ソードアート・オンライン ──月夜の黒猫──   作:夕凪楓

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この下手糞戦闘描写が世に出されると思うと羞恥で死ねる…( ´ཫ` )


ボスの名は、読みやすさ重視で、この場ではカタカナで表示します。
ガストレイゲイズです。


Ep.9 派手にいこうぜ

 

 

ガストレイゲイズはコチラを視認した途端に、その瞳を光らせる。

初見の動きだが、間違いなく攻撃の準備動作だった。

この場に留まるのは不味い。皆瞬間的にそれを察知した。

 

 

「散開っ!!」

 

 

ボスの目の前は危険と判断し、掛け声と共に攻略組のメンバーは左右に散る。

その刹那、ボスの巨大な瞳から光線の様なものが放たれた。

その光線は先程まで攻略組が固まっていた場所を突き抜ける。

地面からは熱気が漂ってくる。

攻略組のメンバー達は、その攻撃に目を見開いていた。

ボスとの距離はかなり離れているのに、ここまで攻撃を飛ばしてくる。

 

 

「眼からビームとか…」

 

 

アキトは、ボスに向かって走りながら舌を巻く。

それにあの威力。流石ボスと言ったところだ。

ダメージが高そうな上に、特殊効果もあるかもしれない。

防御にステータスをあまり振っていないアキトにとって、あれはまともにも食らうわけにはいかないものだった。

 

 

しかし、それでもアキトは走る速度を緩めない。

分かっていても、この足を止められない。

アキトはティルファングを構え、ボスに迫る。

狙うは目玉。

 

 

(どう見たって弱点!)

 

 

その眼球に、迷う余地無くソードスキルを叩き込む。

 

片手剣突進技<ヴォーパル・ストライク>

 

光り輝くその剣は、そのままボスの目玉に突き刺さり、悲鳴にも似た咆哮がボス部屋に響く。

やはり、眼が弱点なのは間違いない。

アキトは剣を引き抜き、ボスが目を閉じた瞬間、その後ろに回り込む。

その動作の間に、アキトはボスのHPバーを確認する。

その速度に、攻略組の彼らは動く事もせず唖然としていた。

 

 

アキトはその剣を再び光らせ、今度はボスの背面を狙う。

 

片手剣四連撃<バーチカル・スクエア>

弱点の眼を攻めた事で、未だに眼を閉じているボスの背はガラ空きで、その四連撃は直撃だった。

一発、二発、三発。その攻撃が妨害される事なく入る。

四発目が入った瞬間、ボスを中心に四角いエフェクトが迸った。

反撃される前に、アキトはボスから瞬時に離れ、アスナ達のいる後方へ下がった。

ボスのHPバーを確認する。四本あるうちの一本がいい感じに減っている。

そして、今までの自身の攻撃と、ボスへのダメージを考えて、冷静に分析していく。

アキトは、頭を搔きながら後ろに控えるアスナ達に口を開いた。

 

 

「まあ今の見てりゃあ分かると思うが、目玉が弱点だな。後、斬属性のソードスキルよりかは突属性のソードスキルの方がダメージは入る。特に、レイピアと槍使ってる奴らは出番だぜ」

 

 

攻略組は、アキトのその発言と、一人でボスと対峙した後のその態度に驚愕していた。

 

これが、アキトのファーストアタック。

 

ロクな情報が入手出来ない今の状況で、彼の今の戦いで得た情報はあまりにも価値があった。

アスナも、その驚きの色を隠せない。

 

 

(今の…あの一瞬で…?)

 

 

アキトは、弱点と予想される場所とそうでない場所に初めから目星を付け、どの程度ダメージが入るかを確認してきたのだ。

わざわざ属性の違うソードスキルまで使って。

それを、あの一瞬でやってしまうなんて。

 

 

ボス戦のファーストアタックというのは、実は色んな意味がある。

入るダメージ量の確認だったり、その攻撃に対するボスの反応の確認だったり。

分かる情報が多い程良い。

しかし同時に、未だ見ぬボスに初撃をぶつけるのは、恐ろしい事でもある。

ましてや、アキトは恐らくボス戦は初。それも、キリトとヒースクリフといった二大勢力が欠けてから初のボス戦。

アキトは、それを一人で成し遂げた上に、有益過ぎる情報を持ってきた。

そして、自身の行動とボスのダメージ量を照らし合わせ、冷静に分析したのだ。

 

とても、初戦とは思えなかった。

 

 

「ほら閃光、出番だぞ早く行け」

 

「っ…分かってるわよ!」

 

我に返り今度はアスナが走り出す。

唖然としていた攻略組のメンバーも、アスナがボスに向かっていく姿を見て我に返ったのか、声を上げながらボスに向かっていった。

既にダメージから回復したボスは、その眼を大きく見開き、彼らを見渡す。

ガストレイゲイズの威圧に彼らは少したじろいでいるが、ボスの邪眼に映るのは、彼らでは無かった。

見据えるは、先程自身を好き勝手いじめてくれた黒の剣士ただ一点。

 

 

ボスはタンクを触手で掻き分けアキトの方へと向かっていく。

その速度に、アキトは思わず苦笑い。

 

 

 

 

「足も速いのか…いや、足も何も浮いてるんだけど」

 

 

自分にヘイトが集まっているというのに、アキトは余裕綽々といった感じに、剣を肩に乗せ立つ。

その顔は段々とニヤケ顔に変わっていく。

アキトはティルファングを構え、ボスを見据えた。

 

 

何故、自分は今笑っているのだろう。

笑っている場合ではないというのに。

ボス相手なら、震えてもいい筈なのに。

怖がってもいい筈なのに。

 

 

「…漸く…ここまで来たんだ」

 

 

 

 

──この時を、ずっとずっと待っていた。

 

 

──この機会を、俺は一年待ったのだ。

 

 

 

 

「さあ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Episode 9 ── 派手にいこうぜ ──

 

 

 

 

 

「──しっ!」

 

 

迫り来るボスの触手を紙一重で右に躱し、伸びた触手にティルファングを叩きつける。

しかし、ボスは効かないと言わんばかりにその触手の連撃をアキトに放ちに来た。

アキトは、その触手攻撃を躱し、捌き、受けていく。

その表情は真剣そのもの。

STR-AGI型のアキトにとって、その攻撃一つ一つが、まともに受ければ致命傷である。

だが、一人では捌き切れない。攻撃は次第にアキトに当たるようになり、HPはみるみるうちに減っていく。

目玉の怪物と、侮っていては負ける。

こんな時に限ってタゲ取り専門の壁役が来ない。

アキトは痺れを切らした。

 

 

「っ…おいタンク!仕事しろ!」

 

 

重装備のタンクに走る速度は期待出来ない。

自分の発言は無理のあるものだと自覚した。

他のメンバーも、アキトとボスの攻防に割って入れない様子だった。

 

 

しかし、ただ一人。

コチラに向かってくるプレイヤーを視界に捉える。

アスナが、ランベントライトを構え、コチラに向かって走ってくる。

アキトはその顔をニヤケさせ、迫り来る触手攻撃を躱すのを止める。

そして、ソードスキルを放つ構えを取った。

 

 

「──はぁっ!」

 

 

その声と共に、アキトのティルファングは再び輝きを放ち、ソードスキルを発動させた。

アキトの放つソードスキルは、ガストレイゲイズの触手を弾き、そして仰け反らせた。

そしてその瞬間、アキトの脇をアスナが通り抜ける。

 

 

 

 

── <スイッチ>。

パーティでの基本戦術。一人が敵を仰け反らせ、硬直し無防備になった敵をもう一人が入れ替わりでダメージを与える行為。

出会って間もなく、ロクに連携をとっていない彼らだが、効率の良さを考えた結果、二人の思考は一致していた。

 

 

「せあああぁぁぁ!」

 

 

アスナは、ボスの眼に向かってそのレイピアを突き刺す。

彼女のレイピアも、アキト同様に光り輝く。

 

細剣八連撃技<スター・スプラッシュ>

 

白銀のソードスキルが、ボスの眼球を貫く。

ボスは為す術もなく、そのスキルをモロに受けた。

そのスキルの威力、速さ。申し分無し。

アキトはアスナを見つめて、苦笑いを浮かべた。

 

 

(…もうアレユニークスキルでいいだろ…剣速おかしくない?)

 

 

アキトがそんな事を考えていると、後ろから漸くタンクが追い付いた。

それを確認し、アキトはタンクと入れ替わる。

後方まで戻り、漸くといったように溜め息を吐き、ポーションを口に突っ込んだ。

その間、ボスの動きから視線は動かさない。

 

 

ボスを囲うようにして、攻略組は陣形をとる。

アキトの情報を今は信じているのか、タンクの後ろには槍使いのプレイヤー達が控えていた。

ボスのヘイトをタンクが稼ぐ間に、エギルやクラインといった見知った顔が、側面や背後から攻撃しているのが目に見え、アキトはホッと息を吐いた。

 

 

(…思ったより安定してるな)

 

 

アキトは、ボスと対等に渡り合う彼らを見て、素直にそう思った。

 

 

キリトもヒースクリフもいない、最初の攻略。

二人とも攻略組に欠かせない、プレイヤーの希望のような存在だった。

そんな二人がいなくなって、彼らのゲームクリアへの勢いが衰えていったのは否めない。

きっと、もう無理だ、もうクリアなんて出来るわけが、とそんな事を考えていたプレイヤーも少なくないだろう。

それでも、この世界にずっとはいられない。

だからこそ、彼らは立ち上がる。

 

 

アキトの挑発によって、少しはやる気になってくれたらと思っていた。

自身がどれほど嫌われても、どんな手を使っても、彼らをゲームクリアに導く。

それが、アキトのすべき事だった。

 

 

彼らは腐ってもこの世界のトッププレイヤー達だ。クリアが不可能な筈はない。

 

 

「これなら………?」

 

 

笑みを浮かべていた筈のアキトの顔は、その笑みを失っていた。

アキトの視線の先には、ボスと攻略組が。

 

 

いや、正確にはボスとタンクの距離だった。

タンクのプレイヤー達が、一向に攻撃を仕掛けない。

 

 

アキトの目には、タンクがヘイトを稼いでいる間に、側面と背後からソードスキルで攻撃していたように見えたのだが。

それにしてはボスとタンクの間隔が離れ過ぎている。

しかし、ボスはそんなタンクとの距離を詰めようもせず、その場で触手攻撃を繰り返している。

何も無い筈の場所に。

 

 

クラインやエギル達がボスの側面を攻撃しているにも関わらず、ボスは彼らの方を見向きもしない。

よく見ると、何かを叫んでいるようにも見える。

ボスを囲っている為に、よく見えず分かりにくいが、タンク達は一向にタゲ取りをしようとしない。

まるで、ボスに近づくのを躊躇うかのような──。

 

 

そこまで考えて、アキトは気付いてしまった。

未だにあの輪から出て来ない、栗色の女性プレイヤーを。

 

 

「っ…あの馬鹿っ…!」

 

 

アキトは空のポーションを投げ捨てて、ボスの元へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アスナぁ!早く下がれ!」

 

 

クラインがコチラにタゲを向けさせようと高威力のソードスキルを叩き込んでいるにも関わらず、ガストレイゲイズは自身の目の前で動く少女、アスナから視線を動かさない。

何を考えているのか、アスナは一心不乱にボスと対峙している。

血盟騎士団のプレイヤー達は、見た事もないアスナの攻防に、どうしたらいいのかと焦るばかり。

 

 

しかし、クラインはなんとなくこうなるのではと、無意識に感じていた。

76層に来てから、アスナの攻略を何度も見た。その戦闘は、かつての攻略の鬼を彷彿とさせたが、クラインには何処か違って見えていた。

クラインには何処か、アスナが死に急いでいるように見えたのだ。

戦いの中で死んで、キリトの後を追ってしまうのではないか…そんな事ばかりが頭を過ぎっていた。

そして、その勘はおそらく当たっている。

 

 

アスナは攻略の鬼と言われていた時は、仲間に指示を出し、的確

な陣形をとり、効率の良い策を考えてきた。

そしてその上、人が死ぬような策は決して取らないプレイヤーだった。

今のアスナは、仲間に指示を出さず、愚かにも一人でボスに向かっている。

アスナの胸のうちで、今、何が葛藤しているのだろうか。

 

アスナは指示や陣形、そんな事はどうでもいいと言うように、ただただボスにレイピアを突き付けてた。

 

細剣十連撃技<オーバーラジェーション>

 

ヒット&アウェイが定石のボス戦で、明らかに連撃数の多いソードスキルを使用するアスナ。

彼らは、そんなアスナに驚愕していた。

攻略の鬼と呼ばれていた頃のアスナも、キリトが死んでからのアスナも。

常に効率を考えた策を弄していたあのアスナが。

ボスにたった一人で挑むという愚策に身を投じている。

 

 

ガストレイゲイズも、アスナのソードスキルを甘んじて受ける筈がなく、触手でアスナに攻撃を仕掛ける。

スキル発動中のアスナが躱せる筈もなく、その触手に吹っ飛ばされた。

 

 

「ぐぅっ…!!」

 

 

アスナはそのまま転がり、タンクの元まで行き着いた。

メンバーは、そんなアスナに駆け寄る。

しかし、心配する暇すら、ボスは与えてくれない。

 

 

「大丈夫ですか、アスナ様!」

「お、おい!攻撃来るぞ!」

 

 

その言葉に、アスナを含めたプレイヤー達はハッと顔を上げる。

ボスの眼が輝きを放ち始める。

間違いなく最初に放った光線の予備動作だった。

 

 

「っ…お前達!盾を構えろ!」

「くそっ…!」

「来るぞ!」

 

 

タンク達は、アスナや他のプレイヤー達の前に出て盾を構える。

しかし、間に合わない。

ガストレイゲイズは、その邪眼を光らせ、アスナのいる方向目掛けて光線を放った。

その光線は、タンクを簡単に弾き飛ばし、盾を持つ筈の彼らに相応のダメージを与えていた。

アスナもその余波を受け、再び吹き飛んだ。

 

「ぐぅ…!」

「そんな…盾があるのに…ダメージがこんな…!?」

 

彼らは驚きの色を隠せない。盾を貫通して来たと言われても不思議ではないダメージ量に、彼らは焦り始めていた。

そして、それだけではない。

 

 

「…え」

「っ…!? う、動かねぇ…!」

「嘘だろっ…おい!なんだよこれ!」

 

 

光線を受けた連中は、皆その場から動けない。

地面に伏すプレイヤーは立ち上がれず、立っている者もその場から一歩も動けない。

これがボス、ガストレイゲイズの邪眼の追加効果。

邪眼の攻撃を受けた者は、一定時間動く事が出来ない。

ここに来て絶望を感じさせる効果だった。

 

 

安定して見えた攻略。

作戦通りに行けば、きっといつもの様に戦えた筈。

しかし、その作戦を立てた筈のアスナが、何故か作戦にない行動を取り始めた事による連携の崩壊。

キリトやヒースクリフなしでも攻略出来れば、これからも進んでいける。

それは、アスナの独断専行という明らかな原因で崩れていた。

 

 

「っ…!」

 

 

アスナは漸く我に返る。

自分の身勝手な行動のせいで、今の状況が出来上がってしまっていた事に。

だか、気付いた時にはもう遅い。

ボスは目前まで迫ってくる。

唇を噛み、拳を握り締める事しか出来ないアスナは、その麻痺にも似た追加効果に、動く事すら出来ない。

 

 

「クソッ…!」

 

「っ…エギルさん…!」

 

 

エギルがその斧を触手目掛けて振り抜く。

光線を受けてない他のプレイヤーも、ボスに向かってソードスキルを使用する。

少しでいい、身動きの取れないアスナ達からタゲを外さなければ。

アキトの情報通り、槍、レイピアを使用するプレイヤーは、そのソードスキルを連続で使用する。

大技を使った後だからか、ボスが彼らの攻撃で怯んでいる。

 

 

「っ!今だ!」

「うおおおおお!!」

「くらえこの野郎!!」

 

 

トッププレイヤー達は、その隙を見逃さない。

彼らは一気に畳み掛ける。

眼に向かって放つソードスキルはかなりのダメージで、やはり眼が弱点なのは明白だった。

 

 

しかし、いつまでもそうされている筈もなく、ボスは体を回転させる。

未だ見ぬ動きに、彼らは対応が遅れてしまう。

ボスを囲っていたプレイヤー達は、その回転攻撃で吹き飛んだ。

 

 

ボスは近くにいたエギルにタゲを変えた。

その攻撃を受けたお返しと言わんばかりに、瞬時にエギルを吹き飛ばす。

エギルは地面を削るように飛ばされた。

そのダメージ量はかなりのもので、HPを一瞬でレッドゾーンに持っていく。

 

 

その光景を目の当たりにして、アスナの声は震える。

 

 

「っ…そんな…私の、せいで…」

 

 

 

 

瞬時に立て直したクラインはその隙を突き、ソードスキルを使用する。

 

刀三連撃高命中技<東雲>

 

その蒼く光る刀身を、ボスの背後から放つ。

クリティカルが入りやすいソードスキルではあるが、ダメージ量はそこそこだった。

 

 

「この野郎…!」

 

「はぁっ!」

 

 

漸く追い付いたアキトは、エギルに向いたタゲを自分に向けるべく飛び出す。

エギルとボスの間に割って入り、ティルファングを再び輝かせる。

 

片手剣突属性六連撃技 <スター・Q・プロミネンス>

 

紅く煌めくそのソードスキルは、ボスの眼を捉える。

しかし、ボスはそれを察知していたのか、触手で六連撃全てを弾いた。

ここに来て、アルゴリズムの変化が見られた瞬間だった。

 

 

「チィ…!」

 

 

アキトは聞こえるように舌打ちする。

しかし、この場から離れようとしない。

エギルはそんなアキトから視線を逸らせない。

 

 

「っ…おい!早く逃げろ!」

 

 

エギルは必死に叫ぶ。

アキトのステータスは、見るからに攻撃に特化したもの。

防御力はからっきしの筈だ。

一人ではとてももたない。

それでも、アキトはこの場から離れない。

 

 

ボスは、エギルに向かってその邪眼を光らせる。

間違いない、先程の動きを封じる光線だ。

エギルとボスの間にいるアキトは、再びティルファングを輝かせる。

 

 

「っ…!アキト!お前まで巻き添えになるぞ!早く逃げ…」

 

「うるせぇ!!」

 

 

アキトはエギルの声を遮り、ティルファングを光る邪眼目掛けて叩きつけた。

 

片手剣斬属性4連撃技<サベージ・フルクラム>

 

切り付けるモンスターの攻撃力と防御力を一時的にダウンさせる追加効果を持つソードスキル。

その攻撃は、邪眼が発動する前に当てる事が出来た。

しかし、ボスのそのHPをかなり削ったそのスキルは、同時に硬直も長かった。

そして、ガストレイゲイズはその光線をアキトに向かって再び放った。

 

 

エギルの前に立っていたアキト、その後ろにいたエギル諸共、後方に吹き飛ばされる。

クラインもその余波で後ろに飛ばされた。

 

 

「っ…!!」

 

 

その姿を、アスナは目を見開いて見ていた。

エギルを守る姿が、再びキリトと重なる。

人の為に自分の身を投げ打つその姿が。

 

 

「キリト…君…!」

 

 

 

 

「がはっ…!」

 

「ぐっ…!」

 

 

アキトとエギルはそのまま倒れ伏す。

先程のアキトのソードスキルの追加効果で、一撃死は免れたものの、光線の追加効果で互いに動けない。

 

 

ボスの周りにいるのは、倒れている者。動けない者。そして、動かない者。

それだけだった。

作戦は崩壊し、連携も陣形もままならない。

チームはバラバラ、キリトとヒースクリフの不在による不安感。

それらが重なり、彼らは動けない。

勝利の可能性より、諦念が勝ってしまったのだ。

 

 

エギルは苦しげにその瞼を開く。目の前に伏すアキトのHPは、レッドゾーンに入っており、エギルは目を見開いた。

 

 

「アキト…お前…」

 

「…黙ってろおっさん…」

 

 

状態異常回復スキル<トライレジスト>

 

アキトは、そのスキルにより邪眼の追加効果を消し去る。

そして、未だにタゲがエギルから変わらないボスに目を向けて、ヨロヨロと立ち上がる。

 

 

 

この場でたった一人。立ち上がった黒の剣士。

 

 

 

「クソ…そんなにおっさんが気に入ったのかよ…」

 

 

アキトは苦しげに笑いつつ、ティルファングを構える。

ポーションすら飲まず、ただ剣を構える。

エギルは、そんなアキトを信じられないように見つめた。

 

 

何故、アキトはこうまでして自分の前から動かないのか。

何故、死の危険が近いのに逃げようとしないのか。

そんなエギルの視線に気付いたのか、アキトはエギルの方にチラリと視線を向ける。

そして、フッと笑ってみせた。

 

 

「…んだよその顔。心配すんな…すぐに片付く」

 

 

その表情は、覚悟の表れのようで。

エギルからタゲが変わるまで、自分はここから動かない。

 

 

「何で…そこまで…」

 

 

エギルは、素直にその疑問を口にした。

きっと、この声は、アキト以外には聞こえない。

アキトは、その視線をボスに戻した。

 

 

その背中は、かつての英雄そのものに見えて。

エギルは、再びその瞳を大きく開いた。

 

 

 

 

「…この手に誓ったからだ」

 

 

 

 

逃げたりしない。

もう二度と、目の前で人を死なせはしない。

例え自分が助かる為だとしても、誰かの命を、犠牲にしてはならないと。

 

 

自身の目的を遂げる為。

あの日の誓いの果たす為。

かつての約束を守る為。

 

 

誰にも邪魔などさせはしない。

誰にも文句は言わせない。

 

 

 

 

「来いよ目玉野郎…こんな逆境、鼻で笑ってやる」

 

 

 

 

 





戦闘描写が苦手なので、少しグダグダに見えるかもしれないです。
感想次第で修正して行きたいと思います。
拙い文章ですいません。
自分でも少し文が浅いかなーと思ってるんで、多分その内直すと思います。

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