記憶を保持したまま新たな人生を歩めるのなら――――そんなことを妄想した人は結構いるのではないのだろうか?
もしそれが身に起きた時貴方ならどうする?
私は後悔ばかりの人生だった、中ほどの底辺というのも表現としてはおかしいが同じ感じの人にならきっとわかってもらえるはずだ。
そんな私が記憶を保持したまま次の生を奇跡的に得ることができた、前世の性別と変わってしまったけど。
男から女へ、中の下の生まれから上の下へ。
私が私であるとはっきり自覚したのは5歳くらいだろうか。
そして私が私であると自覚したその時に私の目的は決まった。女として生まれたのならアニメやラノベに出るような最高の美少女になろうと。前回ほとんどすることのなかった努力をしようと、最高の美少女になるために。
元から多数の習い事がありまずはそれを頑張り始めた、前世の考え方や記憶があるためそれはとても簡単であった。
ピアノ等芸術的なものを除いてにはなるが――――。
うまく怪しまれないように段々と興味ある物をアピールし、増やしながら色々なことを覚えていった。
世の中出来る出来ないは基本的に考え方と慣れだ、出来ると思わなければ出来るようにならないし何度もしなければ出来ない。
慣れ、意識を割かずに出来るようになることはとても重要なことだ。
作業と思考――料理は慣れれば手を動かしながら様々なことを考えることができる。
複数の作業――ピアノでも最初は無理でもなれれば両手を別々に動かせるようになる。
前世では左手コントローラー右手にマウス、足でキーボードを操作してゲームの神プレイ動画を作る人物がいたくらいだ。
同時に多数のことができればそれだけ学べる量が増やせる、少ない時間で様々なことができるようになるのだ。
授業を聞きながら別の授業のことを考えることから始め、少しずつ出来る幅を広げ効率的に色々できるように体を考え方を慣れさせていった。
小学生3年になる頃には同時に二人の講師から学びながらそのわずかに空いた時間で別の講師の宿題をするくらいはできるようになっていた。
運動についても体の動かし方を細かくしっかり意識して動かせば体力の消費を少なくし効率的に動けることに気付くことができた。
理想の美少女へと昇り詰めていく感覚が楽しかった、途中から家族にもう少しゆっくりでいいと言われたが止まることができなかった。
不思議と前世の記憶はあせずしっかりと残っていた、そのことにより気付くことができたのだが――――どうやらこの世界は暗殺教室の世界らしい。
椚ヶ丘学園、小学校6年生になり進学先としてどうかと担任に言われたのだ。
そしてストンと私の中で何かがきれいに収まる音をその時に確かに聞いた。
ああ、こんなにも出来なかった私が上手くいっているのは漫画の世界の中だからだ、普通に考えてこんなに望んだ通りに成長することはできないだろう。
お前の前世は"アレ"だっただろと――――漫画の世界だからこそできたのだ、お前の努力は関係ない。
そうジワジワと頭の中にそんな言葉がしみ込んできた。
でも私にはそれでも積み上げてきたものがあった、自身にとっての最高を作り上げてきた気持ちがあった。
それを潰すわけにはいかなかった、
だから先生にお勧めされた進学先、椚ヶ丘学園を受けることにしたのだ。
最高の美少女は性格もよくなければいけないし先生の言うこともしっかり聞かないといけないのだ。
そのことが現実逃避だと気付いたのは大分先のことだった――――。
勉強もできて、運動もできる、美人で可愛くどんな人にも優しく、悪いことをした相手には叱って諭し、そんなキャラクターを維持できなくなってきたのは何時位からだろうか。
中学一年生までは"アレ"の時にイラつくことがあるくらいで上手くいっていた、中学二年になってからは勉強に費やす時間が増え、ちょっとしたことにイラつくことが増え、頭を悩ませることが多くなった。
成績が下がると入学当初に絡まれていた浅野学秀に再び絡まれるようになっていた。
なんで成績が下がったのか、体調は大丈夫なのか、お前にこんなテストで勝っても意味がないとか。
最初はちょっと難しくてとかその時は体調が悪くてと言い訳をしていたが、何度も言ってくるので勉強に飽きた、つまらないと本来の口調を忘れて苛立ちを含めて伝えをしその場を後にした。
私というキャラクターを考えるとE組に落ちるつもりはなかった――――だけど維持できなくなるのならもういいやと3学期になる頃には思うようになっていた。
もうこんなにも頑張ったんだから休んでもいいんじゃないかって、間近で彼らの物語を楽しもうと思うようになった。
そして私はテストを白紙で出した――――。
私はE組に入ることになり、彼らとの交流が始まった。
私は彼らに深く関わるつもりはなかった、その時は彼らをの物語を楽しもうと――――ただそれだけであり、私が深く関わることで原作から変わってしまうのがいやだったし傍観者になりたかったのだ。
彼らを遠くから見てほんわかしたかったともいえる。
ただ、それがいけなかった。私は今まで最高の美少女(笑)を目指していたのだ、男女の学力美醜問わず誰とも仲良くしていたし、男女交際を除いて壁は作っていなかった。
深く関わるつもりも仲良くなるつもりもなかったため、最低限の会話と受け答えで済ましていたのと、私がテストを白紙で出したことが知られ、彼らはエンドのE組でも笑いに来たのかと思われたのか彼らは私から離れていった。
少し寂しさは感じたもののこれから先のことを考えるとこれでいいんだと納得した。
ここから一人は寂しくなってこの暗殺教室のある意味主人公と言える渚君に未来を何度も教えて何だろうこいつと思わせて構ってもらおうとしたり、漫画の世界だしタコが何とかするだろうとあのお父さんに真顔でナイフを突き立てようとしたり(それで勘違いされる)色々問題を起こしつつ半分現実ではなく自身のありかに困っていることを最終的にタコに解決してもらったりとか考えていました。
続かない。