cocシナリオ   作:dsyjn

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シナリオ概要
 弟切草的な。バイオ1的な。森の洋館で可愛い女の子とわちゃわちゃ戯れたりマッパになったり火遊びしたり邪神を呼んだり呼ばなかったりします。

シナリオ傾向:クローズド系 主に謎解き ロストあり 発狂多め

推定プレイ時間(オンセ):6~8時間
(テストプレイ:オフセッションほぼ初心者3人で約8時間)

PL人数:2~4人

KP難易度:☆3~4/☆5くらい PL難易度:☆3~4/☆5くらい
 KP難易度は時間制限をなくすとぐっと下がると思います。
 PL難易度は時間制限付きでトゥルーエンドを目指すとなるとなかなか厳しいと思いますが、時間制限なしノーマルエンドならそれほど難しくないと思います。

推奨技能:目星、聞き耳、図書館ロールなどの基本的探索技能。学術系技能。
 学術系技能は専門的なためシナリオに出すことを避けられる傾向がありますがそのために存在意義が問われる不憫な技能です。なので思い切って学術系技能を持っていてよかった、と思えるシナリオをば。なくてもクリアできますけど。
 SAN値チェックが思いの外多いのであまりSAN値が低い探索者ばかりですとキーパリングで困ります。
 攪乱と雰囲気作りを狙って敢えて与える情報に無駄知識や蘊蓄を詰め込んでいますが攻略に不要だと判断した情報は適宜排除してもらった方がスッキリとしたキーパリングができる思います。


うさぎの送り火

シナリオ背景

 鳴滝院財閥は世界でも有数の大財閥だがその長、鳴滝院蜉蝣(なるたきいん かげろう)は人の世を忌み嫌う男だった。財産を狙い度重なる妬み嫉み裏切り姦計に嫌気が差した彼は人間を生まれ持っての悪と見做すようになったのだ。

一度は真に愛する女性を見初め、子もなしたがその女性もまた自分の財産目当てだったことを知り、彼は深い悲しみとともに狂気を湛え、狂乱のままに追い出した。自分に残されたのは忌まわしき女と自分の間に生まれた娘、鳴滝院胡蝶(なるたきいん ひひる)だけ。彼は狂気に取りつかれ、この世界を深い闇に落とし込むことを誓うとともにオカルトに傾倒するようになる。そしてある計画を思いつく。

 蜉蝣が狂気を悟られぬように計画を進める傍ら、はや十数年。胡蝶は絵本作家九出葵(くであおい)と結婚し、その身に命を宿すに十分成熟した齢にまで育った。それは蜉蝣にとってもまた待ちに待った時だった。彼は自分の娘夫婦の子をなす営みを利用してヨグの落とし子を孕ませ、それを媒介に外宇宙の神々を地球に呼び込もうとしたのだ。

 しかしヨグの召喚は不完全に終わる。それも思わぬ邪魔によって。

 この計画も終盤に差し掛かったころ、彼らの住む屋敷の近くに隕石が落下した。宇宙からの色。あらゆる生命を吸い上げ、狂気に陥れる極彩色の外来者。隕石かと思われたそれは恐るべき宇宙生物に他ならなかった。宇宙からの色により屋敷の人間たちはじわじわと生命を蝕まれ、床に臥せていった。皮肉なことに蜉蝣は自らが傾倒したオカルトにより計画を阻止され、あまつさえ死に至ってしまう。だが九出夫婦もこの外宇宙からの訪問者の餌食となったことは言うまでもなかった。屋敷には干からびた骸が鎮座し、周辺の森は虹色に光る呪われた地へと変貌を遂げることとなる。

 そんな呪われた屋敷にある者が目を付けた。邪神ニャルラトホテプだ。中途で終わってしまったヨグの召喚の儀式の影響で胡蝶の遺骸はあらゆる次元と繋がる楔となっており、いわば汲めども尽きることのない魔力の泉のような状態となっていた。かの邪神はこの力を利用して屋敷を多次元宇宙に作りかえ、そこに宇宙からの色を閉じ込め、飢えさせた。そして胡蝶を模して作られた化身アゲハを利用して人々を屋敷に迷い込ませることで恐怖の愉悦に浸った。敢えて脱出方法を謎かけ、探索者に希望を与えつつ、巧妙に死へと誘うことで絶望を与える。希望と絶望に揺らぐ人々が織りなす恐怖の螺旋を紡ぎ出すことをニャルラトホテプは続けていた。そんな邪神にとって次なる獲物は此度の探索者に他ならないのであった。

 

 

 

シナリオの目的とエンディング

 目的:探索者は山奥の館に閉じ込められてしまう。この館からの脱出がシナリオクリアの条件である。ニャルラトホテプはヨグの召喚の儀式が不完全に終わったためにあらゆる次元に繋がってしまった胡蝶の遺体を介して自らの力を強め、この館を作り出している。つまりニャルラトホテプを撃退、あるいは胡蝶の遺体を火葬することにより、ニャルラトホテプを弱体化できればシナリオクリアとなる。エンディングについて下に記しておく。

 発狂エンド:永続的に発狂してしまった探索者は森に放たれ、ゾンビのように森の中を徘徊することになる。幸運ロールに失敗したなら宇宙からの色によって変貌した動植物に生きたまま全身を喰いやぶられ、死ぬかもしれない。しかし、幸運ロールに成功した場合はうまいこと保護され、残りの一生を療養施設のベッドで過ごすことになるかもしれない。

 時間切れエンド:館の明かりが消え、暗い部屋に潜んでいた宇宙からの色が現れる。探索者は戦うこともできるがおそらく為すすべもなく殺されてしまうだろう。宇宙からの色のデータについてはルールブックを参照。

 死亡エンド:何らかの理由で死亡してしまった探索者は目覚めると陶器フィギュア、あるいは食器など館で見かけた置物になってしまっている。そこに現れた赤の女王(実はニャルラトホテプ)が探索者を粉々に砕き探索者は全身に激烈な痛みを感じる。しかしどれほど粉々にされても探索者の意識は途切れず、おそらく永遠にこの痛みに耐え続けないといけないこととなるだろう。粉々にされた探索者は館の飾り棚や食堂などにばら撒かれる。あの血の噴出する陶器や食器たちは今までのこの館の犠牲者だったのだ。

このエンディングはつまるところニャルラトホテプに魂を囚われてしまったということ。探索者のうち誰か一人でも胡蝶を火葬し、このニャルラトホテプの弱体化に成功すれば、死亡した探索者もこの状況から解放され、真っ当に成仏できるだろう。

 バッドエンド:アゲハを殺し、ニャルラトホテプを退散させた時、一時間だけ逃げ出す機会を得られる。(ここで発狂した場合は発狂エンド。一時的発狂をしてしまい時間のみが経過した場合は館から逃げ出せず、探索続行。探索続行の場合は胡蝶の遺体を火葬することで脱出可能。正気の状態の探索者のみこの逃げ出す機会を得られるがこの時一時的発狂した探索者を連れて逃げることも可能)逃げ出すことのできたPLは後日死んだはずのアゲハに後ろからナイフで刺され死んでしまう。このアゲハはニャルラトホテプが作り出した二人目のアゲハである。探索者はニャルラトホテプとアゲハ両方の恨みを買ってしまうがためにこのようなエンディングを迎える。

 ノーマルエンド:通常の脱出方法として胡蝶の遺体を火葬する(つまり焼く)ことでニャルラトホテプの力が弱まり館の扉から脱出できるようになる。館はそのまま燃え落ち、探索者はその様子を遠くから見ることができる。このエンディングではニャルラトホテプはアゲハの身体に留まり続けることなる。無事脱出できたPL達はニュースなどでこの宇宙的恐怖がまだこの次元を去ってないことを知り、シナリオは幕引きとなる。(例えばアゲハが凶悪犯罪の容疑者として指名手配されるなど)なおバッドエンドのようにアゲハが探索者を襲いに来ることはなく、探索者は平穏な日常を送れる。

 トゥルーエンド:クトゥグァを呼び出し、その炎で胡蝶の遺体を焼き払ったならばこの館を脱出できる。うさぎのぬいぐるみを連れている状態で召喚すればSAN値チェックを回避できるため逃げ出すことも可能。アゲハの魂も解放され、正気に戻ったアゲハにこの館で起こっていたことの全容を教えてもらえる。アゲハに深く感謝される探索者。無事平穏な日常に戻ることができ、アゲハという友人も得られる。

 

 

 

NPC紹介

・アゲハ

 鳴滝院 胡蝶(なるたきいん ひひる)の写し身。とても美しい女性。30も手前だろうが18歳に見える。実は魂の囚われた鳴滝院胡蝶に似せて、ニャルラトホテプが作り出したニャル様の化身。クトゥグアの炎によって胡蝶の遺体を焼くことで彼女の魂に巣くうニャルラトホテプを追い払い、アゲハを開放することができる。これがトゥルーエンド。

 胡蝶に似せて作ったが思いのほか強い意志を持ち合わせており、ニャルラトホテプから完全に支配を受けているわけではない。正気の状態では自分の中にもう一つの意思が巣くっていると感じ、怯えている。またこの館に迷い込んだ人々のために脱出のヒントとなるメモ書きを残している。しかしニャルラトホテプはそのメモ書きを面白がっていろんなところに隠してしまい、直截な表現のメモは全て捨ててしまっているようである。

 本シナリオではトゥルーエンド以外で彼女が正気に戻ることはないが、探索者を故意に罠に嵌めようとする様子も見られない。むしろニャルラトホテプからの支配に抵抗しているのか、探索者をできるだけ助けようという意思すら垣間見られるところからも彼女の強い意志が読み取れる。

 基本的にステータスはルールブック準拠の人間状態ニャルラトホテプである。探索者についていくだけで何もしないため特に能力は振らないがキャラシートを作成し、探索者に協力させることも可能。どのような能力なのかはキーパーの自由であるが、ニャル様の化身ではないかとPLが疑心暗鬼しそうな不自然な雰囲気を出すのが望ましい。

 もし探索者アゲハを殺そうとする場合、彼女は必死に命乞いをする。場合によっては、探索者が罪悪感を抱くほどである。もし殺した場合、ニャルラトホテプ本体が死体から現れるが、何もせずに消える。無論SAN値チェックあり(ルルブ参照)。

 客室1の天井が開くと同時に探索者の前から姿を消し、トゥルーエンドで脱出できた場合は車の止めてある場所で再会する。

 

・うさぎのぬいぐるみ、ふわふわうさこちゃん

 30センチくらいのミッフ〇ーのぬいぐるみ。ふわふわもこもこ動く。断末魔以外で声を出すことはない。

 実は胡蝶が身籠った娘の魂が乗り移っており、ニャルラトホテプに囚われた母親の魂を救うべく探索者を導く。蜉蝣の計画としてはカッコウのようにこの娘とヨグの落とし子をすり替える予定だったが、宇宙からの色により計画は阻止され、母娘の繋がりを保つことができたが宇宙からの色の影響で衰弱死してしまう。ニャルラトホテプによって母娘の魂は囚われてしまい、娘の魂はホールにある水槽の中に閉じ込められてしまう。

 このうさぎのぬいぐるみは彼女の父である九出葵の作った絵本にでてくるうさこちゃんである。

 あくまで動くぬいぐるみなのでステータス、能力は振らないがアゲハ同様協力者扱いとして振ってもいい。

 クトゥグァ召喚の際にSAN値減少をすべて回避してくれる超便利もといご都合キャラ。

 このぬいぐるみが何らかの理由で破壊された場合、断末魔の叫びを上げて血が噴出し、ぬいぐるみの機能は停止してしまう。クトゥグァ召喚の際のSAN値減少回避もできなくなる。中に入っていた魂はその場に留まるが探索者には知覚できなくなるだろう。

ぬいぐるみに入っている魂は館が燃え落ちると同時に解放される。

 このシナリオをクリアしたとき手元にこのぬいぐるみがいるなら、探索者はそのまま持ち帰ることができる。

 またトゥルーエンドを迎えた場合、このうさぎのぬいぐるみはアーティファクトとしての機能を与えられる。このぬいぐるみを抱きしめると一回の冒険につき一度だけ減少したSAN値を1回復させられる。ただし上限以上は回復しない。また抱きしめることで一回の冒険につき一度だけ一時的狂気を回復してくれる。この二つの効果の回数制限は別個であり、どちらか一方の効果を使うともう一方の効果が使えなくなるというわけではない。つまりこのぬいぐるみを抱きしめることで一度の冒険につきSAN値回復と一時的狂気回復のチャンスを各々一回ずつ得られるということである。この効果はその冒険で出会った探索者全員に適応でき、探索者ごとに一回ずつこれらの効果を得られる。このアーティファクトとしての機能を持つうさぎのぬいぐるみはトゥルーエンドに辿り着いた探索者のうち最も活躍した(あるいはこのぬいぐるみと仲良くしてくれた)一人のみが手に入れられる。

 本シナリオにおいてもぬいぐるみに魂が宿っている間はこのアーティファクトとしての機能を有しているものとする。

 効果が強すぎると感じたキーパーはこの効果を変更してもよい。

 胡蝶の遺体を火葬したときに館の出口まで袖を引っ張って案内してくれるので最後の場面までには是非とも探索者に持たせておきたい。

 

 

導入

 場面は11月。同窓会で久しぶりにあった探索者とアゲハ。(探索者が本来知っているのは胡蝶。探索者はアゲハを胡蝶だと思い込んでおり、その勘違いには気が付かない。名前まで変わっていればさすがに気が付きそうなものだがニャルラトホテプによって幻惑されているのである。自由にアゲハと探索者の関係は変えてもよいが探索者はどういう形であれ学生時代の胡蝶を知っているほうがよいかもしれない。真実を知ったとき探索者はよりショックを受ける可能性があるからだ。今回は一例として同窓生としておく)同窓会の帰り、終電を逃した探索者たちはアゲハとともに山の中を車で走っている。探索者の中で運転できるものがいればその探索者に運転させてもよいし、いなければアゲハ自身が運転してもよい。

 薄気味悪い雰囲気になってきた森の中でアゲハは怪談話を始める。「こんな話をご存知ですか? この辺りでは最近虹色の火の玉が見られるそうなんです。それからというもの異形の動物が現れ、植物が奇妙にうねり、不気味な人影が徘徊しているそうです。地元の人たちはすっかりここを恐れて近寄らなくなったそうですが時々、旅行者がこの近くを通ってふと消えてしまうそうです。そしてその人が一体どうなってしまったのか、だれにも分からないとか。なぜなら誰も戻ってこないから。噂によるとこの現象、この森の奥にある大きな館を中心に起こっているそう。館の周りには本来自生することのないうさぎ苔がたくさん生えていて、地元の人たちは『うさぎの送り火』なんて言って恐れているそうですよ」

 怪談話が終わると同時に車は急に止まってしまう。ガソリンも残っておりつい先ほどまでは異常もなかったはずのに。ここまで導入。導入からRPさせてもよい。

 

 

 

 途方に暮れる探索者たちにアゲハが森の奥に明かりが見えたと言う。彼女はそこに向かうことを提案する。探索者がなかなか彼女の提案に乗らない場合は宇宙からの色による犠牲者が出現。(実はこの犠牲者というのは胡蝶の夫、九出葵である。ニャルラトホテプの傀儡となっており、自分の愛する妻と娘の魂が辱められていることも知っている。身体はすでに朽ちており。いわばゾンビ状態である。見た目についてはルールブックの宇宙からの色の項目を参照)とても弱っており、戦闘したら自動勝利。探索者を非常に緩慢な足取りで追いかけてくる。逃げる選択をした探索者は難なく逃げ延びられるだろう。逃げる探索者には聞き耳ロール。成功で「いあすうここからあれ(今すぐここから去れと言っているが舌も唇も枯れ果てており活舌が悪い。日本語が90以上ある探索者なら彼が何と言っているのかが自動的に分かるものとしてキーパーは教える)」という声が聞こえる。健気にも九出葵はこの地に連れてこられた人々に屋敷に行かぬよう警告しているのだ。屍となっても他者を顧みる九出葵の底抜けな人の良さが分かる。とはいえSAN値チェック1/1d8。ここで探索者が一時的発狂に陥ってもアゲハが探索者を引っ張り、館まで連れて行ってくれる。一時的発狂はその間に解けるものとする。

 明かりのほうに向かう道中、全員に聞き耳ロール。成功で不気味な獣の鳴き声が聞こえる。目星を振る探索者もいるかもしれない。その場合、六本足に三つ目の犬らしき生物を見てしまう。(宇宙からの色で変貌してしまった野犬)アイデアロール成功でその生物を本物と確信し、SAN値チェック1/1d3。また探索者全員が、森全体が奇妙にうねり、わずかに極彩色に発光しているように感じる。ガイガーカウンターで調べると通常より放射能値が高いことも分かる。アゲハの先導に従って歩き続けるとやがて館の前に出る。

 

館の外装

 二階建ての大きな館で、窓は曇っており外から中の様子は確認できないが明るいことはわかる。館は華美な装飾はないにしろ、いかにもお金をかけて作られたであろう美しい建築物であるという風に探索者は感じる。しかしながらなんだか不気味だとも探索者は感じるだろう。中央に観音開きの扉がありここから中に入れそうである。窓は見た目よりも堅牢なつくりのようで表面に傷をつけられるが割ることはできなさそうである。

 

 

 

館全体のギミック

 時間制限があり、12時間である。一時間ごとに二階の廊下中央に置いてある置き時計が鳴り、時間を知らせてくれる。この音は館のどこにいても聞こえる。12回目に時計が鳴ると館中の電気が消え、明かりを嫌って部屋に隠れていた宇宙からの色が現れる。戦うことも可能だがおそらく勝つことは不可能なので実質シナリオクリア失敗である。

 時間経過は大体一つの部屋で長々と探索して一時間くらいで手短に済ませたなら30分もかからないくらい。娯楽室と図書室を除く8部屋で5~6時間ほど。図書室で本を調べるとき図書館ロールを成功させると30分で調べがつき、図書館ロールに失敗すると1時間かかる。娯楽室のゲームが長引くことも考えると順調にいっても8~10時間かかる。図書館ロールに失敗すれば12時間以上かかってしまうかもしれないので館からの脱出が厳しくなる。館内では6~10時間以上経過することになるが館の外ではほとんど時間は経過せず、館の外に脱出したとき周りはまだ真夜中である。

 キーパリングに自信がなければ時間制限ギミックをなくしてもよい。

 

館の内装

 館の窓は外から見たときは曇っていたが中から見ると外の様子が見える。しかしどのような手段をとっても開けることはできない。扉も同様に開かない。無論破壊もできない。扉から入ってすぐのホールや廊下、階段には赤い絨毯が敷き詰められている。館全体の照明は間接照明で薄明かりである。意匠の凝らした装飾がそこかしこになされており、この館の主は非常にお金持ちであることが察せられる。

 

 

 

一階

 

廊下

 ホールから左右に伸びる長廊下。突き当りには窓がついている。窓からは鬱蒼とした森が見える。

 

ホール

 両脇には四分円状の二回に続く階段がある。中央に立て看板があり、右手側に飾り棚、左手側に地図が掛かっている。地図の横には巨大な水槽が台座の上に置かれている。ホールは華美な装飾に彩られ、荘厳な雰囲気である。間接照明のおかげで暗くはないが、明りが弱弱しく感じる。

 ホールの奥に観音扉が見え両側に廊下が伸びていることもわかる。

・立て看板:「ようこそ」と書いてある。

・飾り棚:陶器フィギュアや皿が飾られているが、全部壊れており血塗れである。ここで目星を行っていない場合、もしくは目星失敗ならSAN値チェック0/1。目星に成功した場合、陶器の断面から血が溢れていることに気付き、無機物であるはずの陶器が出血していることが分かってしまう。SAN値チェック1/1d3。

ひひるはこの棚を見て綺麗だと言う。どうやら彼女からはこの棚のものは壊れているように見えないようである。

棚の下にはメモが挟まっている。棚への目星に成功した探索者、もしくは棚の下に注視した探索者はこのメモを手に入れることができる。メモには「うさぎの導きに従いなさい アリスより」と書いてある。さらに目星の成功によりメモを手に入れた探索者に限り、そのメモの筆跡に見覚えがあるように感じる。

・地図:探索者はこの館の間取りを把握できる。

 画像:一階

【挿絵表示】

 二階

【挿絵表示】

 

・巨大な水槽:人が一人入っても余裕のありそうな巨大な水槽。中身は濁っている。目星成功で中に胎児とへその緒らしきものを確認できる。アイデアロール成功で探索者はそれが本物であることを確信しSAN値チェック0/1d3。

 水槽は美術品のように台座に置かれており、その作品の題名なのか「個体発生は系統発生を繰り返す」と書かれたパネルが下に掛けられている。さらにパネルの横にはダイヤル(コンポの音量調節や金庫についてるダイヤルみたいな形状)とボタンがあり、ダイヤルにはそれぞれ魚、蛙、鳥、兎、胎児のシルエットが描かれている。最初は胎児のダイヤルに設定されている。

 ここで生物学に成功した探索者は「ヘッケルの反復説」を思い出す。その説とは、胎児の発生過程においてその形態は生物の進化を辿る、というものでありパネルに書かれた文言はこのことを指すのではないかということに思い至る。

 魚のダイヤルに合わせてボタンを押すと水槽の濁りの中から深きものが出現し、すぐに濁りの中に消えてゆく。SAN値チェック0/1d6。

 蛙のダイヤルに合わせてボタンを押すと水槽の濁りの中からツァトゥグァが出現し、すぐに濁りの中に消えてゆく。SAN値チェック0/1d10。

 鳥のダイヤルに合わせてボタンを押すと水槽の濁りの中からビヤーキーが出現し、すぐに濁りの中に消えてゆく。SAN値チェック1/1d6。

 兎のダイヤルに合わせてボタンを押すと水槽が割れ、中からミッフ〇ーのぬいぐるみが現れる。うさぎのぬいぐるみは起き上がると探索者についてくるようになる。可愛い。

 胎児のダイヤルに合わせてボタンを押すと水槽の濁りの中から胎児とへその緒が出現し、すぐに濁りの中に消えてゆく。SAN値チェック0/1d3。ただし、事前に目星とアイデアロールを成功させ、水槽の中に胎児がいることを把握している場合SAN値チェックは起こらない。

 

食堂

 ホールの奥の観音扉から入ることができる。この扉に聞き耳を立てると何者かが何かを食べ散らかす汚い音が聞こえる。

 長机が3つ並んでおり、割れた食器、ナイフやフォーク、スプーンがその上に散乱している。それらはホールの飾り棚同様、すべて血塗れである。椅子もすべて壊れており、座れそうにない。またそこら中にクッキーか何かの食べかすが散乱している。(実はタルトの食べかすである。お菓子制作などの技能ロールを振るとタルトの食べかすじゃないかという推測ができる)ホールの飾り棚を見ている探索者は慣れもあってSAN値チェックは起こらない。飾り棚を見ていない探索者はSAN値チェック0/1。

 食堂の左手奥側に女性の絵が描かれた扉が見えそこから調理場に入ることができそうである。

 長机の上にはそれぞれクロッシュ(メインディッシュにかぶせる釣鐘型の蓋)が中央に置いてあり、左から順にトランプ一式、籠の中の生きている太った蛙、鍵穴の描かれており開くことのできないマッチ箱。トランプは調理場に続く扉を開けるためのアイテムで目星を振り、成功するとハートのジャックの口元に食べかすがあることを確認できる。太った蛙は解剖することで胃の中から大量のナメクジを手に入れられる。鍵穴の描かれたマッチ箱は鍵穴に鍵を差すことで開くようになる。鍵穴に触ると穴があることが分かるが箱の中は見えない。鍵開けで開けることが可能。

 長机の裏に「ハートの女王はご立腹、怒りを鎮めるにはどうすればいいの? アリスより」と書かれたメモが貼ってある。目星成功か机の裏を覗いたならばメモを手に入れられる。ハートの女王とは扉に描かれた女王のこと。彼女の作ったタルトをハートのジャックに食べられ、怒っていることを意味する。

 調理場に続く扉には豪奢な服を着飾り、怒りの表情を見せる女王と思われる女性の絵が描かれている。鍵穴などはなく、鍵開けは使えそうにない。目星成功でこの女王の絵がトランプのスペードの女王に似ていることが分かる。(不思議の国のアリスの原作絵でハートの女王はなぜかトランプのスペードの女王のような服装をしている)

 絵の中の彼女はギロチンの縄に手をかけており、もし彼女が手を離せばギロチンの刃は落ちるだろうことも分かる。扉への目星に成功した探索者もしくはギロチンに注視した探索者はギロチンの首を通す部分にカードを一枚差し込めるくらいの穴を見つける。この穴にトランプのハートのジャックを差し込むと女王の絵が動き出し、ギロチンの縄を手放す。同時にギロチンの刃が落ち、ハートのジャックは首が切れて首と胴から血が噴出する。飾り棚で目星を振りアイデアロールまで成功している探索者は無機物から血が出ることを知っているためSAN値チェックが起こらない。それ以外の探索者はSAN値チェック1/1d3

 ハートのジャックの首が落ちると同時にこの扉は開く。

 

調理場

 食堂同様、荒れ果てた様子で夥しい量の血と割れた調理器具で散乱している。状況に慣れたためSAN値チェックはなし。探索者は調理台の上に唯一まともな状態で置いてある器具を発見する。それは調理場には似つかわしくない解剖キットと解剖マットである。ここで蛙の解剖が行える。

 手元にジエチルエーテルがある場合は蛙に麻酔をかけることができ、解剖が行えるようになる。ない場合は蛙を解剖しようと思っても蛙が逃げ出してしまい、解剖が行えない。ただし、蛙を何らかの方法で原形をとどめた状態で殺せた場合、解剖を行える。原形をとどめない殺し方をしてしまった場合ナメクジが手に入らず、シナリオクリアの難易度が上がってしまう。

 手元にジエチルエーテルがない時点で医学、生物学、博物学などのロールに成功した場合、蛙に麻酔する必要があることに思い至る。

 蛙に麻酔が掛かったのち、医学、生物学、博物学のどれかでロールし、成功すれば解剖が成功する。ロールに失敗した場合でも解剖は行えるが蛙は見るも無残な姿になる。解剖学の本を読んだ探索者は自動成功する。解剖学の本を読んでおらず、なんの学術ロールも振らずに解剖を試みた場合は自動失敗する。解剖に成功した探索者はカエルの胃の中から大量のナメクジを手に入れる。失敗した場合、蛙をめちゃくちゃにしてしまい、気分が悪くなってSAN値が1d3減るが、大量のナメクジが手に入る。

 

使用人部屋

 扉に絵本の挿絵と思われるデフォルメされた象の絵が描かれており、その下に「そのまたあとは ぞうでした。なんて ぞうは おおきいんでしょう。『ふわふわうさこちゃん ぞうが はなを のばしてる。おまえの ばななを やってごらん』」と書かれている。

 中に入ると部屋の中央に巨大な象のような石像が置かれている。ひどく歪な形で顔から大量の触手が生えている置物のようにも見え、その触手に六人の人型の石像が触れている。また人型の石像は触手に触れている手と逆の手で目を覆っている。

 それぞれ触手には何かを乗せることができそうである。目星に成功した探索者もしくは人型の石像の背面に回った探索者はこの人型の石像にはそれぞれ小さく血文字で柱、綱、木の枝、扇、壁、パイプと書かれている。

 このうち木の枝と書かれた石像が触れている触手に客室2で手に入る知恵の実を置くと客室1の天井、つまり娯楽室の床半分が開く。その時その上に探索者が立っている場合客室1に落ちてしまい、落下ダメージを受ける。また扉のない客室1から一人では抜け出せなくなる。この場合ロープなどで引っ張り上げてもらう必要がある。

 また娯楽室の床が開くと同時に(もしくはその前後で)アゲハは行方不明となる。

 それ以外の触手に知恵の実を置いてしまうとその触手に触れている石像が動き出し、襲い掛かってくる。この石像とはチョーチョー人である。

 

チョーチョー人

ステータス

STR(筋力) 11 CON(体力) 8 POW(精神力) 10

DEX(敏捷性) 17 APP(外見) 14 SIZ(体格) 9

INT(知性) 18 EDU(教育) 8

SAN(正気度) 0 幸運 50 アイデア 90 知識 40

耐久力 8.5 マジックポイント 10 ダメージボーナス 0

能力

回避 60 キック 70 組み付き 70 こぶし(パンチ) 60

頭突き 60 投擲 70 マーシャルアーツ 56 隠れる 40

他初期値

 

 象の石像はチャウグナーフォーンの像である。不活性状態のチャウグナーフォーンではなく、ただの作りものであるため、SAN値チェックはない。

 

客室1

 この部屋には扉がなく通常はどこからも入ることができない。(地図上は扉があることになっているが実際に扉のもとへ向かっても壁しかない)この中に胡蝶の遺体と宇宙からの色が潜んでいる。強い光に弱い宇宙からの色は館全体の照明が消えない限り照明のないこの部屋から出てくることはない。

 使用人部屋のギミックを解除することで天井が開き、床の抜けた娯楽室から中の様子をうかがうことができる。(その際、アゲハは探索者の前から姿を消す)娯楽室は光が強く、宇宙からの色は天井が開くと同時に遺体の陰に隠れてしまうので娯楽室からこの部屋を見下ろした探索者は宇宙からの色を視認できない。遺体を裏返すと宇宙からの色が出現するが、探索者が積極的に攻撃しない限り宇宙からの色は光を嫌がり、戦闘を仕掛けてくることはなく、すぐに遺体の影に逃げ込む。(ただし目撃によるSAN値チェックあり。宇宙からの色のステータスはルルブ参照)

 娯楽室から遺体に目星成功でその遺体が女性のものであること。どうにかして(服を何枚も縛ったりシーツを使ってロープ代わりにするなどして)客室1に降り、遺体近くで目星成功するとどうやらその遺体はどことなくアゲハに似た雰囲気の女性の遺体であることが分かる。宇宙からの色によって変性した遺体である。詳しい描写はルールブックの宇宙からの色の項にも記載されているので参照されたし。

 無論遺体を見てしまったことによるSAN値チェックがあるが、森や書斎で宇宙からの色の犠牲者を見た者はSAN値チェックなし。SAN値チェック1/1d8

 客室1にジエチルエーテルと火のついた綿や火のついたマッチを投げ入れることでこの部屋が燃え上がり、グッドエンド。ここでクトゥグァを召喚したならばトゥルーエンドとなる。

 クトゥグァの召喚の際、近くにうさぎのぬいぐるみを連れている場合、ぬいぐるみが強い光を放ち、召喚によるSAN値減少、クトゥグァを見てしまったために起こるSAN値減少を回避してくれる。

 遺体を火葬したらミッフィーが探索者の袖を引っ張り、館の外まで導いてくれる。その後ぬいぐるみは動かなくなる。

 グッドエンドならアゲハは現れず、探索者はアゲハを残して脱出。シナリオクリア。

 トゥルーエンドなら正気に戻ったアゲハが現れ、事件の真相を告げてくれる。シナリオクリア。

 

客室2

 扉には蛇、蛙、ムカデが描かれており、それぞれ蛇から蛙、蛙からムカデ、ムカデから蛇に向かって矢印が出ている。知識ロールを行い、成功したならばこの絵が三竦みの図であることが分かる。またその下に「知恵の樹にてジャバウォックは待つ」とかかれたパネルが掛けられており、さらにその下に穴が開いている。扉に聞き耳を立てると何かがバサバサと羽ばたく音が聞こえる。穴を覗くと広い草原に翼の生えた蛇のような生物が飛んでいるのを見てしまう。SAN値チェック0/1d10。

 中は室内であるにもかかわらず草原が広がり、一本の木が見える。その木の周りでニャルラトホテプの猟犬、忌まわしき狩人が飛んでいる。忌まわしき狩人が守っていたのは知恵の樹。探索者はここでリンゴのような果実、知恵の実を得られる。

 穴にナメクジを流し込むと忌まわしき狩人はその場を去る。ナメクジがない場合でも探索者が複数人いる場合は、誰かが忌まわしき狩人と戦っている隙に知恵の実を取りに行くことも可能である。

 知恵の実は見た目はリンゴとよく似ている。非常に美味しそうに見え、長い間見つめているとPOW×5の対抗ロールが発生する。この対抗ロールに失敗すると探索者は知恵の実を囓ってしまう。知恵の実を囓った探索者は急に服を着ているのが恥ずかしくなり、頑なに全裸になろうとする。時間が経過すると正気に戻り(どのくらい経って正気に戻るかはキーパー次第)その時全裸で周りに人がいる場合は恥ずかしさからSAN値0/1減る。異性がいる場合は1/1d3になるかもしれない。このSAN値チェックはPCのRPやPC同士の関係性など、状況によって増減するだろう。(一般的な知恵の実と逆の作用が働く、知恵の実というより愚鈍の実)

 

 

 

二階の部屋

 

二階の窓

 探索者は森に視界が遮られず、南の空に星が輝いていることがわかる。天文学をロールした探索者はその星がフォーマルハウト星という名の一等星であること。秋の南天唯一の輝星として日本でも“秋星”などの和名で知られていること。星座としては魚の口に位置し、みずがめ座 の水瓶からこぼれ落ちた水が、フォーマルハウト、つまり,魚の口へと注ぎ込んでいることなどを思い出す。

 

廊下

 階段を上って長廊下の中央部分に大きな置時計が置いてあることが分かる。探索者は一時間ごとに鳴っていた鐘の音はこの時計によるものではないかと推測できる。この時計を開ける、もしくは目星成功で時計の中からメモを発見できる。メモには「ジャバウォックは蛇のよう。蛇は卵が大好き。嫌いなものは…… アリスより」と書かれている。……の部分は掠れて読めない。

 廊下の両方の突き当りには一回同様窓がある。

 

図書室

 扉に「学無き全ての者への救済とならんことを」と書かれたパネルが掛けられている。(目星を失敗していたり、謎解きがうまくいっていない、学術ロールを持っていない探索者にヒントを与える場所。ここで本を見つけなくともシナリオクリアできるようにキーパーがうまく誘導することで与えるヒントを最小限に抑えることも可能)

 図書室にはあらゆるジャンルを網羅した膨大な量の書物が置いてある。

 本棚は天井にまで伸びており、梯子で登らないと一番上の本は取れそうにない。大量の本棚が並ぶ図書室だが部屋の中央には読むための机と椅子、そして机の上にはうさぎの剥製と巣穴を模した物が飾られている。この巣穴に目星を振って成功した場合、もしくは書斎の蜉蝣の日記を読んでいた場合は巣穴の中に気味の悪い古めかしい本があることが確認できる。

 図書館ロールに成功した場合は一冊につき30分で、失敗した場合は1時間経過する。複数人の探索者が手分けして図書館ロールを行った場合、より短い時間で済むかもしれない。一度学術ロールあるいは知識ロールを振ったことで関連した知識を得ている場合は短時間で見つけられるものとして時間経過はほとんどしないものとする。この図書館では今まで見てきたものと対応しそうな本を見つけてくることができる。逆に探索者が遭遇していないことに対応した本は見つけることができない。下に探索者が出会うイベントとそれに対応する本を挙げる。

 

食堂に行ったことがある場合:不思議の国のアリスを見つける。その11章に「ハートの女王 タルトつくった 夏の日 1日中かけて ハートのジャック タルト盗んだ タルトを全部もってった」という詩を見つける。またトランプを持っている場合、ハートの女王の姿がトランプの柄でのスペードの女王に似通ってるという印象を受ける。

 

調理場に行ったことがある場合:解剖学の本を見つける。蛙の解剖の仕方が分かるようになる。また解剖の際、カエルに麻酔をする必要があることを知る。

 

使用人部屋に行ったことがある場合:「群盲象を評す」という題名の絵本を見つける。絵本の中身は下記のようである。

 

ある国の王様が6人の盲人を集め、ゾウに触れさせた。次に王様は各人にそれが何だと思うかと問うた。足を触った盲人は「柱のようです」と答えた。尾を触った盲人は「綱のようです」と答えた。鼻を触った盲人は「木の枝のようです」と答えた。耳を触った盲人は「扇のようです」と答えた。腹を触った盲人は「壁のようです」と答えた。牙を触った盲人は「パイプのようです」と答えた。それを聞いた王様は答えた。「あなた方は皆、正しい。あなた方の話が食い違っているのは、あなた方がゾウの異なる部分を触っているからです。ゾウは、あなた方の言う特徴を、全て備えているのです」

 

客室2の扉のパネルを見ている場合:旧約聖書の解説書を見つける。旧約聖書の創世記によると知恵の樹とは善悪の知識の樹とも呼ばれていること。そして知識の樹になる実は神により食べることを禁じられていたが、蛇に唆されたイブがアダムを誘って二人で食べてしまい、恥じらいを知ってしまったことを知る。また知恵の実はリンゴであるという俗説がある他にイチジクあるいはバナナであるとする説もあることを知る。

 その他に鏡の国のアリスを見つけてくる。鏡の国のアリスにはジャバウォックの絵が描かれており、翼の生えた蛇のようなドラゴンであることが見てとれる。キーパーはググってジャバウォックの画像を準備しておくとよい。

 

客室2の扉のパネルを見ている、もしくは置き時計の中のメモを読んでいる場合︰三竦みの語源に関することが書かれた本を見つける。三竦みとは中国の周の時代の書物「関尹子(かんいし)」に書かれた「螂蛆食蛇、蛇食蛙、蛙食螂蛆、互相食也」という一文に由来すること。これはつまり「ムカデは蛇の脳を食べ、蛇は蛙を食らい、蛙はムカデを食す」ということであるが、ムカデを指す「螂蛆(ろうそ)」を「蛞蝓」(ナメクジ)と勘違いしたという説と「本草綱目(=中国から日本へ伝わった薬学の本)」という書物ではムカデはナメクジに触れると死んでしまう、という内容が記されているため、これをもとに日本人が中国版三すくみのムカデをより強いとされているナメクジに置き換えた可能性があるという説があることを知る。

 

娯楽室でジエチルエーテルを手に入れている場合:ジエチルエーテルに関する本を見つける。ジエチルエーテルの分子式がC4H10Oであること。ジエチルエーテルを綿に含ませて蛙に咥えさせることで麻酔をかけることができること。またジエチルエーテルは極めて発火しやすいことを知る。

 

書斎の扉に掛けられていた「赤の女王の部屋」と書かれたパネルを読んでいる場合:鏡の国のアリスを見つける。「鏡の国のアリス」:赤の女王に会おうとしたアリスはいくら追いかけようとも追いつくことができなかった。そこで彼女は後ろ向きに歩くとすぐに追いついた。赤の女王と出会ったアリスはこの世界がチェス盤であることを知り、ポーンとして参加することを希望する。本当は女王になりたいとアリスが言うと8升目まで移動すれば女王になれるだろうと赤の女王はアリスを連れて走り出す。しかし、いくら走ってもその場所から進めない二人。アリスは言う。「わたくしどもの国では、ふつうはどこかよそにたどりつくんです――もしいまのわたしたちみたいに、すごく速く長いこと走ってたら」それに対して赤の女王は答える。「グズな国じゃの! ここではだね、同じ場所にとどまるだけで、もう必死で走らなきゃいけないんだよ。そしてどっかよそに行くつもりなら、せめてその倍の速さで走らないとね!」

 

書斎で日記を読んでいる場合︰日本語訳されたネクロノミコンの写本の隠し場所を発見する。うさぎの剥製の隣にある巣穴を模した穴の奥に置かれており、覗き込めばそこにあることが確認できる。しかし手が届きそうにない。うさぎのぬいぐるみに取りに行かせることで入手できる。ネクロノミコンを手に取った探索者は表紙からもそれを読むと大変な恐怖体験をするだろうと感じる。ネクロノミコンを読んだ探索者はSAN値チェック1d10/2d20。クトゥルフ神話に+16%。ネクロノミコンにいくつか赤いインクで印がついている。一つは《ヨグ=ソトースの招来/退散》のページで印の色は薄く随分と前につけられた印であることがわかる。またヨグソトースの説明が書かれたページにも同様の印がついている。そのページには「『外なる神』が住まう外宇宙への門こそヨグ=ソトースである。門の鍵にして守護者であり、宇宙の秘密そのもの」と書かれている。

 また古い印とは別にまだ新しいと思われる印のついたページを見つける。そこには《クトゥグァ、生きている炎の招来/退散》の呪文が書いてある。それによると「クトゥグァを召喚するものはフォーマルハウトが地平線上にある時、この句を三回唱えなければならない。 フングルイ ムグルウナフ クトゥグア ホマルハウト ウガア=グアア ナフル タグン! イア! クトゥグア! 」と書いてある。

 

 

娯楽室

 今までの雰囲気と打って変わってかなり照明が強く明るい。

 入ってすぐ手前にスロットマシンと小さな机、奥の方にダーツの的とその手前にも小さな机がある。部屋の隅には景品箱が2つ置いてある。景品箱にはコイン入れが備え付けており、それぞれの遊具を遊ぶことで手に入るコインで中の景品が手に入る。

 スロットマシンの脇にある机の上には「スロットの遊び方」と題されたメモ用紙が置いてあり裏返すと、「7を三つ揃えよう!」と一言書いてある。

 スロットマシンの遊び方︰幸運ロールを三回振る。三回とも成功で7が三つ揃うものとする。何度でもやり直しがきくが何度も失敗するようなら時間が経過してしまうかもしれない。どれくらい時間が経つかはキーパーの裁量次第。ちなみにアゲハにこのスロットマシンをやらせた場合、彼女は幸運が500のため(人状態のニャルラトホテプのPOWは100である)一発成功である。7が三つ揃うとコインが一枚だけ取り出し口に出てくる。スロットマシンで得たコインを景品箱の横についたコイン入れに入れると箱の中からC4H10Oと書かれた瓶と大きめの綿を手に入れられる。

 ダーツの遊び方︰ダーツの的の前に置いてある机の上に銀色のケースが置いてある。中にダーツが5本入っており、ケースの隣には「的あて」と書かれたメモ用紙がある。裏返すと「5回中3回当てましょう」と書かれている。投擲の技能ロールを振る。これを5回行い3回成功したなら、ダーツの的の後ろからコインが落ちてくる。これも何度でもやり直すことができるがその分時間が経過する。ダーツでズルするとコインは手に入らない。ダーツで得たコインで景品箱を開けると中から金の鍵が手に入る。この鍵でマッチ箱を開くことができる。

 

書斎

 扉に「赤の女王の部屋」と書かれたパネルが掛けられている。聞き耳を立てるとどんどんと何かを叩きつける音が聞こえる。

 部屋の中は壁、窓、床、家具、天井にまで夥しい数の血の手形がある。部屋の左側に机と椅子がある。右側と正面に窓。右の窓の隣に「赤の女王」という題名の美しい女性の絵が掛かっている。(赤の女王はニャルラトホテプの化身のひとつでもある)机の上に「前が後ろで後ろが前 アリスより」と書かれたメモ用紙。椅子に遺体が座っている。SAN値チェック1/1d8。森で宇宙からの色の犠牲者を見ている探索者はSAN値チェックなし。(この遺体は蜉蝣の遺体である)遺体に目星成功で日記帳を見つけられる。目星成功の上、隠しロールで幸運ロールも成功した場合は寝室の机の鍵が手に入る。

遺体(蜉蝣)のものと思われる日記帳:

〇月△日

ついに計画の時が来た。客室に娘を監禁した。近くに奇妙な隕石が降ってきたらしいが何かの予兆だろうか。

〇月□日

計画を実行するはずだったが、どうやら体調が優れない。娘もだ。このままでは神に捧げるつもりだった胎内の命も危ない……。

〇月×日

失敗だ。思わぬ邪魔が入ってしまった。奴がこの家の住人を食っている。私ももはや動くことができない。私の一番大事なものは図書室に隠しておいたが、いずれこの館に訪れた者が奪っていくのだろう。……好きにくれてやる。誰でもいい。この人の世に災いを。

 

 机から部屋の出口に向かおうとした探索者はいくら歩いても戻れそうにない。走るならDEX×5対抗ロール発生。失敗したら絵の赤の女王から手が伸びてきて叩かれる。叩かれた部分には赤い手形ができる。その状況を初めて見た者はSAN値チェック1/1d3。ただし、食堂から調理場に向かう扉に描かれた絵が動いているところを見たことのある探索者はSAN値チェックなし。叩かれた探索者は耐久に1ダメージ。

 後ろ向きに歩けば何事もなくこの部屋を出られる。

 

寝室

 入って左と正面に窓。左の窓の下にベッドが置かれている。右に机と椅子。今までの部屋と異なり、非常にきれいで掃除がいきわたっている。ベッドに目星成功でベッドの下に卒業アルバムとメモ用紙があるのを発見する。卒業アルバムは10年以上前のものであることが表紙に描かれた卒業年からわかる。卒業アルバムを開くと見た目が今と全く変わらないアゲハの写った写真を見つける。それを知った探索者は場合によってはアゲハを不気味に感じるようになるかもしれない。メモ用紙には「助けて アリスより」と書かれている。

 机には引き出しがあるが鍵がかかっている。机に目星成功か机を下からのぞき込むとメモ用紙発見。「この館を出たければ、火葬しなさい アリスより」と書いてある。書斎で得た鍵で机の引き出しを開けると中から日記(アゲハの日記)が出てくる。

アゲハの日記

△月〇日

 私の中にもう一人の私がいる。怖い。

〇月□日

 私のせいでまたたくさんの人が殺された。

×月△日

 奴にも嫌うものがあるみたい。どうにか調べなければ。

□月□日

 図書室で怪しい本を見つけた。これで奴の嫌いなものが分かった。でももし悪い人があれを手に入れてしまったら……。同じ場所にまた隠しておこう。

 




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