エグゼイドの話自体は明日で終わるのかな。多分。来週はビルドとのコラボ界の可能性が高いって聞くし。
個人的にはゴーストを9月末までしたならエグゼイドの方がクオリティ高いんだからエグゼイドもそこまでしてくれよと思いますがそれはそれ、これはこれ。大人の事情って奴が原因だと思われますのであきらめてます。というか、映画見に行きたいけど行けてない。
それでは前回のおさらいを簡単にすると、何者かによってラ・ピュセルがバグスターウィルスに強制的に感染させられて龍人になり、暴れました。
その龍人自体は大我が最終的にドラゴナイトハンターZガシャットとタドルクエストガシャットを使ってハンタークエストゲーマーレベル5になって倒しましたが、そのあとにさらなる問題が。
何が原因なのかラ・ピュセルが魔法少女の姿から戻れなくなってしまいました。
呆然と自分の家の屋根の上で立ち尽くすラ・ピュセル。今回はそれと同じタイミングで教会内部で目覚めた大我から始まります。
……前回のって打ったら”前回のラブライブ!”て検索候補に出て困惑した先詠む人の簡単なおさらいでした。
「……っつ…」
大理石の冷たい感触とは別の冷たさを頬に感じながら目を開ける。目を開けると視界の先には教会の壁が大きな穴をあけるように破壊され、その付近の椅子が壊れて散乱している様子が広がっていた。
「一体何が…………ってなんだこれ?」
そう呟きながら体を起こすと、俺を中心に2つの地点から波紋を広げるかのようにヒビが走っていた。
「一体何が起きてんだ俺の体……」
渦を巻くようにひびが入っている床の陥没している2か所を見ながらそう呟き、呆然と俺の手を見る。そのまま動かして穴から入って来る光にかざしたその手は、掌紋が円を描くように刻まれていることを除けば別に変ったことは何もなかった。
「俺の体のことを含めて一体どうなっちまってるんだこの世界は……」
そう一人漏らす俺の言葉に答える者はだれ一人いない。だが、その問いを聞いているものはいた。
「!誰だ!?」
カサッと言う音で壊れた壁のすぐそばにある柱の陰に誰かがいる気配を感じて立ち上がり駆け寄る。しかし、そこには誰一人おらず。その場所にはただ風が円を描くように木の葉を巻き上げながら吹いていた……
「そうちゃん大丈夫だったのかなぁ…?」
学校でつい、昨夜のそうちゃんの並みらぬ様子を思い出して呟く。自分では小さな声でぽつりとつぶやいたつもりだったけど、
「お~小雪~、そうちゃんって誰よ~」
「誰だよ~」
「ちょっとやめてよ!!もぅ!!」
親友二人に漏らした言葉を聞かれてしまって色んなところをつつかれながら追及されちゃった……
学校が終わって家に帰ろうとバスに乗り、2人に分かれてからどこかで変身しようとしていた時にマジカルフォンに通知が来ていることに気付いた。
「ラ・ピュセルから?」
学校があるはずの時間帯に来ていた通知に首をかしげながらマジカルフォン片手に物陰に隠れて変身する。
一瞬の光に包まれた後に、私の姿は姫川小雪からスノーホワイトに変わり、そのまま私は物陰から飛び出して高いところへと移動した。
「一体何なんだろう?」
高いビルの屋上の手すりに身を任せて通知を開く。通知の内容はメールでそのタイトルは『助けてくれ』だった。
「っ!!」
唐突に物騒なタイトルに息をのんでしまう。急いで私はメールを開いた。
『
from:ラ・ピュセル
to:スノーホワイト
sub:助けてくれ
理由はわからないけど元の姿に戻れなくなった。
今はとりあえず部屋からベンチコートを持ち出してそれを着て姿を隠してた状態で隠れてる。これを見たらすぐに連絡してくれ。
「戻れなくなったってどういうことなの!?」
来ていたメールを見た直後に慌てて『今どこにいるの!?』とメールを送ると、いつも私たちが集まっている鉄塔の上に今はいると帰ってきたから急いで向かった。
急いで向かっているとはいえ、途中で『助けて』の声が聞こえたのでそちらを優先して解決しながら進んでいると、気づいたときには夜が更けていた。
近くにあるビルのそばから一気に大跳躍して鉄塔の上に飛びつく。飛びついた先の鉄塔の上にはもこもこしているコートを着て体育すわりで顔を伏せている誰かがいた。
「ラ・ピュセル遅くなってごめんなさい!!」
手すりを超えながら声をかける。
「……いいさ。別に君が人助けをしながら遅れるのならばそれは別に構わないよ。」
「ラ・ピュセル…?」
よどんだ雰囲気でこちらをフード越しに見ながら漏らした声はかすれていて、私を不安にさせるには十分だった。
不安に押しつぶされそうな気持を胸に抱いた状態で黙ったままラ・ピュセルの隣に座る。しばらくの間黙ったままラ・ピュセルはジッとしていたけれど、ぽつぽつと話し始めた。
「今朝帰って変身解除できなくなってることに気付いてからずっとこんな格好で逃げ回っているんだ。……ファブに聞いてみても『わからないぽん』しか言わないし、そのうえ『男が魔法少女になるのは普通ないからそれが今になってツケが回ってきたんじゃないかぽん?』とか言われたし、私は全然強くないし……もう私はだめなのかもしれない……」
「そんなことないよ!!だって、私を守ってくれるんでしょ?それに男だから変身解除ができないなんてそれが絶対そうだって決まったわけじゃないんでしょう?諦めちゃだめだよ。」
「小雪…」
「この姿の時はスノーホワイト。でしょ?……どうしたの?泣いてるの?」
フードから角を覗かせながらラ・ピュセルはうつむいたままで泣いているかのように肩を震わせていた。
「私は……
肩を震わせながら上げた顔を覆うフードの下には泣き続けていたのか真っ赤になった眼があり、涙の跡が頬にはっきりと残っていた。それを見て私はちょっと躊躇してから優しくラ・ピュセルを抱きしめる。
抱きしめたときに息をつめたような呼吸音が聞こえたけれど私はそのままフード越しに頭をなでた。
「今は甘えてもいいんだよ。」
私がそう言うとラ・ピュセルはそっとこちらへと手を伸ばしてしっかりと私の体を掴んだ。そのまま二人で静かに抱き合う。
数分ほどそうしていただろうか、落ち着いた様子のラ・ピュセルが恥ずかしそうに顔を朱に染めながら私をゆっくりと引きはがし、
「ごめん取り乱してた。」
と謝った。私は別にいいよと手を横に振りながら笑って言って、そのまま二人で笑っているとキィーンと空気を切り裂くような音がした。
「まずい!!誰か来る!!」
トップスピードか、それとも別の魔法少女か。どちらにしても今のラ・ピュセルを見せるわけにはいかないと思ったから慌ててその場から二人そろって離れようとすると、
「よっ……と!!」
<ガッチョーン!!>
<ガッシューン!!>
あっという間にすぐ近くに来た航空機にしては小さいオレンジ色と黒の二色をベースにした機体。
その中央部にはこの間すぐ近くで見たことがある見覚えがあるバックルが扉が開いた状態でついていて、その開いている扉が閉じるのと同時に人型になったその影がバックルからオレンジ色の何かを引き抜いた。
そして特徴的なあの音とともにその姿が変わる。
「経過観察的な何かでーす。」
白を基調とした姿から白い粒子をまき散らしながら黒いコートを着た銀髪の少年の姿に。少年、たいがさんはそう言いながら光の中から現れて笑っていた。
「経過観察的な何かでーす。」
兎に角刺激しないように、ある種の緊張感をもって俺は痛む左手を隠しながらこの場に臨んでいた。
傷を押して俺がこの場に来た理由はただ一つ。ラ・ピュセルに残っていたあの謎の桃の花と桜の花を組み合わせたようなマークを出すウィルスの種類が何なのかを突き詰めるためだ。
もしあのウィルスが
俺がそのように考えたのはきちんと理由も理屈もある。
まず1つ目の理由、それは浮かんでいたマークが
魔法少女育成計画は小説版の方の原作の表紙では桃の花(確か)が舞っており、そしてアニメ版のオープニングに出てきたタイトルロゴが浮かび上がってきたときに舞っていたのは桜の花びらのはずだ。
この二つが組み合わさったというのがそう考えた根拠の一つ。
2つ目の理由は、バグスターウィルスは本来2000年問題の際に壇黎人が偶然発見したコンピューターウィルスが最初の感染した宝生永夢の体内で進化し、集団感染を引き起こすまでに至ったウィルスだ。そしてバグスターウィルスは
例えば俺が今もこの手に持っているジェットコンバットの場合はバーニアと言う戦闘機とロボットを組み合わせたようなバグスターが該当し、今持っているガシャットの中では最終兵器に近い存在であるドラゴナイトハンターZガシャットの場合はかっこいい生きざまを見せてくれた龍戦士グラファイトが該当する。
これらすべてはカテゴライズされたゲームの
ただ、その魔獣自体は
そのため、どのキャラクターが魔法少女育成計画のバグスターだと断言する証拠がないのだ。
とはいえ、俺が覚えている情報すべてをまとめても花のようなマークが出るゲームはなく、その上ファンタジーなどの上位互換系のゲームのバグスターは出たとしてもバグスターの上位互換の存在は出てこなかった。
と言うことを考えると、こんなことが言える。1系列のゲームにつき、出現できるバグスターは一体までなのではないかと。ただし、これはあくまでも俺が放送を見ていて大人の事情とかを考えながら立てた仮定にすぎない。
と言うわけで、あのウィルスの正体が何のゲームのものなのかを知るためにも俺はもう一度ラ・ピュセルに会う必要があった。
そこで教会で目覚めてから片付けも後回しにして退出し、しばらくの間町を散策しながら夜が更けるのを待っていたのだが、火がまだ完全に落ちていない夕方に駅前で姫川小雪が何やら鬼気迫った表情で急いで物陰へと入っていくのを見かけて動いたのがある意味で間違いだったのかもしれない。普通に
「……何かあったのか?」
そう呟いて俺も追いかけたが、彼女が入って行った物陰にたどり着いたときには上へと白い線が走るのを辛うじて見ることができただけだった。
視界に縦に奔った白い線を無意識に追いかけて首を上に上げる。すると壁を駆けのぼりながらすぐ横のビルの屋上へ飛び乗るスノーホワイトを目視することができた。
「絶対何かあったな!?」
俺はそのことに気付いて慌てて黄緑色のガシャットを取り出した。
彼女が何に対して鬼気迫った表情を浮かべていたのかはわからないが、どちらにせよ彼女の行動方針は人助けが基本だ。
<♪~><
俺も何か手伝えるかもしれないと思い、
飛び出してすぐに前の方に集中してみているとかなり先の方に白い影が跳ぶように素早く動いているのを辛うじて目視出来た。
「あっちか!」
ペダルに足をかけ、信号を守って歩道ではなく車道を走り出す。
最終的に何かをなくした様子の少女を見つけてしまい、その子のなくしたおもちゃ?を探してあげている間に陽がほとんど沈んでしまった。
「あちゃー」
「どうしたの?」
「ん~、一寸夜になってきてしまったから探しづらくなったなって。」
頬を搔きながらそう呟いた俺の言葉を聞いて聞き返してくる少女の問いに答えると少女はつまらなそうな顔をして
「ふ~ん。」
と言った。それからさらにちょっとの間探し続ける。しかし、
「見つからんな~、もしかしたらもう誰かが持ってってるのかもしれんね。」
「そんなぁ………あ、あった!!」
「え?どこに!?」
俺が内心この暗さと人の多さでは探し物が見つかる可能性が低いのではないかと思いながら周囲を探していると少女が突然大通りから一歩外れた裏通りの比較的伝統が少なく、暗い通りの方を指さした。そこに何があるのかが暗いせいで見づらい。仕方がないから首を前に突き出してそちらの方へ歩きながら注視していると
「そこ~!!」
の言葉とともに殺気を感じ、その場から少女を抱きかかえてバックステップで離れようとして気づいた。
(殺気の元はこっちからかよ!!)
抱きかかえようとした少女の手には
「っはぁ……」
突然の凶行に息が上がる。しかし、襲撃はそれで終わりではなかった。
「私たちの勝ち…」
突然後ろから聞こえたその言葉とともに首を絞められる。背中には柔らかい二つの山が押し付けられており、ある種の男からしたら夢のような状況なのかもしれない。だが、殺す気で頸動脈を絞められている身からすればそんなの夢は夢でも悪夢でしかない。
「っけんな!!」
欠けていく意識の中で高校の時に一応必修科目としてやらされていた柔道で散々やらされた一本背負いの要領で上半身を一気に折り曲げ、そのままの勢いで地面にたたきつけようとする。
「!!」
それに気づいたのか襲撃者は地面に接触する直前で魔法を発動したらしく、俺の首は襲撃者の腕をすり抜けるかのように解放される。しかし、急に負担が軽くなったせいで俺も勢いが付きすぎて一回転してしまったため、その勢いを生かして足を少し広げた状態で右ひざ立ちしながら限界まで腰を下ろした状態で着地した。
「水着痴女に天使姉妹か……飛んだ引っかけに騙されちまったな。」
俺を囲むようにその場に立つ襲撃者3人を見ながら俺は引っかけに騙された自信を恥じて苦笑いする。
「ちじょ?なにそれ…」
「スイムスイムは今は知らなくていいことだから!!」
「家の子に何てこと教えてんだお前ー!!」
「いや、俺に言うなし。」
俺が苦笑いしながら言った言葉のせいで一瞬だけ空気が
「こっちゃやらないといけないことがあるんだ。だから邪魔。」
俺はそう言いながらドライバーを腰に当てるのと同時に紫色のガシャットを起動した。
<♪~><
「うわっ!?何このブロック!!」
「ん!!」
「邪魔!!」
ガシャットが起動するのと同時に俺の後ろに現れたゲーム起動画面から大量の立方体に板チョコレートを貼ったようなブロックが飛び出し周囲に設置される。
そして俺を中心に紫色のブロック状の波紋が広がった。
「変身」
<ガッシャット!!>
<♪~>
<
<
周囲に浮かび上がった紫色のガイドライン上を回る15個の窓の中の一つ、本来ピンク色の箇所が紫色で染められている窓を右手で叩く。
叩かれた窓は<SELECT!>の文字を浮かばせながら回転し、そのまま俺に吸い込まれた。
「「なんだそのゆるキャラ!!」」
「……?」
変身が終わってレベル1になるのと同時にそんな声が上がる。お前ら前にも見てるだろうがと心の中で突っ込みたくなったが、よくよく考えたらロボットゲーマーとアクションゲーマーを含めたレベル2が明確に示されているガシャットのレベル1の間には結構明確な差があることを思い出した。
前に変身して見せたロボッツゲーマーレベル1はゲーマの影響を多分に受けているからなのか出来の悪いロボットみたいな外見だったのだ。
それと違って今俺が変身しているゲンムアクションゲーマーレベル1は元となったゲームの主人公マイティをデフォルメしたかのような頭部に白いずんぐりむっくりの体をつけた所謂ゆるキャラのような状態になっている。
「ゆるくて悪いが、本気で行くぜ!!」
そう叫びながら右手にガシャコンバグヴァイザーを召還し、俺は駆け出した。……実はその時に気付くべきことを俺は気づけていなかった。
「本気ってその恰好で何が本気だよ!」
「やっちゃえお姉ちゃん!!」
「……ん!!」
「とぅっ!」
天使姉妹の内の右側に羽根がついている方がその姿を剣に変え、こちらへと突っ込んでくる。それに続くかのように
「動き出しも動き自体も何もかもがおせぇ」
それを見てからぼやきながら俺も動き出す。
この間バグスターと戦ったせいだろうかその動きはやけに緩慢に見え、俺は首を動かすだけで飛んできた剣をかわし、上半身をイナバウアーのようにそらすことでスイムスイムの突きをかわし、左側に羽根がついている方の頭をしっかり握りしめた。
「放せ!!」
俗にいうアイアンクローの状態だというのに元気にこちらへと手を振り回しながら悪態をつく左側に羽根がついている方、妹の方の頭に力を籠める。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃいいいいいい!!!」
変身しているのでそれなりに力は常人以上あることもあって、妹の方は即座に手を自らの頭にあて、悲鳴を上げた。
「ユナを放せェええ!!」
右側に羽根がついている方の天使_てことはこっちがミナエルか?_が刀から人型に戻ってこちらへと飛んできた。
その近くには水着痴女の姿はない。
感情的にこちらへと迫ってくるミナエル?の方を警戒しつつ俺はユナエルを振り回し、投げた。
「「ガフッ!!」」
こちらへと勢いよく突貫してくるミナエル?とアイアンクローで衰弱していたせいでなされるがままに投げ出されたユナエルがそのままの勢いで衝突し、地に倒れ伏す。俺はそれを確認することなくブロックの足場を展開してサッと空へと翔け上がった。
この今俺が変身しているアクションゲーマーの能力として、自由に足場のブロックを宙にでも地面にでもどこにでも設置し、それの上に立つことができるようになるものがある。今回はそれを用いて水着痴女対策をしようとしていた。
ジャンプでも届かない高さの位置にまで足場の階段を作って即座にそれを上る。最高段まで俺は足場を消しながら進んだのち、俺は足場の上でしゃがんで下を見ていた。
しかしいつまで見ていても出てこない。
(まさか逃げたのか?)
そう思い、一瞬だけ気を緩めたその時だった。ザバッと言う水から出てきたような音を立てながら水着痴女が俺のすぐ横の壁から飛び出してくる。その手は俺の腰、ゲーマドライバーへと伸びていた……が
「はい、残念でした。」
俺はその手を握りしめて逃げられないようにし、足場を消して一緒に落ちながら勢いよく下へと放り投げた。しかし、完全に手を振り切る前に魔法を発動されたらしく、再びすっぽ抜けるような感じとともに水着痴女が下へと落ちて行く。このまま地面に激突するのか…と思ったが、結局背中からプールに飛び込んだかのように音を立てながら地面へと沈んで行った。
「チッ!」
無意識のうちに舌打ちをしてしまい、着地と同時に周囲の警戒を再開する。だが……
「天使姉妹がいない?……ってことは逃げたのか……」
さっきまですぐそこの地面に倒れ伏してピクリとも動かなかった天使姉妹がいなくなっていた。
「ふぅ……もうこうなりゃいそうな場所回るしかねーか…」
そう呟き、俺は装填しているガシャットを紫からオレンジへと入れ替え、扉を開いて夜空へと飛び出す。
<
そんな陽気なリズムを残して。
そして真っ先に思い付いた鉄塔の上を覗きに行ってみるとラ・ピュセルもスノーホワイトもいたので、変身を解除して声をかけたのである。
「ちょいと失礼。」
変身を解除してすぐにそう言いながら俺はスコープモードのスマホを掲げて画面の向こうにいるラ・ピュセルを見る。
スノーホワイトに赤子のように抱き着いているラ・ピュセルは羞恥に顔を真っ赤にしているようだが、それに重なる様にあのマークが空中に円を描きながら画面を動き回っていた。
「……やっぱり、治ってねーか。」
スマホをポケットにしまいながら俺がぽつりと零したその一言を耳ざとく聞きつけ、スノーホワイトがこっちへと近寄ってきて耳元でそっと聞いてきた。
「たいがさん、治ってないってもしかしてラ・ピュセルが何で変身解除できなくなってるのか知ってるんですか?」
「え?知らんよ俺それ。」
「そうなんですか?だったら何が治ってないんですか?」
「これ見たらわかると思うけど、何か浮かんでるの見えるじゃろ?」
「はい……でもこれって何ですか?」
「バグスターウィルス感染者には表示されるどのタイプのウィルスの感染しているのかの表示だよ。もしかしたらこれがその戻れない原因かもな。」
「感染しているかの表示………え!?」
「ちょ!?声でかいって!!」
「モゴゴ………ご、ごめんなさい……」
「………?」
「今のが気になったのか小動物みたいに首かしげてるけどストレスかかってるのか表示増えてるし……」
「これ以上ストレスを駆けないためにもここらで切り上げた方が良いかもしれませんね。」
スノーホワイトと顔つき合わせて小声で会話しているのを見て嫉妬か、それとも何か別のものが原因なのか。ラ・ピュセルを映し出す画面に表示されているマークが異常に増えだしていた。
意見を合わせて顔を離し、俺が話し出す。
「あーえーっとな。」
「お前は黙ってろ。スノーホワイト、一体何の話をしていたんだい?」
「そんな冷たい目でみんなよ。ゾクゾクしねーけど助ける気失せるじゃねーか。」
「そうだよラ・ピュセル!もしかしたらこの人がラ・ピュセルが戻れなくなった原因を解消できるかもしれないんだよ!!」
「そうだとしてももしそいつの力を借りるぐらいなら僕は一生このまま女で良い!!」
「そうちゃんのわからずや!そんなことばかり言ってると本当に戻れなくなるかもしれないんだよ!!」
「うっ……確かに、そうかもしれない。けど、
「お…おい、二人とも落ち着いて。てか、お前は一番落ち着けよ…な?そんなにカリカリしてもいいことねーぞ。」
「うるさい!!お前は黙ってろ!!」
俺の方を見てそう怒鳴るとラ・ピュセルはベンチコートをその場に脱ぎ捨て、
「僕の立場がなくなりそうなのも、誓いを果たせなくなりそうなのも、戻れなくなったのも全部……全部お前のせいだぁああああ!!」
叫びながら大剣を抜刀してこちらへと襲い掛かってきた。
「ちょっ!?おまっ!?ふざけんなよ!!それ最後以外俺絶対関係ない!!」
ぶんぶんと音を立てて振るわれる大剣を上下左右に細かく、かつ素早く動いてかわしながらラ・ピュセルを羽交い絞めにするために突っ込む。
俺が必死になって剣を避けているのを見てさらに腹を立てたのか、ラ・ピュセルはもっと早く、大きく大剣を振り回し始めた。
剣が当たった手すりが斬れ、下へと落ちる。足場の方も何度も何度も大剣が突き刺さったために所々穴が開き始めていた。
そうした暴走した感情に任せた行為がそれを見ていてずっと黙っていた少女の堪忍袋の緒をとうとう切ってしまい、決定的な一言を言わせてしまう。
「そうちゃんのバカ!!もうそうちゃんなんて嫌い!!」
スノーホワイトが泣きながら叫んだその一言の破壊力はラ・ピュセルにとってはすさまじく、彼女はその言葉を聞くなり大剣を手から取りこぼし、膝をついてしまった。
「はぁ……はぁ……あぶねかった……」
肩で息を切らしながらそうこぼす俺の前でラ・ピュセルはうなだれたまま呟き、笑い出した。
「は……」
「は?」
「ハハハハアハハハハハハハハハハ!!!」
「……そう…ちゃん?」
突如変な声を上げながら笑い出したラ・ピュセルを自分が言った言葉を反芻して自己嫌悪に陥ったのか真っ青な顔をしたスノーホワイトが心配そうに近寄る。しかし、ラ・ピュセルはその伸ばされた手を払った。
「
そう言ったラ・ピュセルの体にはノイズが走っており、それを見てマズいと思った俺は
「ストレスをためるな!!」
と、叫んだが遅かった。振り払った手を感情の読めない瞳で見つめ、彼女は淡々と続ける。
「僕は君を守る騎士になろうとしていたが、それは僕でなくてもいいみたいだ。」
淡々と、感情を言葉に乗せずに、体中に奔るノイズをひどくさせながら綴る。
「僕がいなくてもいいのならば、そこにいる魔獣にでも守ってもらえればいいじゃないか。僕は要らないんだろう!!」
心が叫んでいるかのような言葉でそう叫んだのと同時にラ・ピュセルの体はノイズに覆われ、次の瞬間、
「き……消えた。」
バグスターによる乗っ取りでも、プロトバンバンシューティングを適合手術なしで使った後遺症で消失した彼とも違う。パラドとかのバグスターがその場から高速で移動する手段と全く同じエフェクトを残してラ・ピュセルはその場から消えた。
「そうちゃん…?ねぇ、どこに行ったのそうちゃん!?」
スノーホワイトの困惑した声だけがその場に残り、響いていた。
「そんなことがあって、今はたいがと一緒に行動してるんだね?」
「はい。実はそのことでちょっとトップスピードさんにお願いがあって…」
「いいよ~。言ってみな~」
「ん~……うま~」
「ラ・ピュセルを探したいんです。無理じゃなかったらでいいので手伝っていただけませんか?」
「ん、わかった。任せとけって!俺が捜してやるからさ。お前も手伝えよたいが!!」
球に連れてこられたとあるお宅の屋根の上で、話半分でタッパーに入ったトップスピードが持参した里芋の煮っ転がしを堪能していた俺は急に話を振られてむせ、それをリップルにあきれた表情で見られながらも
「ゲホッゲホッ!…ふぃ~…わーってる。さすがにこれは俺も関係ありそうだしな。」
手元でいまだに起動しないが、何故か気づいたらポケットに入っていた俺と多分一番相性がいいと勝手に思っている紺色のガシャットを右手でくるくる回し、虚空に銃を撃つように構えてからそう答えた。
「そのためにもまずは生き残んねーとな。……バァ~ンってな。」
銃口を向けるようにガシャットの先を向けたのはちょっと離れた先にあるホテルの方。
俺がした行動に意味を見いだせず困惑した表情でこちらを見るスノーホワイトとリップルに対してトップスピードはその行動が意味するものが分かったらしい。切羽詰まった表情で詰め寄ってきて
「たいが!お前絶対にカラミティ・メアリとドンパチやるなよ!!これはフリとかじゃないからな!!お前ただでさえ一回乱入してる上に懸賞掛けられてるからやばいのに!!」
怒った調子で言ってくる。だがぶっちゃけ言ってもう遅いと思う。
「それは無理。」
「なんで!?」
そんな俺の返しに悲痛な表情でトップスピードが叫ぶが、俺は続けた。
「もう俺が意識ない時を含めてスノーホワイトから聞いた1回を足すとすでに3回やってる。」
「そりゃマジかよ!?」
「大マジだよ。」
「あちゃぁ…」
俺の言葉にトップスピードは手を額に当て、天を仰いだ。
カツン……カツン……
名深市のどこかにある路地でそんな音が響いていた。
路地にあるカーブミラーにその音の主が映る。
その音の主はぼさぼさの黒髪にコードが巻き付けてある黒いコートを纏い、赤いズボンをはいていた。
「……さて、アイツを止めねーと」
そう言うと音の主は無言でその手に持った太く青と黒で染め上げられたボックス上のものに半分に割る様に2つの絵柄が書かれている黄色い円盤をつけたものを手元で弄びながらノイズに身を包んで消えた。
See You Next Stage!!
感想、評価を楽しみにしています。
また、今回やってみた前書きの前回のおさらい、およびこの間からやっている次回予告は不評ならやめます。
次回、魔法少女救命計画。
「僕にはもう、何もない。」
土砂降りの雨にただ打たれるラ・ピュセル
「そうちゃん!!」
今にも死にそうなけがを負った状態で叫ぶスノーホワイト
「やめろぉぉおおお!!」
叫びながらブレイブに変身してトップスピードに貫手を放とうとする満面の笑みの黒い巫女服を着た少女にガシャコンソードを構えてとびかかる大我
「僕は…いや、私は!!」
(掲示された次回の投稿は一話分閑話を挟む予定なので9/3の投稿となります。ご注意ください)
「魔法少女救命計画」は「魔法少女育成計画」の二次創作です。
魔法少女救命計画は
あらゆる二次創作を受け入れる ハーメルンにて
以下のサポートでお送りしました。
・感想
・仮面ライダーエグゼイド
・魔法少女育成計画