とことん真面目に知波単学園   作:玉ねぎ島

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短い文章なのだけれども・・・多分、英語表現は間違ってる・・・

小説内における時系列を。

7月中旬:隊長が辻→西に交代
8月中旬:この小説の始まり&大洗での親善試合
8月下旬:大洗女子学園と大学選抜との試合
9月下旬:大洗女子学園との練習試合
11月初旬:大洗女子学園との再戦 
11月下旬:新戦車導入
12月上旬:サンダースとの練習試合 ←←今ここ


26.祭典(サンダース戦前夜祭)

「これは・・・どえらいことになりそうですね・・・」

 

サンダース大付属のケイから寺本宛にメールが届いた翌日、臨時の車長会議が開催されることになったのだが、サンダース大付属の戦車道チームのホームページを見て、誰もが度肝を抜かれていた。

 

どこの大企業のホームページかと思うような洗練された作り・ページ数に驚き、そして試合当日に関する情報もでかでかとトップページに掲載されている。そのリンク先をクリックすると・・・

 

まず凛々しくテキパキと作戦指示を与えるケイの表情がアップで映り、やがてそれは新隊長のアリサのそれに変わった。その後サンダース大付属の練習風景や試合の映像が少し流れ、やがて先の大洗女子学園と大学選抜との試合の映像のシーンに変わる。ナオミがパーシングを撃破したシーン、そして玉田や細見が同じくパーシングを撃破した貴重なシーンもしっかり納められ、思わず歓声が上がる。その後、知波単とサンダースの面々が共に勝利を喜び、写真に納まる画像が流れたのだが、そこには笑顔で敬礼する西や、変顔をする玉田、お色気シーンのつもりかスカートの裾をまくる細見の姿もあった。

 

「わわわ!?」

 

「お前ら・・・こんなことしてたのか・・・」

 

びっくりしたような、そしてからかうような感じの西だったが、その直後に画面に現れたケイと西が胸を寄せてだっちゅーのをする写真がそれをぶち壊した。

 

「なっ!?」

 

「隊長も同じじゃないですか!」

 

「くっ・・・気分が高揚してたとしかいいようがないな・・・」

 

やがて画面は 

<Our Soul Friends ”Chihatans” are coming soon , Desember-11> 

と表示され、紹介動画は終わった。

 

「なんというか・・・圧倒されたな・・・」

 

「なんでもサンダースの学園艦で映画も作られていると聞きました。このくらいの動画はいとも簡単に作れてしまうのかもしれません」

各校との連絡窓口になっている寺本が、ケイから聞いたであろう情報を伝えた。

 

「特設大型スクリーンを10か所設置とか書いてますよ!」

 

「アンツィオの屋台も出るみたいですね。クリスマス特別ピッツァって書いてます!」

 

これまたアンツィオの特別ページが設けられ、ドヤ顔のアンチョビと調理帽子を被ったぺパロニが ”定番の鉄板ナポリタンの他に特別ピッツァを用意した” とあり、その横でカルパッチョが美味しさの秘密を丁寧に解説している。

 

「ゲストも凄いです! 大洗女子学園からは西住みほ殿他あんこうチーム、プラウダ高校からはカチューシャ殿とノンナ殿、聖グロリアーナ女学院からはダージリン殿とオレンジペコ殿が来られるとのこと」

 

「というより、実況:秋山優花里、解説:西住みほってあるぞ!!」

 

「こりゃ下手な戦いは出来んな・・・これだけの催しであっけなく負けたら大恥ものだぞ・・・」

そう言った西も含め、皆気が引き締まるというよりも、まだ呆気に取られているような状況である。

 

「試合会場の情報が右下にあるであります!」

福田の声に皆一旦我に返ったようだったのだが・・・

 

「演習場Cってなんだよ!? 演習場がAからCまであるのか!?」

 

「というより・・・演習場のこの作りは・・・」

 

「先の大学選抜との試合とほぼ同じじゃないか!?」

 

驚いたことに、縮尺は多少小さくはなっているものの、あさがお中隊が蹴散らされた森林、たんぽぽ中隊が釘付けにされた湿原、そしてひまわり中隊がカールの巨大砲に襲われた高地までほぼ再現している。さすがに決着の場となった遊園地まではなかったが。

 

「・・・なんだよ・・・この人達は本当に高校生なのか?・・・」

 

「そういや聞き流していたが、谷口が演習場がいくつかあって、改造もしているとか言ってたな・・・それにしても・・・」

 

一同、驚きすぎて声も出ない感じである。

 

「谷口、サンダースはだいたいいつもこうなのか?」

ようやく気を取り直した西が、サンダース大付属の出身である谷口に尋ねた。

 

「たしかにクリスマスのイベントは盛んでしたし、戦車道の練習試合の規模も大きかったですが、これほどまでは・・・ここまで艦を巻き込んでのイベントになったというのは、おそらくケイさんが隊長になって1年以上経ったというのが大きいのではないかと。自分が居た頃はまだこれほどのものではありませんでした」

 

ケイの人柄は、サンダースの艦内においても絶大な信頼が置かれていることがうかがえる。

 

「で、この試合会場で我々はどちら側から行くことになるのですか?」

ようやく落ち着きを取り戻した雰囲気の中で、玉田が尋ねた。

 

「ケイ殿はどちら側でも構わないとメッセージをくれています」

寺本が報告するや否や、西がそれに反応した。

 

「ならば・・・言うまでもない。我々は森林側から行くことにする!」

 

「了解!!!」

 

知波単の隊員にとっても、大学選抜との試合での無念は忘れたわけではない。屈辱を晴らすには大学選抜が進軍してきた草原側という選択肢はなかった。

 

~~~~~~~~

 

時は進んで、12月10日。

 

サンダース大付属との練習試合を翌日に控え、前夜祭に参加すべく知波単の隊員はサンダースの学園艦上に揃っていた。既に午前のうちに試合に使用する戦車はスーパーギャラクシーにて搬送されており、午後には試合会場の視察、並びに戦車の点検・試運転を行っている。

 

そして、知波単の隊員以外のゲスト・・・大洗やプラウダ、聖グロリアーナの面々も既に到着している。

 

「あら、絹代じゃない」

ノンナに肩車されたカチューシャが西を見掛けて声をかけた。

 

「西さん、ご無沙汰しております。先日はたいそうな品物を送って頂き有難うございました」

続けてノンナが、数日前に知波単から届いたお歳暮について礼を言った。

 

「いえ。いろんなものをバラバラと入れてしまい、かえって迷惑でなければよかったですが」

 

「そんなことありません。プラウダにとってはチンゲン菜やレモンは貴重なビタミン源になります。またレシピを頂いたさつまいもきんとんはさっそく試してみました。とても美味しかったですよね? カチューシャ?」

 

「そうね。なかなかいけたわよ・・・それよりあなたがたの新しい戦車はどうなの?」

 

ソビエト戦車と旧日本軍の戦車は縁が深いから・・・というわけではないのだろうが、カチューシャも知波単が新しく導入した戦車のことは気になるのだろう。隠すことなくストレートに質問をぶつけた。

 

「そうですね。火力のある戦車が加わったことで作戦に幅が出たことがなにより大きいですね。明日はその成果をカチューシャ殿にお見せできるよう頑張ります!」

 

「突撃一辺倒だったあなた達が ”作戦の幅が出た” とか、変われば変わるもんね。ところで四式中戦車がフラッグ車になるの? もっとも明日は殲滅戦のようだけど」

 

「いえ。今のところ標的となりやすい四式中戦車を隊長車とすることは考えておりません」

 

「そうね。それが賢明だわ。その様子だと明日の試合は少しは楽しめそうね。カチューシャをがっかりさせないでよ」

 

「はい! 良い戦いが出来るよう精一杯努力してまいります!!」

 

「これだけ大掛かりな試合だとプレッシャーもあるでしょうが、気負わずに頑張って下さい」

 

「はい! 有難うございます、ノンナ殿!」

 

「じゃあねー、ピロシキー」

 

「ダスヴィダーニャ」

 

そしてカチューシャ、ノンナと入れ替わるように、大洗のあんこうチームの面々が西のところに近づいてきた。

 

「西さん、こんばんわ。明日は宜しくお願いします」

 

「西住殿、こちらこそ宜しくお願いします。西住殿が解説されるとなれば下手な戦いは出来ません。というより、正直重圧を感じています」

 

西住みほも ”そりゃそうですよね” という感じで、独特のハハハという表情を浮かべている。

 

「西殿、明日は一式中戦車や四式中戦車も出るんですよね! 前回うちとの練習試合で、縦横無尽に駆け回ったチハに新しい戦車が加わるなんて、もう楽しみで仕方ありません! もう頑張って実況しちゃいますよ!」

 

「私も解説だなんておこがましいですが、どういう試合になるか楽しみにしています。頑張って下さい!」

 

「お二方とも、有難うございます。なにせ相手はシャーマン20輌ですのでどういう戦いが出来るか自信はありませんが、期待に応えられるよう頑張ります!」

 

そうこうするうちに、サンダースの案内役が来て、前夜祭が始まるので所定の位置に戻るよう指示があった。

 

「言葉とは裏腹に、西さん、いやに落ち着いていたな」

 

「明日の試合に向けて何か秘策があるのかもしれませんね」

 

西とみほ達のやりとりを見ていた冷泉麻子と五十鈴華が互いの感想を言い合った。

大洗女子学園にとっても、来年には全国大会連覇を目指す戦いがある。なんといっても2人とも戦車道を歩むようになってまだ半年少ししか経っていない。今年はいわば怖いものしらずの勢いのまま突っ切ったが、こうして次々と新しいライバル校が出現し、これまでの強豪校も含め、大洗女子学園を目標とする他校を迎え撃たねばならない。

西の落ち着いた態度は、改めて戦車道の奥の深さを痛感し、そして連覇への道が厳しく困難であることを2人に認識させるには充分であった。

 

~~~~~~~~

 

「Ladys and gentleman! Welcome to Saunders University High School!

Let’s get started!」

 

 ”ほとんどジェントルマンいないじゃない!” という武部沙織のボヤキをよそに、盛大な前夜祭が始まった。 

 




◆西車(隊長車/フラッグ車)・・・一式中戦車
 ⇒車長:西、装填手:倉橋/2年(オリ)、通信手:半田/2年(オリ)、
  操縦手:戸室/2年(オリ)

 ※(オリ)は作者のオリジナル設定。以下同じ。
  オリキャラはちばあきお氏の漫画、キャプテン、プレーボールから名前を頂いてます

◆玉田車(割り下小隊)・・・四式中戦車
 ⇒車長:玉田、砲手:松川/2年(オリ)

◇玉田僚車(割り下ご飯)・・・新チハ
 ⇒車長:浜田

◆寺本車(たまご小隊)・・・新チハ
◇寺本僚車(たまごご飯)・・・旧チハ

◆池田車(陣地構築隊/豆腐小隊)・・・チハドーザー
◇池田僚車(陣地構築隊/豆腐ご飯)・・・チハドーザー

◆名倉車(陣地構築隊/長葱小隊)・・・チハドーザー
◇名倉僚車(陣地構築隊/長葱ご飯)・・・旧チハ

◆谷口車(突撃隊/バント)・・・新チハ
 ⇒車長:谷口/2年、操縦手:丸井/1年(留年)、砲手:五十嵐/1年、
  装填手:久保/1年、通信手:小室/1年
  ※全てオリキャラ
  ※谷口は2年時にサンダース大付属から編入

◆山口車(突撃隊/牽制)・・・新チハ
 ⇒車長:山口/2年、操縦手:太田/2年、砲手:中山/2年、
  装填手:山本/2年、通信手:鈴木/2年
  ※全てオリキャラ

◆細見車(突撃隊/牛肉小隊)・・・一式中戦車
 ⇒車長:細見、操縦手:加藤/2年(オリ)、砲手:島田/2年(オリ)

◇細見僚車(突撃隊/牛肉ご飯)・・・旧チハ
 ⇒車長:横井/2年(オリ)

◆福田車(偵察隊/みかん)・・・九五式軽戦車

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