魔法少女救命計画   作:先詠む人

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先週は死んでました。
今週も頑張ります。

後報告です。
7月は課題、大量のレポート、前期末試験、憲法の確認テストの4コンボが待っているので週1投稿が不可能です。
なので、不規則な投稿になると思います。


10th stage 自問自答のPrototype!!

「さてと、こっちは一応とはいえ名乗ったわけだからそっちも名乗ってくれよ。嫌だっていうならこっちで勝手につけた名前で呼ぶけど。」

 

 偽名を名乗った後、ハードゴア・アリスの突き刺さるような視線を気にしつつ若干ニヒルな仮面(ペルソナ)を無理やりかぶりながら俺は告げる。

 しかし、

 

「………ヤだね。自分の名前を教えないような奴になんで馬鹿正直に名乗らないといけないんだよ。」

 

 そう言ってトップスピードは首を横に振った。その対応を見て俺は内心(ですよねー…)と唱える。

 まぁ、それもそうだろう。トップスピードの性格は元暴走族だった兼ね合いか、任侠じみたものをたまに見せることがある。それを考えるとどうしても俺のことを信頼することができないというのは当然の帰結だった。

 

 とはいっても本名を名乗るわけにはいかないので内心(うーあー)と唸っていると、

 

「………もしかして、ダイゴさん嘘をついていたり偽悪的な態度をとっているのってそれすらも嘘なんですか?」

 

「ウグッ」

 

 若干金色じみた澄んだ瞳でこちらを見てくる視線とぶつかった。

 事実を言われてしまったせいで唸り声がもろに出てしまう。

 

「どうなんですか?」

 

 ジトっとした目をこちらに向けながら、彼女は俺に顔を近づけた。

 

「………」

 

 restarat以降のことは知らないとはいえ、これから後に起こることを知っているという後ろめたさのせいでどうしてもその瞳と自分の視線を合わせようと思えず、顔をそらす。

 しかし、そらした先は先でハードゴア・アリスの無機的な視線が待っていた。

 

(…………もぅ、無理や………)

 

 物理的に突き刺さって来そうなその瞳が放つ視線に耐え切れず、俺は匙を投げた。

 

「………言うけど、絶対に約束してくれ。」

 

 ぽつりと、そう漏らす。

 

「何をですか?」

 

 突然そんなことを言ったからか、スノーホワイトは首をかしげてそう返す。

 

「俺が今から言うことを……絶対に他の人に言わないでくれ。じゃないと…………あんたらの命が危ない。」

 

「え……」

 

「嘘はつかない。」

 

 そうして俺は全部ぶちまけた。

 突然真面目な雰囲気に変わったことについていけてない様子の4人を置いておいて、俺は話し出したんだ。

 

「………俺は……、俺の名前は……加賀美大我。そして俺は………」

 

 そこで言葉を一度切る。そして持ってきていたカップの中のウーロン茶を仰ぐ様に一気に飲み、カンと少し高い音を鳴らしながらテーブルの板面に空の紙コップを叩き付けた。そして核心を告げた。

 

「……………この狂った人狩り(ハンティング)ゲームのGM(ゲームマスター)らしき人物を知っている。」

 

 その瞬間、ハードゴア・アリスを除いた3人が息をのんだのが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ハラハラリ◇

 

「……………この狂った人狩り(ハンティング)ゲームのGM(ゲームマスター)らしき人物を知っている。」

 

 目の前の魔獣さん、いや、大我さんはそう言って再び黙り込んでしまった。

 

「…………それって誰だよ。」

 

 黙り込んでしまった大我さんを見て、トップスピードさんが少し声を上ずらせながら尋ねる。だけど、

 

「それを言いたいのはやぶさかじゃないけど、そっちがなぜおれを必死になって狙うのかだけでも先に教えてくれ。それが交換条件だ。」

 

 大我さんは、目を据わらせたままそう言って黙り込んでしまう。

 

「………どうする?

 

 トップスピードさんが、席越しに私に聞いてきた。私は

 

今起きていることだけでも言った方が良いと思います。

 

 その質問にそう答えてから

 

「今、この街には15人魔法少女がいます。」

 

 現状を話し始めた。

 

 

 

◇ガシャット!!◇

 

「今、この街には1()5()()魔法少女がいます。」

 

 俺の言った言葉に対して、スノーホワイトが話し出した。しかし、何か引っかかるような感じがしてちょっと考えながらもこう答えた。

 

「15人って結構多いな。」

 

 と、そこでふとあることに気づいたのと同時にスノーホワイトは

 

「本当はあと1人いたんです。」

 

 と言い、

 

「2週間前に………魔法少女じゃなくなるのと同時に死んでしまったんです。」

 

 辛そうな表情を浮かべながらそう言った。

 その言葉と表情を見てハッとした。何が引っかかっていたのかがすぐにわかった。

 15人……それはハードゴア・アリスが魔法少女になる前に名深市にいた魔法少女の人数だった。

 そして、1人いなくなったってことは……

 

 2週間前に感じた嫌な予感を思い出す。

 

 ピーポーピーポーと甲高い音を奏でながら市街を爆走する救急車。それから感じたねむりんの死。

 時計を見て時間が違うからないないとその時は思っていたが、実際はその時……

 

「2週間前に、私たち16人は人数を増やしすぎたから半分に減らすと言われました。そして、その時一番持っていたマジカルキャンディーが少なかったねむりんさんが脱落になったんです。」

 

 その言葉を聞いて、鼓動がおかしな拍子を刻み始めた。

 

「あ、マジカルキャンディーと言うのは私たちが人助けをしたらもらえるもので、ねむりんさんはそれをその時1番もっていなかったんです。………大丈夫ですか?」

 

 ドクン……ドククン…

 

「あ……ああ。続けてくれ。」

 

 心配そうにこちらを見ながら尋ねてきたスノーホワイトに話の続きを話すように促す。

 

「そしてその時に大我さん、あなたのことが私たちに新型の人を襲う魔獣として知らされました。」

 

「だから、私…スノーホワイトとラ・ピュセルの2人であなたが人を襲う前に捕まえようとしていたんです。」

 

「捕まえるって……」

 

 俺はそう漏らす。

 もしそれで捕まったりとかしていたらどうなっていたのだろうか。まぁ、確実にラ・ピュセルに隙あらばと殺されてそうな気がした。

 

 ドククククン……

 

「他の人は、大我さんも知っている通り大我さんに賭けられた報酬のキャンディーを狙っていたみたいですけど……」

 

 その瞬間、体の奥の方から何かが飛び出してくるような感覚を覚えた………のと同時にトップスピードが俺の背中を見て驚いたような様子を見せながら指さし

 

「お前、その背中のなんだよ!!」

 

 と、叫んだ。

 

「背……中?」

 

 異常な拍動(ビート)を刻む心臓のせいで気絶しそうになっていた状態で背中へと手を回そうとする。その時

 

「……それって。」

 

 そう言いながらハードゴア・アリスが立ち上がってスノーホワイトをのかし、俺の背中へと手を伸ばした。その瞬間体中に灼熱の小手でも押し付けられたかのような激痛が走った。

 

「がぁぁああああああ!!」

 

 脳が焼き切れてしまいそうなショックが痛覚神経を奔り、体の末端全てをけいれんさせる。

 口からは適合したあの時のように獣のような叫びが迸った。

 

「ぁぁぁあああああああああああ」

 

 幸いとでもいうべきか、激痛はすぐに治まり、痙攣もすぐに止まった。しかし、

 

「………あなたがあの時使っていたこれさえあれば、私も強くなれますか?」

 

 そう言いながらハードゴア・アリスはあるものを握っていた。

 

 白と黒、2色で染め上げられた旧世代のカセットのような物体を。

 それが何かサッと見て悟り、痛みを根性で無視して立ちあがろうとしたが、何故か力が入らずにその場に崩れ落ちる。

 

「……私は、強くなりたいんです。」

 

 そう言いながらハードゴア・アリスがその手に持った物の(サイド)についた黒いスイッチを押し込もうとする。

 

 「やめろ!それは普通に扱えるゲームじゃない!!」

 

 それに対して俺はそう叫ぶのがやっとで、その一方で他の3人は状況についていけずに固まっていた。

 周りが助けにならない状況でどうにか片手で体を起こし、ハードゴア・アリスの手の中にある()()を奪い取るためにとびかかろうとした……その瞬間だった。

 

 

<♪~><DANGEROUS(デンジャラス) ZOMBIE(ゾンビ)><~~♪>

 

 ギターのリフのきいた音声をかき鳴らしながら死のデータが詰まったガシャットが………バグスター、もしくはシャチョォ以外が使えば確実にやばいことになるデンジャラスゾンビガシャットが……………起動してしまった。

 

「うっ………あぁッ!!」

 

 必死に手を伸ばした目の前でハードゴア・アリスがもだえ苦しみ始める。

 

 「バカやろぉぉぉぉぉおおおおお!!」

 

 それを見て即座に叫びながら俺はハードゴア・アリスにとびかかり、ガシャットを奪い取った。

 とびかかった勢いが余ってカウンターの方へと転がり続け、カウンターに当たってようやく止まる。しかし…

 

「あ………あぁ…………」

 

 擦れるような声が未だに聞こえて素早く首だけ振りむいた。

 

「クソっ」

 

 繰り広げられていた光景を見て小さな声で悪態をつく。

 振り向いた俺が見たのはハードゴア・アリスの姿が擦れるように一部消失していき、そこから()()()()()()()()と、()()()()が噴き出してる様子だった。

 

「……なんで……何でこうなるんだよ!!」

 

 俺はそう叫びながらゲーマドライバーを装着する。

 そして

 

「死なせてたまるか!!」

 

 

<♪~><GIRIGIR(ギリギリ) CHAMBARA(チャンバラ)!!><~~♪>

 

 と叫びながらギリギリチャンバラガシャットを起動したのと同時にハードゴア・アリスの体を噴出していっていたオレンジ色の粒子が覆いつくしていった。

 

(マズイ!!)

 

 反射的にそう思い、俺は左腰についているキメワザスロットホルダーのスイッチを押し込む。

 

STAGE(ステージ) SELLECT(セレクト)!!>

 

 スイッチを押し込むのと同時にそんな音声が鳴り、俺の周囲の景色は店内から荒野へと一変した。

 

 ブクブクブクブクとジャグジーバスが泡を噴出するのと似たような音を鳴らしながらハードゴア・アリスの体を覆いつくしていくオレンジ色の粒子はその姿を整えていく。

 そして最終的にハードゴア・アリスが立っていたところにいたのは濃いオレンジ色の球体をつなげて模ったかのようにも見える巨大な巨人だった。

 巨人の身体からはオレンジ色の液体が零れ落ちて言っており、そのこぼれた液体からはどんどんオレンジと黒で塗装されたヒトガタの化け物が現れてくる。

 

「こんなバグスターユニオン見たことねぇぞ……」

 

 起動済みのガシャットを持っていながら変身もせず、呆然と立ち尽くす。

 そしてそこまで変わり切ってしまったハードゴア・アリスの姿を見て俺はそう呟くしかできなかった。

 

 

 

 

◇ハラハラリ◇

 

 話している途中で突然苦しみだした大我さんを心配して私が近寄ろうとすると、唐突にあの黒い子が私を押しのけて大我さんに近づいた。

 そして何も言わずに大我さんの背中のさっきから急に光り出していたところへ手を突っ込んだ。

 

「ひぅ!」

 

 喉の奥からつぶれたカエルのような声が出る。しかし、黒い子は大我さんの中をかき回すかのように手を動かし続けた。周囲一帯に大我さんの悲鳴のような、野良犬の唸り声のような声が響き渡る。

 私はその声で耳が痛くなったので耳を両手でふさいだ。そのせいか、逆に魔法で聞こえる心の声がクリアに聞こえるようになった。

 

 その声は大我さんのもので、その声も悲鳴を上げていた。

 数秒ほどだろうか、その間ずっと黒い子は大我さんの体の中で手をかき回し続け、最終的に

 

「あった。」

 

 と言いながら何かをもって手を引き抜いた。その引き抜かれた手の中身は一瞬だけ血で真っ赤になっていたけれども、すぐに光を放ってはっきりとした姿を現す。

 

 その手の中にあったのはさっき大我さんが見せてくれたものとは色が違うけれども同じ形をしたもの。

 ………白と黒の二色で染め上げられたガシャットだった。

 

「………あなたがあの時使っていたこれさえあれば、私も強くなれますか?」

 

 黒い子はそれを倒れ伏している大我さんに見せるかのように掲げて持ちながらそう言った。

 その手に持っているものを見た瞬間、大我さんは顔を青ざめ、即座に起き上がろうとするも、その場に崩れ落ちる。

 

「……私は、強くなりたいんです。」

 

 黒い子はそう言って、その白と黒の二色で染め上げられたガシャット?の側面についてるボタンを押し込もうとした。その時、倒れ伏したままの大我さんは必死な様子で

 

 「やめろ!それは普通に扱えるゲームじゃない!!」

 

 と、叫んだ。

 

(ゲーム?)

 

 大我さんが叫んだ言葉に違和感を覚える。しかし、目の前の黒い子はその忠告に耳をまったく傾けずに握りしめたガシャットのボタンを押し込んだ。

 

 

<♪~><DANGEROUS(デンジャラス) ZOMBIE(ゾンビ)><~~♪>

 

 ギターの音が周囲一帯に鳴り響き、以前映像で見た大我さんが赤いロボットのような姿に変わったときと同じように波紋が黒い子を中心に広がった。

 映像で見たものと違って、波紋の色が赤と黒と言う色の違いこそあったけれども、概ね何も変わっていないかのように見えた。

 しかし大我さんはそれを見るなり顔を青ざめさせ、

 

 「バカやろぉぉぉぉぉおおおおお!!」

 

 そう叫びながら黒い子に視力でも振り絞ったかのように勢いよくとびかかった。

 黒い子からガシャットを奪い取り、そのままの勢いでカウンターの方へと転がっていく。

 

 それでもう終わりだと思っていた。

 ………それから秒もたたないうちに黒い子が胸を押さえてもだえ苦しみ始めるまでは。

 

「うっ………あぁッ!!」

 

 崩れ落ちた大我さんが伸ばす手の先で黒い子が体中から黒とオレンジ色の粒子を吹き出しながら苦しみ始める。

 その姿はどこか今にも消えそうなように擦れて、透けていた。

 

「………なんで……何でこうなるんだよ!!」

 

 大我さんはそう叫びながら腰に蛍光グリーンの大きなバックルをつけ、懐からさっき私たちに見せてくれた黒いガシャットを突き出した。

 

「死なせてたまるか!!」

 

 

<♪~><GIRIGIR(ギリギリ) CHAMBARA(チャンバラ)!!><~~♪>

 

 そんなことを言いながら大我さんもガシャットのスイッチを押し込む。しかし、その瞬間黒い子の体をオレンジ色の粒子が勢いよく覆いつくしていった。

 

 それを見た大我さんは青ざめさせていた顔色を青を通り越して驚愕の表情で白く染め、慌てたように腰につけた大きなバックルから延びたベルトについていたホルダーのようなもののスイッチを押し込んだ。

 

 

STAGE(ステージ) SELLECT(セレクト)!!>

 

 さっきも聞いたそんな音声とともに大我さんを中心に広がっていく白い波紋が通り過ぎて行った場所から、あたり一帯はお店の中からどこかの荒野へと変わってしまっていた。

 

「なんなの………これ………」

 

 突然荒野へと変わった周囲に景色に呆然としていると

 

「おい!逃げるぞスノーホワイト!!」

 

 トップスピードさんが私の首根っこを掴んでその場から離れるかのように走り出す。

 急に引っ張られたことで視界が揺れた。揺れる視界のその中で見えたのは、黒い子がなにかに釣り上げられるかのように浮き上がってそのままオレンジ色の粒子に飲み込まれていく様子だった………

 

 

 

 

◇ガシャット!!◇

 

 目の前でハードゴア・アリスの身に起きたのはゲーム病発症者が消滅までにたどる過程の一つであるバグスターユニオンの発生。

 ゲーム病感染者は、ストレスなどがある一定の値を超えると体内にいるバグスターウィルスが活性化し、増殖する。その増殖したバグスターウィルスがバグスターとして体外へ出るのと同時に自らを覆う鎧でもあるかのように身に纏うのがバグスターユニオン。

 テレビでは大人の事情か何かでシャチョォが死んだあの回以降まったく出てこないが、本来すべてのバグスターは出現する際にそのステップを踏むはずである。

 しかし、デンジャラスゾンビのバグスターユニオンらしき姿はその最後に確認された回に出ており、その際の姿はマイティアクションX、タドルクエスト、バンバンシューティング、爆走バイクの4つのゲームのバグスターが身に纏っていたユニオンを組み合わせたかのような姿だった。

 だが、今目の前にいるユニオンはどちらかと言うと昔公開されて今でもテレビでたまにやるもけもけ姫に出てくる昼と夜で姿が変わる神様みたいな姿だった。

 その表皮からは大量の黒い液体がこぼれ、そのこぼれた黒い液体からは洋物のゾンビゲームのように大量に下級バグスターがわいてくる。

 

「これは………」

 

 その光景を見て呆然と立ち尽くす俺。そんな隙だらけのやつ(まと)を見て下級バグスターが銃刀を持って襲い掛かった。

 

「っ!!!」

 

 その攻撃に寸でのところで気づき、体をよじって躱す。しかしその攻撃は銃刀の刃ではなく、柄が俺の手首に直撃することになった。

 

「しまった!!」

 

 …………よりによってガシャットを持っている方の手に。

 衝撃で手がしびれ、持っていたギリギリチャンバラガシャットを取りこぼしてしまう。

 すぐさま拾おうとするが、取りこぼしたガシャットを迫りくる刃のせいで拾えない。

 そして

 

「グルッ!グルッ!!」

 

 そんな言葉にならない言葉を言いながら大量に沸いた下級バグスターは先ほどスノーホワイトたちが逃げて行った方へと駆けて行くのが見えた。それに追随するかのようにバグスターユニオンも。

 

(おいおい勘弁してくれよ!!)

 

 頭の中でそう叫ぶ。

 ガシャットは拾えない、周りは敵だらけ、そして新しいガシャットを出す余裕もない。

 冗談抜きでやばい状況なのは間違いなかった。

 

 

 

 

 ……………けれども、やるしかなかった。

 今この場所でバグスターについて一番詳しいのは俺だけで、この事態の原因を作ったのも俺だったから。

 

「くそがぁぁああああ!!」

 

 気合を入れるために腹の底から叫ぶ。

 その時、俺自身は鏡なんか見る余裕がないせいで気づいていなかったが、俺の目は赤く光っていた。

 そしてそれが原因でもあるのだろう。俺の周囲にいた下級バグスターは俺から噴き出した衝撃波で吹き飛ばされた。

 即座にガシャットが落ちている場所へ全力で飛び込み、それを拾いながら身を起こす。そして

 

「変身」

 

 構えたガシャットをドライバーの内側のスロットへ装填する。すると

 

<~~♪Let’s game(レッツゲーム)! メッチャゲーム!! ムッチャゲーム!!! What’s your name(ワッチャネーム)!!!! >

 

 そんな音声とともに俺の周りに13個以上ある(アイコン)が囲むようにドライバーから浮かび上がって展開され、俺はその中で左側にあった鎧武者のような姿が描かれている一枚を立ち上がりながら

 

「ハッ!!」

 

 手刀で横なぎに切り裂いた。斬りつけられた(アイコン)に<SELLECT>の文字が躍る。

 

I’m a(アイマ) 仮面ライダー!!>

 

 斬りつけられた(アイコン)が時計回りに横回転しながら白い粒子を放つ。

 放たれた粒子は0と1に変換されながら俺の体を包み、俺の体をチャンバラゲーマーレベル1へと変えた。

 

「こっから先は通行止めだ!!」

 

<ガシャコン…スパロー!!>

 

<ス・パーン!!>

 

 ガシャコンスパローを両手鎌モードに変えるのと同時に道を塞ぐ下級バグスターを素早く狩りつつ一気に離れていたバグスターユニオンとの距離を詰めていく。

 

「ここで止まれやぁぁああああ!!!」

 

 そしてそのまま回転しながら縦に真っ二つに切り裂いた。

 耐久値以上の攻撃を受けたことでハードゴア・アリスと彼女に取りついたバグスターがバグスターユニオンの中からはじきだされて宙に投げ出される。

 意識を失っている様子のハードゴア・アリスはそのまま地面に落下したが、バグスターの方はそこから少し離れた位置に着地し、こちらを睨むかのように殺気を放ってきた。

 

 俺も俺でその場に着地し、仮面の奥から睨み返す。

 恐らくデンジャラスゾンビのバグスターであろうそのバグスターは体の右側をサイボーグのように機械で構成されており、左側は某ゾンビゲームの筋肉マッチョのゾンビみたいにはち切れんばかりの筋肉が浮かび上がっていた。

 

「シューコー」

 

 その顔にはシュノーケルがつけられており、他のバグスターと違って意思の疎通は不可能のように覚える。

 そして頭髪はお亡くなりになられた設定のゾンビがバグスターのもとになったキャラクターだったのか、頭が電球のように光っていた。

 

 変身した俺がそのバグスターを倒すためにレベルを上げようとドライバーの扉に手を当てた……その瞬間だった。

 

「シュコッ!!」

 

「!?」

 

 ずっと同じリズムで呼吸音を繰り返していた目の前のバグスターがいきなり短く息を吸ったかと思うとその場から掻き消えるかのように消えたのだ。

 

「どこ行った!?」

 

 その唐突な事態にレベルを上げることも忘れて周囲を警戒する。すると

 

「クソっ!!どこに逃げればいいんだよ!!」

 

「もう……イヤぁ!!」

 

「チッ!」

 

 荒野の向こうからさっきいきなり消えたバグスターに追いかけられるかのように逃げてくるスノーホワイト、トップスピード、リップルの3人の姿だった。

 

「そう言うことか!!」

 

 ハードゴア・アリスに取りついたバグスターの目的が何かそれを見てすぐに悟り、即座に彼女たちを庇うかのように前に飛び出す。

 その際、俺はある失敗をしていた。

 慌てていたせいで俺はあることをし忘れていたのだ。さっき上げたつもりになっていたレベルが目の前でバグスターが消えるという事態に気を取られてあげ忘れていたということに。

 

「ガハッ!!」

 

 当然、レベル1で上級バグスターに対応できるわけがない。

 その単純な事実に気づいたその時にはすでに吹き飛ばされ、変身を解除させられていた。

 ガシャットが衝撃で彼方へと飛んでいく。

 

「大我さん!?」

 

 その光景を見てスノーホワイトが悲鳴を上げる。しかし、バグスターの狙いは彼女だ。

 

「俺を放っておいて逃げろ!!」

 

 後転しながら飛ばされる勢いを抑え、衝撃が収まったところでそう叫びながら別のガシャットを出して再変身しようとする。しかし

 

「なんで!?」

 

 いくら手元に集中してもガシャットは現れない。

 しかも、最悪なことは続く。

 

「肩を貸します!!」

 

 声を聴いて顔を上げる。そこにはそう言いながらこちらへとスノーホワイトが駆け寄ってきてる姿があった。

 

「なんでこっちに来た!!」

 

 そう叫びたい気持ちになるが、彼女だって善意でこちらへと来ているにすぎない。

 叫びたくなった言葉をぐっとこらえ、追ってきているバグスターの攻撃から彼女を庇うために迫りくる機械化された拳へ俺は飛び出した。

 

「大我さん!?」

 

 彼女を庇って吹き飛ばされる。一瞬で十数メートルの高さまで打ちあがり、そこから落ちて行く最中、俺は静かに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭から地面へと落ちて行く。

 

 あぁ、そうか。ここで死ぬのがやはり俺の運命か………(本当か?)

 

 元々死んでるような俺が生きているのがおかしいんだ。(本当にそう信じているのか?)

 

 俺はもっと早くに死ぬべきだったのに。(何をバカなことを)

 

 ()()には死こそがふさわしいんじゃないのか?(お前は自分自身が死神だと本当に思っているのか?)

 

 

 暗闇の中で行われる自問自答。

 その最後は

 

(お前の望みはなんだ?タイガ?)

 

 俺の中で影が問う。その答えは一つだった。

 

 俺の………俺の望みは!!!

 

 目を見開く。そうだ、此処で死ぬわけにはいかないって単純なことすら忘れかけていた。

 

「俺の命の使いどころは…………ここじゃない!!」

 

 見開いたその眼でバグスターをしかととらえる。その瞬間、目の前に()色の粒子が集まり、形を成していく。

 

「俺の命の使いどころは、俺が決める!!」

 

 叫びながら上下反転した世界の中で俺は目の前で形を成したガシャットをつかみ取った。

 ガシャットをつかみ取った瞬間、上下反転していた世界がぶれ、俺は腰を下ろした状態で荒野に着地していた。

 

「…………」

 

 無言のままつかみ取ったガシャットを握ったまま右手を脱力させるかのように下に下ろす。そしてスイッチを押し込んだ。

 

 

<♪~><MIGHTY(マイティ)ACTION(アクション) X!!><~~♪>

 

 高らかに鳴り響く起動音。

 背後に浮かび上がる大量の何かが右から左へと流れていく半透明の画面。

 その画面の左側からは<MIGHTY ACTION>の文字が2段組で、右側からは大きな<X>の文字が流れてきて中央で合体する。

 そして画面からは大量の板チョコレートを四方につけたかのように見える立方体が飛び出してきた。

 

 それらすべてをまったく見ずに俺は握ったガシャットのハンドルを右手の薬指に引っ掛けて顔の前まで持ち上げる。そして告げた。

 

「変身」

 

 その言葉を言い終えるのと同時にガシャットをドライバーの内側のスロットへ差し込み、そのままドライバーについている扉を一気に開いた。

 

<レベルアーーーップ!!>

 

 

【挿絵表示】

 

 

MIGHTY JUMP(マイティジャンプ)! MIGHTY KICK(マイティキック)!! MIGHTY ACTION(マイティ~アクショ~~ン)…………X(エーックス)!!>

 

 扉の中に隠されていた液晶から紫色の線で描かれたスクリーンが飛び出し、大我の立っていた位置を通り過ぎていく。

 そのあとそこに立っていたのは紫色が目立つ人影の背中。

 頭には3本のとさかのようなものがあるように背中越しに見え、背中には大きな顔のようなものがついている。

 そしてその影_ゲンムアクションゲーマーレベル2_は振り返りながら、右手につけたものを振るうかのように右手を大きく振るった。

 

 

 

 

「今ここに黒い英雄(エグゼイド)は降り立った。さぁ、ゲームが動き出すぜ。心が躍るなぁ……!!

 

 大我がゲンムに変身したその瞬間、どこか真っ暗闇の空間でぼさぼさ頭のコードが絡みついているコートを着た男はそう言って楽しそうに嗤っていた。

 

 See you next Stage!!

 




感想、評価をもらえますと励みになります。

この話のプロトマイティアクションXが出現したあたりからテレビサイズのEXCITEを流すときれいに収まります。多分。

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