史実であれば日中戦争直前…満州事変の真っ只中ですが…。
WWSの世界線では丁度扶桑海事変直前です。
そんな戦火の火蓋が切って落とされようとしている最中…横須賀である事件が発生します。
序章はその事件の『始まり』についてのお話です…。
2017/05/04:小説情報と本文に多少の変更を加えました。
2017/06/22:作品タイトル修正しました
序章 ~世界を呪った悪魔~
1937年8月18日。
扶桑海事変が本格化する直前の横須賀。
街は緊張感が霧のごとく張り詰め、普段なら賑わう商店街も、人気がいつになく少ない。
空気感が絶望的に悪く、外にいるだけで吐気を催す者もいたというそんな日に、横須賀は、未知の恐怖に脅かされることとなる。
5時2分。
日の光は厚い黒雲に落ち込んだままで、今にも雨音が響き渡りそうな暗い空と体に纒わり付く強い湿気に嫌気が差す、そんな朝。
一人の男が、基地横の林道を走っていた。
軍事関係車両の往来も多い表通とは違い、裏通となるこの林道には、車はおろか人の往来も少ない。
それ故に、男は普段、往来に邪魔されることなく走り込みをすることが出来ていた。
この日も、もはや日課と化していた走り込みをしていた。
数分ほど走った辺りだろうか。
ふと、横に広がる林の奥から悪臭が漂ってきた。
それも、尋常ではないほどの。
鼻を打つ、なんて生易しい言葉では片付けられないほどの。
男は、あまりの劇臭に耐えかね、鼻を抑えながら引き返そうとした。
が、その場で男は、絶望の表情を浮かべ、血の気が一気に引くのを理解した。
林道と林の境より少し奥…そこに、腸をぶちまけた血塗れの子供が、仰向けに横たわっていたのである。
不気味なことに、その子供の両脇には、彼岸花の花束が手向けられていた。
男は腰を抜かして倒れ込み、それからガタガタと震えながら、地面を這うようにしながら立ち上がり、元来た方へと逃げ出した…。
1時間後、男から通報を受けた地元警察や自警団、海軍軍人らが、林道脇に倒れた少年を発見し収容、その後、悪臭漂う林の中へと足を踏み入れた。
奥に進むにつれ、悪臭はどんどんと強さを増していった。と、捜査員の1人が何かを踏みつけた。ヌチャッという音が辺りに響き渡る。踏みつけた捜査員が、恐る恐る懐中電灯でそれを照れした瞬間、捜査員らは全員が恐怖に怯えた。
捜査員が踏みつけたのは、腸だったのである。
その捜査員は、絶叫しながら腰を抜かして倒れ込み、懐中電灯を地面に落とした。
落ちた懐中電灯が、下から腸をより明るく鮮明に映し出し、捜査員は泡を吹いて気絶した。
…先程の少年同様に、腸をぶちまけている少年少女が2人、全身の骨が木っ端に砕かれ、人ならざる姿に成り果てた少女が2人、ひときわ大きな木に体をツルできつく縛られ、太い枝で腹部を貫かれた少年が1人…計6名の無残な遺体が発見されたのである。
その無残さといえば、人という原型はもはやなく、その場にいた捜査員の誰もが、その遺体を回収するのを躊躇い、全員がその場で嘔吐したほどである。
さらに、すべての遺体の両脇に、彼岸花の花束が手向けられていたことも、この事件の異様で不気味な姿を如実に映し出していた。
人には不可能な所業であると考えるしかない、 ーいや、人がすることとは到底思えなかった、という方が正しいだろうー 悍ましい光景が、目の前には広がっていた。
…後世に、殺人ウィッチ事件として名を残した、最悪の事件が始まった瞬間であった。
序章 ~世界を呪った悪魔~ 終
…いきなり腸ぶちまけるとか、全身の骨木っ端微塵にされてるとかとんでもない話になりましたが、第一章はちゃんとグロテスク要素抜いてますのでご安心ください…!