私のヒーロー道(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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ただ一人称書いてみたかっただけ。
ちなみに個性の影響で葵よりちょい強め。まあプロヒーローには格段に劣りますが


雄英高校受験します

『私が来た!!』

 

 テレビで朝の番組が流れている。時刻は朝の4時。こんな時間からでもオールマイトの映像が出てくるのは、やっぱり彼の人気の証なのだろう。

 

 オールマイト。No.1ヒーローであり平和の象徴。前髪を角のように二本立てた金髪と筋骨隆々のマッチョボディ。一人だけ周りと画風が違うと言ったら良いのか………彼だけは何かが違うと雰囲気でわかるほど隔絶した絶対的存在。

 

 彼は今、テレビで犯罪者(ヴィラン)と呼ばれる人達を瞬く間に倒していた。

 そんなテレビに映るオールマイトを横目で見ながら、私・邦枝 椿は着替えて道場に向かった。

 

 __________

 

 世界総人口の約8割が超常能力“個性”を持つ超人社会。"個性"とは先天性の持つ超能力の一種だ。

 そんな"個性"蔓延る社会の中で、“個性”を悪用する"ヴィラン"を“個性”を発揮して取り締まるヒーローは人々に讃えられていた。

 

 "ヒーロー"。人々に“個性”が発現した超常黎明期において、“個性”を利用して人々を救う職業となった役職だ。

 "自警団(ヴィジランテ)"と呼ばれた人々の活動が、世論に押される形で制度として認知されたのがヒーロー制度の起こり。

 

 そのヒーローの活動は絶大的で、今やCMやバラエティ、ニュースなど様々なメディア・マスコミに進出している。

 若者が成りたい職業No.1の職業がヒーローなのだ。

 そんなヒーローに成りたい人の一人である私もまた、ヒーローになるために自分の稽古を行っている。

 

 

 目を閉じる。周囲の感覚を掴み構えを取る。

 息を整え、私は踏み込みと同時に木刀を抜刀し振り抜いた。

 

「フッ!」

 

 気合いを込めた息が口から漏れる。

 残心を残した体勢のまま、私は目を開き息を整える。

 

「スゥー………ハァー……」

 

 私は残心を解くと周りを見回して確かな手応えを実感した。

 抜刀術の影響で、私を中心とした半径数メートルから数十メートル離れた位置にある藁で出来たかかしが全て斬り倒されている。

 若干掃除が面倒だなぁって思わなくもないけど、これもまあ稽古の一つだと思って諦めるしかない。

 

「さっさと片付けちゃいますか」

 

 やる気を上げるためにそんな一言を呟いて、私は掃除を始めた。

 

 

 ____________________

 

 朝食を食べ終えた私は()()()()を終えると、受験のための支度を整えて外に出る。

 

 

 そう、受験です。私は今日、入試倍率300倍偏差値79と言われている超難関の雄英高等学校入学試験を受けるのですッ!!

 緊張のせいなのか感情が高まっている気がしなくもないのだけど、それでも今日は受験なのだ。落ち着いていかなければ。

 

 雄英高校は、オールマイトを始めとした名だたるヒーロー達を卒業生として社会に排出している程の超有名校。偉大なヒーローには雄英卒業が絶対条件と言われるほど、ヒーローになるための登竜門としての地位になっているくらいだ。

 ここで将来が決まると言って良い程には大事な入試。

 

 友達は推薦で入ることが確定しているし、是非とも同じ学校で一緒に通いたい。

 

 私は雄英高等学校入学試験会場の看板が置いてある校門を通り過ぎると、校舎を見上げる。

 雄英高校の校舎は大学のような二つのビルだ。そのビルの中に入って行き、案内板に誘導されながら入試()()()()説明会場にたどり着く。

 

 会場は驚くほどの広さだった。

 …………まあ、当たり前でしょう。入試倍率300倍なら最低でも一万人以上の人が入りきらなければならないからね、うん。

 少し心臓の音が五月蝿いのは決して会場の雰囲気に呑まれているわけではないはず……。

 

「スゥー……ハァー……」

 

 私は何時ものように深呼吸を入れる。

 やっぱりどうしても緊張してしまうわね……。当たり前か、私はこの試験を()()()()()()()で挑むようなものなんだし。それに今までの稽古があるとは言えまだまだ未熟だし……。

 

 受験番号の書かれた席に着いた。後は説明が行われるのを待つだけ。そう考えて先程入り口で貰った説明のパンフレットに目を向ける。

 

 どうやら実技試験は対ヴィランの戦闘試験なようだ。

 4種の機械が相手らしいし、私にとっては有難い。武器の持ち込みも有りとくれば、多分大丈夫だと思う。

 これが武器無し個性のみで敵を倒すと言った試験なら、かなり厳しい試験になったかもしれないけどね………

 

 そんなことを思っていると私達の席の前にある舞台上に奇抜な格好をした一人の男性が立った。

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』

 

 しーーーーーん………

 

 突然のノリと男の掛け声に付いていけなかった私を含む受験生は皆無言となった。

 

 彼の事はあまり見たことがないけど、ラジオではこのテンションのヒーローの声を聞いたことがある気がする。

 たしか名前はボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だっかな。とてもテンションが高かったのを覚えている。

 

 そんな周りの無言の空気にもめげない男は一人テンション高く再び話始める。

 

『こいつぁシヴィー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!!』

 

 そう言ってプレゼントマイクはテンション高めの状態を維持したまま説明を始めた。

 

 試験はここから別の場所に移動して行うようだ。受験生はA~Gのグループで分けられ、各自別々の場所で試験を行う。敵は三種類のいるようだけど難易度によってポイントが違うと。

 

 そこで一度、一人の生真面目そうなメガネ男子が質問を入れた。もう一種類の敵は何だと言った質問だけど、プレゼントマイク曰くその敵は0ポイントのお邪魔虫らしい。

 

『俺からは以上だ!!最後にリスナー達へ校訓をプレゼントしよう』

『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」!!』

 

 ここでプレゼントマイクは一度言葉を切って溜める。

 

Plus(更に) Ultra(向こうへ)!!!』

『それでは皆良い受験を!!』

 

 プレゼントマイクはそう締め括って舞台裏へと消えていった。

 

 

 ____________________

 

「Plus Ultra。更に向こうへ…ね」

 

 所変わって、私は今実技試験場にいた。

 試験場はビルで囲まれた市街地を想定している会場だった。一辺ニ、三キロ程の四角街が試験場の範囲。

 この範囲の街がいくつも敷地内に仮想戦闘場所としてあるのだから、雄英はとても広い。

 

 私が自前の木刀の手触りを確かめていると、後方何十キロと離れたビルからここまで届く大音量のプレゼントマイクの声が聞こえた。

 

『ハイスタートー!!!』

 

「えっ?」

 

『どうしたぁ!?実践じゃあカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れ!!!』

 

 その声の意味を理解したかと思うと、私を含めた数人の受験生達は瞬時に動き始めた。

 遅れて全員の受験生達も走り始めた気配が後ろから感じ取れたけど、私はその事を意識から外して集中することにする。

 目の前に三階建ての低めのビルが見えたので、私はその屋上に跳躍した。

 

 武術の基本的足捌き、『縮地』だ。本来なら至近距離にいる相手の懐に一歩で間合いを詰める体捌きだけど、私やお爺ちゃんみたいにこの技を極めれば十数メートルを一歩で跳べる。

 

 そのまま近場の五階建てや十階建てのビルの屋上や、勢いをつけて側面の壁を蹴りつけ、二十階建てのビルを跳ぶ。

 

 やっぱり高い建物から見える景色は違うね……。私と同じような考えの人達が、個性を使って高い位置から探索を行っているのが見える。

 私もそれに習って辺りを見回す。すると市街地の中心辺りに大きな広場が見えた。そこには仮想敵とされた大量のロボットが群がっている。

 それが確認できたのでビルの壁や屋上を縮地で跳んでその場所に移動する。

 

 どうやら私は一番乗りらしい。広場に到着した私の方へと一斉にロボット達が振り返った。

 

『標的捕捉!!ブッ殺ス!!!』

 

『人間ダ!人間殺ス殺ス殺ス!!!』

 

「なんか凄く物騒じゃないかしら!?」

 

 ビックリだ。いや、まあ仮想だけど敵なんだから物騒なのはわかるけど………なぜか釈然としない。

 まあそんなことは置いておこう。そう思い私はこの場でポイントが一番高くて大きい5ポイントの敵へと突入する。

 が、私の進行方向に1ポイントと3ポイントの敵が割り込んできた。

 

『死ネ死ネ死ネ!!!』

 

『人間ナド壊レレバイイノダ!!』

 

「だからなんでそう物騒な………」

 

 腰に挿した木刀へと手を掛けて、そのまま仮想敵の下へ縮地を使って距離を詰める。

 未だ私がいた位置の方へと顔?らしきモノが向いている二体のロボットへ木刀を抜刀した。

 

 胴が上下に分かれたのを手応えで感じ取りながら、5ポイントの敵へと縮地で突っ込む。

 木刀で5ポイントの敵を一閃し、その場から巨体が崩れ落ちてくるのを回避する。

 

 ドオン!!という重くお腹に響いた音を聞き取りながら、私は次の標的へと目を向けた。

 

 




書いてて主人公沖田さんに変えたくなった。

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