人中の呂布   作:UNIGHT

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 どうも。まだ三話なのにお気に入りが250件はいって驚いてます。オバロブームは去ったと思ったんですけど、二期の報告があってか再燃でもしているのでしょうか。
 自分はイビルアイが好きなので、誰が声をやるのか楽しみですね。
 




凱旋、そして胎動

 日が頂点からやや傾きかけた頃。エ・ランテルが誇る、堅牢な城門の前に冒険者たちの人だかりができていた。城門ではこのような事態でも物資の搬入が続けられている。隊商の馬車いっぱいに積まれた食糧や薪、弓矢をはじめとした武具など。まるで戦を目前に控えているような膨大な量が運び込まれていた。

 

 

「では、頼んだぞ」

「任せておけ。俺に敗北などありえん」

 

 ギガントバジリスク討伐の依頼を受けた呂布はアインザックの言葉にそう返した。

 城門には他にもフォーサイトをはじめ何人か待機している。だが呂布からはそんな者たちが霞むような気迫がにじみ出ていた。

 群衆の注目の的は呂布だ。

 黒く塗られた鎧。いかにも猛者だとうかがい知れるようなそれ。その前面には、対峙するものを威圧するかのような鬼の面が施されている。それに右手に持つ得物も凄まじい。鍛えられた兵士でも、二人がかりで持てるかどうかという代物だ。それを軽く扱う姿はエ・ランテルの民たちに、かの英雄の雄姿を幻視させる。

 

「では行ってきます。アインザックさん」

 

 討伐隊の代表を務めるヘッケランが出発の合図をだした。呂布が代表を務めない理由は、このあたりの地理やギガントバジリスクへの対応で知識不足があるからだった。合図を受け、討伐隊の皆が馬に乗る。

 討伐隊はアインザックの激励と冒険者たちの期待を受け出撃する。城門を抜ける彼らに、強い日差しが降りそそいだ。

 

 

 それから一時間。討伐隊は街道沿いに進んでいた。開けた平原であるため見通しがよく、異常があればすぐに察知できる。

 

 討伐隊の戦力は、ミスリル級冒険者八人。オリハルコン級の実力を持つフォーサイトの四人。そして呂布の計十三人。冒険者組合の基準によるとギガントバジリスクの難度は83。とてつもない強敵だ。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)が難度48であると考えるとその凄まじさがわかるだろうか。討伐隊の者はそれが分かるからこそ皆重苦しい表情をしている。ただ一人、呂布をのぞいて……。

 

「ほお。アルシェは貴族なのか」

 

 重い空気をよそに、呂布は隣に並ぶアルシェとの談義に興じていた。呂布も鬼神である前に男だ。道中暇なこともあってか見目麗しいアルシェに声をかけた。

 それにもうひとつ理由があった。アルシェは呂布の娘に似ているのだ。似ているとは言っても見た目ではない。まあ顔が整っているのはそうだが……。

 その娘は気が強く、幼いころから呂布の背を眺めてきた影響だろうか。呂布とともに戦場に出るようになった。だが大人しく守られているような娘ではない。親の心配をよそに、父親譲りの武勇を手に戦場を駆ける。そういったこともあってか、呂布はアルシェを気にかけた。

 

「まあ貴族といっても、今はそんな力はないけどね」

「バハルス帝国、だったか?」

 

 呂布はフォーサイトから聞いていた国名をあげる。

 

「ええ。皇帝が変わって帝国は実力主義の社会になったわ。私の両親は、まだその制度が認められないみたいだけど。……はあ~」

 

 アルシェは大きなため息をつく。

 暑いわねえ、と言いながらアルシェは暑さに蒸れたガントレットを外す。もう夏は過ぎたはずだが、今日は日がよく出ている。彼女のか細くも白い手があらわになった。

 

「……たしかに綺麗な手をしているな」

 

 呂布はアルシェの手を見てそう言った。

 貴族かどうかは、その人の手を見ればわかるものだ。日々の農作業や、水汲み。森の中に入って木の実や薪を拾うなど、平民は手入れをする暇がない。手先が汚れ、擦り切れたりするものなのだ。呂布自身も、地元の名家に仕官する前はそういうごく普通の村にいたため分かる。

 

「き、綺麗だなんて……。ごほんっ。奉先さんもお上手ですね」

「ふん。お前は容姿もいい。一応は貴族なのだろう。宮中に仕えたりはしないのか?」

 

 呂布はアルシェに尋ねた。だがそれは答えを知っていて、あえて聞いているような声色だった。

 

「よけいなお世話。私は自分でワーカーになるって決めたの。他の誰にも指図はうけない」

 

 アルシェは呂布の問いに強く答える。それはいまの自分にも言い聞かせるような物言いだ。一方、アルシェのその言葉を聞いた呂布は意外にも嬉しそうだった。

 

「ほう。お前も戦いを求めるか」

「ふぇっ!?」

 

 なんでそうなるの、とでも言いたそうな顔をして呂布を見るアルシェ。呂布はそんな彼女を気にいった様子で、言葉を続ける。

 

「お前は戦を後ろから眺めるのが退屈なのだろう? 貴族は最前線に出ないからな。お前はワーカーとして強敵と戦い、武を高めたい。ふっふっふ。俺も戦場で強敵と戦うことこそが楽しみだ。お前のことを年端もいかない子どもだと思っていたが、なかなか気概だけはいいじゃないか」 

 

 呂布の解釈はいろいろぶっ飛んでいた。 

 

「もう、なにそれ? そんな戦闘狂じゃないし……」

 

 アルシェが呆れたように首をガクッと倒し、同時に呂布がどういう人なのか分かったようだ。ただアルシェも、少し気が楽になったようでその表情は出発時よりは生き生きとしていた。

 そんなことをしていると討伐隊の雰囲気が変わった。

 きたか、という感情が駆け巡る。はるか遠くの平原に一粒の黒い点を見つけたのだ。その黒い点から腕のような物が出ていることから、それが生物だと分かる。これだけの距離であろうと、ついてきた者たちは緊張で汗が流れ、頬をつたって地面へ落ちる。

 それは標的であるギガントバジリスクだった。遠方で見つけたとしても、その驚異的な敏捷さで瞬く間に接近されてしまうため、見つけたたら一目散に逃げることを叩きこまれているモンスターだ。

 

「支援魔法をかけます」

 

 いち早く神官たちが魔法をかける。それはギガントバジリスクの石化の視線を弱体化させるものだ。このように魔法や、あるいは専用の装備を着けなければ近づくこともままならない強敵なのだ。

 

「作戦は……」

 

 リーダーを務めるヘッケランが何度も検討した作戦を指示しようとする。まずは呂布をはじめとした近接戦の得意な者たちで注意を引く。そしてその後ろに展開した魔法詠唱者などの遠距離攻撃主体の者たちで、地道に体力を削っていくものだった。

 だが、鬼神呂布は作戦などという小細工を素直に聞き入れるような人物ではなかった。

 

「アルシェ!! 行くぞ!!」

「え!? ちょっと!」

 

 呂布は迷うことなく、馬の腹を蹴り駆けだした。アルシェは戸惑う。だが呂布のその勢いに駆られて、アルシェもその背を追いかけるのだった。残った討伐隊の者たちはあっけにとられ、二人の乗る馬のいななきだけがさびしく聞こえていた。

 

 二人はギガントバジリスクに近づいていく。敵方も呂布とアルシェに気づいたようだ。首を大きくもたげながら、身体を正面に向けてきた。ぎろり、とその緑色に輝く水晶のような眼玉が動く。そしてその橙色の瞳が彼らに向けられる。

 一瞬目を逸らすアルシェ。いくら魔法がかけられているとはいえ、その眼を直視するのはためらわれる。

 

(うわ~なんでついて来ちゃったの。でもいまから戻るのも気まずいし……。ここまで来たら仕方ない。戦うしかないわっ)

 

 そう決意したアルシェは前方を走る呂布の横に馬をつけた。

 

「奉先さん!! これ以上馬で近づくのは危険です。私がその手綱をもちます!」

 

 モンスター討伐で野生動物である馬の扱いは難しい。人とは違い、どのような行動を取るか分からないことが多いからだ。特に今回は強敵との戦い。不確定要素はなるべく少なくしておきたい。

 

「分かった。では頼むぞ、はあっ!!」

 

 馬を止めて降りるかと思いきや、呂布は驚くべき行動に出た。そのまま猛烈な勢いを保ちながら、大きく馬が跳躍。そしてその最高点に到達するとともに、呂布は馬の背を強く蹴りさらに上空へ跳ぶ。そのまま上空で態勢を立て直し、眼下にいるギガントバジリスクに狙いを定める。

 

「うおおおぉぉっ!!!!」

 

 黒い塊となった呂布が標的めがけて激突する。

 ゴガン、という腹の奥底にまで響くかのような轟音が鳴り響き、同時に砂煙が舞う。アルシェもその突風によろめく。

 

「はううっ! もう無茶苦茶……」

 

 呂布の行動を見て、アルシェがはじめに思った感想はそれだった。純粋な賛辞より真っ先に出たのがその言葉だった。

 呂布の乗っていた馬が煙の中からてくてくと、アルシェの方へ近づいてくる。その馬はアルシェのもとへたどり着くと、小さくいなないた。

 

「あんたも大変ねぇ~」

 

 アルシェはそう言いながら、さっきよりこころなしかげっそりと疲れた様子のその馬のあたまを撫でる。

 顔を上げて呂布の落ちた場所を見てみると、さっきより煙が晴れていた。激突した場所を中心に地面が割れている。草花が散り、地面の色が分かるようになっていた。そのまるでクレーターのようなものの中心に立つのは呂布。そしてその視線の先には攻撃を逃れたギガントバジリスクがとぐろを巻き、先が二つに分かれた長い舌を出して警戒を強めていた。

 

「ふん。よけたか。まあ、あれで終わっては面白くない」

 

 呂布はそう言い、方天画戟を振ると残っていた煙が晴れる。呂布は腰をかがめてギガントバジリスクの動きを見る。

 

 睨みあう両者。

 ふたりのあいだは依然として開いている。だが人外の強さを持つ呂布と、まさしく人外の、そして超級の大蜥蜴からしたら一瞬で詰められる距離だろう。両者の視線が交差し、まるで火花を散らすかのようだった。

 どちらがさきに動いたのだろう。あるいは同時かもしれない。両者は目にも止まらぬスピードでぶつかり合う。呂布の方天画戟を、ギガントバジリスクはそのミスリルに匹敵する硬さと言われている頭部で受け止める。魔獣もいちおうは生物だ。しかし、信じられないがその激突で火花が飛び散った。あたりの草に火の粉が飛ぶ。

 

 つばぜり合いのような形になった両者。押されているのは、ギガントバジリスクの方だった。一方の呂布は真剣ではあるがやや涼しげな顔をしている。まるでこの状況を楽しんでいるかのように。対して、ギガントバジリスクはそれを不快に思ったのだろうか。鞭のようにしなやかな尻尾で呂布を捉える。

 だがそれを察した呂布はギガントバジリスクを押し飛ばす。態勢の崩れたせいで、その尻尾の攻撃は呂布の上をかすめる。忌々しいというような雰囲気のギガントバジリスクは岩をも砕く自慢の爪や牙で呂布へ挑む。

 

「すごい。なんて力……」

 

 呂布はギガントバジリスクの攻撃をすべて弾き返していた。一切の無駄がない動き。傷口から飛び散る猛毒の体液でさえ、その軌跡が見えるかのように避けていた。

 

「グルルッ……」

 

 ギガントバジリスクは見るからにバテていた。あちこちに傷がつき、だらしなく垂れ下がった口もとからはよだれも垂れている。

 しかしその眼からは逃げるという意思がまったく見られない。普通の個体とは違う。何かの意志を感じさせるようなギガントバジリスク。そして乾坤一擲、すべての防御を捨てギガントバジリスクは呂布へと跳びかかる。呂布を押しつぶすかのような巨体だ。これまでのように受けることはできない。

 

 その一瞬――。

 

「喰らえ! <雷撃>(ライトニング)

 

 跳躍の直前、地面を強く踏み込んだときに両者の戦いを見ていたアルシェの魔法が飛ぶ。それまでは動きについていけず誤射を恐れて撃てなかったが、いまこそ好機だと判断して魔法を放った。魔法を受け、その巨体は一瞬体が痺れ動きを止めたまま宙へ浮く。

 呂布は姿勢を低くし、瞬時にギガントバジリスクのしたへ潜り込む。

 そして頭上にある、無防備に開け放たれたすべての生物の弱点、首もとへと方天画戟を振るう。

 ぐさり、という音が鳴ったかと思うとギガントバジリスクの首が宙を舞った。

 そして力を失い、激しい血しぶきをあげながら地面に墜ちる胴体。その巨体ゆえ地を鳴らす振動が起きる。

 

「ふんっ!!」

 

 呂布は方天画戟に付いた体液を払う。そして地に落ちて何回か転がったギガントバジリスクの頭部。その眼は力なく呂布を見つめる。

 

「すこしは楽しめたぞ」

 

 呂布がそう言ったとたん、その瞳から光がすうっと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「――ッ!? いまの反応は!! まさかやられたのか!?」

 

 そこはエ・ランテル近郊の森の中。スレイン法国が誇る漆黒聖典。その第五席次クアイエッセ・ハゼイア・クインティアは驚愕していた。人類の守護者を標榜する彼はいま、その森で亜人や魔獣といった人に仇なす存在を間引きしていた。彼はそれを行うのに最適な能力をもっているのだ。ビーストテイマーとしてモンスターを操り、森の中を探索できる。

 そして彼を強者たらしめているのは、ギガントバジリスクを操ることだった。今回の間引きにも参加させていた。

 しかし今、その反応が消えた。

 

「嘘だろ!! 一か月前にも消えて……。クソッ!! これは偶然なのか。本国にも報告しなければ……」

 

 クアイエッセは慟哭する。ギガントバジリスクを操るのはタダじゃないのだ。風花聖典などのいろんな部署の協力も得ねばならない。まずはギガントバジリスクを捜索。そして周囲に部外者が入ってこないよう監視して捕獲。運ぶときも見つかったら騒動になるため一苦労だ。

 それに今回、本国からはあまり神都から離れるなとも通達されている。彼がここに来たのは自身の独断だった。彼の信仰心の厚さからきた行動なのだ。加えて、わざわざ虎の子のギガントバジリスクを使う必要もなかった。もっと下級のモンスターでも十分だったはずだ。

 

「はあ……、隊長あたりから怒られそうだ……」

 

 最近はいろんな部署で予算の取り合いが起こってる。崩壊した神殿の建設。部隊の再整備などだ。もちろん漆黒聖典であるため最優先で予算は回ってくるだろうが、無尽蔵に使えるものでもなかった。

 そんなことを思ってか、クアイエッセのその背中は、人類の守護者とは思えないほど小さくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 日が落ち、ちらほらランタンに火が灯されるようになった頃。エ・ランテルの城門では群衆が歓喜で湧き上がっていた。呂布たちがギガントバジリスクの討伐という栄誉をひっさげ、凱旋してきたのだ。そして討伐隊が急造した荷台へ、ギガントバジリスクの遺体を載せて持って帰ってきたこともあり、あふれんばかりの人だかりができていた。

 そして今回大活躍した呂布のもとに、都市を代表して冒険者組合長アインザックがあるいていった。

 

「奉先君。君ならやってくれると思っていたよ」

「当然だ。俺に不可能はない」

 

 呂布の傲慢ともとれる物言いを咎めず、騒動が解決して嬉しいアインザックは彼の肩をたたいてねぎらった。

 

「そうだ。これを受け取ってくれ。君が戻ってくると思って作っておいたのだよ」

 

 アインザックはそう言って、きらびやかに輝くオリハルコンのプレートを呂布に渡す。それを見ていたアルシェは、最強を自負する呂布が怒ってアダマンタイトのプレートをよこせ、と言いそうですこし緊張した面持ちだった。だが呂布の答えは意外で、しかし納得させられるものでもあった。

 

「ありがたく受け取っておこう」

「ほう、君ならアダマンタイトのプレートをよこせと言いそうだったが?」

 

 アインザックもアルシェと同じ気持ちだったようだ。

 

「ふん、この程度でアダマンタイトの実力だったら、つまらないではないか。俺が求めるのは最強。ギガントバジリスク程度、容易く屠れるようでなければ俺を満足に楽しませることはできんぞ」

 

 それを聞き、アインザックとアルシェはともに目を見開く。だが二人はすぐに破顔していた。

 

「はっはっは!! そうか、そうか。君はそういう人物だったか」

「ふぅ~。ほんと、無茶苦茶な人」

 

 そして和やかな雰囲気のまま、呂布や討伐隊の皆はエ・ランテル最高の宿屋、黄金の輝き亭へと泊まることになった。

  

 

 

 

 

 

 

「ええい! まったく寝つけん」

 

 最高の部屋に備えられた最上級のベッドであったが呂布は寝ることができなかった。それもそうだ。呂布はアンデッドなのだ。睡眠など必要ない。

 もう大半の者が寝静まったころだった。暇になった呂布は部屋に置いていた方天画戟を持って宿屋を出ていく。自由にそれを振り回される場所を見つけ、鍛錬をする。

 

「はあっ! ぬんっ! でえいっ」

 

 何度も何度も振り回す。

 だが夜は長い。まだまだ明けるようには見えなかった。退屈しのぎのため、呂布はこの街の散策に乗り出した。まだ飲んだくれのいる酒場や、高級娼館などへも顔をだした。

 そして街の中心部から、スラムなどが立ち並ぶ外周へと向かう。そこは満足に明かりもなく、月明かりでかろうじて見えるぐらいだった。

 

 だからこそ、突如放たれた魔法の光が一層目立っていた。

 何事かと早足で現場に駆け付ける呂布。

 彼がたどり着いた時には、影のようにめまぐるしく形の変わる悪魔が、ローブを着た魔法詠唱者に消滅させられていた。

 

「まさか、これほどの悪魔がこの街に紛れ込んでいるとは……」

「ん?」

 

 どこかで聞いた声だな、と呂布は思って自身の記憶をさぐる。一方の悪魔を消滅させた魔法詠唱者も、呂布を見て動揺していた。

 

「ほお、呂布ではないか」

「お前はロジャー……か?」

 

 それは呂布がこの地で初めて会った、カッツェ平野を徘徊する住人だった。今は海賊風の衣装やカットラスをつけずに黒いローブを着ていた。アンデッドであることを隠すためであろうか。その手には銀色のガントレットが付けられ、顔は一見人間のように見えるよう魔法が施してある。だがその顔には初めてあったときの眼帯が付けられていたため、呂布も彼がロジャーであると分かった。

 

「聞いたぞ。ギガントバジリスクを討伐して、オリハルコン級の冒険者になったのだろう?」

「ああ。俺にはぬるい相手だったがな。それよりお前は何をしているんだ?」

 

 さっきの悪魔といい、ロジャーの行動には疑問が多かった。

 

「私は……そうだな。物資の補給や古い友人にも会いにいっていたのだよ。お前はこれからどうするんだ?」

「王都へ向かう。だが、その前にやることがある」

 

 呂布はそう言うと、月明かりを反射し幻想的な雰囲気を醸し出している方天画戟をロジャーに向けた。

 

「俺と戦え」

「はっ!?」

 

 おいおいなんでだよ、と思ったロジャーの意を察してか呂布は言葉を続ける。

 

「俺の求めるのは強者との戦い。俺からみてロジャー、お前は強い。だから戦え」

 

 なんちゅう無茶苦茶な、と思ったロジャー。まずは呂布をたしなめることから始まった。

 

「まあ待て。お前と本気でやれば無傷ではいられん。うーん……、そこでだ。俺がいくつか魔法を放とう。それをさばききるというのはどうだ? お前も色々な魔法を見ればさらに武芸が極まるだろう」

「……ふん。俺を楽しませることができるなら、それでかまわん」

 

 そして夜が明けるまで、数多の魔法がエ・ランテルの街を照らし出した。

 

 





 アインズたちは第二章で出てきます。


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