魔法少女救命計画   作:先詠む人

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えっと、間に合ったのはいいんだけどルーラ一派対大我まで行きつかなかった……

それまでに文量を取りすぎたってのもあります。

投稿時間はちょっとこどもの日なので合わせてみました。その分検索欄からは行きづらくなってしまうとは思いますが……

それでは楽しんで行ってください。


現在生存魔法少女

スノーホワイト
ラ・ピュセル
リップル
トップスピード
ヴェス・ウィンタープリズン
シスターナナ
ユナエル
ミナエル
スイムスイム
たま
ルーラ
クラムベリー
マジカロイド44
カラミティ・メアリ
〇〇〇〇〇〇〇〇〇(名称不明の最後の16人目)

脱落
ねむりん



3rd stage バトルスタート、激突Crash!

「やっぱりなんか()な予感がするんだよな~」

 

 どぎついショッキングピンクと目が痛くなりそうなライトグリーンでツートンカラーに染め上げられた自転車を駆りながら、土地勘を把握するためにフードを下ろして朝早くから町中を駆けずりまわる。

 途中で信号待ちをしている間に奥さんなのだろうか、道路の向こう側でおなかが大きな女性が自転車に乗っている夫なのだろうか、その男性の肩を叩いて弁当を渡す光景に遭遇した。それを見ていて俺はふと気づく。

 

「あ、トップスピードだ。」

 

 おなかの大きな女性はゆったりとした紺色のチェック模様のマタニティドレスで身をまとい、茶色のカーディガンをその上に羽織っていた。

 その姿を見て、知らず知らずのうちに「まだ生きてた。ほんとによかった…」という想いを込めてそうこぼしてしまう。

 

 俺がそうこぼしたその瞬間、夫らしき人物_確か室田昇一だったか_と話し込んでいた奥さんらしき人物_トップスピードの変身前である室田つばめ_がこちらへ驚いたかのような様子で首を勢い良く回した。

 

 その様子を見て俺は慌ててフードを被りながら目をそらし、内心「やばっ!?」と焦る。

 

 ……だが、トップスピードの正体であるその女性は誰がその言葉を漏らしたのか気づけなかったらしい。

 横目で俺が見ている中で、どこか不思議そうな顔をしたまま夫らしき人物と一言二言話し、そのまま熱いチューをしてからその場を離れていった。

 その一方で夫らしき男性は下を向いてカバンに弁当を入れ始める。

 俺はそのすぐ横を通り過ぎ、そのままペダルをこぐ足に入れる力をもっと増やす。

 

 顔のすぐ横をなでる風はほんのり暖かく、陽は優しく町を照らしていた。

 

 

 ◇

 

 昇一に弁当を渡してから急いでその場を離れ、建物の陰に隠れて変身する。

 変身してからすぐに箒を取り出して、急いで空へと翔け上がった。

 

「どこだ……きっとまだすぐ近くにいるはず……」

 

 空と言うかなり広い範囲を視認できる有利(アドバンテージ)を生かして先ほど見かけた黒いフードを被った男、と言うか青年を探す。

 

「居たっ!!」

 

 さっき昇一と別れた大通り沿いを探すこと数分。

 昇一と別れた場所から北に数百メートル行ったところで、たばこのようなものを銜えてぼーっと空を見上げ椅子に座っているさっきのフードの青年を見かけた。

 もう一度見てみたところでやっぱり思ったが、例の魔獣にそっくりと言ってもいいぐらい似ている。

 ただ、何か違う点があるとすれば腰に蛍光色らしきカラーで塗装されたバックルをつけていないのと、髪の色が透き通るような銀色になっているということだろうか。

 やっぱり先ほど名前を呼ばれたような気がして、近くを見てみたらあまりにそっくりな青年がいたからそれを怪しいと思ったのは正解だったみたいだ。

 

 そう思いながら箒の位置を調整していく。そして……

 

「さて、向こうが俺に気付いているのならば攻撃してくるだろうし、気づいていないのなら追いかけてねぐらを探ってやるぜ!!」

 

 フードの青年がどう動いても追いかけることができる位置について、そう意気込みながらそのまま箒に乗って宙でホバリングしていた。

 

「!!………」

 

 俺が結構近づいたところでフードの青年は一瞬驚いたかのような反応を見せたが、そのままたばこのようなものを銜えたまま私がいる方を見上げていた。

 

「……………」

 

「……………」

 

 空と地上。結構な距離があるうえに件の魔獣らしき青年がいる場所は大通りに面したコンビニの前に置かれている椅子。大通りを走る車の音で彼がしゃべっているとしても口から零しているその音は聞き取れない。

 魔法少女の姿の時は五感を含めた身体能力がかなり高くなってはいるけれども、それでも留まることなく大型トラックが走っている大通りのそばではトラックの音が邪魔で何も聞こえなかった。

 数分ほどそのまま見つめあうかのような状態が続いただろうか。

 

「……」

 

 突然青年は立ちあがって口に銜えていたたばこのようなものを銜えたまま手で握って真っ二つに折った。

 そしてその折ったたばこのようなものをそのまま口に入れて咀嚼する。

 

「たばこってあんな風に折れないだろ!?しかも食いやがった!!」

 

 その光景を見て俺はかなり焦った。

 たばこはあんなふうに折れない。あんなふうな折れ方をするのは鉄とかそう言った硬いものだ。しかも青年はそれを食べた。だからこそその光景を見て俺は確信を持った。

 

「あいつやっぱり例の魔獣だ!」

 

 鉄を口に銜えてそれを和菓子の落雁みたいにポキっと折ることなんか普通の人間にはできない。できるとしたら魔法少女ぐらいだろうけれど、そんな変な趣味を持っている奴なんか聞いたことがない。

 しかもたばこなのか鉄なのかはわからないがそれをあいつは食べた。

 

 これで正解じゃなかったらどれが正解なんだ!

 

 そう思いながらマジカルフォンを操作し、リップルに一応『例の魔獣を見つけた!ねぐらを探して後で特攻しようぜ!!』と連絡を入れておく。

 

 六億個のキャンディーが運よく誰よりも先に手に入れることができそうだと内心思いながら、再び自転車に乗って動き出した青年を追いかけ始めた。

 

 魔獣っていうぐらいだし多分人が多い街のどこかにねぐらを作っているのだろうと内心予想しながら追いかけ続ける。

 しかし、魔獣はそのまま市街地から外れ、そして山の方のトンネルに入って行く。

 

「あれ~?予想が外れちまったかな~。」

 

 そう呟きながら箒の先端をトンネルの中へと向ける。

 

 件の魔獣に遅れること数秒後、俺はトンネルの中に入った。しかし……

 

 

「あれ?なんで居ないんだ!?」

 

 

 トンネルに魔獣が入っていくまでに魔獣が乗っていたのは自転車。今俺がいるトンネルは結構長いトンネルだから俺が入って来るまでにトンネルから出ていくことなんか自転車で出せる速度なら絶対にあり得ない。

 けれど、魔獣は俺がトンネルに入ったときにはもう消えていた。

 

「一体どういうことなんだよ……?」

 

 そう困惑する俺の声だけが山奥のためにあまりトラックも通ることが少ないこのトンネル内に響いていた。

 

 一旦トンネルの中に作られている遊歩道に着地して周囲を見渡す。

 

「う~ん……いないよなぁ……。」

 

 周囲を見渡しながらそのあたりを歩いていると……

 

 ◇

 

 どこかの密林近くの滝つぼみたいなゲームエリアで、透明なパッケージに一部を入れたままの紺色の箱をコートのポケットから取り出す。

 箱をトントンと叩き、中から白っぽい色をしたものを取り出して口に銜え、そのまま近くにあった石に身を預ける。

 

「……やっぱりあの言葉を言った主が俺って気づかれたのかなぁ…」

 

 数分前ぐらいになるが、走り回るのにも若干疲れてきていたのでコンビニの椅子に座って休んでいた。

 するといつの間に俺を追いかけてきていたのか、トップスピードが空中でずっとホバリングしながらこっちを見ていることに気付いた。

 

 口寂しいので何となくの気持ちで銜えていた今くわえているものと同じものを口の周りの筋肉で揺らしながらなんでこっちを見るかのようにホバリングしているのか考える。

 

 思いついたのはやはりさっきの俺がこぼした言葉が聞かれていたのかということ。

 

「やっぱ絶対まずったよな~」

 

 さっきの信号待ちをしていた時に道路の向かい側だからと慢心するんじゃなかったなーと内心思いながら俺は少し考え、結局何もならんなと結論付けた。

 

 ずっと銜えていた()()()()()()()()を指で半分に折り、全部口の中に放り込む。

 

 それから道路わきのガードレールに立てかけておいたシャカリキスポーツのゲーマである自転車にまたがってペダルをこぎ始めた。

 

 ペダルをこぎながらいろいろと考える。

 別にトップスピードに声をかけてもいい。だが、それじゃあ不審に思われることは間違いない。

 

 ………と言うか、よくよく考えたら俺ってこの世界だといったいどういう扱いになっているんだろうか。

 

 ふと、そんなことを思いついてしまう。

 

 手持ちの財布の中に入っている免許証とかは一応事故前、要はバスに乗った際のままで、キャッシュカードを含めて全部耳をそろえて入っている。

 だけど、それらで実際のところ俺の身分って証明できるのだろうか?

 もともとこの世界にいないはずの存在がここにいる。と言うことになって証明することなんかできないんじゃないか…そんなことまで考えてしまった。

 

 そんなことを考えながら曲がり角近くにある信号を待つ。ふと「まだついてきているのかなぁ…」と思って近くにあったカーブミラーを覗いてみると、後方大体十メートルぐらいだろうか?カーブミラー自体の鏡面が歪んでいるのではっきりとした距離こそわからないが、その位の上空に宙に浮かぶ女性が見えた。

 

「………なんで話しかけもせずにずっと俺の事追ってきてんの?」

 

 カーブミラー越しに宙に浮かぶ女性_トップスピード_を見ながらそう呟く。

 先ほどから周囲に人気はない。と言うか、どんどん人気がないようなところを目指して走っていたからむしろ話しかけるにはもってこいの状況だ。

 にもかかわらず、ずっと俺の後ろの方で、少し距離を置いて飛んでついてきている。

 

「……なんかさすがにうっとうしくなってきたな……」

 

 かれこれ十分ぐらいこうして変な追いかけっこが続いているわけだが、終わりが見えないその追いかけっこに俺は疲れて来ていた。

 

「………罠にはめてみるか。上手くかかったらそれで良し。そうじゃなかったらまたその時に考えよう。」

 

 そう呟きながら前輪を山の方へ向ける。

 

 目指す場所は山をちょっと上ったところにあるトンネル。

 山の中心をぶち抜くかのように山をくりぬいて作っているらしく、ちょっとした距離があるが一直線に作られている。

 

 トップスピードの性格を考えると恐らく最初は出口の方に回り込んで俺が出てくるのを待つだろう。

 

 だけど、もし入ったやつが出てこずに途中で消えたならば?

 

 それは逆に進んだかもしくはトンネルの中で事故(トラブ)ったかを疑うに違いない。

 そうしたら恐らく出口側からトンネル内に突入し、そこから一気に入り口側へと箒で飛ぶはずだ。

 

 そこを突く。

 

 計画(プラン)はこうだ。

 入り口からトンネルに入ってすぐのところで一度下車してシャカリキスポーツのガシャットを再度起動。

 それからゲームエリアに跳んで、一分間だけ待つ。

 時刻表示が壊れたスマホでもストップウォッチとしては使えたので時間通りになるかどうかは問題ない。

 そして一分間だけ待ってからゲームエリアから現実世界に戻って、壁際で待っておく。

 

 すると勢いよくトップスピードが目の前を通り過ぎるだろうからそこに声をかけてなぜ追いかけ続けるのか問い詰める。

 まぁ、ざっと考えた作戦だから粗は大量にあるだろうが、今はやるしかないだろう。

 

 自転車で上り坂を少し息切れしながら登ること約15分。

 坂道の先に目指していたトンネルが見えてきた。

 

「あと……ちょっと……」

 

 正月に午前中からお昼過ぎまでかけてやっている駅伝の山の人とか、自転車レースに出てくるような半端ない肺活量を持つ人ならばこの坂を止まらずに上るのは簡単なのだろうけれど、俺にとってはかなり厳しいものだった。

 

 予想以上に消耗しながらトンネルに入る。

 

 息を切らしながら入ってすぐのところで即座に下車。ゲーマドライバーを取り出して腰に当てる。

 

「よし。」

 

 そう言って俺は黄緑色のガシャットを握って、スイッチを押し込むことで起動する。

 

SHAKARIKI SPORTS(シャカリキスポーツ)!!> <~~♪>

 

 タイトル音声とともにギターのリフが効いた起動音が鳴り響き、俺の後ろにはアクロバットに自転車でジャンプした影と、迷彩柄に塗装された背景で構成されたXスポーツゲーム。シャカリキスポーツのタイトル画面が表示された。

 

「ステージ移動」

 

 腰の横にあるキメワザスロットホルダーについているスイッチを何回も押し込み、本来選択されるシャカリキスポーツのステージ以外のステージを適当に選択する。

 

<STAGE SELECT!!>

 

 選ばれたのはモンスターのような影がチラチラと映っている滝が表示されている画面だった。

 

「……は?」

 

 ステージ移動を終わらせて俺が目を開けるとそこは滝つぼのすぐ近く。

 俺が立っている天幕のすぐ近くには段差を持つ水流が流れており、遠く離れたところにも大きな滝、と言うか渓谷のようなものが広がっているのが見えた。

 

 

「○ンハン?」

 

 その光景を見て思い出すのはCAPC〇Mが出しているモンスタ○ハンターシリーズの一作品である3rdに出てくる“渓流”ステージ。

 

「……あ、そう言うこと。」

 

 数秒の間、なんでこんなステージに飛ばされたのか考えたが実際問題簡単な答えだった。

 

「ドラゴナイトハンターZのステージの一つってことか。」

 

 ドラゴナイトハンターZは多人数プレイが可能な狩猟ゲーム………っても要はモン○ンなわけだけど。そのステージはテレビで見たときは荒野だったはずなんだが………俺の願いの関係で何か変わったのか?

 

 そう思いながら天幕のすぐ近くにあった結構大きめの石に体を預けてココアシガレットと書かれた箱を、煙草を出すみたいに格好つけながらトントンと叩いてココアシガレットを引っ張り出す。

 

「やっぱり駄菓子旨いわ。」

 

 結局タイマーをかけ忘れていたので適当なタイミングで口にココアシガレットを銜え、俺は立ちあがる。

 

 さっさとステージから退出するためにゲーマドライバーを外して現実世界に戻った……その瞬間だった。

 

「うぉ!?」

 

 驚いた声を上げるのと同時に開いた口からココアシガレットが落下する。

 

「?ってわぁ!?」

 

 ゲームエリアから現実世界に戻った瞬間、目と鼻の先の距離で周囲を見渡すかのようにきょろきょろしていたトップスピードと目が合って両者ともに驚いた。

 

 しかし、即座にトップスピードは俺から距離を置いて箒の先端を構えて地面に足を下ろしてこう言った。

 

「出たな魔獣!!」

 

 その言葉がまさか俺に対して言われているとは思うはずがないから俺は

 

「魔獣!?どこだ!?」

 

 と慌てて周囲を見渡した。周囲には俺とトップスピード以外誰の気配もない。まさか隠れているのかと上を見る。右を見る。左を見る。後ろをサッと見る。何もいないし隠れてもいなかった。

 

「は?」

 

 俺のその様子に対してトップスピードは一瞬呆れたかのような様子を見せた後

 

「と言うかコイツ人の言葉理解してる!?ってことはかなりまずいんじゃねぇか!!」

 

 驚いたかのようにそう言って慌てて箒に飛び乗り、その場から大量の砂埃が舞うほどの衝撃波を残して飛び去って行った。

 

「あ!?ちょっと!!なんで俺を追いかけてたのか説明していけよ!!」

 

 いきなり発生した砂埃から目を守るかのように手を構えていた俺もそれを追いかけて走る。

 だが……

 

「行っちまった……」

 

 トンネルの外に駆け出してみてもそこにはもう誰の影もなかった。

 

「だぁあああああ!!もう何なんだよ一体!!銜えなおしたココアシガレットも落としたし砂利まみれだし何もわかんねーし踏んだり蹴ったりじゃねーかぁぁあああああああ!!」

 

 砂埃を大量にかぶって叫ぶ俺の声は山間にただただ響いていた。

 

 

 

 トップスピードに砂利まみれにされてから数時間後。

 俺は色んなことをしてから門前町の方まで自転車を押して帰ってきていた。

 色んなことをステージの中でしていたせいで現実世界に再び戻ったときには空は藍色に染まり始めていた。

 あまり道を分かっていない山奥で夜になるのはマズイと慌てて自転車をかっ飛ばして街まで戻ったので体力的にはヘロヘロである。

 

 まぁ、その色々ってしていたのが体力の消費のおおもとの原因になるのだけれども……

 結局俺がステージの中で何をしていたかと言うと、砂利まみれになったせいで汚れてしまった顔をキレイにするために一度先ほどのドラゴナイトハンターZのステージに入って近くを流れていた渓流で水を汲む。そしてその汲んだ水を肉焼きセットらしき道具で温め、適温のお湯にする。

 そのお湯を天幕の中にあったタオルに浸し、そのタオルで俺は体をサッと拭う。

 お風呂がないのでこんな簡単なことしかできないが、それでも一応体はきれいにはなった。

 それからしばらくの間、天幕の中にあったハンモックで横になり、なんで自分が“魔獣”と呼ばれたのか考えていたが……

 

「………………んなもん考えてもわかるかボケぇーーーーーー!!」

 

 元々陰謀論とかそう言ったのが苦手だったのもあって、そう叫びながら立ちあがることになった。

 

 ボケェーーーボケェーーーーボケェーーーーーーー

 

 木霊のように俺の叫び声がステージに響き渡る。

 するとその声にこたえるかのように

 

 クゥォーン!!

 

 かなり小さかったが獣の鳴き声のようなものが聞こえた。

 

「?今の……」

 

 叫んで息を切らしていた俺はその音にちょっと興味がわいたので音が聞こえた方に足を向けた。

 まぁ、これが大きな間違いだったわけで。

 

 結果から言うと、マジもんのモンスターたちに襲われました。

 回復薬の素材になりそうなデカいキノコを見つけて恐る恐る近づいていくと、見覚えがある大きなトカゲを先頭にした群れがその奥から登場。

 慌ててゲーマドライバーを腰に装着して手持ちのガシャットを起動した。

 

GIRIGIRI CHANBARA(ギリギリチャンバラ)!!><~~~♪>

 

 和風な三味線のゲーム起動音が流れ、俺の周囲5メートルの風景が渓流の地面から和風な畳敷きのものへと書き換わる。

 

「ったく!どこが安全な場所なんだよ!!」

 

 安全地帯で襲われるという事態に対して悪態をつきながら、俺は握りしめた色こそ黒いがプロトガシャットではないそのガシャットをゲーマドライバーの内側のスロットへ差し込んだ。

 

<ガシャット!!>

 

 

【挿絵表示】

 

 

<~~♪Let’s(レッツ)ゲーム! ムッチャゲーム!! メッチャゲーム!! What’s your name(ワッチャネーム)!! >

 

 迫ってくるエリマキトカゲたちへの牽制の意味も込めて回し蹴りの要領で回転しながら俺の周囲に浮かび上がったライダーアイコンの中の一枚を蹴り飛ばす。

 

<I’m a 仮面ライダー!!>

 

 その音声とともに俺の体は戦国時代の武士が纏っていたような兜についている頬あてのような面構えをしたゆるっぽい姿になっていた。

 

「よっしゃ行くぜ!!」

 

 ゆるっぽい姿であるレベル1でどれほど戦えるのか、それを確かめるためにもこの戦いには勝つ必要がある。

 

 モンスターの方へと走りながら右手を空へと突き出す。すると

 

<ガシャコンスパロー!!>

 

 の音声とともに黄色と黒で塗装された弓の弦のような絵が描かれている小さい窓が俺の周りをまわり、それが一周するのと同時に物質化する。

 

 群れの中心に飛び込み、そのままひとまずくるりと一回転しながらアローモードのスパローを乱射する。

 振り回されるスパローの先端から黄色と桃色の二色の光の矢が飛び出し、周りへと突き刺さる。

 

 ギシャー!!!

 

 周囲を取り囲むように首を上げて牙をむき出しにしていたエリマキトカゲたちはその一撃を喉元に受けて大量に血を流しながらその場に倒れ伏した。

 運よくその攻撃を喰らわなかった者たちの悲鳴ともとれる啼き声が上がる。

 

「ハハッ!!狩りの時間だ!!」

 

 テンションが上がって、仮面の奥で獰猛な笑みを浮かべながらAボタンを叩いてモードを切り替え、二丁斧へと武器のモードを変更する。

 

 俺は元々モ○ハンは好きだった。

 中学生の頃に同世代の友人がやっているのを見て手を出したのが始まりだ。

 部活が忙しくてそんなにする時間がなかったから腕としてはそれほどうまくはないけど、その分少しの時間で情報を把握する能力だけで他のみんなと対抗できるようになっていた。

 ただ、それでもやりこみ勢と比べてみると全然うまくはなかったが。

 

 モードを切り替えてからは1分もかからなかった。

 ライダーに変身しているからと言うこともあって身体能力は向上している。そのせいと言うこともあるのだろうが、俺は残っていた30頭ほどの群れを20秒弱で全て切り刻んでいた。

 

 血の海の中で顔にかかった血を仮面越しに拭う。

 

「ハハハハハハ!!!」

 

 狩りによる高揚感か、それとも別の要因でもあったのか、テンションが異様に上がっていることに俺自身全く気付いていない。

 

 その青いはずの仮面の眼が赤く染まっていることにも全く気付かなかった。

 

 そのままのテンションで渓流の奥の方へと駆け出していく。

 そして数時間後にとてつもなくデカいクマと戦っている最中に水の中にたたきつけられるまで俺のテンションは上がりきったままだった。

 

「ぶぇっ!?」

 

 水の中にたたきつけられた際に発生した衝撃で我に返る。

 

「いってーな!!」

 

 水の中から水面の方まで急いで上がり、それからすぐに潜りなおす。

 

「クマ!!アシラ!!なんで!アシラなんで!?」

 

 水面からわずかに離れたところにア○アシラが何かを待つかのように控えていたからだった。

 

「………」

 

 水に入ったことによって冷静になった頭でこの場をどう切り抜けるか考える。

 

「うん、なんだこの無理ゲー。」

 

 まず周囲の確認を……と思ってライダーゲージを確認し、俺はすぐにそう匙を投げた。

 

 マックスまであったはずの体力バー(ライダーゲージ)が、後数メモリ分しか残っていなかったからだった。

 

「いつの間にこんだけ減ったんだよこれ……」

 

 水中の中にいるままそう呟く。

 

「あ、そうだ。」

 

 どうしようかと、必死に考えているときに気付いた。

 

「レベル上げて3になればいいだけじゃねーか。」

 

 言ってみるのは簡単で、と言うかエグゼイドに出てくるライダーとして基本的なことが考えから何故か抜けていたことに今更ながら気づいた。

 

「となると、この状況を抜けるには……やっぱりこれだろ。」

 

 取り出したのはオレンジ色のガシャット。

 

JET COMBAT(ジェットコンバット)!!>

 

 きらびやかな電子音が鳴り響き、水中に立つ俺の後ろに現れたジェットコンバットの起動画面からジェットコンバットのゲーマが出てくる。

 

<ガッチャーン!!>

 

「3合目」

 

 ゲーマドライバーにジェットコンバットガシャットを刺し込み、俺はそう呟いてからゲーマドライバーの中心部にある液晶画面を隠すかのように覆っている扉型のカバーを開いた。

 

<レベルアップ!!>

 

 

【挿絵表示】

 

 

GIRIGIRI(ギリギリ)CHAMCHAMBARABARA(チャンチャンバラバラ)!GIRIGIRICHAMBARA(ギリギリチャンバラ)!!アガッチャ!!JET(ジェーット)!JET(ジェーット)!!JET COMBAT(ジェットコンバーーット)!!>

 

 音声とともに俺の姿はゆるかったものから黒色の甲冑の侍のような姿にオレンジ色のガトリング砲を左右に一門ずつ装備した姿に変わる。

 

「さて、さっさと戻って現実に帰るぞ~」

 

 そう言ってから俺は水上に戻るために踏ん張って飛び上がる。

 水面から飛び出すのと同時にジェットコンバットのゲーマが変形したジェットで空を飛ぶ。それでそのまま天幕があるところへと帰還した。

 

「それにしても…」

 

 天幕があるところで変身を解除しながら呟く。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()…?」

 

 その言葉に込められた意思は困惑。俺自身熱くなりやすいのはわかっているがあそこまで、自分の命の危険がかかわってくるところまで行くわけではないはずだ。

 しかも、レベルも1のままだった。本来それこそ俺としてはあり得ないことだ。

 モンスターの狩りなんてわざわざリスクを背負ってまでする必要がない。

 

 そんな風に考えながらも、異常なほど熱くなった原因はまったくわからずに俺はそのまま現実へと帰還し、夜になりかけていたのもあって急いで自転車に乗って坂道を下りだした。

 

 門前町の中を抜けていく途中で屋根の上を何かが駆けていくのがたまたま目に入った。

 

「あれは……」

 

 屋根の上を駆けていく影のシルエットはまるで天使の羽を二人で分けたかのように一つずつ背中につけていた。

 

「ルーラ一派の天使姉妹か。」

 

 その姿を見ながら少しだけ考える。

 

 ・この世界で2番目の被害者となるのは一派の頭目であるルーラ

 ・まだデスゲームが始まったのかどうかいまいちわからないが、ねむりんの家がいまいちわからない以上ルーラを見ていた方がいいんじゃないか?

 

 と言うところまで考えたところで天使姉妹を見失ってしまう。

 

「あ、しまった。」

 

 考えるのは後でいいかと結局思考を途中で放棄し、見えなくなったところまで自転車で追いかける。

 

 十数秒後、見えなくなったのはこの辺だったよな…と考えながら走っているとお寺のような建物が塀の奥にわずかに見える建物のそばへとたどりついた。

 

「もしかして此処か?」

 

 そう呟きながら一旦シャカリキスポーツのゲーマを、ガシャットを操作することで収納。

 それから塀の端に手をかけて一気に登る。すると……

 

「ビンゴっぽいな。」

 

 若干崩れたお寺の境内とロウソクらしき光が漏れ出ているお堂が見えた。

 

 若干引っかかることがあったので気配を隠しながらお堂に近づく。

 引っかかっていたのは先ほどトップスピードに言われた『魔獣』と言う言葉。

 あの言葉を言っていた時、トップスピードは俺の方を指さしていた。

 だからこそ俺は魔獣が俺の後ろにでも現れたのかと思って周囲を見渡したんだが、ある別の仮説を立てたらその時誰もいなかったという事実が成立することに気付いたからだった。

 

 その仮説と言うのは、“()()()()()()()()()()()”ということだ。

 

 いや、そんなまさかとは内心思うが、確実にないとは言い難いのも事実だった。

 

 ゆっくり。ゆっくりとお堂の近くへと歩いていく。

 しかし、どんなに気を付けていても不測の事態と言うのは起きてしまうもので……

 

 ガリッ!!

 

 足元に敷かれていた玉砂利がそんな音を鳴り上がらせた。

 

「誰!?」

 

「誰だぁー!!」

「誰だぁー!!」

 

「……」

 

「……ひゃうっ!?」

 

 俺の足元で玉砂利が音を立てた瞬間、ルーラ一派が勢いよく壊れてしまって本尊があらわになっているお堂から飛び出してくる。そして

 

「フン。運がいいわね。()()が向こうからやってきてくれたわよ!」

 

 ルーラが俺の方を錫杖?でさしてそう宣言した。その言葉はさっきの仮説に確信を与えるには十分すぎるものだった。

 

 どうやら俺は、とてつもない額の懸賞を賭けられてしまったらしい。

 

 内心その事実にショックを受けながら俺は後ろへと駆け出した。

 

 何のためか?逃げるためだ。

 

 俺がどういった経緯で六億個のキャンディーなのかそれとも六億円なのかのどちらかの懸賞を賭けられたのかはわからない。

 だが、たまを除いたルーラ一派の面子の俺のことを見る目はどう見ても目の前にニンジンをぶら下げられた競走馬そのものだった。

 

『クラムベリーとスイムスイムを除いて()()()()()()()()()()()()

 

 その思いが強い俺は、全然この状況で戦いたくなかったから逃げようとしていた。

 

 だが、

 

『たま、あの魔獣の足止めを、もし出来そうなら止めを差すところまで行きなさい!!』

 

『ユナエルとミナエルはたまの援護を、スイムスイムは私を守りなさい!!』

 

 ルーラが特定のポーズをとって魔法を発動する。すると魔法の影響でさっきまでおびえていたたまがこちらへと躍りかかってきた。

 

「チッ!」

 

 その事実に舌打ちをしながら境内の中を縦横無尽に駆け回りながら攻撃を避け続ける。

 ルーラの魔法はある特定の条件を満たしたうえで命令をすると、その命令された人物がその命令された内容を実行するというもの。

 その命令の中身は人道的もくそみたいな内容でも関係ない。要は条件を満たして「〇〇を殺せ」とでも命令すれば確実に命令された側はそれを実行してしまうのだ。

 

 ただ、確実に実行するとは言ってもそれには時間制限がある。

 条件の中にルーラが特定のポーズをとり続けるというものがあるからだ。

 

 そのポーズの関係上ルーラは一度魔法を途切れさせる。その瞬間にルーラを無力化するかなどして逃げないといけない。

 

 そう考えている間にたまたちの体を包んでいた光の幕が薄くなっている。

 

「っしゃおら!!」

 

 内心本当に済まないと謝りながらたまの腹を蹴り飛ばし、そのまま縦回転して天使姉妹の攻撃を地面にたたきつける。

 

 そして一回転した状態からバク転で距離を置き、俺は腰にドライバーを当てた。

 

「死んでたまるか。俺はまだ死ねないんだ!!」

 

 体勢を整えて、そう叫びながら右手に握った赤いガシャットを目の前にかざして起動スイッチを押し込む。

 

GEKITOTSU(ゲキトツ)……ROBOTS(ロボッツ)!!><~~~♪>

 

 タイトルコールと起動音が鳴り響いて俺の後ろにはゲキトツロボッツのタイトル画面が浮かび上がる。

 

 左手を顔の前にかざし、右手を勢いよく後ろへと振る。

 

「変身!!」

 

 叫んで俺は両手を前で交差し、そのまま交差した腕をガシャットがドライバーの内側のスロットに差し込まれるように下へ下ろした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

<ガッシャット!!>

 

<~~♪Let’s(レッツ)ゲーム! ムッチャゲーム!! メッチャゲーム!! What’s your name(ワッチャネーム)!! >

 

 ガシャットが認証されるのと同時に俺の周りにライダーアイコンが現れて回り出す。

 その中の一枚を俺は

 

「ふっ!」

 

 左斜め前にあるタイミングで右アッパーを、まるでアイコンを叩き割るかのようにぶち込んだ。

<SELECT!!>の文字を躍らせて殴られたアイコンが縦方向に回転しながら光の粒子をまき散らす。

 

 その光の粒子に包まれるかのように覆われた俺の姿は、白を基調とした姿が俺にかぶさるかのように映るせいで隠れていく。

 

 そしてある程度俺にかぶさるかのように白い影が生成されたところで回転が止まったアイコンが俺に吸い込まれる。

 

<I’m a 仮面ライダー!!>

 

 その音とともに伏せていた目を仮面の下で開ける。

 

「あ、かわいい。」

 

「なんだあれ?」

 

「チョーウケるんですけど!!!!」

 

「………」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょこの馬鹿どもが!!」

 

 向こうのほうには各種様々な反応を見せる魔法少女たち。

 

 そんな中で俺は一度交差した手を交差したままで上に掲げ、胸の前に右手が上になるように下ろす。

 そしてそれをボクサーが試合の時に行うフェイントのように数回上下させてから構えた。

 

「俺の名前は名乗らない。だが、生き残るために戦わせて貰うぜ!!!悪く思うなよ!!」

 

 そう叫んでから一気に距離を詰める。

 

 

 

 ◇

 

 トップスピードさんが魔法の国に入国しました。

 

 トップスピード:あ~、やっぱり誰もいねーか

 

 トップスピード:まぁ、報告だけでもしておくべきか

 

 トップスピード:今日のお昼頃、街中で件の魔獣と遭遇した

 

 トップスピード:だけどなんか聞いてた話と違う気がするんだよな

 

 トップスピード:それが何かって言われたらよくわかんねーんだけど

 

 トップスピード:誰でもいい

 

 トップスピード:次にあの魔獣に会うことがあったら気を付けてくれ

 

 トップスピード:あの魔獣、人並みの知恵を持っている上にこっちの言語を理解してる

 

 トップスピード:ファブ、何か隠してんなら言ってくれ

 

 トップスピード:そうじゃなきゃあの魔獣に襲われて被害者が増えるぞ!!

 

 トップスピード:急用ができたから一度抜ける

 

 トップスピード:ログが残っているからさすがにみんなに伝わるよな?

 

 トップスピードさんが魔法の国から出国しました。

 

 ◇

 

 




ストック切れと執筆時間がないので次回の更新は未定です。納得のいく文量まで書けたら出します。

感想、評価を楽しみにしています。
皆さんの評価でテンションが乱高下します。場合によっては執筆速度にも影響します。
どうかよろしくお願いいたします。

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