【習作】魔術王は他作品にまで聖杯をばらまいた様です。 作:hotice
第2話
「今回のレイシフトは時代は現代、場所は太平洋になるね。そう第三特異点みたいに今回の戦場は海さ。その上で戦場の広さだけならば第五特異点をも上回るだろう。
そしてここの聖杯はどうやら第二次世界大戦の船の亡霊に拾われたようでね。太平洋は実体化した船の亡霊のひしめく、正に死海とかしたのさ。
物量に加えて神秘を宿していない現代兵器ではまともな対抗も出来ず、一時世界中のシーラインは途切れた。
けれどもどうにか日本が超限定的に軍艦の英霊召喚に成功してね。そうしてなんとか対抗している世界になる。」
軍艦の英霊と聞いて立香が連想したのは、フランシス・ドレイクやエドワード・ティーチの二人であった。彼らは宝具によって自身の船を操ることが出来るからだ。
「いいや、どうやらそうじゃないでみたいでね。その世界では軍艦そのものを召喚しているみたいなんだ。」
それは・・・。と立香は困惑する。。確かにこのカルデアには人ではない反英霊や神霊などもいるが、軍艦はそもそも無機物である。そもそもとして座に登録されていないのだ。
「うん。驚くのも無理はない。まあでもここカルデアだってナーサリー・ライムちゃんとかもいるしできなくはないんだろう。
これ以上のことは実際に向こうでその英霊に会ってみないと分からないね。
というわけで、さっそくレイシフトに移ろうか。」
そしてコフィンに乗り込んで、立香は呼吸を整えた。レイシフトそのものが万が一失敗する可能性もあるし、レイシフト先が安全な場所とは限らない。
恐怖はないが、この手の緊張はなくなることはなかった。
「まあ、安心しなよ。立香くん。今回は座標ミスもないし、陸地はほとんど安全だからね。いきなり危機に陥ることはまずないはずさ。
じゃあ行くよ。
3、2、1・・・」
ゼロの声とともに意識が薄くなる。
レイシフトの感覚は中々に独特だ。五感は損なわれないのに、時間感覚や体の重量感を感じなくなる。目が覚める前に意識だけはっきりしているあの感覚に近いかもしれない。
体感で数十秒程、恐らく実際は数秒なのだろうが、その感覚に耐えていると唐突に足裏に感触を感じた。無事レイシフトに成功したのだろうと目を開けた。
立香が立っていたのは無人の商店街であった。近くに大型スーパーが出来て寂れてしまった商店街の話はよく聞くが、何やら違和感を感じた。
あまりにも静かすぎるのだ。少なくとも現代であれば聞こえるであろう車の音が聞こえない。まるでこの町から人が消えたようであった。
そこでカルデアから通信が入った。
「先輩!レイシフトは成功しましたが、何か問題はありませんか!?」
マシュの慌てた声が聞こえてきた。立香はとりあえず問題ないことを伝えてから、先ほどの疑問を聞いてみた。
「確かに生体反応が一つもないね。どうやらこの町に人は住んでいないみたいだ。
う~ん、町の建物が崩れていないから、何らかのモンスターに襲われた訳じゃないんだろうけども、念のため早めに召喚サークルを設置したいね。」
「先輩。どうやらここから北西約2kmのところにある神社が霊地になっているようです。そこを目指しましょう。」
2km程度立香には今更どうということもない。北米大陸の横断に比べればだいぶマシだ。
あれは第3特異点から本格的にトレーニングを始めていなければ途中でぶっ倒れていただろう。
ちなみに本格的(ケルト)である。あれは今でも立香のトラウマとして刻まれている。
道中何もなく無事に霊地についたので召喚サークルを設置する。前まではマシュの盾を使っていたのだが、今は限定的な召喚陣でマシュの盾を呼び寄せるというひと手間が必要になってしまった。そうして立香はほっと一息付く。これでサーヴァントを召喚出来るようになったからだ。
「よし、これで一先ずは安心だ。とりえあず今後の方針を考えようか。」