列車内での出来事を書こうと思ったら色々付け足してしまい長くなってしまいました。
「ハーマイオニー、早く行こう!」
ハーマイオニーと再会したあたしは、赤い列車を目にしてワクワクが最高潮になった。あたしは昔からテンションが上がりやすい(ママにはせわしないとよく怒られ、お兄ちゃんにはおっちょこちょいだと笑われる)性質で、今日もママとパパに苦笑して留められた。
「アリス、ハーマイオニーもご両親との挨拶があるでしょう?」
「そうだぞ、お前はパパとママにキスの一つも残さずホグワーツに行くつもりかい?」
そう言われてみれば、ハーマイオニーは両親と何やら感動的なお別れをしているようだ。とはいってもこの性格の私が大人しくなるわけではないのだが!
「わかってるわ、クリスマスにはちゃあんと帰ってくる!」
「おいおいまてまてまて」
パパとママのほっぺたに軽くキスをした後駆け出そうとするあたしを、パパはまた引き留める。
振り返ったあたしは、パパがいつもより真剣な顔をしているのを見て、ようやくバタバタ駆け出そうとする足を止めた。
「アリス、君に3つ、守ってほしい約束があるんだ。」
「なあに?パパ。」
「1つめ。その指輪は絶対に外してはいけないよ。ただし、君はその指輪を付けていると他の子よりも魔力が弱い。家で魔法を使っているのを見る限りだと、簡単な魔法は使えるようだね。でももし危ない目に会ったとき、君は命を落としかねない。だから、パパはダンブルドアに頼んで、君の特別講師をお願いした。ダンブルドアはこれから、君が指輪を外しても力を発散させないよう、訓練してくれるんだ。だからダンブルドアの前でなら指輪を外してもいいよ。それ以外は、絶対に外さないでくれ。」
「ダンブルドアと訓練?!やった!!守る守る!!」
「よしよし。二つ目は、毎週パパとママに手紙を書くこと。友達とのことでも授業のことでもなんでもいい、誰にも話せないことでもパパとママには隠さず教えてくれ。いいね?」
「彼氏ができたってパパにいってもいいの?」
「うっ…うん…。」
「…3つ目だ。これが最後のお願い。アリス、君は今晩、寮の組分けをされるだろう。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクローなら、どの寮に入ってもいい。ただし、スリザリンだけには入らないでくれ。」
「そんなことできるの?」
「できるさ。君が絶対にスリザリンに入りたくないと願っていればね。」
「組分けはどうやってやるの?」
「それは秘密。3つの約束、ちゃんと守れるかい?」
「うん!」
「よし。ほら、ハーマイオニーも挨拶が終わったようだ。君も列車に乗ってコンパートメントを探すといい。楽しんでくるんだよ、アリス!」
そう言ってパパはあたしを送り出した。パパにハグをして、お兄ちゃんと話していたママにもハグをして、ついでにお兄ちゃんにもハグをしておいた。お兄ちゃんは「友達が見てたら恥ずかしいよ!」と言って照れていた。
「じゃあ、クリスマスにね、パパ!ママ!」
あたしはハーマイオニーの手を取り、ホグワーツ急行に飛び乗った。
ちょうど空いているコンパートメントがあったのでそこに二人で座ったあたしたちは、7月に会ってからこれまでのこと、楽しみな授業の話、どの寮に入りたいかについてぺちゃくちゃおしゃべりをした。ハーマイオニーは教科書を丸暗記したらしく、それでもまだ授業についていけるか不安らしい。
「だって私、マグル出身でしょう?魔法族の子に比べて知らないこと、まだたくさんあると思うのよ。」
「大丈夫だよ、マグル出身の子にも優秀な子はたくさんいるって聞くし、ホグワーツならすぐ慣れるよ。」
「アリスは随分余裕そうね。教科書は読んだの?」
「うん、一回。」
「まあ。」
そう言ってハーマイオニーは呆れている。彼女にとって"予習をしない"ことは"不良"のすることなのかしら。
でも、あたしは一回で大丈夫なのだ。
「あたしね、カメラアイなの。」
「え?カメラアイって、あの?」
「うん。だから一回でいいの。」
「すごいわ、羨ましい!」
「…でもね、反対に聞いたこととかはすぐ忘れちゃうんだ」
てへ、とあたしは舌を出す。
「おっちょこちょいってよく言われない?」
「うん!なんでわかるの?お兄ちゃんにいつも言われるよ!」
ハーマイオニーはすごい。あたしがいつも言われてることすぐわかっちゃった。ハーマイオニー本人は苦笑してるけど。
すると、コンコンっとドアが叩かれた、外から、丸顔の男の子が泣きそうな顔でこちらを見ている。
「ヒキガエルを見てない?いなくなっちゃったんだ。」
「ここには来ていないわ。」
ハーマイオニーが心配そうに返す。
「そっか…どこに行ったのかな、トレバー。すぐいなくなっちゃうんだ。」
「あなた、名前は?私はハーマイオニー・グレンジャー。」
「ネビル。ネビル・ロングボトム。」
「ネビル、私も一緒に探しましょうか?」
男の子とハーマイオニーのやりとりを聞いていた私は、二人が話している間に杖を取りだし、魔力を指先に込めていた。ハーマイオニーがコンパートメントを出ようとしたところでさっと杖を振る。
「アクシオ、トレバー!」
すると、男の子の頭にべちゃっと音を立ててヒキガエルが飛んできた。
「いった…え?トレバー!!」
「すごいわアリス、それは魔法?」
「そうだよ、お兄ちゃんの教科書に書いてあったの。」
感嘆するハーマイオニー。何度もお礼を言ってコンパートメントを後にする男の子。
「あ、リルに探しに行ってもらってもよかったかも。トレバーのカエル。」
「え?」
「え?」
「アリス、トレバーはカエルの名前よ。あの子はネビル。話聞いてなかったの?」
「…えへ。」
そんなこんなで、ハーマイオニーはアリスのおっちょこちょいな性格に呆れつつ、屈託ないアリスの笑顔を見て、「この子なら仲良くなれるかも」と考えていたのだった。
就活つらすぎて、逃げるようにアホの子の物語を書きました。天真爛漫ガールは心境こそあまり描写しませんが、明るい雰囲気にこっちまで明るくなります。次も頑張ろー