私のヒーロー道(休載)   作:ヘイ!タクシー!

16 / 16
(先) 常闇
(真ん中)椿
(左)響香 一佳 (右)


騎馬戦 前編

『START!!』

 

プレゼントマイクの声が会場内に響き渡った瞬間。

前から二組の騎馬が私達目掛けて殺到してきた。

 

「実質1000万の争奪戦だオラ!!」

 

「獲る!!」

 

『開幕からトバしてきたのは鉄哲チームと小大チームだ!どうする1000万!』

 

やはり誰かしら序盤から狙ってくるだろう。それを見越していた私はすぐに響香に合図する。

 

「響香!」

 

「はいよ!」

 

響香が私の合図に合わせて、彼女自信の心音を相手騎馬に衝撃波として放つ。狙いは上の生徒ではなく下の騎馬。

騎馬の生徒達は手が十分に使えない以上、彼女が放つ爆音と衝撃を防ぐことは出来ない。

 

「「「うるせぇぇぇぇ!!!」」」

 

騎馬の生徒達はその音に思わず止まって縮こまってしまう。

敵の進行を止め、個性の発動の邪魔、両方を成功させた。その隙を逃すほど私達は甘くないつもりだ。

 

「んじゃあ逃げるよ!右側だ!」

 

三人に呼び掛けて、私達は迫っていた敵から逃げる。当然、響香の個性で絶え間なく爆音を放ち敵を牽制してもらう。

 

「く、くそッ!!」

 

「耳がッ!」

 

『おおっと!?どうしたお前ら!急に立ち止まってもよおしたか!?』

 

『耳郎の個性だ。申請にあった足のスピーカーで超音波をアイツ等に届けてるんだろ』

 

先生達の実況を流し聞きながら、私は周りに警戒をむける。

どうやら私達を狙っている騎馬は今のところ無いようだ。

 

「よし。さっきの奴等はここまで離れたら来ないでしょ」

 

「そうだね。鉄哲達は2番目にポイントが高いから普通に狙われるしね」

 

「となると他の敵だけど………あんまり来ないね?」

 

序盤だから高いポイントを取りに来るとは思わなかったけど、もう少し来るとは予想していたのだ。何故だろうか………。

 

「臆病風に吹かれた、と言うわけでは無さそうだな」

 

「あー………多分B組のせいだね。特に物間のせい」

 

常闇君もわからないらしいけど、一佳はどうやらこの状況を察したようだ。B組のせい、と言うことは彼等に何か作戦のような物があるのか。

 

「自分達の個性を隠しつつ、序盤をA組に花持たせてから逆転してやろうって魂胆なのさ。さっきの鉄哲達は違うけど、大体皆そんな感じ」

 

「なるほど」

 

そう言えばB組は私達A組を毛嫌いしていた。つまり、逆転して盛大に負かせようとしている訳だ。何と言うか………人間性がアレだね。

 

私の気分悪い感情が伝わってしまったのだろう。一佳は慌ててフォローに回る。

 

「いや、皆が皆そうじゃないよ?ただ物間がね………」

 

何とも苦い表情で顔を背ける一佳。

察するに、その物間と言う人物の影響で皆がそう言った戦術に走ったと。

 

作戦的には悪くないのだけど、A組に花持たせてから逆転して印象付ける負かせ方をしようと言うのは……………まあ、人のこと言えないか。

そんな気持ちは無かったけど、それに似たような事やっちゃってるし。

 

………問題はA組に悪感情を抱き、それを率先して煽っている事か。

A組が何かした訳でもないのに……。理不尽を感じてイライラしてくる。

何も知らないのに。ただただ漠然とヒーローになりたいだけで、自分達は今どれほど恵まれているか知らないくせに。

 

私が()()()()()()()()()()()()()()なんて、わかろうともしないくせに。

 

「椿!横から来てるよ!!」

 

「っ!?ご、ごめん!方向転換して響香は牽制!常闇君はーーーーーー左を迎撃!!」

 

一瞬だけど私の意識が騎馬戦から逸れてしまった。今、響香の警告が無かったらヤバかったかもしれない。

彼女の警告を聞いてすぐに感知を広げ、響香が牽制しようとしている方向とは逆側から来る飛来物に警告した。

 

瞬時に常闇君のダークシャドウがその飛来物を弾き飛ばす。

 

「………これは」

 

「峯田くんのブヨブヨだね。一佳、気を付けて。あの黒い球に触れるとくっついて離れなくなるよ」

 

「わかった!」

 

私は一佳に忠告しながら、峯田くんの個性が飛んできた方向へと目を向けた。

そこには、羽のような触手で背中を覆い、前傾姿勢を取る障子君が迫って来るのが見える。

 

『なんだぁ!?A組の障子一人じゃねーか!!』

 

「いや………あれは」

 

背中を覆う触手の膨らみの中。そこに二人ほど小柄な人を私は感知した。

状況からして一人は峯田君。そしてもう一人は………。

 

「梅雨ちゃん!」

 

そう考えた瞬間、障子君の触手の隙間から長い舌が私に向かって伸びてくる。ただ、速度は中々だったけど、認識している以上避けるのは容易かった。

首を少し曲げてその舌をやり過ごし、私はその舌を掴む。

 

『障子の背中から何か出てきたぞ!?しかし邦枝、それを華麗に避けてキャッチ!』

 

『蛙吹の舌だ。障子の個性の下に隠れているようだな』

 

「いひゃい、いひゃいわフハヒひゃん。放ひて………」

 

「ごめんね!」

 

私はすぐに梅雨ちゃんの舌を、ダークシャドウに弾かれて地面にくっ付いている黒い球に投げつける。

すると見事舌が球にくっ付いて離れなくなった。

 

「とれひゃい………」

 

「おおい!蛙吹何やってんだよ!」

 

『ああーーっとぉ!!峯田チーム、自分達の個性で逆に身動きが取れなくなっちまったぞ!!』

 

よし!これで騎馬の一つが行動不能とまではいかなくても、ある程度行動に制限ができた。

考えは悪くないけど、ちょっと人選ミスだったね。

 

右側では響香が牽制してくれてるし、前後から来る敵も今のところいない。なら、

 

「常闇君!今のうちに峯田君達の獲っちゃってよ!鉢巻は峯田君!」

 

「わかった!」

 

「アイヨッ!」

 

言うが早いか、ダークシャドウは伸びて狼狽えている障子君達に素早く向かうと、触手の隙間に入り鉢巻を奪った。

うむ。鮮やかな奪い取り。手癖悪いな。

まあ、今回はその手癖の悪さで奪い取れたのだ。感謝こそすれ、悪く言うのはお門違いか。

 

「ナイスだよ常闇君」

 

「いや、今のは邦枝の類い稀なる反応のお陰だ。あの状況なら盗るのは容易い」

 

それでも、彼の個性は優秀だと思う。あのスピードに優れた防御力と攻撃力。舌を巻く他ない。

そんな風に常闇君の個性に少しだけ分析していると、また新たに背後から気配を感じとる。

 

「皆、後ろ気を付けて」

 

私の言葉に反応してすぐに向きを変えてくれる皆。

そして景色が変わった視界に写ったのは、緑谷君の騎馬だった。

 

「獲りに行かせてもらうよ邦枝さん!」

 

「へぇ………とうとう二位のお出ましだね。響香、牽制」

 

「はいよ」

 

此方に向かってくる緑谷チームの騎馬目掛けて、響香が個性を放つ。

が、それを受けても彼等は止まらなかった。

 

「なにぃ!?私の個性が効いてない!」

 

「いや………多分耳栓してるね皆。あれ、サポート科の人がいるしそのせいかも」

 

『さあ!ここで一位と二位のトップ争いだ!!見逃せねーぞ!』

 

私は緑谷君達の騎馬を一人一人観察した。

先頭が尾白くん。私から見て右側が麗日ちゃん。最後に何かの装備でガッチガチに固めた女の子。

順位を見た時にちらりとサポート科が一人いることを知ったから、多分あの子だろう。皆、ヘッドフォンしてるし。

 

「どうですか!?ワタシの可愛いベイビィー達は!?完璧なノイズキャンセリングに、他の方と通話も可能!更に片方だけ取り外しもできますし 音楽も当然聴けます!更に更にメモリ搭載付きに操作も可能な上にーーーーー」

 

うん。確実にサポート科だろう。自分の作った用具の説明してるし。商売根性が逞しい。

 

それと、緑谷君達があの騎馬で何がしたいのかも大体詠めた。

麗日ちゃんの浮力に、USJでちょっとだけ見た尾白君の機動力と武術。

 

つまりは

 

「急加速だ」

 

突如、尾白君の尻尾が地面を叩き、驚くべき速度で私達に肉薄する。

緩急の速度に不意を突かれたダークシャドウも反応するが、即座に方向転換して上手く常闇君の影を避けると、さらに近付かれる。

ただ、この速度なら私は十分対処可能なはずだった。

 

距離にして二メートル。その差が更に埋まろうとした時だ。

次の瞬間、私達の視界から彼等が消えたのだ。

 

 

 

私の意識が切り替わる。

視界から色が失い、全ての動きが緩慢となる。

 

直後、私は感知と直感に従い、頭部目掛けて上から伸びてきたアームの様な物を避けた。

 

「クソッ!避けられた!!」

 

上空から緑谷君の声が聞こえる。

 

やはり彼等は跳んだようだ。それも尾白君の尻尾の機動力と、緑谷君が背負うブーストの様な物を使って。

それらによって生じた急激な速度に、目が追い付け無かった私の視界から外れたのだろう。

 

「一佳。手を」

 

「わかった!」

 

私は一佳に呼び掛けて、手を大きくしてもらうと掌の上に乗らせてもらう。

そのまま彼女の手を土台にして、此方に背を向けている上空の緑谷君達の背後目掛けて跳ぶ。

 

「まさか、お遊びでこうなるとは思わなかったけど………」

 

緑谷君の背中に乗っかるのと同時に、首に掛けてある鉢巻を奪い取った。

 

「なっ!!?」

 

「正直、見くびっていたわ。ごめんなさいね」

 

「ぐぇっ!」

 

そう言い捨てて緑谷君の背中を蹴り上げ、一佳の大きな手まで跳んで戻る。

 

『跳んだぁ!!てかそれありなのかルール的に!?』

 

『テクニカルだからアリよ!』

 

プレゼントマイクとミッドナイトの言葉を他所に、私は一佳の大きな手に着地すると、意識を切り替えていそいそと元の騎馬の位置に戻った。

 

「……いや~、危なかったねー。ヒヤヒヤしたよ」

 

「………よく避けられたな。獲られたと思ったぞ」

 

「ホントになぁ。しかもそこから奪い取るとか、椿は凄いね」

 

「いや~照れますよ~」

 

私は盗った鉢巻を首に下げて、辺りを警戒しながら器用に照れる。

 

すると、再び緑谷君達の騎馬が私の感知に引っ掛かった。

やはり盗られたままでは不味いと思ったのだろう。緑谷君達が焦ったように私達に突っ込んで来るのがわかる。

 

自棄になったと思わなくもないけど、さっきのと言いレースの時と言い、緑谷君は慎重派であり頭脳派だ。

それが今までのやり取りでわかった今、私は警戒は緩めない。

 

私は再び意識を切り替えようとした時だった。

 

緑谷君達の更に奥から、私達に向かって来る一つの騎馬が見えた。

 

「轟君に……………モモ、か……」

 

緑谷君達には悪いけど………ようやく、本命と言った所だろう。

彼等にとっても、私にとっても。

 

 




レポートのせいでextra間に合いませんでした。マジ最悪です。

………ザビーズ出てないよね?あの二人と鯖四人は大好きだから凄く気になる。てか出てたら切腹もの。制作会社が

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。