というか、時間無くて誤字多すぎだわー
二日後。
あんな事件があったから昨日は休校となったが、流石雄英だ。今日から普通に授業である。
「お早う」
「相澤先生復帰早ぇぇぇぇ!!!!」
相澤先生がドアからヌルッと登場してきた。その姿は全身を包帯で巻いている姿で、凄くヨロヨロしていた。
先生は教壇に立つと、包帯で覆われた顔を私達に向ける。
あ、眼だけ出してるんだ。
委員長である飯田くんが先生に声を掛けていた。
「先生無事だったんですね!!?」
「俺の安否はどうでも良い。何より戦いまだ終わってねぇ」
戦い………なんだろうか。やはり逃がしたヴィラン達に関係のあることなのだろうか。
確かに彼等を逃したことで、また襲撃が行われるとは思うが………
そんな私達の不安を他所に先生は言った。
「体育祭が迫っている」
「「「クソ学校ぽいのキター!!!」」」
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と言うわけで体育祭である。
ただし、ここ雄英高校の体育祭は普通の体育祭ではないのだ。
オリンピックと呼ばれる、かつてスポーツの祭典だったそれは、個性使用禁止を貫いたため、規模も人口も縮小し形骸化してしまった。
しかし、日本においてそれに代わって台頭したものが、雄英体育祭なのだ。
全国にヒーロー科は多くあるけど、マスメディアまで動員して一般公開している体育祭は雄英だけ。
個性を惜しみなく使って行われる、ヒーローの卵たちによる競技は、たかが体育祭を全国レベルの祭にまで押し上げたのだ。
それに、この祭は私達にとって重要なイベントだ。
世間に私達の実力が知られる。つまりプロヒーローもこの祭を見るのだ。しかもスカウト目的で。
ヒーロー資格を取った後はプロの事務所に入ってサイドキックーーーーーー助手になるのが定石だ。
つまり将来に関わってくる大事なイベント。ヴィランの襲撃ごときで中止になどならないのだろう。
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昼休み。皆の話題はやはり体育祭だった。
「ついにやって来ましたわね椿」
「まあ、そうだね~……」
「あら?なんだかやる気が無さそうね椿ちゃん」
「ああ、梅雨ちゃん。そう言うわけじゃないんだけどね………」
私が机にぐでーんと項垂れていると、目の前の梅雨ちゃんから声が掛かった。
今、私達は女子のグループで集まって学食のご飯を食べていた。メンバーは私、モモ、響香、カエルの個性の梅雨ちゃん、芦戸三奈ちゃん、透明人間の葉隠透ちゃんのA組の女子メンツだ。
麗日ちゃんは、まったく麗らかな顔とはかけ離れた気合いが入った顔で、飯田君と緑谷君と一緒に廊下に出ていった。
あの三人仲いいねぇ………
「にしても体育祭かぁ………楽しみだけど、緊張もするなー」
「心配性だね響香ちゃんは!私なんて今から楽しみで仕方ないよ!」
「アタシもアタシもー!めっちゃ楽しみ!」
響香はそうでも無いけど、葉隠ちゃんと芦戸ちゃんはテンションが高い。
私は正直微妙だ。別に緊張もしないが楽しみでもない。
こう言った行事には慣れてるし、私にはこの体育祭で優勝しなければいけない義務があるからだ。
心月流を世に知らしめる為、と言ったふざけた信念とかじゃない。
何故なら心月流は既に世に知られているから。
ただ、邦枝の本家として、心月流の担い手として、極めて個人的かつ絶対回避しなければならない事情として、私は優勝しなければいけない義務があるのだ。
別に心月流の看板を背負っているわけでは無いけど、名家に名を連ねた者としては、世に不様な姿を見せられない。
と言っても、本来ならこれくらいの重圧など慣れているから問題ないのだけど………
「そう言えばさ。今回は皆学校指定の体操服で出るんだよね」
「残念だなー。アタシはコスチューム着てやりたかったのにー」
「それは仕方ありませんわ。体育祭は普通科の生徒も参加するのですから、私達だけ不公平になってしまいますもの」
そう。それが問題なのだ。コスチュームが使えない。つまり木刀が持ち込めないのだ。
ヒーロー科は原則として持ち込み不可、または個性に支障がきたす場合のみサポートとして持ち込みOKとなる。
そして、私は支障をきたす訳ではないから木刀を持ち込めない。
それでもやりようはあるのだが………チートな個性相手にどこまで持っていけるか………。
「憂鬱だ………」
「そう言えば椿は木刀使えなくなるんだよね。確か『瞬発力』の個性だっけ?ちょっとキツくなる感じ?」
「………そうなんだよ。まあ、頑張るけどさー」
ふと、モモが何とも言えない顔をして私を見てくる。
わかっているけど、そんな顔をしないで欲しい。……まあ、モモの性格だ。真面目な彼女は私のためとは言え、私の態度に黙っていることが嫌なのだろう。
かと言って、私の事情も知っているから物申すこともしない。優しい親友である。
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それから体育祭までの二週間はあっという間であった。
各々が各自で特訓に励み、私もまた稽古を行っていた。
たまにモモの稽古も見てあげたりなどしたけど、私も出来る限りのことはやったのだ。
あっという間に過ぎた今日。
体育祭の当日である。
体育祭はドデカいスタジアムの中で行われる。東京ドームより少し大きいくらいのスタジアムの中は、観客席が満杯になり、ざわつき盛り上がっていた。
『ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル、雄英体育祭!!!』
生徒達が入場ゲートで待っていると、プレゼント・マイクの声が響いてきた。どうやらそろそろ開演らしい。
『どうせあれだろコイツらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたのにも拘わらず、鋼の精神で退けた奇跡の新星!!』
相変わらずのテンションの高さである。ついでに言うと恥ずかしいから止めて欲しいのだけど……
そう思いながら私は皆と同じようにゲートを抜けて入場する。
『ヒーロー科1年!A組だろぉぉぉ!!!』
入場すればそこは観客席で囲まれた空間だった。
満員で埋まる観客の目が私達を見ている。当然、A組の皆はその視線に慣れていないようでソワソワしだした。
「やべ、ウチ緊張してきた」
「耳郎さん。こういうのは慣れですわ。皆の事をカボチャと思えば良いのです」
が、流石モモだ。こういった舞台に立つのは慣れているらしい。伊達にパーティーの主催者側に立っているだけはある。
まあ、かく言う私もある程度は慣れているのだけど。
他の生徒達も入場し、列になって並ぶ。
私達の前にある壇上では、18禁ヒーロー『ミッドナイト』が立ち、進行役を勤めるらしい。
彼女の存在にざわつく中、彼女はテキパキと進めた。
『選手代表!邦枝 椿!!』
「あり?私?」
進めるのは良いのだけど………私?
え………なんも聞かされてなかったんだけど。なして?
私が困惑していると、近くにいた響香が教えてくれた。
「あんた入試一位でしょ?早く行きなよ」
「あ、そう言う………」
A組の皆から頑張れの応援を受ける。一人、親の仇を見るような形相で私を睨んでくる爆豪君がいたが、無視した。
応援に後押しされ、私は渋々と教壇の方へと足を進める。
けど、A組の列から抜けると何やら周りの他の生徒達から嫌な視線を感じた。
なんだろうかと思い、耳を済ましてみる。
「けっ、何が一位だよ。ヒーロー科の入試で、だろ」
「さっさと行けよ、かったるいなー……本当にヒーロー科一位かよ」
ふむ………なんだか私は嫌われているらしい。初対面の彼等に何かした覚えは無いのだが………所謂嫉妬、と言うやつだろうか。
わからなくもない。なにせ、私もその感情に覚えはあるのだから。
だからと言って気分が悪いか悪くないかで言えば、それはすこぶる悪いのだけど。
私は嫌な視線を一身に受けて、壇上のマイクの前に立つ。
………選手宣誓の台詞など、まったく覚えていなかった………どうしようか。
助けての意味を込めて前に立つミッドナイトを見るが、彼女は私の視線を受けて恍惚な顔になるだけだ。
それでいいのか教師。と言うか怖いから見ないで。
「早くしろよ」
「おっせぇーな」
おっと。ヘイトの感情が上がってきている。
けど困ったな。かなり後ろから野次が飛んでくるので、思うような台詞が思い付かない。
と言うか、良いかな?好きなこと言っちゃって。急な呼び出しなのに台詞も用意されてないし。凄くイライラするんだもん。
だから、私は手を挙げて宣言した。
『宣誓~~………私がトップだッ!!!!!』
周りの野次や会場の観客席から聞こえていた声が、ピタリと止まる。
直後、他のクラスの生徒達からブーイングの嵐が巻き起こった。
「「「「「「BOOOOOOOO!!!!」」」」」」
「調子に乗んなA組!!」
「これだからA組は!!」
「自分は美形だからって私達を馬鹿にしすぎよ!」
『おおう………すごい批難の声』
「当たり前だ!!」
どうやら顰蹙を買ってしまったらしい。まあ煽るような事言ったのだから、仕方のないのだけど。
でも、乙女のお茶目なジョークじゃないか。これくらい笑って流せないとか、どんだけ心が狭いのよ………。
と思ったら、A組の委員長からもお叱りの声が届いてきた。
「なぜ品位を貶めるような行いをするんだ!?」
?………あー………皆ごめん。一位の私だけじゃなくてA組事態が嫌われてるんだね。周りを見て察したよ。
だって、他のクラスの生徒達が私だけでなく、A組も睨んでいるのだ。なんともわかりやすい。
………そう言えば前の放課後に、教室の前で沢山の生徒がA組の何人かと揉めていたけど………それと関係があるのかもしれない。
と言うかとばっちりじゃん。私、悪くなくない?
そう釈然としない気持ちで私はA組の列の中に戻った。でも皆呆れたような目で私を見てくるけど、誰も私を恨んではいないようだ。良かったよ。
『悪くない宣誓だったわ!それじゃ、早速第一種目行きましょう!!』
「雄英って何でも早速だよね」
ミッドナイトが司会に戻ると、近くにいた麗日ちゃんがまったく麗らかじゃない厳しめなツッコミを入れた。