それにTwitterでもOK票入ってたから良いよね!
中でも書いてるけど「原作?知るか‼俺に出来るだけ変えてやろうじゃねーか‼」のスタンスで行きますんでそれが嫌だって人はバックした方が良いと思います。
因みに言うとそのスタンスを具体的に知りたい方は「思い付き短編集」の中にあるこれとこれを見てもらえればわかります。
1st stage I become a 仮面ライダー‼
「はぁ…はぁ……はぁ………」
木に背中を当て、歪な形をしたギターを落とさないようにしっかりと握りしめながら、荒く口から洩れる息を整える。
目で闇に覆われた森の中という視認性が低い周囲を確認しながら耳を澄まし、能力で自分から出る音を極力抑える。
そうしながら次に取るべき行動を考えていると
「ふふふ……」
艶があるとでも言えばいいのだろうか。そんな声が周囲に響き渡った。
(ちっ!)
無意識のうちに舌打ちをしながら、まだ完全に息は整ってはいないにもかかわらず、急いでその場から離脱する。
(くそっ!奇襲に失敗したのがやっぱり最大の要因かよ!つか……)
慎重に周囲を確認しながら森の中を駆け、そんな中で今の状況に陥った原因を考えるとやはりそこに行きついてしまう。
奇襲に失敗したのは数分前。それが失敗したら最初は第2プランへ移行するつもりだったが、そのためには一度広い場所に出ないといけない。
しかし、今はむしろ森の奥深くの方へ誘われているように感じた。
(このままだとまずいな……)
白いずんぐりむっくりな姿の仮面の奥で冷や汗を流す。
(こうなったら第2プランを放棄。一度盤面そのものをひっくり返すして離脱するしかない!!)
内心そう呟き、俺は一度前へ前へと加速していた足を止めた。
腰に当てているバックルに装填されていた
<ガッシュート!!>
手に持ったゲームカセットのようなもの、ガシャットから音声が鳴り響く。
その取り出したガシャットを右手の中で回転させ、俺は手に持った歪な形をしたギターについている黒いボックスの中へ押し込んだ。
<ガシャット!!>
<キメワザ!>
そんな音声がギターから流れ出し、ギターからつんざくかのような電子音が鳴り響く。
そのギターをしっかりと握りしめ、俺は目を閉じ、息を一度深く吸い込んだ。
そんな俺の周囲には何かエネルギーが漏れ出したのか五線譜を模したラインが俺を囲むかのように展開され、徐々に広がっていく。
緊張しているせいか、キメ技待機音のほかに心臓の音が聞こえる。
「行くぞオラァ!!」
その心臓の音が跳ね上がった瞬間、俺自身を鼓舞するかのように叫び、俺は勢いよくギターの弦に右手の指を走らせる。それと同時に俺は左手の親指でギターの持ち手の裏にあったスイッチを押し込んだ。
<>
音声はならない。だが、弦の上を指を走るたびに大きな音符が宙に浮かび、そしてそれは俺から少し離れた個所で勢いよく大爆発を起こす。
「っ!?」
大量の爆発によって白く染まる視界の中で、俺は死神の腹部に音符が直撃し、吹き飛ばされるのを確かに目撃した。
大爆音と大爆発のライブが繰り広げられる森の中。
数秒後、その演奏は止まる。
爆発によって起きた煙が散っていく中で、その場に残っていたのは見るも無残な姿になった木々と、ある一点を中心として深くえぐられた地面。
そして今にも倒れそうな状態でギターを支えにふらふらとしながら立っているフードを深く被り、そのフードがついている黒いコートを着た青年だけだった。
「はぁ………兎に角今は安全なとこ行かねーと……」
そう言うと青年は倒れながらも腰に当てているバックルから腰を回るように延びるベルトについている左腰についている機械に手を伸ばし、そのスイッチを押す。
<STAGE SELECT!!>
スイッチを押した瞬間周囲に13個窓が現れ、その中の一つ。教会のような絵がかいてある窓が正面に浮かんだところで音とともにその姿を消した。
青年が消えて数秒後、クレーターと化したその場所に所々にすすをつけたエルフのような姿の女性が現れる。
「逃げられましたか……」
女性は残念そうに言うと、しばらく何かを考えていたようだったが
「まぁ、いいでしょう。きっと彼はまた現れるでしょうし…………そうだ。いっそのこと彼を巻き込んでしまいましょうか」
女性はそう言うと金色で縁を装飾した紫色のコンパクトのような端末を手に取った。
「ふふふ……楽しみですね」
天に浮かぶ満月に照らされるその顔には裂けるかのような笑みが浮かんでいた。
ゲームステージの教会の中へと避難して、教会の中にある椅子へ倒れこむ。
「クソっ!!失敗した」
顔の前に手を当て、一人毒づくもその言葉に対して返事を返してくれるものはいない。
「しばらくの間は警戒されるだろうし、これじゃあ最初に立てた計画が達成できないじゃねーか…」
その言葉は最期まで言えたのだろうか。戦闘によるダメージで俺はそのまま意識を失った。
そして、夢を見た。俺の戦いの始まりになった記憶を見た。
「お先失礼しま~す。お疲れ~っす!!」
所属している大学のサークルの部室からそう言って退出する。
「さて、公務員試験も終わったしあとは
退出する際に開いた扉を閉めて、廊下で靴を履きなおしながら俺はそう呟いた。
先月行われた公務員試験。その結果家に届いた通知には合格と書かれてた。
そういうわけで俺の就職活動は終わり。
となると、卒業までにやらないといけないことは卒業論文を書くことだけになる。
ただ、そちらもそちらで所属していたゼミの方針でほぼ終わっていたので、実質基準となる字数を超えるように書けばよいだけの状態になっていた。
大学自体が山の中腹を切り開くかのように作られており、所属しているサークルがその中でもかなり上の方にある。
それに比べ、山の下の方に大学敷地内に入ってくるバスの停留所があった。
そのためそちらへとつながる階段を腕時計を見、時間を確認しながら駆け下りる。
「あ、ちょ!バス来てんじゃん!!」
バス停まであと少しと言うところまで来たところでバスが停留所に停留しているのに気付く。
乗り遅れたら次のバスは30分後。乗り遅れたらいろいろとまずいと思い、慌てて残りの距離を構成している坂を転がり落ちるかのようにバス停の方まで走り出す。
「…………はぁ…………はぁ………間に合っ………た………」
辛うじてバスがまだ止まっている間にバス停にたどり着くことができ、開いていた入り口から車内へ飛び乗る。
もし、このとき無理にこのバスに乗ろうとなんかせずに次のバスをおとなしく待っていれば俺の運命は変わっていたのかもしれない。
だが、俺がこのバスに乗ったことで俺の運命は動き出してしまった。
運転席のすぐ後ろにある席に座り、背中を背もたれに預けて脱力する。
スマートフォンを取り出して、緑色のアイコンを触ってSNSアプリケーションを起動。
母親に『今バスに乗った』とメッセージを送るために打ち込み、送信ボタンを押そうとした………その時だった。
バスが激しく揺れ、俺は右側にあったガラスに激しく頭をぶつけて甲高い音を耳にしながら意識を散らす。
「っ…………」
額で撥ねる何かに気付いて目を開ける。
「イテテ………あ゛?」
周りを見渡すとそこはどこかの公園で、俺はその中にあるベンチの上で寝転んでいた。
(冷やいな……)
額の上で未だに撥ねる何かを手でこすりながら体を起こす。擦った指を見れば、しっとりと濡れていた。
そのまま指をこすりながら上を見上げる。すると俺が寝ていたベンチの少し上の辺りに木が生い茂っていて、そこから雫が落ちてきている。
「………つか、ここどこ?」
そう呟く俺の言葉の答えは
「んとね。死んだ後の世界的な?」
そう楽しそうに言いながら突然現れた赤いチェック柄の帽子を被り、同色、同柄の合羽を着た少女によって与えられた。
「は?」
いきなり死んだ後の世界と言われても理解ができずに固まる。
そんな風に固まる俺に対して目の前の少女は
「だからね、死んだ人が来る世界だよ!!」
「てことは………俺死んだの?」
「そうだよ!!」
「そうだよじゃねーよ!!!」
聞き返した問いに対して少女の両手を広げながら楽しそうに宣言した言葉に、俺の悲痛な叫びがその空間内に響いた。
「ところでー、お兄さん?」
項垂れたまま崩れ、うわごとのように、自分に言い聞かせるかのように「嘘だ」と言い続ける俺に対し、少女は俺の目の前に女の子座りをして俺の頭をはさみ、顔を無理やり持ち上げてからそう言った。
「なんだよ。今俺は絶賛絶望タイムなんだよ。今俺にかかわるなよ。」
無理やり持ち上げられて目を合わさせられる。それが嫌だと必死に抵抗しながら俺はそう言った。だが、
「生き返りたい?」
その少女のいきなりの爆弾発言に
「そりゃ生き返りたいわ!!」
即答せざるを得なかった。すると少女は
「じゃあね~、お兄さんの記憶を読ませてもらって~、お兄さんがした最後の約束が見えたんだけど~」
「最後の約束?」
「眼鏡をかけた子としてたでしょ?『救えるなら救うんだけどなぁ……』って。」
「あ。」
確かにサークルの部室から出る前にそんな約束をした。
同じサークルの曾良(ただ、サークル内限定の綽名であって本名ではない。と言うか、本名と果てしなくかけ離れている)と『魔法少女育成計画』と言う最近アニメ化された作品について話していたときのことだ。
『なんでたま死んでまうん。』
魔法少女育成計画について話していて、生存者の話になったときに突然曾良はそういった。
『別に何か生き残る方法があるだろ。あらかじめゲームを開始させないとか、たまがスイムスイムの正体知りそうなタイミングで止めるとか。』
俺はそう言って首をかしげる。実際問題そうしたら別に問題ないじゃんと俺は思っていた。
『それが無理やん。無理だから嘆くぐらいしかできないやん。』
曾良はそう言って嘆く。
『う~ん。あ、ぶっちゃけ魔法少女育成計画という作品のルールの中で解決しようとするから無理が出るんじゃねーの?別の作品の何かの要素入れてみたら?』
そんな曾良に対して俺は解決策を唱えてみた。すると
『………それは邪道だろ。』
急に真顔になって曾良はそう言った。しかし俺は
『邪道でも”道”としてはアリ………だろ?』
そう言って口角を上げる。そんな俺の不敵な様子を見て
『まぁ。あるかもしれないが……いや、無理だろ。〇〇〇〇〇が倒せない。』
曾良はそう言って唸ったが、結局普通の攻略手段では攻略不可のラスボスがいると言う問題点を唱えた。
『そっちに関しては俺、突破口見出してんだ~。(別に確実に倒す必要はないし)』
脳裏にある意味反則技を思い描きながらそう告げる。
『はぁ。だったらどうするつもりなんだ?』
その曾良の問いに反則技を実行するために必要な生存方法を考え、一番俺にとって身近で当り障りのない方法を思いついて告げた。
『ライダーだよ
俺が軽い調子でそう言うと
『ほぅ。だったらそれで無理なく解決させてみろよ。』
曾良はメガネのブリッジを軽く持ち上げながらそう言ってきたから
『そうかいやってやるよ。俺だって
俺も食い気味にそう答えた。
『救いたいって誰だよ?』
俺が言った言葉に引っかかったのか曾良はそう言って聞いてくる。
『トップスピード。』
『……それ助けたら動悸無くなるんじゃないか?』
『別に動悸がなくなってもいいだろ。そもそも殺し合いをやるってこと自体がおかしいんだよ。』
『それやっちゃったら楽しみがなくなっちまうだろおぉん!?』
『ハハッ!!人が死ぬのが楽しい?そんなのクソ喰らえだ!!』
俺はそう言って家に帰るためにリュックを背負う。
『おい、逃げるのか?』
俺のその行動に対して曾良はそう言って訪ねてきたが、
『書いてくるんだよ!極力誰も死なない、そんなハッピーエンドを迎えられるまほいくをな!!』
そう言ってから部室の扉を開ける。それから…………
「挨拶して部室から出て、バスに乗ってから事故か何かにあって今だっていうのにそれがどうしたんだよ?」
目の前でニコニコしながらしゃがみこんで両手を膝の上に置き、その手で顎の下を支える少女へそう聞くと
「
「え…?」
その問いは悪魔の誘いだった。その問いに対して俺は少し考える。
(確かに、現実にすることができるかもしれない。だけど、そもそも俺って本当に死んでいるのか?実はただ単に瀕死の状態で病院にいるだけで死んでいないのかもしれない。その状態の俺に悪魔が付け込もうとして来ているだけなのかも。)
そこまで考えたところで
「ぶ~。こんなかわいい少女を捕まえて悪魔って失礼しちゃうな~。」
目の前の少女はそう言って笑った。
「………俺心の声漏れてた?」
無意識のうちに馬鹿みたいに口を半開きにしながら尋ねる。
「ううん?だって神様だもん。心の声を読むぐらい簡単にできるよ?」
しかし、少女は楽しそうに嗤い、そう言った。
その言葉に対してがっくりと項垂れる。
そんな俺に対して少女は
「そんなことよりも早くこの紙に書かれた質問に答えて。ハリハリー。」
と言いながら俺の顔に紙を押し付けてきた。
「ぁんだよ……?」
不満と不信感を出しながら押し付けられた紙をはがして、書かれている文字が読める距離へと動かす。
書かれていた質問は3つ、
『欲しいもの』『欲しい能力』『追加であと一つ』
だった。
「…………ちょい待ちで。」
「オッケー。」
紙を床?に置き、腕を組んで考える。
(これは要は転生特典的なものと考えていいんだろうか。と言うことはこの選択ミスったらかなり厳しいことになるのは間違いないよな。なら欲しいものは安全な場所。能力は治癒能力にでもしておくか………)
そこまで考え、考え始めたところで渡されたペンで書きこんだところでふと気づく。
(………と言うか、さっきの発言ってまさか俺”まほいく”の世界に飛ばされるのか?)
そう思って俺は尋ねた。
「お前がさっき生き返りたいかって聞いたのは魔法少女育成計画の世界に転生して人生をやり直したいかってことか?」
すると少女は俺の顔を指さして笑いながらこう返した。
「違うよ。私がさっき『生き返りたいか』って聞いたのは私を楽しませてくれたら君が死ぬ数分前に戻すってことが言いたかっただけ。」
そう言うと少女は俺に背中を向け、首を反転させて逆光で顔を暗くしながら
「それに送る先なんて教えたらつまらないじゃない?」
そう言った。
「その行先次第で選択肢がいろいろと違ってくるんだが!!つか、シャフ度すな!!逆光がうっとうしいんだよ!!」
その態度に対して俺はそうツッコむ。
(どこに行くかがわかんねーっつーことは
自分の頭の中にある記憶の中から万能性が高い能力を持ったキャラクターが出てくる話とかそう言うものを思い出す。
・
・
・戦極ドライバーとロックシード
・魔法の指輪
・心意システム
・エグゼイド
とりあえずざっと考えてこんなところだろうか。今度は思いだした能力のデメリットを考える。
・
魔力を消費して、指で文字を書くとその文字に込められた概念が現実のものになる。
しかし、文字を書いている途中で妨害などにあって書くのをやめると書きかけていた文字が消失する。書き間違えた場合も同様。
デメリットは俺が焦りやすい性格なので書き損じする可能性があること。それともともと漢字の読みは得意だが書きはとても苦手だということ。難しい漢字を使おうとして自爆する可能性がある。
→保留
・
仮面ライダー555に出てきた主役のたっくんが変身する際に使うギアツール。
本来は作品のラスボスであるオルフェノクの王を守るために制作された道具で、オルフェノクでないと変身できない。
作中に出てくる5つのギアの中で一番安定さに優れており、色々と拡張することで様々なことができるようになる。
デメリットはオルフェノクと言う人外になることと、オルフェノクって短命な種族なのでもし短期決戦で目の前の少女が満足する結果を出せなかったら死んでしまうこと。
その点を考えるとぶっちゃけかなりヤバい。
→ダメ
・戦極ドライバーとロックシード
仮面ライダー鎧武に出てきた変身ツール。ドライバーとロックシードと呼ばれる錠前を使って変身できるようになるんだが……ロックシードの入手手段が世界に危機を及ぼしてしまうのでアウト。むしろ小説版でみんなが使っていたロックシードってどうやって手に入れたんだよ………
→ダメ
・魔法の指輪
俺自身の抱えるトラウマが多すぎてそのまま俺が消えてファントムを生み出す可能性が高すぎるからダメ。絶対。
・心意システム
ちゃんとした師匠がいないと闇落ちする可能性が高すぎて、闇落ちしたら世界に災厄を振りまくからダメ。
・エグゼイド
一度ワクチン接種みたいな感じでバグスターウィルスに感染する必要があるが、多彩なガシャットを使いこなせれば陸戦、空中戦はともかく電子戦も多分行ける………
「あ」
エグゼイドについて考えていたときにふとあることを思い出した。
「どうしたんだい?」
目の前の少女は突然声を漏らした俺に対してそうやって聞いてきたが、俺はそれに気づかずに自分の思考の深みへと没頭する。
(エグゼイドのレベル99の必殺技にはリプログラミング機能がついていた。と言うことは魔法少女に
思い出すのはシャチョーこと仮面ライダーゲンムに変身する檀 黎斗の最期となった回の戦闘。
あの時、エグゼイドはゾンビみたいに絶対死なないシャチョーを
(それを魔法少女たちに実行すればデスゲーム自体をなくせるんじゃないか…?)
そう思った俺は特に深く考えずに最期の欄の中に『全部のガシャットとそのハード』と書いた。
欄の中にきっちり要望を書き終え、ペンを置く。
その瞬間、いきなり視界は真っ白に染まり、まぶしさに耐え切れずに俺は目を腕で覆った。
「行ってらっしゃい
そんな声が聞こえた。と思うのと同時に白濁した視界は今度は暗転し、気づけば森の中にいた。
「ここは……」
急に森の中に投げ出され、そう呟く俺の顔に勢いよくA4用紙がへばりつく。
「なんだよ……ったく!」
へばりついた用紙をはがし、月明かりにさらしてみるとこんなことが書いてあった。
[無事についたかな?今君が立っているところから北に数十メートル行ったところに君が目指す未来への第一歩があるよ。]
[そして君が立っているところから西に5メートル行ったところに君が望んだものをまとめて置いておいたから。]
[そして、君が望んだ安全な場所。それはいまいち定義がよくわからなかったからゲーマドライバーを使って展開できるゲームエリアをそれと定義しておいたよ。]
[最後に言っておくけど君の体のことを考えて最初は黒いガシャットしか使えないようにしているからね。]
[それじゃあ、バイビー。]
「……………」
A4用紙に書かれていることを見終わり、手をぶらんと下におろした状態で黙りこくって空を見る。
そして内心
(バカヤロー!)
と叫んだ。その理由はシンプルで、書いてあった
黒いガシャット。それは仮面ライダーエグゼイドの作中で『プロトガシャット』と呼ばれるライダーたちが使うガシャットの原型となったものだ。
元々、作中で大量の消滅者を出した”ゼロデー”を引き起こしたものと言われ、使用する際に副作用としてかなりのダメージが使用者には与えられる。
シャチョーがプロトマイティアクションXを捨ててデンジャラスゾンビガシャットを使いだした理由も本人曰くそのダメージで体がボロボロになっていたために都合がよかったからだった。
それと同様の例を挙げるとスナイプに変身している大我もゼロデーの時はプロトバンバンシューティングを使って戦っていて副作用によるダメージでうまく体を動かせなくなり、グラファイトに敗退している。
と言うこれらのことから考えると、もし俺がいきなりプロトガシャットを使うと、下手をしたスナイプZEROに出てきた大我の親友の牧と同じように副作用で血を吐いて倒れることになりかねない。
そして、倒れたまま死んでしまうとそれこそ何のためにここにいるのかわからない上に犬死になる。それは正直嫌だった。それこそこのまま北に行きたいぐらいのレベルで。
だがしかし、それを無視して先に北に行って殺されそうになった時に本格的に身を守れなくなる。
(ちっ!しゃーねぇ、先にガシャット回収するか…。)
仕方なく、いや本当に仕方なく。俺は苦虫を噛み潰したような顔をしながら星を見て、方位を確認してから西の方を向いた。
西側は草むらが鬱蒼と茂っているせいで何も見えない。
さらに憂鬱な気分になりながら手で背の高い草を掻き分けつつ紙に書いてあった通り5メートルほど進むと、足元に何かが当たった。
つま先に当たったものを持ち上げる。それは俺からしたら見覚えがありすぎる黒いトランクケースだった。
「シャチョー、お宅のセキュリティどうなってんすか……」
プロトゲキトツロボッツが欲しくて買ったときに持っていたプロトガシャットを並べて入れて言った言葉をつい呟く。
それをもってさっきまでたっていた場所へといったん戻り、トランクの留め具へ手を駆ける。
留め具は少し抵抗があったもののすぐにパチンと小気味良い音を立てて開き、中に仕込まれているバネによって上蓋が微かに上がった。
それによってできた隙間に手を突っ込み、持ち上げる。
「………」ゴクリ
無意識のうちにつばを飲み込む。
目の前には俺が見ることが叶わなかった光景が、広がっていた。
マイティアクションXからドラゴナイトハンターZまですべてのプロトガシャットがケースには詰められており、そして上蓋にも何かが引っ付いていた。
「ドライバー……」
上蓋には目に刺さるかのようなライトグリーンをベースにショッキングピンク色に塗装された扉型カバーを付けたバックルのようなもの、
ゲーマドライバーが上蓋につけられたスポンジに埋め込まれていた。
「落とさねーようにしないと……」
慎重に、落とさないように慎重にドライバーを埋め込まれているスポンジから引っ張り出す。
そして取り出したドライバーを俺は腰に当てた。
ドライバーの左右から暗灰色のベルトが飛び出し、腰に巻きつく。
一度深く深呼吸する。
それから俺はケースに入っていた基本的に黒一色で染められているプロトガシャットの中で一つだけ異彩を放っている紫色のガシャットを手に取った。
「………」
無言でそれを右腰よりも低い位置に右手を脱力するかのように構え、そして
「変身」
静かにそう言ってスイッチを押しこんだ。
本来ならば<MIGHTY ACTION X!!>の音声とともにゲームエリアが展開。そして茶色い板チョコレートを周囲に当てたかのようなブロックが俺の背後に展開されるゲームスタート画面から飛び出す……はずだった。
<BBoooo!!>
エラー音が鳴り響くのと同時に手に電流が走ったかのような痛みが生じる。
「イツッ!?」
小さく悲鳴を上げて俺はプロトマイティアクションXを取りこぼしてしまった。
「なんで……まさか、黒色限定だからマイティアクションXはだめってことか?」
痛みが走る右手をさすりながら取りこぼしたプロトマイティアクションXを拾ってケースに収めなおし、そう一人呟きながら今度は黒一色に染まっているプロトタドルクエストに手を伸ばし、起動スイッチを押す。
しかし………
「
先ほどと同様にエラー音と同時に電流が走ったかのような痛みに襲われ、取りこぼすことになった。
結局、痛みに耐えながら一つずつ試したお陰であることが分かった。
何故かはわからないが、俺はマイティアクションX、タドルクエスト、バンバンシューティング、爆走バイクの主役級ライダー5人が使っていたガシャットと同じガシャットを使用することができないらしい。
そして……
「4つはあれなのになんでこっちはいけるんかねぇ………まぁ。レベル3として使うつもりだったガシャットが
今俺の周りには大量のアンプ(軽音楽部とかバンドがライブをやるときにギターをつなぐ機械)が設置されている。恐らくそれを破壊したら
右手で本来ならば黄色で塗装されているプロトガシャットをもてあそびながら考える。
しかし、そんな風に考えているだけでは何も始まらない。
だから俺は
「ま、とりあえず変身しますか。変身。」
ポーズも何も決めず、ただ気楽に右手に持ったプロトドレミファビートガシャットを右手の人差し指で回して透明なパーツがついている方を下に向ける。
そしてそのクリアパーツを腰につけたゲーマドライバーにある二つのスロットの内の中心に近い方へと刺し込んだ。
<ガシャット!!>
その瞬間、体中に剣でも突き刺されたかのような痛みが走る。
「うぐっ!!」
胸の奥の方から昇ってくる熱い何か。鼻を突きさす鉄臭い匂い。
昇ってくるものを必死に耐えようとするも最終的に俺は
「カハッ!!」
口からかなりの量の血を吹き出し、倒れそうになる。だが膝に手を置き、必死に耐えた。
「死んで……たまるか……」
そんなふうに耐えていると突如体中の遺伝子が書き換えられるイメージが脳裏に浮かび上がる。
螺旋を描くように宙に浮かぶDNAに大量のオレンジ色の微粒子_バグスターウィルス_が憑りつき、まるでコンピューターウイルスがコンピュータのプログラムを書き換えるかのように光る。
「GAXAAXAXAAAAAAAAAA!!!!!」
月が雲に隠れ真っ暗で人気の一つもない森の中、俺はもはや獣の咆哮としか言いようがない
俺が絶叫する中、体中から漏れ出した大量のオレンジ色の微粒子が近くに置かれているケースへ迫る。
そして、並べられていたプロトガシャットの近くでそれぞれ多彩な色へと変化して吸収されていった。
あるプロトガシャットはピンク色へ、あるプロトガシャットは橙色へ、あるプロトガシャットは金色へと言った風にだ。
そして色が変わったガシャットたちはそのまま俺の体内へ吸い込まれていく。
ただ4つほど、色も変わらず、吸い込まれもせずに俺の近くに残ったガシャットがあった。
そのうちの2つはガシャットギアデュアル、そしてデンジャラスゾンビガシャット。
仮面ライダークロニクルガシャットとときめきクライシスガシャットはもともと近くにはなかった。
そして俺の腰につけられたゲーマドライバーに装填されたままのプロトドレミファビートガシャット。これも黄色い粒子と化したオレンジ色の微粒子が吸い込まれてはいたが、色が変わることも俺の体内に吸い込まれていくこともなかった。
数十秒にかけて発せられた声にならない獣のような叫びは終わり、そのまま倒れそうになる。
だが、世界はそんなに甘くなかった。
その咆哮に、引き寄せられたものがいた。
そして俺の姿も変わって行っていた。
<Let's ゲーム!! メッチャゲーム!! ムッチャゲーム!!
<I'm a 仮面ライダー!!>
白いずんぐりむっくりな姿。
ビートゲーマーレベル1。
音ゲー、いわゆる音楽ゲームの力を使い戦う戦士へと。
その様子を見て刹那驚くもニヤリと笑う女性が木陰から覗いていた…………
SEE YOU NEXT STAGE!!
感想、評価楽しみにしてまーす。
因みに書くペースは一万字越えたら出します。