『最後は一面地雷原!!怒りのアフガンだぁ!!地雷の位置はよく見りゃぁ分かる仕様になってんぞ!! 目と足酷使しろ!!』
地雷って………やはりアホなのか。怪我だけじゃ済まないぞ………。
『ちなみに威力は大したことねぇが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜぇ!!?』
『チビったのか?』
『はぁ!?ち、ちげーし!チビってねーし!止めろよな、そーゆーデマ流すの~!ほんとさぁ~!』
『キャラ崩れてんぞ』
どうやら殺傷能力は無い地雷のようだ。まあ、当たり前だけど安心した。これで私も本来の力が出せると言うものだ。
「んじゃあモモ。私、先行ってるね!」
「はぁ……行ってらっしゃい」
最終関門に入った私は、モモとお別れして前に目を向ける。
どうやら先頭の焦凍と爆豪君がお互いを引っ張り合いながら地雷を回避して進んでいるようだ。
爆豪君は空を飛べるし、焦凍としては是が非でも邪魔をしたいのだろう。
私としてはそのまま足を引っ張り合ってくれれば楽なので嬉しいだけなのだけど。
『喜べマスメディア!お前達好みの激しい先頭争いだ!』
悪いけどそれは打ち止めだよプレゼント・マイク。
私は縮地で地雷だらけの道を跳ぶ。地面を蹴った時にカチッと音がなったが関係ない。
地雷が爆発するよりも早く私は地面から離れ、爆風すらも縮地の後押しとなった。
それを数回繰り返すだけで、私は二人に追い付き抜かす。
『ここでペースを落としてたはずの邦枝が乱入ぅ!!つーかヘバって無かったのかよ!!』
『持久走でバイクのスピードと並走するような奴だぞ?油断させるために最初から手ぇ抜いてたんだよ』
『シヴィな!!!』
「やあ二人とも。そしてさようなら!」
「ああッ!!?」
「ッ!!」
私は一々手間を掛けて二人の前に出ると、土の盛り上がっている場所ーーーーー地雷のスイッチを蹴って、その場から離脱する。
瞬間、二人を妨害しながら私は爆発に乗って一気に地雷フィールドを駆け抜けた。
『邦枝一位に躍り出たぁぁぁ!!地雷が意味を成してねーぞオイ!』
『瞬発力だからな。爆発前の移動も、地雷を意図的に踏んで妨害に使うのも容易だろ』
『つーかお前らのクラス妨害ばっかだな!!教育どーなってんだ!!?』
『元からだ』
『こいつぁあシビィィィ!!!!!』
先生達がホントにうるさいけど、私は先頭に出ることができた。
後はこの速度を維持すればと………思っていたら、後ろから冷気と爆発音が私の肌に伝わって来る。
「トップは俺のモンだぁぁぁぁ!!!!」
「行かせねぇッ!」
いがみ合っていた二人が私の妨害から持ち直して追い上げてきたのだ。
と言うか、二人とも持ち直しもスピードも速い。ここまで私と同様、体力を温存させていたようだね。
私ぃちょーツラいんですけど~。そー言うのー、やめて欲しいんですけど~。というかぁー、マジちょべりば。
「って、危な!?」
「ちっ!」
ふざけた事を考えていると、私の美脚に驚異が迫る。
焦凍が私の着地と同時に、地面諸とも足を凍らせようとしてきたのだ。
私はすぐさま飛び退いてその攻撃を躱す。
間一髪、と言うほどでも無いけど、今のは少し危なかった。
個性で凍らせるスピードも上がっている。マジで彼、本気だよ。
『元先頭の二人!争っていた轟と爆豪が邦枝に迫る!いがみ合う余裕も無いってかぁ!?個性全開だなオイ!!』
「ぶっころぉぉぉす!!」
「てか爆豪君が凄い形相なんですけど!?殺人者の顔だよアレ!!」
マジで怖い!と言うか二人とも、女の子相手に容赦なさ過ぎでしょ!?酷くない!?
さっき妨害した奴が何言ってんだと言う声は、私には聞こえない。
しかし困った。氷が邪魔でこのままだとギリギリ追い抜かれる。
何か策は無いかと考えを巡らせていると、私の感知が後方から迫る人の気配を感じ取った。
『A組緑谷!爆発で猛追ぃーーつか追い抜いたぁぁぁぁ!!!?』
そう。何かの板に乗った緑谷君が、私と同じように爆発を利用して私達を追い抜いたのだ。しかも板のお陰で私よりも爆風を受ける面積が多い分、私よりも速い。
けど、そこで終わりだ。なんと言ってもただ乗って爆発で後押しとされただけ。減速するに決まっている。
私は空中で減速した彼を追い抜き、再びトップになる。
が、またしても彼は後方で爆発を起こし、私に迫ってきた。
………まあ、二度目を許すほど私は甘くないけどね。
縮地を使って迫ってきた緑谷君の背中に飛び乗る。
そのまま彼を踏み台にして、目の前のスタジアムの中に繋がる通路の入り口に突っ込んだ。
狙い済ましたかのようなこのタイミング。最後の地雷でのぶっ飛びと妨害。緑谷君はちゃんと計算してたんだろうね。
………私は、彼の事を些か甘く見ていた。実に計算高く。実にクレバーだった。
だけど残念。
『予想を超えた、まさかまさかの大接戦!!!しかぁし入試一位は伊達じゃねぇ!レースを制したのは女王!!邦枝 椿だぁぁああ!!!』
『おおおおおおおおお!!!!』
スタジアム中に観客の歓声が響き渡る。鼓膜が破れそうだった。
という訳で一位である。
………まあ、宣誓でトップになると言ってしまったのだ。有言実行できなければ邦枝の名が廃るというか……流石に恥ずかしい結果は出せない。
『さあ!他の後続も続々とゴールしてんぞ!まだの奴は急げ急げぇ!』
レースが終わって余裕が出来たので、私は他の人がゴールするのを眺めている。
やはりヒーロー科は優秀なのだろう。A組の人達が次々とゴールに辿り着いてきた。
おっ、あれは切島君じゃん。彼は10位なのか。やるじゃん。
あれは麗日ちゃんと……峰田君か。というかあの男は何麗日ちゃんの麗らかボディに張り付いているんだ。ああ………あの黒い玉で張り付いてるのか。セクハラで殴るぞ。
私は峰田君に近寄ると、その顔面をぶん殴って吹っ飛ばした。
………仮に、ソレをモモにやってたら完璧に彼の命は無かったね。断言できる。
まあ、ifの話は置いておこう。それより、私には重要な用事が残っているのだ
「モモ~!私一位になったよッ!」
重要な用事。それはモモに抱き付いてその気持ちいい身体を堪能することだ。
彼女は私を優しく抱き締めると、困った表情を私に向けた。
「はぁ………まったく椿は……」
「うへへへ………」
そう言いながらまったく抵抗しないで私を迎えてくれる彼女が大好きなのだ。
ああ……この引き締まったお腹。なのにすべすべしたお肌。そして、すべてを兼ね備えたモモのモモパイ。
今回はいつもの制服と違い、モモはジャージの前を開けているからダイレクトにお肌を堪能できるのだ。
私はこの瞬間のために生きていると言っても過言ではない。
そんな風に私がモモと戯れていると、後ろから声を掛けられた。
「相変わらず仲良いわね」
「あ、梅雨ちゃん。お疲れ~」
「お疲れ様ですわ梅雨さん」
「お疲れ様。梅雨ちゃんで良いわ。それと、二人とも凄いわね。上位入りじゃない」
そうなのだ。モモも6位と大変好成績を出してゴールしたのである。幼馴染として嬉しい。
「ありがとー!でも梅雨ちゃんだって42人中14位なんだから十分上位じゃない。ねっモモ」
「………えっ?ええ…そうですわね」
あれ?何かモモの反応がおかしい………。どうしたのかと思い。モモの顔を覗き込んでみると、その顔には何か思い悩んでいるような表情を張り付けていた。
「モモ………どうかしたの?」
「考え事かしら?」
「あ…えっと、な、なんの話ですか?」
珍しい。モモが話の途中で自分世界に入るなんて。何か不味いことでもあったのだろうか。それとも体調が悪い?
「本当に大丈夫モモ?体調が悪いなら先生に言って休む?」
「………いえ。何でも無いんです。少し思うところがありまして………」
「そっか………ツラいことがあったら言ってね?私、何でもするから!」
そう励ましのつもりで私が言うと、モモは再び思い悩んだような表情になってしまった。
その表情を見ると、どうしても私も不安になってしまう。
「ねえ………本当に大丈夫なーーーーー」
『そろそろ第二種目を始めるわ!予選通過者は並びなさい!』
どうやらもうそんな時間らしい。ミッドナイトの言葉に私の声が遮られてしまった。
私とモモは梅雨ちゃんに促されて列に並ぶために歩き出した。
モモの表情に私は凝りが残ったまま、第二種目へと進んでいってしまった。
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『第二種目は………これよ!』
ミッドナイトの言葉に、私達の前にある巨大なディスプレイにその種目が写し出された。
「騎馬……戦……?」
どうやら騎馬戦らしい。まあ、体育祭ならではの競技と言えばそうなのだけど……どうやって騎馬を決めるのだろうか?
すると、ミッドナイトがその事も説明してくれた。
どうやら騎馬は二~四人で組、メンバーは自由なようだ。基本は普通の騎馬戦と同じだが、予選の結果に従い各自にポイントが割り当てられるらしい。
「入試みてえなポイント稼ぎ方式か、分かりやすいぜ」
「当然予選上位の方がポイント高いよね」
「つまりメンバーの組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」
「あーなるほど! じゃあ高い人と組んでずっと持ってるか、低い人と組んで獲るかだね!」
『あんたら私が喋ってるのにすぐ言うね!!』
生徒達に説明の続きを言われて仕事を盗られたミッドナイトがお怒りのご様子だ。彼女はめげずに説明を続けるが、半ばヤケクソなように見える。
『ええそうよ。そして、与えられるポイントは下から5Pずつ。42位が5P、41位が10Pといった具合にね!そして一位に与えられるポイントは――――1000万!!』
私は正直思った。小学生レベルかよと。アホな数字過ぎる。
凄くバカらしいポイントに呆れていると、周りの生徒達がグリン!と音がしそうなほど、見事に合わさった振り向きで私を見てきた。ちょっと怖かった。
『上位の奴ほど狙われちゃう、下剋上サバイバルよ!!』
ちょっと勘弁して欲しい。そんなんなら一位にならなきゃ良かった。
そんな事言っても今更遅い上に、できるわけないのだけど。
ただ、私もさっきのモモとのモヤモヤで気分がすこぶる悪いのだ。
だから私は、見てくる生徒達に向けて馬鹿にしたような表情をして、鼻で嗤ってやった。
こう言うのはビビる方が逆効果だ。既に狙われている以上、自分が上位であることを相手に示さねばたちまち袋叩きになってしまう。
案の定、私を見てぶちギレる者もいたけど、逆に私の態度に訝しむ目を向けてくる者もいた。
て言うか、いい加減前向きなよ君達。