「これは、パソコンというものです」
「ぱそこん?」
パチュリーさんが、首を傾げた。
本当にキョトンとしている表情だ。可愛い。
「僕でもよく分からないんですけど、インターネット空間に干渉する機械です。このインターネットで調べものを調べたり、すぐにメッセージが相手に届くという現代の技術の産物ですね」
「へえ、前魔理沙が大図書館に持ってきた物の小さい物と言っても大丈夫そうね」
あ、そんなことがあったんだ。
そのようなことを考えると、パチュリーさんはまた違うものに興味を持ち始めた。
「貴方が持っている、その小型のものは何?」
「これは携帯電話、スマートフォンっていう物です。ここから電波を送ってもう1つの電話に自分の声を届けたり、文を送ったり出来ます」
なんだか、パチュリーさんがそれを渡せ、と言っているように見えるほど手を伸ばしているので、渡してみることにした。
魔法の器具だと思っているのだろうか。
パチュリーさんはスマホを裏返したり、無理矢理分解しようとしていた。
パチュリーさんがいくら非力と言えども、魔法で身体を強化されたら流石にスマホが壊れるだろうと思ったが、全くそんなことは無かった。
「……貴方の言っていることがよく分からないわ。一度実演してみなさい」
実演って。
とりあえず、パチュリーさんにスマホを預けて、自分は家にある、固定電話の子機を持って、外に出た。
パチュリーさんにはきちんと、電話がかかってきたら、どう反応すれば良いのか、教え済みである。
アドレス帳から自分のスマホに電話をかけた。
こんなことに固定電話を使うなんて、思いもしなかった。
俺の固定電話の使い方もあまり良いものではない。スマホが見つからなかった時、電話をかけて、音で場所を特定するという使い方だ。
『……ねえ』
「あ、ノーレッジさん、繋がった?」
『ひゅい!?』
パチュリーさんは大きく驚いたようで、変な声をあげていた。
なぁ、なんでこんなにパチュリーさんは可愛いんだ? 俺を尊死させるつもりなのだろうか。
『なんでなのかしら…。魔法でもこんなことをするのに結構な時間が必要なのに』
「幻想郷なら河童が作ってそうですけど」
『河童は技術を提供しないのよ。私たちの方があの技術を活用出来るのにね』
妖怪の山に住んでいる妖怪達は縦社会になっているとか、聞いたことがある。更には排他的だとか。
そう考えると、技術を教えない理由も分かる。
しかし、東方茨歌仙の万歳楽の時に歌仙さんに結構協力的だったような気がする。
妖怪の山の社会は俺のような凡人では理解出来ないのかもしれない。
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外から戻ると、パチュリーさんは冷蔵庫の中にあった、麦茶を、グラスに入れて優雅に飲んでいた。
「何をしてるんですか……」
「おかえりなさい」
パチュリーさんにおかえりと言ってもらえて、このまま死んでしまっても良いぐらい嬉しい。
「そういえば貴方、ノーレッジって呼ぶのが呼びにくそうね。パチュリーって呼んでちょうだい」
「ありがとうございます。それじゃあ、これからパチュリーさんって呼ばせてもらいますね」
「呼び捨てでいいと言っているのに……」