エルヴィン・ロンメル
三日月が深雪より鎮守府の説明を受けている間、執務室にて提督が三日月について教練艦隊からの報告書を不知火と共に見ていた。
「ふーん、性格は真面目ね。勉強はダメだけど、戦闘に関しては天性の才能があるらしいわよ」
「天性の才能ですか。この報告書は誰からのなのですか?」
「教練艦隊の北川からよ。すごいわね、あの北川も手を焼くほどの実力らしいわよ」
「北川さんも丸くなりましたね。私の時は才能のかけらもない役立たずの努力家と書かれていたのに」
「んー、確かにどうなんだろうね。この資料を見る限りだと、戦闘担当の第1艦隊に向いてるわね」
「提督、それなら実際に試して見ませんか?」
「どうやって?」
「演習です」
同時刻、地下の艤装格納庫。
深雪より語られた三日月の艤装の秘密。
それは、20年前の内戦の時に反乱軍のエースの艤装としてこの艤装が使われていたのである。
20年前の内戦。後に大きな傷跡を残した戦い。元を辿れば艦娘を国連軍の傘下とすることを進める革命派と保守派の対立から始まった。
20年前まで艦娘は独立した組織であったが、金銭による戦力の偏り、上層部の腐敗などから革命の兆しが高まっていた。
反乱軍はゲリラ戦法により一時は艦娘達の本部を制圧するまでの勢いがあった。が、しかし、この戦いは数ヶ月で当時最も力を持っていたアメリカ支部の艦隊によって鎮圧され、反乱軍の主犯のドイツの各支部は縮小。反乱軍に協力した東北管区第4鎮守府は解体となり、艦娘や兵士、将校なども反乱に加わった罪で全て極刑となった。しかし、この内戦により、極限に減少した戦力を補うため最終的には、国連の傘下に入ることが決定した。
そしてその反乱軍のエース、三日月が最後の最後まで使用していたこの艤装は、修復され本部に他の艤装と一緒に保管されていたが、2年前のこの鎮守府の功績から勲章として授与され、この第3鎮守府にある。
上層部からすれば、この艤装には少なからずのトラウマがあるため授与はしたくなかったのだが、授与する艤装はランダムに決まるため致し方なかった。
三日月は衝撃を受けていた。この艤装が偶然、初めて配属されたこの鎮守府にあったこと。そして、初代三日月だけでなく、第4鎮守府の反乱で使われていたこと。
もともと20年前の内戦については関係者が粛清されだと同時に厳重な情報統制がされ、記録のほとんどが処分されたため、そこらでは見ることすら叶わなかった。ましてや訓練学校を卒業したばかりの三日月には知る余地もなかった。
すっかり考え込んだ三日月を見て、深雪が口を開く。
「ごめんな、こんなはじめから重い空気にさせちまって」
「いえ、あまり詳しく知らなかった内戦のことについて知ることができたので、とても勉強になりました。でもすごいですね!最上位の勲章である、オリジナルの艤装があるなんて」
「いや、昔はオリジナルの艤装はここに3つあったんだよ」
「みっ、3つ!」
今日は驚かされてばかりだ。そこらの鎮守府じゃ100年近くかけてようやく手に入れるような代物を3つもこの鎮守府は持っていたのである。
しかし、そこで一つの疑問が浮かぶ。その3つのうちの2つの艤装はどこに行ったのか。誰かが装備しているのか。それともその装備した艦娘が轟沈したか。三日月は聞いて見ることにした。
「あのっ、その残りの2つの艤装は今はどこにあるんですか」
「三日月」
「はっ、はい」
「オリジナルの艤装するには何が必要か習った?」
「えっと確か練度を極限に高めてることと、提督と本部の許可でしたよね」
「そう、だから簡単に装備しようなんて考えないでね。でももし、オリジナルの艤装について興味があるのなら、あの子に聞いて見て」
「あの子?」
「秘書艦の不知火に」
なぜか話をはぐらかされた。恐らく話したくない何かがあるのだろう。
そんなことをしていると突然、鎮守府に放送が響き渡たった。
『駆逐艦三日月、駆逐艦三日月は至急演習場へ。繰り返す、駆逐艦三日月、駆逐艦三日月は至急演習場へ』
突然の放送に疑問に思いつつも深雪に案内され、三日月は演習場へと向かった。
つづく
第3鎮守府艦娘紹介
名前→深雪
性格→明るい
装備→10cm連想高角砲×1
3連装魚雷×2
12.7mm単装機銃×2
3式爆雷投射機×2