「そういえばアリス、あなたお兄さまとは一緒にいなくていいの?」
窓の外は夕日が射し、あたしとハーマイオニーが制服に着替えた頃、ハーマイオニーがそう切り出した。
「うーん、お兄ちゃんは友達と乗るんだよね。でも会いに行くくらいいいかなあ?」
「いいと思うわよ。ついでにお兄さまに、制服姿見せてきてあげなさいよ。」
「お兄ちゃんはパパじゃないから、そんなに感動的ではないと思うんだけど…。」
そう言いながらも、アリスはお兄ちゃんに会いに行くことにした。ついでに通路で騒いでる子達に混ぜてもらおうかな…。さっきはタランチュラがどうのって騒いでたな…
「私は通路であまりにも子供っぽい振る舞いをしてる子達を注意してくるわ。なんだかさっきから怒鳴り声も聞こえるのよ。」
…あっ、無理でした。混ざりたいなんて口がさけても言えないわ。
ハーマイオニーと別れて、あたしはリルを抱いてお兄ちゃんを探しに行った。追いかけっこをしたり魔法生物を見せあったり、すっごく混ざりたい気分でいっぱいだ。でもハーマイオニーに叱られちゃうから我慢我慢。
「あ、アリス!コンパートメントを出てきちゃったの?」
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃんはちょうどコンパートメントから顔を出したところだったらしい。コンパートメントの中の人たちと言葉を交わした後、少し困った顔をして手招きをした。
コンパートメントにはお兄ちゃんの他に男の子が3人座っていた。コンパートメントに入ってきたあたしを見て3人ともぽかんとした顔をしている。あ、挨拶するのを忘れてた!
「初めまして、アリス・ディゴリーです。こっちはペットのリル。」
…あれ?挨拶をしてもぽかんとしたままだ。何かおかしいことしたかしら?
お兄ちゃんが3人に声をかけると、やっと現実に戻ってきたみたい。今度は慌てて、お菓子のゴミを集めてあたしを座らせてくれた。
「アリスちゃん、初めまして。俺はガストン・ミラー。よろしくね。」
「ウィリアム・スプリングだ。ビルって呼んで。アリスちゃん、蛙チョコ食べない?」
「かぼちゃジュースもあるよ!僕はノエル・シールズ。」
ガストンに、ビルに、ノエル。3人の顔をじっと見つめて…よし、覚えた。
「よろしくね!ありがとう!!甘いもの食べたかったの!!」
あたしはそう言って蛙チョコとかぼちゃジュースをもらった。3人ともにこにこしてくれて、ほっとする。
「ちょっと、それ僕のかぼちゃジュース…」
とお兄ちゃんが呟いているけど、気にしない気にしない。
「アリス、どうして通路にいたの?」
とお兄ちゃんが尋ねてきた。
「お兄ちゃんに会いに来たの。」
「とか言って、通路で騒いでたんじゃないだろうな?」
うっ、さすがお兄ちゃん、鋭い。でも、
「騒いでないよ!」
と胸を張っておく。ハーマイオニーのおかげでお兄ちゃんに怒られずに済んだ。
かぼちゃジュースを飲み蛙チョコを頬張り、お兄ちゃんのお友だちに優しくしてもらい、至れり尽くせりの待遇をしてもらった。
(途中、ビル・ノエル対お兄ちゃんで、「これでかぼちゃジュースの分はチャラだよね?」「何言ってんだ!アリスちゃんは自分から来たんじゃないか!」「でも会ったからいいじゃないか!」とかの問答が起こってたけど、面倒くさいのでガストンとリルの可愛さについて語り合っていた。)
そろそろお友だちもコンパートメントに帰ってくる頃じゃない?とそうお兄ちゃんに言われて、あたしはコンパートメントを出ることにした。お兄ちゃんと優しい先輩達がいるんなら、ハッフルパフもいいなあ。そう思いながら自分のコンパートメントに戻ると、ハーマイオニーがいない。
あたしを探しに行ってるのかな?
そう思い、あたしは今度はハーマイオニーを探す旅に出た。
ハーマイオニーもすぐ見つかった。というか、でっかい男の子が何やら喧嘩をしているコンパートメントをひょいっと覗いたらハーマイオニーがいた。
「何してるの?」
そう声をかけると、でっかい男の子2人の間から、金髪をなでつけた、青白い顔の男の子がこちらを振り向いた。
綺麗な子だなあ。そう思っていると、その子が口を開く。青白い顔がピンク色に染まっている。
「君、名前は?僕はドラコ・マルフォイ。」
「アリス・ディゴリーよ。」
「ディゴリー?もしかして、ハッフルパフのシーカー、セドリック・ディゴリーの」
「妹よ。それで、何をしてるの?楽しいこと?」
そう言ってあたしはコンパートメントに入る。中は随分お菓子が散乱していて、黒髪メガネの男の子と赤毛の男の子がこっちを見ていた。
「ウィーズリーがお菓子をたくさん持っていたからね。少し分けていただこうとしたんだ。」
ドラコが少し偉そうにそう言う。
「ああ、それなら、はいっ」
そう言って、あたしは手に持っていた蛙チョコレート(さっきビルにもらった)をドラコの口に突っ込んだ。
「フォイ!?」
「あ、ごめんね、びっくりした?そちらのでっかいお二人さんも、あげるよ!はい、あーん!」
今度はでっかい二人に、ノエルにもらったかぼちゃパイをあげる。ドラコみたいに突っ込みはしなかったから、二人は嬉しそうにそれを頬張った。
「これで足りた?まだあたし、いっぱいお菓子持ってるよ!実は自分で作ったマフィンもあるの!いる?」
ドラコは蛙チョコを突っ込まれたからか、まだ口がきけないらしく、頭をすっごい速度で振ってコンパートメントを後にした。でっかい二人は欲しそうにしていたので、マフィン2つをあげた。
「こっちはチョコ、こっちは紅茶のマフィンだよ!」
「すげー、これお前が作ったの?」
「そうだよ!あたし、アリス。あなたたちは?」
「ゴイル。」「クラッブ。」
「そう!そんなに大きい体してるから、きっといっぱい美味しいもの食べてきたんだね!あたしのマフィンの感想も聞かせてね!」
そう言うと、ゴイルとクラッブはマフィンを一口かじり、
「「うまいよ、アリス。」」
と笑ってくれた。まさかここで食べてくれて、しかも美味しいって言ってくれるなんて!
「本当にうまいよ。また作ったら食べさせてくれないか?」
「うん、いいよ!」
「よっしゃ、じゃあまたな、アリス。」
「またね、ゴイル、クラッブ!」
よし。趣味のお菓子作りの評論家をゲットした!あたしはルンルンして、もう一度コンパートメントを見渡す。
「あー…ドラコたちはあなたたちのお菓子が欲しかったのかなあ?」
「そんなことないよ!君ってすごいや、マルフォイ達を追っ払っちゃった!」
そう赤毛の男の子が興奮してる。あれ…?どこかで会ったことがある気が……
「もしかして、ロン?」
「そうだよ!僕のこと覚えてたんだね、アリス!」
ロン・ウィーズリーとは、小さい頃に何度か遊んだことがあった。ウィーズリー家はたしか兄弟が何人もいて、ロンのママは料理が得意だった。
「久しぶりね!」
そう言ってロンと笑いあっていると、ハーマイオニーがこほんと咳払いをして言った。
「アリス、お兄さまはもういいの?」
「うん!お兄ちゃんのお友だちに、お菓子たーくさんもらったの!」
「ああ、さっきマルフォイをふがふが言わせてたやつね…」
そう言って、黒髪の男の子が笑ってる。
「初めまして。僕はハリー・ポッター。」
「ハリー・ポッター?あの?」
「うん。ほら、これ。」
そう苦笑して、ハリーは額の傷跡を見せてくれた。
…あれ?なんか、いや~な、頭がぐるぐるするような、そんな感じがする。
そう思ってじっとハリーを見つめていると、ハーマイオニーが席を立った。
「お二人とも、もうホグワーツに着くから着替えた方がよろしいと思いますわ。さ、アリス、行くわよ。」
「はーい。じゃあね、ロン、ハリー!」
「「じゃあね、アリス。」」
あたしはハーマイオニーから喧嘩のあらましを聞きながら、あのときハリーの傷跡に感じた気持ち悪さはなんだったんだろうと思いつつ、夕日が沈み暗闇が迫ってくる窓の外を見ていた。
アリスは誰とでも仲良くなります。本当の母と父から受け継いだ人を惹き付ける能力に、生まれ育った環境がプラスされ、警戒心を抱かず誰とでも話し、誰をも虜にする子です。
お兄ちゃんのお友だちは、勝手に作ったオリキャラです。名前考えるの大変だった…。
クラッブ、ゴイルとは、彼らがあんまり深く物事を考えていないため、これからも仲良くさせようと思います。映画の賢者の石での二人、まるっこくてかわいいですよね。
さて、次回はついにホグワーツ入学編です。どこの寮にしようかまだ迷い中…。パパから止められているのでスリザリンにはしないつもりですが。
それでは次回もよろしくお願いします!