ホットスパーズ ~命知らずの騎士と二人の女神~   作:公私混同侍

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レモンの香りに誘われて

夜が明けてもシェリーヌは帰って来なかった。恭夜とサリーは出かけている。ゲルマはルナと庭で談笑している。ルナの体を借りているライナと語らっているのだろう。

 

隆太「エクレアさん、おはようございます」

 

カイン「ボクはカインだ。前にも似たような会話をしたような気がするが」

 

あかり「カインお兄ちゃんはなんでここにいるの?」

 

隆太「もしかしてまだルナさんを追いかけているんですか?」

 

カイン「さあ」

 

カインは外を見ながらおどける。レモンティーの入ったティーカップを口に近づけた。

 

あかり「ルナお姉ちゃん、なんか最近変だよね」

 

カイン「同感だよ。もう少し上品であってほしいものだ」

 

隆太「ルナさんはいつも上品ですよ」

 

あかり「違うよ。ゲルマお兄ちゃんといる時の笑い方がいつもと違う気がする。なんでだろう……」

 

あかりは頬杖をつきながらルナの仕草を観察している。

 

カイン「実に興味深い指摘だ。是非お聞かせ願おう」

 

隆太「カインさん、わざとらし過ぎます」

 

あかり「ルナお姉ちゃんって笑う時、両手で口を覆うよね。でも今は片手で覆ってるんだよ……関係ないのかなぁ?」

 

カイン「ルナの心を射止めた男がいるのかもしれない」

 

隆太「ははは、まさか……」

 

あかり「隆太お兄ちゃんだって知ってるくせに今さら動揺しないでよ」

 

カイン「思い当たる節はある。あの男ではないだろうか?」

 

隆太「言わなくてもいいです……」

 

あかり「んふっ、だーれだ?」

 

カイン「名前は忘れたがボタンをかけ違えた男だ」

 

カインが言っているのは内通者であったゾルギーノ・ドラジェの事であろう。

 

隆太「そんな人いたかなぁ」

 

あかり「カインお兄ちゃんってチャラそうな見た目なのに意外と鈍感なんだね」

 

双子の兄妹が思い出せないほど記憶の奥底で眠ってしまう程度の人物という事だ。

 

カイン「この時代の淑女の心はボクにとって理解いし難い。まるで恋のパズル解いているようだ」

 

ゲルマとルナが帰って来た。隆太は二人を見るや否やすくっと立ち上がる。

 

隆太「少し早いですがお昼にしましょうか?」

 

あかり「まだ恭夜お兄ちゃんとサリーお姉ちゃんが帰ってきてないよ」

 

ルナ「お腹空いたね」

 

ゲルマ「マスター達は私用で外出すると言っていたな。恐らく身内に連絡でもしているのだろう」

 

カイン「それにしても遅すぎないか?」

 

ライナ『フフフ、祖国に帰っちゃったんじゃない?』

 

あかり「私達を置いて?ひっどーい!」

 

隆太「さすがにそれはないよ」

 

ルナ「愛の逃避行だね」

 

ゲルマ「どこへ行こうがオレなら見つけられるがな」

 

カイン「それ以前にあんな前時代的な髪型をした女は多くないみたいだし、隠れようがないさ」

 

ライナ『アンタ達、サリーの陰口を叩いてると斬られちゃうわよ』

 

明らかに異様な空気に一同は黙ってしまった。あかりがぐるりと面々の顔を凝視している。

唐突に言い放った。

 

あかり「あたし達以外に誰かいるの?」

 

()()、目を逸らした。


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