魔法少女救命計画   作:先詠む人

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今回ハーメルンに新規実装された機能を用いて書いてみています。
失敗していなかったらきちんと書いたものが、もし失敗したら変なところで途切れたものが投稿されていると思うのでその場合教えてください。

後場面転換多い(ちゃんと数えてないけど多分5回ぐらいしてる)


7th stage 白と黒とZombi

「最近魔法少女のまとめサイトに載ってる記事が増えてきたね~。」

 

 朝、中学校にバスに乗って行って、授業を受ける。

 そして中学校が終わってからバスに乗って駅の方にある停留所まで友達と一緒に向かう。

 そんなありきたりで変わらない日々の日常の中で、ねむりんが死んでしまったという記事のことをふと思い出した。

 

「そうなの?見せて……ってなんじゃこりゃ。白い魔法少女の記事が何となく多いのはわかるけど、それ以外ってどう見ても魔法少女じゃないじゃん。特にこの大陸マフィアって何なの?なんでマフィアが襲撃(カチコミ)受けててそんな投稿できるの?」

 

 横で友達のスミとよっちゃんが話していることが耳を通り過ぎて、頭に入らずにそのまま抜けて言っていることにも私は気づけない。

 私の頭の中はさっきから考えていたことの流れで昨日のチャットに出ていた件の魔獣に襲われたという報告の事で一杯になっていた。

 

『え?ラ・ピュセルこれ見て。』

 

『どうした?』

 

 昨日の夜にいつものように人助けをそうちゃ……じゃなかった、ラ・ピュセルとして、鉄塔の上で成果を確認していた時だった。

 ふと、思いついて魔法少女チャットにつなぐと、そこには(使用が禁止されている言葉です)の言葉を画面いっぱいに並べているカラミティ・メアリがいた。

 

『どうしたんだろう………』

 

 今までに見たことがないと思うほど荒れているカラミティ・メアリを見て首をかしげていたらラ・ピュセルに肩を叩かれた。

 

『スノーホワイト。多分カラミティ・メアリがあれている理由はきっとこれだ。』

 

 そう言いながらラ・ピュセルはマジカルフォンの画面をこちらへ向けた。画面にはどこかのニュースサイトらしきものが映っていて、それには通り魔の文字が浮かんでいた。

 

『えっと……名深市警察は〇〇公園で死に掛けの青年を保護。最近よく見られている通り魔による犯行。もしくは指定暴力団の関与によるものか?………これがどうかしたの?』

 

 私がそう尋ねるとラ・ピュセルは私の顔に自分の顔を近づけて画面の一部を指さした。

 

『ここを見てくれ。『自分が殺されかけたときに被害者は赤いロボットに助けてもらったような記憶がある』と答えているらしいが、()()()()()()と言う言葉。最近聞いた覚えがないと思わないかい?』

 

 そう言われてちょっと考える。そして思い出した。

 

『……あ!!この間ルーラさんと戦った時の魔獣の姿!!』

 

 あの後教えてもらったけれど魔獣は赤いロボットのような姿になったのち、シュッとした姿に変わったらしい。

 

『そうだろう?と言うことは逆説的に考えてこのロボット、恐らく魔獣と思われる何者かが』

 

 

「小雪はどう思う?」

 

 どうしても暗い考えが抜けない。

 魔法少女はみんなの希望になって、人助けをするのがお仕事のはずなのになんで魔獣はそれを襲うなんてことをするんだろう………

 

「小雪~?」

 

「ねぇ小雪?どうしたの怖い顔して。」

 

 肩を揺すられて初めてスミちゃんたちに声を掛けられていることに気がついた。

 

「あ、ごめん。聞いてなかったや……」

 

 アハハとごまかし笑いをしながら頭の後ろに手を当てると

 

「なんか、小雪最近変じゃない?」

 

「そうそう、色んなタイミングで心ここにあらずって感じになってること多くない?」

 

「え……そ、そんなことないよぉ~」

 

 2人からの追及に若干どもりながら答えるが

 

「ホントに~?」

 

「うさん臭いよ?ほれほれ言ってみ、言ってみ?」

 

 逆に二人の顔を怪訝なものへと変えることになっちゃった。

 

(どうしよう。魔法少女であることがバレたらいけないのに何を考えていたのかそれ抜きで説明するできる未来が思いつかないよ…)

 

 どうすればいいのかわからなくて混乱する私を見て二人は顔を見合わせてから

 

「もしかして……恋でもした?」

 

「お?それは聞きたいですなぁ~。ほれほれ。」

 

 そう言って私の顔に自身の顔を近づけてきた。

 

「ちょっと、やめてよ。もぅ……」

 

 それでもっと焦ってしまった私が手を前の方でわたわたさせながらそう言ったその時に

 

『次は、〇〇駅前、〇〇駅前。JR線へのお乗り換えはこちらです。』

 

 バスの自動音声がそう告げた。

 

「ほら。次だよ次。」

 

 若干無理やりだとは思うが、ちょっと強引に話を変えることができることを願って停止ボタンを押し込む。

 

『次、止まります。お降りの方はバスが停車してから席をお立ちになりますようお願いします。』

 

 ボタンを押し込んだことで自動音声がバスの車内に鳴り響き、駅のすぐ近くにある十字路を右折した……その時だった。

 

 ガクンっ!!

 

「キャッ!?」

 

 バスが突然急停止し、窓の外ではバスの前方の方へ人だかりが集まっていく。

 

「痛いなぁ……一体何なのよホントに。」

 

 急停止したときにどこか痛めたのか顔を少ししかめながらスミちゃんがそう言った。

 

「人が集まってるってことはだれかはねられたのかな?」

 

「え!?それって大変なことじゃない。」

 

 スミちゃんとよっちゃんが顔を見合わせる。

 その一方で私は今この瞬間魔法少女(スノーホワイト)に変身できない自分を恨んだ。

 

「(今すぐにでも助けにいきたいのに……)」

 

 心の中でそう思っても状況は変わらない。そう思ったときだった。

 

『お乗りのお客様方、大変失礼いたしました。当バスが急停車したことによりお怪我等御座いましたでしょうか?』

 

 そんなアナウンスが流れ、喧騒に満ちていた車内が静まり返る。

 

『安全を確認いたしましたのでこれより、発車いたします。』

 

「?」

 

 安全を確認って……そう思いながら外を見てハッと気づいた。

 

「なに………これ………」

 

 今さっきまで集まっていた人たちがまるで()()()()()()()()()()()()動いている。

 

「どういうこと……」

 

 そんなぽろっとこぼした私の言葉は車内の喧騒に紛れて消えていった……

 

 

 

◇ガシャット……◇

 

「ひゅー、危ない危ない。」

 

 体からエナジーコインが排出され、体感時間が元に戻るのと同時に両脇に手を入れて持ち上げた()()()()()をゆっくりとおろし、そう呟く。

 

「あ……あれ?」

 

 地面に足が着くのと同時に、ずっと目を閉じていた子供は、いつまでたっても衝撃が来ないことを不思議に思ったのかゆっくりとその眼を開いた。

 

「俺……撥ねられたんじゃぁ……」

 

 そう言ってぼんやりとした様子で周囲をきょろきょろと見回しているが、()()()()()()オレを少年は認識しない。

 分かっていることではあったが、なんとなく寂しい気持ちになる。

 これがオレではなく、()()()()ならきっと認識できたんだろうが……

 

 そんなことを考えていると

 

「浩太!!」

 

 母親だろうか。数メートルほど離れた()()()()()()()()()()()横断歩道の方から女性が走ってきた。

 

「これでよしだな。」

 

 体中にノイズを走らせ、その場から立ち去る。

 

「待て!!」

 

 カラン

 

 オレが道路から完全に消える直前に、高下駄の音を軽やかに鳴らしながらとある魔法少女がこちらを追うかのようにやってきたが、彼女がオレを掴む前にオレは姿をどこかへと消した。

 

 何でオレが見知らぬ子供の両脇に手を入れて横断歩道から少し離れた位置に立ってたのかって言うと、ただ単に人名救助したからだ。

 とは言っても、大我(カラダ)が勝手に動いたせいでオレがそうせざるを得なかったというだけなんだがな……

 

 そんなことを考えながら高いビルの上でオレは()()()()()()()を手の中で回転させたりして弄んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

◇シュシュッ!!◇

 

 カラン

 

 着地と同時に高下駄の音が響き、膝を少し曲げることで着地の衝撃を和らげる。

 

「チッ……どこ行った。あの魔獣。」

 

 ついさっきまで確実にここにいたはずの魔獣が消えていたことに対して腹を立てて舌打ちをしてしまう。

 苛立ち半分で周囲を見渡しているとトップスピード(おせっかい)が後ろの方へゆったりと箒の高度を下げ、その場に着地した。

 

「なぁ……、あの魔獣どう見ても人を助けてたよな?」

 

「………………」

 

 その言葉を黙って聞きながら私はさっき見た光景を思い出していた。

 

 

 

<数分前>

 

「それにしても魔獣はどこに行ったんだか…………リップル~?ちゃんと聞いてるか~?」

 

「……知らないし、聞いてる。」

 

 夕方、学校から帰るついででキャンディー集めでもできればと思って細波華乃から魔法少女リップルに変身して家々の屋根を蹴って走っていた時におせっかいにつかまった私はそのまま箒の後ろに乗っていた。

 

「そうか。てか、よくよく考えたらそんな簡単にあの魔獣のしっぽってつかめないよな~。」

 

「何をいまさら………」

 

 そう言いながら舌打ちをしそうになったところで道路に見覚えのある頭がふらふらと揺れていることに気が付いた。

 

「ここで降りる。」

 

「あ、おい!!」

 

 ある程度高いビルの屋上近くを通ったときにその一言だけを告げて箒から飛び降りる。

 後ろで非難の声が上がったが、それを無視して私はさらに道路の方へと飛び降りた……その時だった。

 

「…!?」

 

 何を思ったのか魔獣が右折のバスが迫る道路へと飛び出した。

 もしかして何かを追っているのかと思い、魔獣が走る方へと視線をやり、すぐに後悔した。

 

「っ!!」

 

 ()()()道路の真ん中で転んでいた。

 どこかから「浩太!!」と悲鳴が上がる。

 

 反射的に苦無に手を伸ばし、子供を助けるためにバスの進むコースを変えようとバスのタイヤめがけて投げようとして思いとどまる。

 今の時刻は夕方。道路の両端にある歩道には夕飯の支度のために買い物に出ている主婦や学校帰りの子供がいる。

 ましてや、迫っている車の車種はバスだ。もし乗客がいっぱいいたとしたら……

 

 頭の中で大事故が起きている様子がよぎり、動きが固まる。それは時間にして一瞬のことだった。

 

 だけど、その一瞬で()()()()()()()()()

 

 キキーッ!!と甲高いスキール音を奏でながらバスが止まる。

 その位置はつい先ほどまで子供が転んでいた場所をまたぐような位置だった。

 

 カラン

 

 高下駄がアーケードの屋根に着地するのと同時に軽やかな音を立てる。

 

「そんな……」

 

 軽やかな音を奏でた下駄の歯とは裏腹に私はきっとバスの下でぐちゃぐちゃになっているであろう子供の姿を考えて呆然としていた……その時だった。

 

「え!?」

 

 周囲一帯に紫色のノイズが走る。そしてその次の瞬間

 

「浩太!!」

 

 先ほども聞こえた女性の声が反対側の道路の方から聞こえた。

 

「?」

 

 なぜ轢かれた子供の名らしき名をバスの下の方へではなくて別の所で呼んでいるの?

 

 そう思い、そちらの方を向いた。そして私が見たのは

 

「これでよしだな。」

 

 そう言いながら先ほど轢かれたはずの子供の後ろに立つ体中をノイズでほぼ覆いつくした魔獣の姿だった。

 

「あいつ……まさか!?」

 

 その瞬間、脳裏に浮かんだのは道路へと飛び出していく魔獣の姿。

 

「待て!!」

 

 そう叫びながら道路の反対側へと飛び出す。だが……

 

 私が着地したのと同時に魔獣はその姿を消した。

 

「チッ!!」

 

 逃げられた。そのことに対して腹が立つ。腹が立ったままその場に立っていると

 

「はぐれちゃダメって言ったでしょ!!」

 

「ごめんなさいお母さん。」

 

「もう……最近は物騒なんだからね!!」

 

 先ほど魔獣が助けたのだろう子供と母親がそんな会話をしながら立ち去って行っていた。

 その姿を見てつい、自分の幼少期はそんないいものじゃなかったことを思い出す。

 

 物心ついたときにはすでに血のつながった父親はおらず、母親と再婚した相手が父親だった。

 だが、その父親は常に酒に浸り、何か気にくわないことがあるとすぐに暴力をふるう男だった。

 

 一番古い記憶の中の母親は、殴られてぼろぼろになっている姿だった。

 いつも殴られる母親を見て「私が強くなってあいつを倒してあげる」と言っても母親は「そんなことしなくていい。私はあなた(わたし)のために殴られている」と言ってきかない。

 そのせいで私は幼いころから自分の存在する意味が分からなくなっていた。

 

 それから数年ほどたったある日、母親がついに大けがを負って救急車を呼ぶような事態になった。

 それをきっかけにあいつは家から追い出されて檻の中に入り、婚姻関係は解消されたそうだがそれからが一番ひどかったのではないかと思う。

 

 母親は次々と男を変え、その度に現れる男は父だと言って家に居座る。

 

 私が家を出たときには五人目の自称義父だった。とはいっても今母親に会いにいってみれば六人目になっているかもしれないが。

 

 その一方で私は私で幼いころにそんな経験をしたこともあってか「理不尽な理由で華乃(自分)を侮辱した相手に対しては音を上げるまで暴力を振るって屈服させる」ことを主義とする少女となっていた。

 

 幼稚園から中学校まではその主義を押し通すことができていたが、高校になってからはいろいろと差し障りが生じるために暴力で問題を解決することができなくなっていた。

 

 そして五人目の自称義父になめつけられるような視線を浴びせられ続け、最終的に尻をなでられたことで拳で屈辱を一気に清算し、そのまま荷物をまとめて家を出た。

 

 そして一人暮らしを始めて何の因果か魔法少女になり、今に至る。

 

 そこまで思い出したところでふと、唇が切れていることに気が付いた。

 

 口の端を流れる血を手袋を外した手でぬぐい、その手をついじっと見つめる。

 今は変身しているからわからないが、変身を解いてリップルから細波華乃に戻ればきっとこの瑞々しい赤ん坊のような手も傷やあざだらけの自分自身の手に戻るのだろう。

 

 そんなことを考えていると上から

 

「お~い、リップルゥ~!!!」

 

 時間も何も考えていないそんなアホの声が聞こえた。

 あんまり騒がれると鬱陶しいので手袋をはめなおし、アーケードの天井を中間地点にして近くの5階建てのビルの屋上へ飛び上がる。

 

 そうして再び箒の後ろに乗せられ、私はそのまま空の人になっていた。

 

 

 ~~

 

「あー!!そう言えば出る前に飯作っておくの忘れてたぁ!!!」

 

 そうしてさっきまでのことを思い出していると突然トップスピードが大声を上げた。そして一度箒をホバリングさせながらこちらを向き、

 

「すまねぇリップル。ちょっと俺緊急の用事があるから今日はここまでにしてもらえねえか!?」

 

 と聞いてきた。

 

「………」

 

 自分から誘っておいてそれってなんだよ。と思いながら早く離れたかったのもあって箒から飛び降りようとする。

 するとトップスピードは

 

「おいおい!!」

 

 と慌てた様子で肩を掴んで私が飛び降りるのを止めた。

 

「こんな高さから飛び降りなんかしたらいくら魔法少女でもキツイだろ!いつものところまで送ってやるからちょっとばかし捕まってろよ。」

 

 そう言っていつも私が下ろしてもらうビルの方へと箒の行き先を向け、そのまま加速していく。

 

 数分ほどして、私がいつも下ろしてもらうビルの屋上へ着いた。ついてすぐに箒から飛び降り、そのままその場を離れようとする。すると

 

「また明日なー!!!埋め合わせでいいもん持ってきてやるから期待してろよー!!」

 

 後ろからそんなことを大きな声で言われた。

 

 「……うざ。」

 

 その声に言っても無駄だとわかっていても小さな声でつい悪態をつく。

 そしてそのままビルの屋上から隣のビルの屋上へと私は身を躍らせた。

 

 

◇ブブブンブブンブブブブブン!!◇

 

 家の近くで変身を解除してから家に帰る。

 何で途中で帰ることにしたのかっていうと、今夜は昇一が職場の上司と飲みの予定だったのが急に上司が倒れたとか何とかで中止になったって連絡をお昼頃に受けたのを忘れてたのを思い出したからだった。

 

「それにしても上司さんも災難だよな。急に倒れちゃうとかさ~」

 

 そんなことを言いながら手早く里芋の煮物やかぼちゃの煮物などを作って、焼き魚を焼こうとしたときに昇一が帰ってきた。

 

「お帰り~。」

 

 そう言いながら玄関へと歩いていく。

 

「ただいま。ごめんね急にご飯作ってもらうようにしてもらっちゃって。」

 

 申し訳なさそうに顔を掻く昇一に対して俺は

 

「かまわないって!」

 

 そう言ってから魚を焼くために台所へと急いで戻った。

 そうやって幸せな家庭に浸っていたから気づけなかった。

 

 チャットの中で大惨事が起きていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 殺人予告が行われていたことに俺は………気づけなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 俺がそれを知ったのはすべてが終わったあと。

 リップルから直接話を聞けたその次の日だった。

 

 その日その言葉を真に受けてすぐに動いたのはスノーホワイトとラ・ピュセル。

 後はシスターナナも動こうとしたらしいんだが、ウィンタープリズンが止めたらしい。

 

 そして、リップルは偶然戦闘している場所のすぐ近くにいたってのもあって遠くから見てたそうだ。

 

 始まりはチャットにカラミティ・メアリによって投稿されたある写真。

 それには誰かはわからないがぼろぼろにされた帽子をかぶったゆるげな服を着た女性が鎖で繋がれて吊るされている様子が写ってた。

 

 その写真に加えてこの一言。

 

 カラミティ・メアリ:誰でもいいから魔獣を連れてこい

 

 最初はまったく関連性がない言葉だと思っていたからお人好しなスノーホワイト以外は放置を決め込んでいたそうだが、その数分後に投稿された言葉で状況が一変した。

 

 カラミティ・メアリ:11時までに連れてこなかったらこの女を(使用が禁止されている言葉です)

 

 カラミティ・メアリ:場所は港の第4倉庫だ。

 

 そう言ってチャットルームから退出したらしい。

 

(使用が禁止されている言葉です)って言うのは殺すとかそう言った攻撃性の高い言葉や、ファックとかそう言った汚い言葉にしかつけられない。

 そして昨日のカラミティ・メアリの様子からしてここで使われている言葉は『殺す』の可能性が圧倒的に高かった。

 

 だから、チャットの中ではすぐにでも魔獣を探しに行くべきと言う意見と、どうせ勝手に自爆するだろうから放置しておくべきの2派に分かれて論争が起きたらしい。

 因みに言うと丁度その時俺は昇一と一緒にテレビ番組を見てた。

 

 論争は結局終わることはなく、最終的にスノーホワイトが「魔獣を見つけました」と言うメッセージをチャットルームに上げたことで決着がついらしい。

 それはリップルに話を聞きながら実際のチャットを確認したから俺も把握している。

 

 だけど、この一件の本題はそれからだった。

 

 どうも、スノーホワイトが魔法で魔獣が何もしてないのに魔獣呼ばわりされて、魔法少女に襲われることで困っているということを聞いてしまったらしい。

 

 リップルから話を聞いている途中でそのことを聞いて、そんな話なら本人から直接聞いた方が話がはえーやとスノーホワイトたちがいつも集まっている鉄塔の方に行ってみた。

 行ってみたら二人ともいるのは確かにいたが、スノーホワイトの方は三角座りでふさぎこんでいて、ラ・ピュセルが必死になって慰めている。

 

 スノーホワイトがこうなった理由もいまいちわからなくて、その上魔獣から何を彼女が聞いたのかは彼女にしかわからない。ラ・ピュセルなら何か聞いてるかと思って何かスノーホワイトから聞いてないか尋ねてみた。すると

 

「あまり信じたくないんだが……」

 

 の前置きとともに教えてくれた。

 

 スノーホワイトが落ち込んでいるのは簡単に言うと、魔獣が原因ではなくて、昨日の戦いの方が原因らしい。

 なので、一体何があったのか張本人もいるし直接話を聞いてみた。しかし、その問いに対してラピュセルは首を横に振ってから

 

「その話が知りたいなら別の子に聞いた方がいい。多分あとちょっとであの時最後までスノーホワイトと一緒にいて全部見ていた()()()来るから。」

 

 そう言った。

 

「彼女?」

 

 話に突然現れた新たな登場人物に首をかしげていると、リップルが

 

「来た」

 

 そう言って後ろを見た。

 

「来たってだれが……」

 

 と言いながらそちらの方を見て

 

「……………どうも」

 

「うぉ!?」

 

 と驚きの声を上げてしまった。

 

 遠くからテレポートでもしたのかと言いたいぐらい急に現れたその少女のことを一言で言うのならば「不気味」。

 髪の色は黒く、目の色は暗い紫。着ている服は真っ黒のドレスのような服装で、色を明るいものに変えれば不思議の国のアリスと言っても通用しそうだが、基本的に黒をベースとした配色のせいで恐ろしいとしか言いようがない。全体的に幽鬼的な感じを抱かせる彼女に対して恐ろしさを感じさせないものがあるとしたらそれは手に持っている白いウサギの人形程度だった。

 

「……お待たせ……しました。」

 

「!!」

 

 そう言いながらスノーホワイトの近くにまで歩き寄ろうとするその黒い魔法少女。だが、

 

「悪いが、これ以上は近づかないでくれ。」

 

 ラ・ピュセルが空から出した剣を道を塞ぐかのように構えたことでその動きを止める。

 

 動きを止められたせいか黒い魔法少女は感情の感じられない瞳でラ・ピュセルの方を見て、

 

「……少なくとも昨日彼女を守ったのは私。」

 

 そう宣言するかのように言った。

 

「どうかな。結局最後までたっていなかったそうじゃないか。最終的にカラミティ・メアリをその場から引き離したのは君でも私でもない。あの魔獣だ。」

 

 場に半端ないほどの緊張感が漂う。その時だった。

 

「えっと……来いって昨日言われてたから来たんだけど……これって修羅場?俺いない方がいい?」

 

 若干子供のようで、これまで聞いたことがないような声が響いた。

 

 こんな時間になんで子供がとそちらの方を慌てて見てつい呟く。

 

「嘘だろ……」

 

 そこには……

 

「えっと………どもこんばんは。」

 

 若干照れくさそうにしながらこちらを見ているなぜか中学生でも通じそうなほど前に見たときに比べて幼くなった?魔獣の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇チャポン◇

 

 いつも集まっているお寺の境内の中でルーラ様に言われて昨日偵察?に行った時のことを話していく。

 ほうこくが遅れたのは昨日私自身も魔獣に襲われたせいでとても疲れたから。

 

 まさか、きしゅうをかけて()()()と思ったのにゆらりと立ち上がるとは思わなかった。

 それを報告しないで先に聞かれたことだけを答える。

 

「ルーラ様に言われた通り最初に倉庫の近くの地面に潜んでたらスノーホワイトとラ・ピュセル。それと魔獣が走ってきて顔を見合わせた後に倉庫に突入しました。」

 

 淡々と話し続ける私の様子を満足そうにルーラ様は見ている。

 

「それから数分後に見たことのない魔法少女が後を追いかけるかのように走ってきたのと同時にラ・ピュセルが緑色の歯車とともに倉庫の中から吹き飛ばされてきました。」

 

 その時<CRITHICAL(クリティカル) SACRIFICE(サクリファイス)>って音声が聞こえた気がしたけれどはっきり聞き取れたわけではないので言わない。

 

「それを見て見たことのない魔法少女が倉庫の中に入って行ったのと同時に倉庫そのものが爆弾でも仕掛けてあったのか吹き飛びました。」

 

 淡々と言っていく私が見たものを聞いてルーラ様は顔を青ざめて行った。

 

「煙が晴れたので近づいたら、倉庫があった場所にはぼろぼろになったマジカロイド44と笑顔のカラミティ・メアリとスノーホワイトを庇うかのように抱きかかえている魔獣と原形をとどめていない見たことない魔法少女が居ました。」

 

「魔獣が()()倒れて、スノーホワイトが悲鳴を上げてたのでカラミティ・メアリがスノーホワイトに左手に持った銃を向けたその時に、さっきまで原形をとどめていなかったはずの見たことのない魔法少女がその前に立ちはだかりました。」

 

「放たれた弾丸は見たことない魔法少女の頭に突き刺さってほんのすこしのあいだだけフラッとしてましたけど何もなかったかのように立ち上がりました。」

 

「それを見て顔色を変えたカラミティ・メアリが左手に持っていた変な形の武器を使って攻撃しようとしたときに急にその手を掴まれてました。」

 

「その手の持ち主は目を赤く光らせた魔獣でした。」

 

「魔獣が『それはそう使うもんじゃねーよ』と言ってカラミティ・メアリから変な形の武器をむしり取り、衝撃波を放ってカラミティ・メアリを吹き飛ばすと、その武器の色が緑色から紫色に書き換わってました。」

 

「魔獣は色が変わったそれを腰にあて、呆然としているカラミティ・メアリの目の前で『変身』と言っていつの間にか手に持ってた白い何かをその腰にあてたその武器に差し込みました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ガシャット……◇

 

 こいつの中で昨日のことを思い出しながらつい笑顔になってしまう。

 

 昨日一日中()()()()()()()()()()()色々と心が躍ることがあった。

 とはいっても12時を超えたあたりで主導権を取り返されたからまた中に引っ込んだわけだが。

 

 そんなことを考えながら中に無理やり押し戻されるまで持っていたはずの白いガシャットの喪失感を楽しむ。

 今オレが持っていないということはきっといつでも使える状態になったんだろう。

 オレに感謝しろよ大我。

 

 とは言ってもそれを除いてもあの瞬間、心が激しく踊ったのだから別に構わないんだが。

 

 なぜかテンガロンハットの年増が持っていたオレたち()()()()()()()使えないはずのバグヴァイザー(ツヴァイ)

 恐らく魔法少女と言うことと、ドライバーとしてあれを使わなかったことで死ぬことはなかったんだろうがそれでも凶器になるのは変わりなかった。

 

 体中にノイズが走ってそろそろ乗っ取ること自体も限界かなと思っていると真っ白い魔法少女が突然俺の前に現れ、俺の中で眠らせていたアイツの心を読んだ。

 すると一瞬だけ呆然自失とした表情を浮かべた後、即座に何かの画面を見せてきてオレに協力を頼んできた。

 彼女曰く人命救助だそうだ。

 魔法少女とも全く関係ないからパスしようと思ったその瞬間、首が勝手に上下に動く。

 

 それを見て白い魔法少女は安どの表情を浮かべた。

 オレもオレで()()今にも走り出しそうだ。

 

「(そう言えばこいつはそんな奴だったというのを感染(ついた)ときにわかっていたな…)」と考え、仕方ないと内心思いつつ、場所を教えてもらいながら移動を開始する。

 

 途中で竜騎士っぽい子と合流し、そのまま件の倉庫に突入した。

 倉庫の中にはこちらを見てにやにやしながら酒を飲んでいるカラミティメアリ(としま)と憔悴しきった表情のロボットっぽい少女がいた。

 

「カラミティ・メアリ!!連れてきたぞ!!人質を解放しろ!!」

 

 ラ・ピュセルがそう言って呼びかける。

 因みに言うとこれはオレが立てた作戦。

 本来ならばそこでオレがあっちに行くと見せかけて年増を拘束。その隙に二人が人質を確保……と言う作戦だった。

 だが…

 

 

「そうかい……なら全員死んじまいなァ!!」

 

 

 そう言うとカラミティ・メアリはいきなり手に付けていたオレからしたら見覚えがありすぎるもののAボタンを叩いてすぐにBボタンを叩く。

 

「避けろ!!」

 

 反射的にそう叫びながらすぐ真横にいたスノーホワイトを抱えて横に飛ぶ。

 

 真っ白い魔法少女はオレが抱えて横に飛んだこともあって飛んできた巨大な碧色の歯車を避けることができたが、竜騎士の子はまともに当たって吹き飛ばされる。

 

 正直、彼女の生存が気になったが今はそれを気にしている暇はなかった。

 

「変身」

 

 即座にガシャットギアデュアルを取り出し、黄色いテーブルを回転させ、スイッチを押し込む。

 

PERFECT(パーフェクト) PUZZLE(パズル)!!>

 

 DUAL(デュアル) UP(アップ)!!>

 

<Get the Glory in the Chain PERFECT PUZZLE!!>

 

 ゲームのスクリーンを潜り抜け、オレの姿をパラドクスパズルゲーマーレベル50へと変える。

 

 その次の瞬間だった。

 その場を離れるかのように後ろへと飛びながら、ずっとにやけていた年増がバグヴァイザーⅡを持っていた手とは逆の手に持っていたスイッチを押し込む。

 

「(マズイ)」

 

 そう思いながらオレは自分の生存と存在意義のために近くにあったエナジーコインの内の中から3枚を選んで身に纏った。

 

<鋼鐵化!!><鋼鐵化!!><鋼鐵化!!>

 

 体が鉄のように固くなる前にしっかりと白い魔法少女に覆いかぶさる。

 

 彼女に完全に被さった刹那、大爆発がオレたちを襲った。

 

「キャー!!」

 

 手の中で悲鳴が上がる。

 

 魔法で強化された爆弾による爆裂が体中を襲い、いたるところで激痛が走る。

 

 爆風と熱波がすべて飛び散った直後、ライダーゲージが一メモリまで一気に減少し、オレは変身を解除しながら倒れこんだ。

 

 そしてこちらへとやってくる年増を睨んでいたが、体へのダメージが多かったのか体がいうことを聞かない。

 

 そして年増は最初に白い魔法少女へと銃口を向け、弾丸を放とうとした。

 しかし、急に現れた真っ黒い少女によってその射線を阻まれ、白い魔法少女にその弾丸は当たらない。

 

 それにいら立ったのか今度はバグヴァイザーⅡで攻撃しようとした。

 

「それはそう使うもんじゃねーよ」

 

 そう言いながらその隙に俺は右手に白いガシャットを握りしめ、左手で跳ね起きながらカラミティ・メアリからバグヴァイザーⅡをむしり取る。

 

 むしり取った瞬間、体からあふれだしたウィルスがバグヴァイザーⅡを書き換え、バグヴァイザーへとクラスダウンさせた。

 だが、今この瞬間だけで言えば都合がいい。腰にバグヴァイザーをあてながらそう考える。

 

 今のオレは仮面ライダークロニクルガシャットは使えないからな。

 

 そう思いながらオレは手に持った白いガシャットを起動した。

 

DANGEROUS(デンジャラス) ZOMBI(ゾンビ)!!><~~♪>

 

 ギターのリフが効いたサウンドとともに背後に生体サイボーグのような男が立つゲームスタート画面が投影される。

 

「変身」

 

 そして俺は右手に持った白いガシャット_デンジャラスゾンビガシャット_を一度大きく右に振り、そのまま一気に差し込んだ。

 

<ガシャット!!>

 

<♪><バグルアーップ…>

 

DANGER DANGER(デ~ンジャデンジャ~)genocide(ジェノサイド)!)DEATH THE CRISIS(デス・ザ・クライシス) DANGEROUS ZOMBI(デンジャラスゾンッビ)!!(Woo~~!!)>

 

 

【挿絵表示】

 

 

 12時まで、残り1時間。

 1時間限定で死なないゾンビが動き出す。

 

 See you next Stage!!




感想、評価をよろしくお願いします。
感想をいただけるとモチベーションが上がりますので。


……ちょっとグダグダしすぎたかな…(冷や汗)

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