私のヒーロー道(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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はぁやぁくぅボス倒れろよぉぉぉぉぉぉ!!!




第一種目は地獄のレース

第一種目は障害物競争になった。

計11クラスの総当たりレースだ。スタジアムの外周である約4キロメートルのコースを走るらしい。

スタートは外に繋がっている一直線の通路の入り口から。

 

『ウフフフフ……コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあ、位置に着きなさい!』

 

私はその通路を見て、モモの手をつかんだ。

 

「行くよモモ!」

 

「わっ!つ、椿!?そんな焦らなくても」

 

私は何か抗議するモモをさっさと引っ張って先頭に着いた。

悪いけど、このスタート位置はかなり重要なのだ。こんな狭く密閉された空間を最初のコースにするなんて……教師側も意地が悪い。もしくはコレが『ふるい』なのか。

 

私達の後ろに続々と生徒達が集まり、スタートの準備が出来たようだ。

 

前に鎮座するスタートの信号が変わった。

 

『スターーーートッ!!!!』

 

モモの手を引っ張り、素早く前に躍り出て、スタートゲートの中に入る。

後ろを振り返れば、後続の生徒達が入り口で詰まっていた。

 

「スタートゲート狭すぎだろ!!」

 

「きっつ!」

 

「どけよ!邪魔だ!!」

 

「うわぁ……」

 

やはりコレが狙いか……。

ゲートの入り口がすし詰め状態だ。あれに巻き込まれたくはないよ。マジで。

 

何人かの生徒は序盤からこれに気付いて、通路を普通に走り抜けていく。

私とモモも例に漏れず通路を走り抜けていくが、そこで冷気を感じ取った。

 

「モモ!」

 

「わかってますわ!」

 

前方の足元から忍び寄る冷気を感じ取った私達は、迫る氷の波に対処する。

私は跳躍して壁を足場に駆け抜け回避し、モモは棒状の物を創造して空中を跳んでいた。

 

私は壁を駆け抜けながら外の出口に出る。そこには、足を凍らせられて動けなくなった数人の生徒と、先頭を独走する轟君の姿があった。

どうやら彼も『ふるい』の事に気付いて、一番前に陣取っていた様だ。

 

しかも後続を凍らせて妨害すると言う更なる『ふるい』を上乗せして。

 

「つめてぇー!!」

 

「くそ!動けない!」

 

『さぁて、実況していくぜぇ!まずはA組の轟が『個性』を使って一番乗りだ!しかも後続を凍らせるっつう妨害付きまで!コイツはシビィぜぇ!!どんな教育してんだミイラマン!』

 

『うるせぇ……何で俺がこんなこと………』

 

と、ここでプレゼントマイクと相澤先生の声がマイク越しに聴こえてきた。どうやら実況・解説らしい。

相澤先生はやる気なさそうだけど………人選間違えてないかな?

 

私は氷の張っている地面に滑らないよう着地する。

後ろを振り返ればモモの他に、A組の皆や他の生徒達も各々の個性を使って回避したようだ。

 

まあ、彼等なら回避できるだろう。驚きなのは初見の他の生徒が回避できたことなのだが。

 

『だが、他の連中は轟の氷を回避していくぞ!二位はこれまたA組の邦枝だ!』

 

『"瞬発力の個性"だ。回避も余裕だろう』

 

私達が轟君を先頭にコースを走り曲がり角を曲がると、今度はコースが広くなった。

同時に巨大な物体の大群まで出現したが。

 

『さあ!いきなり障害物だ!!まずは手始めに………第一関門、ロボ・インフェルノ!!!』

 

「入試の時の敵じゃねーか!!」

 

私の後続の生徒の誰かが堪らず声を上げる。

しかもただのロボットだけじゃなく、私が倒した巨体0Pロボットまでいるのだ。しかも大量に。

 

流石の光景に私や轟君も立ち止まってしまう。

 

「何処からお金が出ているのかしら?」

 

私の隣に着いたモモがそんな言葉を漏らす。

………『創造』持ちの君が言います?いや、確かに人件費とかはあると思うけどさ………。

 

おっと。そんな馬鹿な事を考えている暇なかったよ。

見れば轟君が一体のロボットを凍らせて活動不能な状態にしていた。

彼は凍ったロボットの足元の隙間を通り抜けていく。

 

「ほらモモ!行くよ!」

 

「へっ?………ええ」

 

私はすぐにモモを呼び掛けて、轟君の後に付いていこうとそのロボットの真下を目指す。

 

が、そこまで轟君は甘くないようだった。

そのロボットの足が砕けて、体制の崩れたロボが此方に倒れてきたのだ。

 

「ちょっ!?」

 

「轟さん………!」

 

危険な妨害とかするなぁ!!なんてことするんだッ!

轟君……君も要らない。あんなやつ呼び捨てだ!焦凍(しょうと)で十分だ!マジで!!

彼は一様、真下が崩れるように倒そうとしているようだから………後ろに回避は可能だった。

だからと言って、ここで後退はあり得ないけど。

 

今なら縮地を使って抜けられないことも無い。けど、隣にはモモもいるからそれはナンセンス。

……本当はまだ使いたくないのだけど……仕方がない。

 

私はモモを抱き寄せると、息を整えてタイミングを計り、迫るロボとの接触に備えた。

 

「スゥー………ハァッ!!」

 

私は倒れてきたロボットに拳を当て、その胴体に人が通れるほどの風穴を空けた。

 

瞬間、ロボットが倒れる轟音が辺りに響き渡った。

 

私とモモは空けたロボットの穴にすっぽりと嵌まる。そのまま穴を通って外に飛び出た。

ついでに私はモモのヤオパイを堪能することも忘れない。

 

『1-A轟!攻略と妨害を一度に!コイツはぁシヴィィィィィ!!!!!』

 

『耳元で騒ぐな』

 

『あ、すいません』

 

本当だよまったく。と言うかプレゼント・マイク弱ッ。

 

私は衝撃を殺しながら着地して、愛すべきモモの柔らかな感触から離れる。………なんか隣から抗議の目線が飛んでくるが気にしない。

 

「……椿。助かりはしました。けど、手助けは要りません」

 

「手助けじゃないよ。後々のための合理的判断さ。ほら、さっさと走る」

 

私はモモを促して走る。

 

『二番手は相変わらず邦枝!三番手が1-Aの八百万だ!つうか、あのロボットの中を抜けてきたぞ!?』

 

『死角で見えなかったが、八百万の個性で何かしたんだろう。見ろ、穴が空いているだろ。それと邦枝の瞬発力であの穴を抜けたようだ』

 

『手を組んだかのかぁ!!何でもありのデストロォイレースならではだな!』

 

どうやら先生方すら勘違いしてくれたらしい。嬉しい誤算だ。

 

私が出したのは心月流無刀 "撫子 拳突き"だ。敵の一点に力を集中させて突く、貫通力のある技。

心月流は抜刀術だけが世間で知られているため、あまり無刀の技を大っぴらにさせたくなかったのだ。バレずに済んで良かったよ。

 

まあ、今はそんな事置いておこう。プレゼント・マイクの実況では、他の皆も飛び越えたり倒したりして抜けているようなのだから。ウカウカしてられない。

 

氷の上を滑って行く、憎き焦凍クンの背中を追って走る。

妨害のことも考慮して、あのアンチキショーの前に出たいけど………私としては後ろのモモと連携を組んで、このレースを安全に攻略したいのだ。

だから彼と一定の距離を取って走り続けた。憎いけど。

 

 

だいたい二キロ程走っただろうか。再び私達の前に障害が現れた。

 

今度は底の見えない大きな崖と、その間に点々とある足場が混在したフィールドであった。

足場から足場にかけてはロープが繋がれていて、ロープの下は崖。

崖の幅は大体300メートル位だろうか。足場とロープを使えば渡れるようになっていた。

 

『さあ、先頭はもう第二関門だ!!落ちれば即アウト!それが嫌なら這いずりな!!!その名も、ザ・フォーーーーール!!!』

 

アホだね。

その一言に尽きる。何でこんなにも深く崖を掘っているのだろうか。誰かの個性で造ったのだろうが、頑張りすぎでしょ。

 

先頭の焦凍はロープを凍らせて、良い感じの足場を造って渡り始めた。

しかもちゃんと歩いた後の氷を溶かしているのだから、小まめな心掛けだと思う。

 

『轟!今度はロープ氷で覆って足場を造ったぞ!万能過ぎねぇかあの個性!?』

 

『それに、ロープの端まで凍らせて足場を完全に固定させているな』

 

「さてと焦凍クンも行ったことだし………ここは各自でクリアしよっかモモ。早く辿り着かないと、置いてっちゃうぞ☆」

 

「そもそも私は椿と組んだ覚えはないのですが………」

 

椿が釈然としない顔で私を見てくる。

そんな事言われても困る。だって組もうとすら言ってないのだから。

 

モモは判断力や発想力は良いのだけど、根が真面目なので誰かを出し抜くと言った考えが出てこない。だから彼女が足下を掬われないように、私が彼女を支えるのだ。

それが、一番だから。

 

……まあ、単純にモモと一緒に居たいだけなんだけどね。ほら、モモって押せば渋々従ってくれるし。ラッキースケベも出来るし。役得だわー。

 

「ほら、そんな文句言ってないでさっさと創造する。ジェットパックでも何でも良いから」

 

「わ、わかりましたわよ………」

 

彼女はそう言って創造し始めた。それを確認した私は、ロープの上に立ち、走り出す。

正直こんな不安定な足場など、修行でいくらでも駆け抜けたのだ。しかもお爺ちゃんの妨害付きで。今更こんな障害、在って無いようなものだ。

本当は縮地を使って跳んでも良いのだけど、それだと焦凍を追い抜いちゃうから無しだ。

 

『二位の邦枝も先頭に続いて爆走!!つーかアイツ普通に走ってんだけど!!?』

 

『そりゃあ邦枝の家系だからな。こう言った真似事の稽古は日常茶飯事なんだろ』

 

『怖ッ!!』

 

先生方がうるさいが無視して走る。と言うか素で引かないでよプレゼント・マイク。プロだろ。

 

__________

 

焦凍クンと私が一定の距離を空けて、そろそろ崖の終盤まで渡って来た時だ。

 

『おおっと!ここで1-Aの爆豪と八百万が二位の邦枝に迫ってきたぜぇ!』

 

「待てや抜け駆け野郎!」

 

実況と叫び声に反応して振り返れば、すぐ後ろを爆豪君とモモが火を吹かせて飛んでいた。

モモはわかるとしても爆豪君の爆発………ああ言った空中を飛ぶことも出来るのか。

足場とロープがジグザグに移動するよう配備されているから、空中をショートカットした二人に追い付かれてしまったのだろう。

と言うか、いつの間に爆豪君は先頭に接近したのか。

 

それはともかく。

 

「抜け駆けって何さ………というか野郎じゃないし」

 

爆豪君に悪態を吐きながら私は走る速度を上げる。

そろそろレースも終盤に差し迫っている頃合いだ。なのに皆のペースが上がってきているなら、私もそれに倣うべきだろう。

凍っている最後のロープの上を一気に駆け抜ける。

 

『他の連中がロープを渡り始める中、先頭集団はもう突破すんぞ!追い付けなくなっちまうぜ!?それが嫌なら走れ走れ!!』

 

どうやら後続はまだ崖の序盤辺りらしい。

予選越えが何人までか知らないけど、私達はほぼ確定だろう。

そんな事を考えていたら、爆豪君が私の横を駆け抜けて行った。と言うか速いな彼。

 

『ついに爆豪が邦枝を抜き去ったぁ!!なんだおい、とうとうガス欠かぁ!?』

 

『爆豪がスピードを上げてきたんだ。だが、それにしてもアイツ………』

 

私はモモと並ぶよう速度を微調整する。すると、すぐに横に来たモモと並んだ。

 

「どうしたのですか椿?貴女がこんなペースで走るなんて………」

 

「いやぁ。モモがどうしてるかな~って思って………と言うかモモ。何狙ってるのか知らないけど、せめて何か乗って走りなよ。大分先頭と離れてきたよ?」

 

「………いえ、これも訓練ですので。物ばかり頼っては私のためになりません」

 

「相変わらず真面目で向上心が高いな~モモは。そんなところが大好き!」

 

「いきなり何言ってるのですかッ!?」

 

おっ、赤面した。相変わらず可愛いなモモは。この顔を見るだけで元気100倍だね。

っと、いけない。モモの走る邪魔になってしまった。要件だけ伝えなくては。

 

「そろそろ最後の障害ぽいから、私はそこでラストスパート仕掛けるよ。多分だけど、今までの障害見るに余裕そうだし。ただ、障害次第ではモモのお世話になるかもしれないから宜しくね」

 

「………椿。貴女は……少し過保護ぎみでは?」

 

「?なんのこと?」

 

急になんの話をしているのだろう、モモは。過保護って………え?育児が?なんでここで育児?

 

『さあ早くも最終関門だ!』

 

む………どうやらそろそろ最後の障害らしい。私達の目に、それらしき開けた道が見えてきた。

 

最後は一体どんなアホな障害があるのやら。楽だと良いのだけど………。

 

 




今回は書く量多すぎた。大分ノってきた証拠。

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