかし、三日月のそんな予想とは裏腹に放った魚雷は不知火完全にを捉えていた。

 

 魚雷が爆発し、大きな水柱が立つ。

 

 勝った?

 

 そう三日月が思った瞬間、水柱より何かが高速で出て来て、三日月を殴り飛ばした。あまりの速度に三日月は防御することもできず、ただ後ろに吹き飛ばされていった。

 

 吹き飛ばされて殴られたお腹に激痛が走っている中、何があったのか状況を確認するために起き上がった。

 

 そこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両目から赤い閃光を放つ、不知火の姿があった。

 

 

 

 

そして無意識のうちに三日月はこう口ずさんだ。

 

「あ、悪魔・・・?」

 

 

 

 

 

 

 




第3鎮守府艦娘紹介

名前→三日月

装備

12cm単装砲×1
3連装魚雷×2
3式爆雷投射機×1
睦月型専用盾×1

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