酔ってる。(またかよ)
「アリス・ディゴリーとは、彼女がどの寮になっても仲を深めておくように。彼女は大いなる力を秘めている可能性がある」
これが、僕が父上から頂いた最初の手紙だった。
クリスマス休暇になって、僕はやっと家に帰ることができた。たった数ヵ月離れていただけなのに、とても懐かしく感じられる我が家。僕はゆったりと過ごしていた。
クリスマス当日は、毎年恒例のマルフォイ家主催クリスマスパーティーが開かれるということで、例年通り、僕たち家族はクリスマス・イブに食卓を囲み、豪勢な食事を楽しんでいた。
父上と母上に話すことはたくさんあった。手紙に書いたことでも、書いていないことでも。クラッブとゴイルのこと、スリザリン寮の寮生とのこと、学校生活のこと、授業のこと、それから、グリフィンドールのむかつく連中のこと。
二人とも、僕の話に耳を傾け、大いに笑ってくれた。クリスマスディナーはおおむね楽しく進む。(授業のことではもっと勉強しろと叱られたが。)
しかし、デザートが出てくる頃、ふいに父上が切り出した言葉に、僕の背筋はびくっと伸びた。
「それで、ドラコ。アリス・ディゴリーの様子は?」
「ち…父上、お言葉ですが、彼女に特別な能力はないように思えます。物覚えが少々良いらしく授業では点数を稼いではいますが、実践では魔法を行使するのに数秒かかる姿が見てとれます。」
父上の真剣な、それでいて冷酷さを感じさせる表情に、僕は少し恐れを抱きながらそう答えた。
「マーガレットという名については?それについても聞くように手紙に書いたはずだが。」
「ええ、聞きました。聞いたことがないと、親族にもいないと言っていました。僕が聞く前にも聞かれたことがあるそうです。」
「ほう?」
父上の目が細くなる。
「ミス・ディゴリーはどのような人物だね?」
「一言で言えば、いつも笑っているやつです。汚れた血の、グレンジャーとかいうやつと仲良くしているようですが、やつと喧嘩したときも馬鹿っぽく笑って……」
「馬鹿?!そんなことを口にするな!!!!」
滅多に聞いたことのない、父上の怒鳴り声。
しん、と食堂が静まり返る。
母上が慌てて飲み物を父上に飲ませ、父上の赤ら顔が元の白さに戻るまでの数分間、僕は一言も発することができなかった。
やがて、ため息をついて、父上が口を開いた。
「いいか、ドラコ。よく聞きなさい。
アリス・ディゴリーは、昔、闇の帝王がご執心されていた女性とよく似た顔立ちをしている。その女性は一時期、闇の帝王に囲われ、共に日々を過ごしていた。聞けば、性格も能力も帝王や女性に似ていないようだが…。とにかく、彼女は限りなく高貴な血を引いている可能性があるのだ。馬鹿などと貶すべきではない。」
それから、どうやって自分の部屋に戻って、どうやって寝たのかよくわからない。
気がつけば朝で、昨日の父上の言葉を反芻する自分がいる。
アリスは、ディゴリー家の娘ではないのか?
それだけではなく、闇の帝王と、恐らくマーガレットという女性との間にできた娘だと、そう父上たちは解釈しているのか?
あの屈託なく笑う笑顔の裏に、孤児だという真実が隠されているのか?
そのことを、あの子は、アリスは、知っているのか?
頭が痛かった。
父上には言っていないが、アリスが特別な人物なのではないかという思いは、やんわりと抱いてはいた。
誰をも虜にし、いわば懐柔する能力。
少々どころではなく、他者を圧倒するほどの記憶力。
そして、兄とは全く似ていない、藍色の瞳と真っ白な肌。
…頭が、痛い。
自分の父親が、闇の帝王が倒れた際どのように対処していたかなんて、とうの昔に知っていた。でも、父上がそうしたのは、僕たち家族を守るためだ。
だから、今度は僕が父上と母上を守るんだって、
そう心に決めていた。
はずだった。
アリスは、出会った中でも一番魅力的な女の子なんだ。父上に言われたから見ていたというのもあるが、あの明るい笑顔に、優しい瞳の輝きに、いつのまにか目が吸い寄せられていた。
それが、自分の手の届かないほど、闇の血を引く身分かもしれないだなんて。
ただ、あの笑顔をできる限り守ってあげたいと思っていた。アリスには、いつもあの馬鹿みたいな笑顔で、笑っていてほしいと、心のどこかで願っていた。
でも。
僕が、今、アリスは特別な血を引くかもしれないと、その可能性を提示することは、
父上や母上を守ることに繋がるかもしれない。
闇の帝王はいつの日か復活するだろうと父上がおっしゃっていた。
そのときにお咎めを受ける人間の中には必ず父上がいる。だって、逃げたから。
アズカバンに入ることを拒否して。僕たち家族を守ろうとして。
そのとき、僕が、闇の帝王の娘であるかもしれないアリスと、繋がりを持っていたら?
彼女の有力な情報を少しでも得ていたら?
考えに考えた末、僕は父上の書斎のドアを叩いた。
僕は、家族を守るんだ。
ノーコメントでお願いします!(おい←)
やっぱ期間あく投稿だとダメですね、文体がごっちゃになる~