個性把握テストも終わった次の日だ。
これから私たちはヒーローになるための授業を受けることになる。と言っても午前中は必修科目の勉強だ。ヒーローたる者、一般常識は確実に学ばなければならない。
まあ、ヒーローの先生達が普通に授業を行うのは中々クルものがあったけど。ヒーロー衣装で普通に授業しないでほしい。とてもシュールです。
昼は大食堂で安価な学食が食べれる。一流のシェフ、クックヒーロー達が作っているからとても美味しい。
そして午後である。科目はヒーロー基礎学。しかもオールマイトが担当だ。これでテンション上がらない方がおかしいだろう。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
「おお………オールマイトだ!すげぇ、本当に先生やってる!!」
「画風が違いすぎて鳥肌が……!」
宣言通り普通にドアからオールマイトがやって来た。
ヒーロー基礎学は様々な訓練がある分、単位数が最も多いし担任がオールマイトだからやる気も倍増だ。
オールマイトはいつも見るテレビのような大袈裟な動きで私達に説明を始めた。
「早速だが今日はコレ!戦闘訓練をやってもらう!!それに合わせて、皆に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた………
「「「戦闘服!!!」」」
「着替えたらちゃんとグラウンドに集まるんだぞ!では解散!!」
皆のテンションが高まるのが肌で感じ取れる。
コスチュームか………確かにテンションの上がる事ではあるけど、私的にはちょっとビミョーだった。
何故なら衣装に問題があるからだ。渡された服と他人の服を見比べて思う……やはり自分だけ違うと。
私の格好はアレだ。右足にスリットが入った赤の着物、帯や刺繍は金色で、黒のストッキングとブーツを履いている。また、鞘のついた鎖を右肩から左腰にぶら下げて、木刀を鞘に挿している格好だった。
この衣装を着て改めて思う。皆何かしらアメリカンのコスプレみたいな感じなのに………なんで私は着物なんだよ!
確かに木刀などの刀を使うって書いたよ。足を動かす為に動きやすい格好でって書いたよ。
でもさー………足にスリットの入った着物はないんじゃないかしらー………なにコレ?太股までがっつり見えてるんだけど。凄い恥ずかしいんだけど。
……いくら黒のストッキングで大部分の肌は隠れてるからって言ったってさ………。
そもそもなんで和風なのさ。
髪が金髪だったから服は赤色にして花の椿をデザインしようとしたんだよ。でもさ、周りがアメリカンなのになんで和風?別に花は和風以外にもあるよね?
確かに椿をイメージしてって書いたよ。下は金糸で刺繍された椿がとても綺麗だから満足だよ?でもなぁ……アメリカン……
「椿。その着物は似合ってますよ」
「えー……まあ、ありがとうと言って、ってモモ!?貴女なんて格好してるの!?」
ビックリした!モモの格好を見て私の愚痴など吹き飛んでしまうくらいビックリした!
モモの衣装が胸元から臍にかけてパックリと開いたレオタードと言ったその………凄くセクスィーな格好なのだ。とてもじゃないけど私はそんな大胆な格好は無理だ。
「貴女の個性は理解してるけどさぁ!せめて上から羽織る物くらい着なさい!ハイ出す!今すぐ出す!!」
「何をそんなに慌ててるのよ椿………私は肌の露出などまったく気にしませんわ!」
「良いとこの令嬢が何言ってんだ!?てかホントにお嬢様かよ、どんな教育させてんだあの親!!」
どんだけ羞恥心が無いのだこの娘!
いや、よく見たら他の女子たちも何だかんだ言ってエロくないか?身体のラインが諸に出てるスーツとか着てるよ……。
うーん………これは逆に私の方がおかしいのか?………いやいやいや。騙されるな私。
ワタシ、ジョウシキジンデス。
むしろ着物で良かったのかもしれない。そんな考えで落ち着けた私は、皆に置いてかれないようグラウンドに向かった。
__________
「始めようか有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!!」
さて、いよいよだ。雄英に入って初のヒーロー学授業。楽しみである。
オールマイトの説明では、二人一組にタッグを組んで行う、2対2の対人屋内戦闘らしい。
ヒーロー組とヴィラン組で役割を決めて実戦を想定した訓練。
「ヴィラン出現率は屋内が圧倒的に高い。監禁・裏商売・アジト………真に賢しいヴィランは
と言うわけだ。状況設定は、ヴィランがアジトに核兵器を隠していてヒーローはそれを回収する為に動くと。実にアメリカンだね。
勝敗は、ヒーロー側が制限時間内にヴィラン側を捕まえるか『核兵器』を回収すれば勝利。ヴィラン側は制限時間まで『核兵器』を守るかヒーローを捕まえれば勝利。
「ちなみにコンビと対戦相手はくじで選ぶぞ」
くじか………雄英合格者なら大丈夫だとは思うけど、できれば足を引っ張らない人がいいな。特にあの変態くんとボサボサくん。
変態くんは把握テストを見てた感じ、あの頭に生えてる黒い球が個性みたいだね。くっついたり弾んだりしてたけどその辺は彼がコントロールしてるのかな?
ボサボサくんは自分の身体を犠牲にして超絶パワーを引き出すのかな。と言うか何だあの被り物。凄くダサくないだろうか。センスが感じられない。
まあセンス云々は置いとくとして、どっちも場合によっては強いと思うけど身体能力がな………
っと、くじ私の番だ。ハイハイ今引きますよ~……。ふむ、Cだね。パートナーは誰かな?む、あそこにモモっち発見。とりあえずモモは何だったか聞いてみよ。
「ぅおーいモモ。なんだった?」
「あら椿。私はCでしたよ」
「えっホント!?やったね!私もCだよ!」
「椿とコンビですか。とても嬉しいです」
ナイスタッグである。私たちは切っても切れない特別な縁でもあるのかもしれないね。
近・中レンジの私と中・遠レンジのモモ。戦闘の相性もバランスも中々良いし、これは勝つる。
そのあと、オールマイトが対戦相手のくじ引きを行った。AとD………私達じゃないのか。残念。
Aはボサボサもとい被り物くんと、名前と雰囲気が可愛らしい麗日ちゃんだね。
麗日ちゃんはポワポワして可愛いのが特徴だ。あと立ち幅跳びボール投げ一位。
Bは……うわっ絶対合わないでしょあのタッグ。よりにもよってあの不良くんとメガネくんだよ。絶対無理だなあれ。
さて、ヴィラン組が訓練場所であるビルの中に入ってから五分後にスタートか。モニターでここから戦闘が見られるからその間に他の女子とも仲良くしなきゃ。
女子のグループを組むのは大変だからなー。できれば優しそうな麗日ちゃんと仲良くしたいけど、それは後だ。
と、言うわけであそこにいるロックなファッションの彼女に話しかけてみる。
「うし。行くよモモー」
「へ?どこへ?」
モモを巻き込んで彼女の所へ行く。ふむふむ、近くで見ると中々センスのある髪型だね。どこの美容室通ってるのかな?
「ヘイそこの彼女!私達とおしゃべりしよーよ!」
「どこのナンパですか!」
「えっ………モモ、ナンパ知ってるの!?何処のどいつだ私のモモにそんな低俗な言葉を教えたのは!」
「貴女ですわよ………」
「うぉぉ………なんか濃い人達が来たよ」
失礼な。私が濃い部分なんてこの派手な着物くらいだ。
「私の名前は邦枝 椿。こっちが八百万 百。ヒーローを目指す者同士、仲良くしよ?」
「よろしくお願いしますわ」
「オッケー。ウチも友達欲しかったんだ。名前は耳郎響香。呼び捨てで良いよ、私もそうするから。……と言うか二人のコスチューム凄いね」
「止めて。私はこんな服にしたかった訳じゃないの」
「似合ってるから良いじゃないですか椿」
「君はもっと羞恥心を持とうか」
やっぱり突っ込まれてしまった。まあ、響香……呼び捨てで良いって言ってたし、響香でいいか。響香のコスチュームは派手さはないけどロックだからね。羨ましい。
む……どうやら戦闘が開始されるようだ。一応他の人の個性を詳しく知っておきたいし、どんな戦術を取るのか見てみたいし、モニターに集中するか。
大分個性の強い主人公になってきた。
まって。主人公性格変わりすぎじゃね?どうした?