私のヒーロー道(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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USJまでちょっと間が空くっぽいので、ね。
シリアスにしようと頑張ったよ。


少し私の家の話をしよう

 戦闘訓練が終わった次の日の朝のHR。

 今日も今日とて相澤先生が教壇に立つ。

 

「君らには今日、大事なことをやってもらうぞ」

 

 先生は昨日の実技成績に触れた後、唐突に言ってきた。

 一体なんだろうか?一昨日や昨日の事から、大事なことはヒーロー科にとって大変な事と言うことだろう。今度は何をさせられるのか。

 

「これから学級委員を決めてもらう」

 

「「「学校っぽいの来たー!!!」」」

 

 ホントだよ。皆どんな無理難題が来るかと思って緊張してた分、凄いホッとしてるよ。

 

 と思ったら皆いきなり手を挙げ始めた。

 元気だなー…………。えっ?私はいいのかって?大丈夫だよ。私は指導者になりたい訳じゃないから。モモのサイドキックになるのが私の天職だから。

 

 まあ、私の事は置いておいて。皆がワイワイ手を挙げてたら決まるものも決まらないだろう。という訳で

 

「ハイハーイ。なら私は投票がいいと思いまーす」

 

「まだクラスメンバーのこと詳しく知らないのに投票なんて無理じゃないかしら?」

 

「なら自分のに投票を入れればいいよ。その中で票を勝ち取れる人が委員長に相応しいということで」

 

「なるほど」

 

 近くの席にいた蛙っぽいけど愛嬌のある女の子の反論に私は妥協案を発案。それを聞いたクラスメイト達は納得したように黙った。どうやら私の意見に賛成らしい。

 

「なるほど実に良い案だ。どうですか先生!!

 

「早く決めりゃ何でも良いよ」

 

 メガネ君が先生から許可を取れたので、私の案は採用なのだろう。

 

 フッフッフッ………皆騙されてやがる。全員が自分に票を入れれば私の一票が決めてになるのだ。つまり!モモが委員長になることが今確定したのだ!

 

 モモには良い上司になってもらいたいからね~。私頑張っちゃうよ~。

 

 __________

 

 投票結果。緑谷君に三票入ってしまった。

 

 なんでや!なんで彼に入れるんや!しかもなんで私に一票入ってるんや!

 はぁ~……まあ、モモは副委員長になれたわけだしまだ良かったのかな。にしても誰が私に入れたんだ?モモは二票だから違うにしても………謎だ。

 

 

「うーん………悔しい」

 

「ちぇー。絶対モモが委員長だと思ったのにー」

 

「と言うかウチは他の人が自分に入れなかったのが驚きだなー」

 

 時は変わって私は今、モモと響香を誘ってランチタイムである。モモと私はお弁当なのだが、響香は学食という事で食堂に私達はいた。

 

 ちなみに私は慣れているので気にしてないけど、八百万さん家のお弁当は豪華だ。響香がそのお弁当を見た時、絶句してしまうほどなのだから。

 

「あのさー………もしかして百の家ってお金持ち?」

 

「そうだよ」

 

「………そんなことないですわ。普通です。大きさなら椿の家と変わりませんよ」

 

 アレが普通か。フッ………世の中って不平等だよな。行く度に美味しいもの食べさせてもらってる私が言えたことじゃないけど。

 

 

 その後はなんか警報が鳴って一悶着あったけど、まあどうでも良いことだろう。何故か他の委員決めの時に、緑谷君が飯田君に委員長を譲っていたのが気になったけど。

 

「………私の立場は?」

 

「ああ、拗ねないでモモ!私は今でも委員長がモモに相応しいって思ってるから!」

 

 そのお陰で拗ねてる可愛いモモを宥めれたので万事OKだ。ちなみに私の宥め方は抱き付いて頭を撫でるの一択。柔らかいぜ。

 

 ____________________

 

 

「んじゃあモモ。また明日ね」

 

「ええ。また明日」

 

 放課後。昔から少しずつモモが続けている、心月流の指南を私はモモにしていた。場所は私の家の道場で行っている。

 今日も二時間ほど稽古を行い、モモは執事さんが送迎車する車で帰っていった。

 

 モモがいると私だけしかいない家の敷地も明るくなるのだけど………彼女が帰れば寂しい空間になってしまう。

 昔は無駄に広大な敷地の中も、静まり返る家の中も、全てが怖くてよく泣いたのは懐かしい思い出だ。

 

 

 私の家はとても大きい。邦枝家は戦国時代から柳生家と並ぶ将軍家御指南役を勤めた大名の家系だ。その邦枝家は柳生家が滅びた今でも残っている。

 それも一重に、邦枝家が江戸時代の頃からオランダとの外交を担っていた大名で、明治にはイギリスとの外交を担い、廃刀令から除外されたのが理由だ。

 

 だから私達の家系は外国の血が多く混ざっている。

 そして邦枝心月流抜刀術は唯一江戸時代から滅ぶことなく受け継がれ、海外にまでその名を広めた由緒正しい名門の流派でもあるのだ。

 ヒーロー社会となった今でも。いや、むしろヒーロー社会だからこそ、心月流の門を訪れる人は後を絶たない。

 

 まあその辺は、分家の叔父に道場の看板は任せているから私には関係ない。あの人はその事でキィキィ五月蝿く言って来るけど。

 

 

 私は家の中に入ってすぐ居間に向かう。帰ってきたら必ず行く場所だ。

 居間に入り、私は()()()()()()()()()()()()の前に座る。

 

「お父さん、お母さん。今日も私は元気一杯に学園生活を送ったわ……。今日のお昼はモモと、昨日話した新しい友達の響香とご飯を一緒に食べたの。……それと、モモがクラスの副委員長になったわ。モモは委員長になれなくて、とても悔しそうにしていたけどね」

 

 これは毎日朝と夕方に行う両親への報告だ。これは自己満足かも知れないけれど、もしかしたら天国で心配してるかもしれない両親を安心させるために行う会話なのだ。

 

「それじゃあ私は夕飯の準備をしてくるわね。お休みなさいお父さん、お母さん」

 

 

 

 ____________________

 

 

 私がモモと知り合ったのは、まだお父さんもお母さんもお爺ちゃんも生きている頃だった。

 

 裕福な彼女の家と、名門である邦枝家はパーティーに出ることが多い。出会いの時も何処かのパーティー会場の挨拶で彼女と会ったのだ。

 

 同い年であった私達はすぐに仲良くなった。幼馴染というやつだ。

 それからはずっと二人一緒だった。幸いだったのが私には才能があったことだろう。

 彼女の才能のせいで、付いていけるのが私一人だけだったから。

 

 モモはその才能のせいでよく孤立することが多かった。頭は良いのに要領が悪く中身が子供だった彼女は、周りの子達から遠巻きにされていた。

 その度に私は彼女の相手をしたり、集団の中に引っ張っていったりしたので、それは大層なつかれた。

 

 他の人より早熟だった私は、彼女と他の人の仲を取り持った。あまりにもしつこく私だけになついた時があって、嫌いになりそうな時もあった。それでも私は世話の焼ける妹と思って接し続けた。

 

その時は楽しく幸せな時間だったと今でも思う。

 

 

 その生活が変わったのが私が八歳の時だ。

 

 両親が死んだ。

 死因は飛行機テロに巻き込まれたのが原因だ。その時、二人は仕事で飛行機に乗っていたそうなのだ。

 

 孫にどんな時でも厳しく稽古をつけてくる厳格なお爺ちゃんが、その時初めて泣いていたのを見た。

その泣いている顔で、私に謝りながら両親の死を告げてくるのだ。

 

 お父さん達は死んでないと、否定することも拒絶することもできなかった。

ましてや受け入れることも、私にはできなかった。

 

 その頃からだと思う。私が心月流に打ち込むことで、両親の事を忘れようと躍起になったのは。

 お爺ちゃんに今まで以上に厳しくしてもらうことで、私は稽古に没頭することができた。

 この時の影響で、私は戦闘の度に口調が無意識的に変わってしまうのが少し気になるが。

 

 

 個性のお陰もあってか、私は十歳の時にお爺ちゃんから免許皆伝を認められた。

 その後は免許皆伝者のみが教わることのできる抜刀術をお爺ちゃんに教えて貰っていたけど、数ヵ月後にお爺ちゃんは病で倒れてしまった。

 

 それから毎日家で一人だった。親権は入院したお爺ちゃんが持っていたから、叔父は私の面倒など見てくれない。

 

 

 広い家の中、私は独りぼっちになった。一時期は女中さんが居てくれたが、誰もいなくなった家で給料など払えるわけがない。

 稽古に明け暮れていた私は仲のいい女中さんなど居らず、私には何も告げずに誰も家にいなくなった。

 

 

 私は何もできなかった。

 

 

 お爺ちゃんに稽古で森に放り出された経験により、私は何とか飢え死にすることはなかった。

 でも、それだけだ。

 時が過ぎる度に私の中のナニカが磨り減っていくのだ。

 身体が疲れてなくても、精神が疲れていく。家にいるだけで胸が苦しい。

 

 独りだけの夜は、10歳の女の子の私にとって苦痛でしかなかった。暗い森で寝たこともあったが、それでも稽古だと、いつか終わると思って我慢することができた。

 

 いつ終わりが来るかもわからない毎日の夜を、私は涙を流しながら布団の中に潜り、朝が来るのを震えて耐えた。

 

 

 今まで、私はどんな厳しい稽古だって乗り越えてきた。

 

 でも………私以外誰もいない独りだけの家は駄目だった。

 誰かがいた家。暖かい人達がいた家。厳しくも人間味のある人がいた家。

 それが全て無くなり、空虚な家になった。生活感が残っているのに何一つ物音のしない家になった。

 暗く、怖く、そして………どうしようもなく両親が死んだ現実を私に突き付けるのだ。

 

 両親を求めて家中を必死に探した。何度も、何度も。数え切れないぐらい何度も、部屋を見回って家族を探し続けた。

 誰もいないと頭では理解しているはずなのに、心が理解することを拒んだ。

 

 一度探し終わると心が磨り減る。寂しくなる。苦しくなる。

 だから私は両親を求めてまた探し始める。

 

 

 大好きだった両親のいた家は何処にも無くなった。そこには空虚になった家と、歩むことを止めた私だけが残った。

 

 




BB欲しいのに5章までしか終わってないよ………

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