魔法少女救命計画   作:先詠む人

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1年ぶりですね。
そして大変申し訳ないのですが、強引にこの物語を〆ることになりました。理由は
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=210179&uid=116136
こちらのURLの活動報告を見てください。

本当に申し訳ありません。


Final stage 404 Not Found

「……という感じです。もういいでしょう?私も忙しいですし、これから先のことは全てそちらの方でデータを取ってあるんでしょうから。」

 

 私はそう言いながら立ちあがる。

 

「あ、一寸待ってください。まだ話は…」

 

「動くな!!」

 

 そう言いながら立ちあがると目の前の魔法の国から来たという少女二人は困惑したような顔で私を引き留めようとした。

 

「………」

 

 お腹にジッとした痛みを感じながらもくだらない。そう思いながら侮蔑の感情を隠しきれずに私はその少女たちの顔を見た。彼女たちの表情から読み取れるのは困惑、そして恐怖の2つだった。まぁ、仕方ないかもしれない。私が部屋を出ようとした瞬間私のお腹は片方の少女が持っていた槍で貫かれていたのだから。でも、まあ……()()()()()

 

「もう私は何もあなた方にお話しすることはありません。ゆえに帰らせていただきます。」

 

 私はそう言ってお腹から槍を引き抜き、そして部屋を出た。

 

 ★◇★◇

 

 

 

 月が雲に隠れ、空が地上の光が反射してうっすらと明るい名深の空の下。

 

「やっ!!」

 

「はぁっ!!」

 

 夜のとばりの中で二つの影が何度も交差して小刀と長刀がぶつかり合い、甲高い音を奏でながら火花を散らす。

 

「華乃……小雪……」

 

「小雪さん……」

 

 空を舞いながら夜闇に光る剣戟を複雑な心中で見ながら箒の上でそう呟く。同じ気持ちになったのか、箒の後ろに乗っているハードゴアアリスこと亜子ちゃんも相変わらず小雪に首ったけだけど同じ調子でつぶやいていた。

 

 数年前のあの日、俺たちみんなは恩を仇で返すようなマネをしてしまった。

 それを小雪はえらく気にかけて、華乃も表面には出さないけれど同じぐらい気にかけてるみたいだ。

 今も気にしていないのはきっと今ここにいない、そしてこの街の出身の魔法少女の中で唯一本名を知らないラ・ピュセルだけだろう。

 

 (アイツ)が殺されて喜んだのは彼女だけだった。

 その理由は彼女だけあの戦いにこちら側として参加してはいたといっても最後の最後、そのほんと最初しか一緒に戦っていないからと言うのが大きいんだろう。彼女だけはアイツに対する私怨をいくら説明しても持ち合わせていたし、頑ななせいで小雪がいくら説明しても「スノーホワイトたちは魔獣に騙されているんだ」と聞く耳を持たなかった。そしてその問題を解決できないまま俺たちと一緒に大我が「今すぐにでも治さないと命に係わるぞ!!」っていうほどの力を持ってこの戦いになだれ込んだようなものだったしな。

 

 アイツに対する態度が俺たちとラ・ピュセルとの間で明確に違うというのが分かったのはアイツが死んで、奴らが撤退したあと、クロノスとか名乗っていたファブが変身した怪人に序盤に吹き飛ばされてからずっと姿をくらましていながらも所々傷だらけになってひょっこりと姿を現したラ・ピュセルが言ったこの一言からわかった。

 

『魔獣は死んだのか?』

 

 ラ・ピュセルがそう言ったその瞬間、まず小雪がブチ切れた。そして華乃も。

 俺もカチンときて訂正させようとしたその時、小雪がラ・ピュセルの顔を恐らく彼女なりの全力で殴った。パッと見た限りじゃあそれほどダメージはなさそうだったが、ラ・ピュセルにとっては違ったらしい。

 

『え……スノーホワイト……なんで!?』

 

『あの人を……あの人の事実を知ってもなおそんなことが言えるそうちゃんなんかもう知らない!!』

 

『あ……待って…』

 

『………』

 

 そう叫んでから小雪は泣きながらどこかへと走り去り、亜子も追いかけていく。

 華乃は侮蔑の目をラ・ピュセルに与えてから小雪を追いかける。俺は俺で小雪が何であんなことをしたのかと言う事情を説明しようと思ってラ・ピュセルに近づくと

 

『なんで……なんで小雪……』

 

 と虚ろな目をしながら言っていたからとりあえず頬を軽くたたいた。

 

『おーい』

 

 軽くたたいても反応がない。仕方がないから結構強めにはたくとやっとこさ正気を取り戻した。

 

『お前さぁ~、なんでそこまでアイツを目の敵にするのかとかそう言った事情はよく知らないけどスノーホワイトの気持ちも考えなよ。』

 

『……』

 

『お前はずっと一緒に居なかったから知らないんだろうけど、ファブはこの街の人たちみんなを殺すつもりだったんだぞ?その手始めに俺たちを殺して手駒にしようとしてた。』

 

『なぁラ・ピュセル。お前が魔獣って呼んでひたすら殺意を向けていたアイツはそんな風に言われながらも俺たちみんなを守ろうとしてくれていたんだぞ?』

 

『ファブが死んだ魔法少女たちを人形のように操っているのは見てたはずだろ?なら予想はつくじゃないか。』

 

『……さい

 

『ん?何言ってるんだ?』

 

『うるさい!うるさい!!うるさい!!!』

 

『おぅ!?どうしたよ、急にかんしゃくを起こしちゃって。』

 

『うるさい!!そんなこと知ってたさ!でも、アイツに。魔獣に小雪を取られるのはシャクでしかなかったんだ!!』

 

『だからって……てさっきから小雪小雪ってもしかしてスノーホワイトの本名って小雪って言うのか?』

 

『!!』

 

 俺がつい気になったことを聞いてみるとしまった!とでも言いたそうな顔でこちらを見るラ・ピュセル。そしてそのまま

 

『ッ!!』

 

 自分の武器である大剣をその場に取り落としてしまうほど動揺した様子でその場から逃げ去ってしまった。

 

 それ以降、ラ・ピュセルと小雪は会ってないそうだ。どうも、リップルづてで聞いた話じゃああの場から逃げ出したラ・ピュセルはそのまま近くにいた魔法少女と一緒にどこかへ行ったきり行方不明らしい。

 

 結局、彼女と俺たちの間にある溝は埋まるどころか深まっただけで、解決する兆しすら見えない。

 

 そして俺が華乃たちと離れている間に何か話でもついていたのか、俺が再び華乃たちと合流したら小雪が華乃に手合わせをしてもらいながら鍛えられることになっていた。

 

 とはいっても、小雪は今も学生。華乃は大学に行くかどうか迷っていたから俺が背中を押して行かせた。

 だから、小雪がたまに力を求めるあまり暴走してどこか遠くへと言ってしまうことがあったときは俺が魔法で追いかけて夜が明けるまでに家に帰る様に計らってるから今のところ俺が結構寝不足と言う問題以外起きてない。

 

 あ、そうそう。娘も生まれたんだ。だから当分の間は行動するのもこの街の中だけにしてくれって小雪にお願いした結果どうにか鍛錬だけで我慢してくれてるみたいだ。たまに我慢できずによその町に行っているみたいだけど。

 

 娘のことは本当ならアイツに名付け親になってもらおうかなとは思ったりもしたけど、アイツはもういない。だから昇一と二人で考えた名前を付けた。

 

 室田咲良(さくら)、生まれた日に丁度桜の花が咲いていたからそう決めた。

 

 俺たちを守って最後まで戦い抜いて死んだアイツは、今も俺たちを見守ってるのか。そんなことを気にしてしまう。

 そろそろ咲良がぐずりそうな時間帯だし、帰らないと。

 

「おーい!今日は帰るからな~!!あまり遅くまでやってるんじゃねーぞぉ!!」

 

 亜子を近くのビルの上に下ろしてから剣戟が白熱しつつある二人のすぐそばまで箒で近寄ってそう告げてから家に帰る。

 

 帰って玄関の前で変身を解く。それから鍵を開けて部屋に入ると予想通り咲良がぐずっていて、昇一が起きてあやしていた。

 

「お帰り。どうしたの、こんな時間に外出なんて。」

 

 昇一は時計を見てそう言ってくる。相変わらず俺は昇一に俺が魔法少女になったという真実をあかせてない。理由は恥ずかしいからってのものあるけどあまり知られたくないからってのもある。

 だから俺は

 

「ちょっと昔の仲間から電話があってね。」

 

 そう言いながら持っていたスマホを顔の横で振る。

 

「恋愛相談だっていうからさすがに聞かれるのは気恥ずかしくてさ。外で話してたんだよ。」

 

 そうごまかしながら咲良を受け取り、あやした。

 

 こんな普通の日常が続いていくと良いな…って思うけれど、やっぱりあいつのことが引っかかって影が差してしまう。

 

 そんな日々がこれからも続く…そう思っていた。その日までは。

 

 

B市で彼っぽい人影を見ました。

 

 

 小雪からそんなメッセージが送られてくるまでは。

 

 

 ◇  ◇

 

 

―B市—

 

 町の中心街と言うことでアーケードにはがやがやと周囲の喧騒がけたましく響き渡る。

 

 後でつばめさんにすごい怒られるかもしれないけれど今さっきこの近くの銀行で立てこもり事件が起きたという情報を手に入れてすぐに家に帰らずにこっちに変身してから来て解決してきたところだ。

 

 無事に銀行強盗を拳で()して警察に引き渡せるように手配してからそのままその場から離れた。

 多分今頃解放した人質さんたちが外に逃げ出して、警察が銀行内に突入しているころだろうと思う。

 あの一件の後、最終的に生き残っていた私たちは全員魔法の国の魔法少女となるか、記憶をけして元の一般人としての生活に戻るかの二択を突き付けられた。

 大我さんが身を削って色んな手段を使ったお陰でバグスター?とか言う電子生命体の状態から生身の人間として蘇生された殺されてデータ化されていたねむりん以外の魔法少女たちは皆記憶を失って今は各自それぞれの生活をしていると魔法の国から来た魔法少女から聞いた。

 けど、大我さんのことでそうちゃんと喧嘩別れしてしまったことと、大我さんに恩を仇で返す様なことになってしまったこと。それを私は今でも気にしている。

 

「……そう言えば一度もこの街には来たことがなかったな…」

 

 そんなことを思いながらすぐ近くのアーケードに入ると、偶然たいがさんがいつも着ていたコートをディスプレイしているお店を見つけた。

 

 それを見ながらつい大我さんのことを思い出して

 

「たいがさん……」

 

 そう無意識に呟き、自己嫌悪に陥る。返事はない。あるわけがない。だって彼はもう死んでるんだから。

 

「全部持っていく…………この力は……バグスターウィルス(このちから)は決して渡さねぇ!!

 

 鳩尾から大量の血を流しながらそこに手を当ててそう叫ぶたいがさんの様子が脳裏をよぎる。

 

 

GAME(ゲーム) OVER(オーバー)

 

 そしてその直後にそんな電子音を鳴らしながら白い光のグリッドになって飛散して消滅するのも。

 

 あの時の記憶を思い出して俯いていた顔を上げ、その場から離れようとする。すると

 

「せんせーどーしたー?」

 

 後ろの方からそんな声が聞こえる。そして

 

「ん~、なんか呼ばれたような気ぃしたんだけど……知り合い居ねぇっぽいし気のせいだわ多分。」

 

 とても聞き覚えがある声がした。慌てて周囲を見渡す。するとディスプレイのガラスに反射する人ごみの中、首に黒色のヘッドフォンを巻いて紺色のパーカーについているポケットに手を突っ込み、首をかしげながらこっちを見ている青年が立っていた。

 反射的に振り向くも、その影は振り向くまでの間に既に人ごみの中に紛れて見失っていた。

 

「たいがさん…?」

 

 「それにしてもせんせーはなんやかんやで合格ってスゲーな。」

 

 「言うない。言うない。その代わりガチで寝不足で死にそうなんだからオールとかそう言うのは勘弁してくれや。」

 

「……」

 

 声だけは喧騒の中で聞こえる。しかし、そのまま声は遠ざかって行って聞こえなくなってしまった。

 

「ほんとにたいがさん…?」

 

 呆然としながら零した私のつぶやきは風に乗って流されていった。

 

 

 

 ◇  ◇

 

 しばらく話しながら移動して、ふと振り返る。

 

「どうしたせんせー」

 

 急に立ち止まった俺の様子がおかしいと気づいたのか一緒に街に出て来ていた友人に声をかけられる。

 

「ん~、さっきまた呼ばれた気が本当にするんだけどなぁ………」

 

 首をかしげて顔を掻きながらそう言うも、

 

「気のせいってさっき自分でも言ってたじゃん!早くカラオケ行こうぜ!!」

 

「今夜は焼肉だぜ~!!フッフー!!」

 

「食い放題の安いのだけどな」

 

「それを言うなし。貧乏学生に叙〇苑とかムリゲーだから。ムリゲー。」

 

 「「「ハハハハハ!!!」」」

 

 そう言って一緒にいた友人たちは店のある方へ動き出す。

 バイト代が入っているからとはいえ、さすがに高級焼き肉店とか無理。だけど、全員なんだかんだで就職が終わったという記念にどこかでパーッと贅沢したい。

 と言うわけで中心街まで繰り出して焼肉食べ放題でも行くかとなったのは()()()話。

 幸いなことに今日は休日なうえに明日は俺ら全員学校の授業もないから明日まで調子に乗って完全徹夜してもそれほど問題はない。ただ、公務員試験を受けた結果が気になっていたためにここ数日まともに寝れてなかった俺の体力的には完全徹夜は結構きつい。

 

 最初は金がないとか体力的にきついとか卒論書かないととかいろんな理由で断ろうかなとは思っていた。

 だけどまぁ、どうするにしろ俺のゼミの先生は明日明後日は学校に来ておらず、今家の自分の部屋のPCに入っているデータを学校に持って行ったところで先生に提出できないからそれほど気にしなくてもいいかと思い、結局遊ぶことにした。

 

 アーケードを抜けた先にある百貨店の時々テレビ撮影を行っているところのすぐそばでもう一度振り返って通り抜けてきたアーケードを見つめる。

 そこにはたくさんの人だかりがいたけれどその中でどこかの学校の制服なのだろうか、白い制服に頭に花飾りを乗せた幻想的な少女が立っているのが見えた気がした。

 

「ん?」

 

 少し、気になって瞬きをしてからもう一度目を開いてみてみる。しかし、さっき確かにいたはずの白い少女はいなかった。

 

「…………」

 

「せんせーおいてくぞ~!」

 

「………わりぃ今行く!!(あの少女をどこかで見たような気がするんだけど……どこで見たんだろうか…?)」

 

 遠くから呼ぶ声が聞こえ、ちらりとさっき白い少女がいた場所を一瞥してからこちらに手を振る友人の方へと俺は駆け出した。

 




あと1話投稿します。

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