【習作】魔術王は他作品にまで聖杯をばらまいた様です。 作:hotice
立香達は大和に案内されて、無事港についた。
その港には何にも人が立っていた。誰もが時代錯誤極まりない帆船を見て何やら話し込んでいた。
すると一番先頭に立っていた60代くらいの男が前に出た。
「初めまして。私はこの横須賀鎮守府の元帥、坂崎だ。色々話し合いたいが、ここでするわけにもいかない。
私の部屋で直接話をしよう。付いてきてくれ。」
そう言って彼は歩き始めた。とっさに後ろにいた人込みが、二つに分かれる。
とりあえず立香は自身のサーヴァントを連れてその後を追った。歩きながら立香は自身に刺さる視線を感じていた。人種も装いもばらばらで何故か帆船なんかに乗っている得体のしれない集まりである。けれどもそんな集団をこの鎮守府のトップ、元帥がわざわざ迎えに来たのだ。注目を集めるのも仕方ないことであった。
「なあ、マスター。陸地に付いたし宝具はしまっていいかい?」
後ろからドレイクが立香に声を掛けてきた。魔力は十分供給されても展開し続けるというのは多少疲れるものなのである。立香はもちろん、と頷く。
その瞬間周りから驚きの声が上がる。いきなり帆船の存在がぶれ始めて、次の瞬間には跡形もなく消えてしまったからだ。
そうしてその場に集まった提督や艦娘は、今目の前を歩いている集団が常識の欄外にいる存在であることをなんとなく悟った。だからこそ元帥がわざわざ赴いたのだと。
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程なくして立香達は元帥の部屋へと到着した。高級品が嫌味にならないよう調和をもって置かれた部屋であった。
元帥は部屋の真ん中に置かれたソファへ座るように立香達に勧めた。勧められたまま立香達が席に着くと彼は話し始めた。
「君たちカルデアは別の世界から来た魔術師とサーヴァントらしいね。」
「えぇ、そうです。信じがたいことかもしれませんが、嘘ではありません。」
「あぁ、いや、疑っている訳じゃないんだ。」
元帥は慌てて否定する。実はね、といって彼は右手を前に出して指を鳴らす。
「私も魔術師であるし、サーヴァントも従えているからね。まあ魔術刻印はもう息子に渡している老いぼれだが。」
彼の右手には火が灯っていた。彼の右手が燃えているのではなく空中に火の玉が浮かんでいた。
「成程。それなら話が早いです。
ところでそのサーヴァントというのはもしかして・・・。」
「あぁ、恐らく君の予想通りだよ。・・・うむ、ちょうどいいタイミングだな。」
扉がコンコンと叩かれる。
「入り給え。」
その声を聞いて扉が開かれる。そこにいたのは立香の予想していた通り先ほど案内をしていた大和だった。
「紹介しよう。私のサーヴァントである大和だ。」
「宜しくお願いします、カルデアの皆さん。」
「坂崎元帥。彼女は艦娘ではなくサーヴァントなんですね?」
「ああ、そうだ。サーヴァントだよ。この世界で唯一の、ね」
立香はやはりか、という思いであった。恐らくもっともサーヴァントを見たことのある立香にとっても艦娘はサーヴァントかどうかは見ただけでは分からないのだ。けれども大和だけは見た時から存在感が違ったのだ。彼のよく知る英雄たちに近い威風というものがあったのだ。そして続く言葉に驚愕する。
「唯一?他は全て艦娘しかいないのですか!?」
立香は思わず問いかけた。
「それじゃあ余りにも戦力が低すぎる!」
艦娘は英霊として本当に最弱である。宝具である艤装を展開してようやく非戦闘型サーヴァントに及ぶかといったレベルなのだ。もしも敵に戦闘型サーヴァントが複数いればそれだけでもはや負けなのだ。ギルガメッシュやヘラクレス級である必要すらない。
「まあ確かにカルデアから見ればそうなのであろうな・・・。」
そう言って元帥は立香を羨ましそうに見る。彼が引き連れているのはどれも本物のサーヴァントである。それも6体。まさに圧倒的戦力だ。さらにまだまだカルデアにはサーヴァントが控えているらしい。簡単に聞いた話ではあるが、世界を救ったというのもあながち嘘ではないであろう戦力である。
「ただ今回の戦争においては艦娘の方がありがたいのだ。恐らくサーヴァントが召喚されていたら負けていたであろう。」
「ふむ。その辺は少し詳しく聞きたいね。」
またもやいきなりダヴィンチが話に入り込む。元帥はそれを見て少し目を見開いた。
「これは・・。モナリザということは、あなたはレオナルド・ダヴィンチか。カルデアには彼までいるのだな。
さて艦娘についてだな。君たちは艦娘についてどれ程知っている?」
「極めて霊基の低い軍艦のサーヴァントであるということくらいしか知りません。」
「成程。では簡単にではあるが説明しよう。
そもそも艦娘というのはひたすらに量だけを目的に召喚されたサーヴァントなのだよ。」